飛び出せ! 北の宇宙基地

北の地である北海道で、人工衛星の開発などを行っている 北海道工業大学 佐鳥研究室の活動日記です。

宇宙関連情報: 2009-03-09 月にやさしくない衝突型探査機の功罪

2009-03-25 08:40:58 | 北海道衛星
2009-03-09 月にやさしくない衝突型探査機の功罪
 中国が3月1日に月周回探査機「嫦娥一号」を月面に衝突させ“着陸”を成功させた。その一方、NASAの科学者たちは氷が得られることを期待し、月の表面を粉々に砕く探査機を準備している。

 この探査機は4月に打ち上げられる予定で、科学の名の下に月を“いじめる”という数十年の伝統をさらに1歩進めるものだ。一部の専門家は、未来のことをもっと考えるべきだと警鐘を鳴らしている。

 月クレーター観測・検出衛星(Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)、略して「LCROSS」(エルクロス)と呼ばれる月探査機は、月に直径30メートルの穴を開け、そこにあった物質220トンを飛び散らせる。

 こういった乱暴な衝突は珍しいことではない。月は1960年代以降に送り込まれた25機を超える着陸船や軌道衛星、探査車で既に散らかっている。しかし、世界中を巻き込んだ新たな宇宙開発競争が過熱している今、科学的な野心とそれが招き得る結果のバランスを取ろうという動きが拡大している。

「どのような科学研究でも、衝突すれば月面の一部が間違いなく破壊される。それは良いことではない」と、NASAで月の試料を管理するゲーリー・ロフグレン氏は言う。

 4月24日、乗用車ほどの大きさの衛星ルナー・リコナイサンス・オービタ(LRO)が打ち上げられ、8月上旬、オービタからLCROSSが月に向かって打ち込まれる。この瞬間、世界中の望遠鏡が月面から舞い上がる物質を待ち構えている。アマチュア天文家も裏庭の望遠鏡でほこりの雲を見られる可能性がある。

 NASAによると、LCROSSは月探査の未来の鍵を握るという。月に氷が存在することが確認されれば、月面基地に水を供給できる。最終的には、月を拠点に火星やその先に進むことができるかもしれない。

 月がゴミだらけになる懸念に関しては、「LCROSSは衝突時にほとんど蒸発してしまう」と、NASAの広報担当者グレイ・ホータルオマ氏は説明する。また、舞い上がるほこりの雲が汚染されないよう、燃料は衝突前に廃棄するという。

 月の試料を管理するロフグレン氏によると、これまで月に与えてきたダメージは、数十年にわたる月の研究からすればほんの小さな代償だという。また、「現時点で月にある探査機も月面のごく一部を占拠しているにすぎない」と、同氏は話す。さらに、流星は通常、秒速25キロくらいで衝突し、月面をめちゃくちゃに破壊する。人間が引き起こす衝突はたいていその10分の1ほどの速度だ。

「人間は月面を少し散らかすだけだ。物質を蒸発させることも、岩を溶かすこともない」とロフグレン氏は説明する。また、同氏によると、月には大気も風もないため、がれきが動き回ってほかの場所を汚染する心配もないという。「金属の破片が月面に残るだけだ」。(National Geographic News)


最新の画像もっと見る