タイトル:オバマ次期政権 宇宙計画を加速
本文:
オバマ次期政権は、米国防総省とNASA(米航空宇宙局)
の宇宙計画の間に長期にわたり存在してきた隔たりを埋め、
今後予想される中国との競争に備えて、月への飛行計画を
加速する見通しだ。
オバマ次期大統領の政権移行チームは国防総省とNASAの
連携を検討している。NASAが2015年の打ち上げを計画する
ロケットよりも軍事ロケットのほうが低コストで
準備もより早くできる見込みだからだ。
同チームと協議した関係者らが明らかにした。
◆時間短縮、低コスト
このような方向転換の背景には、国防総省が中国の促進する
宇宙計画を米国の軍事衛星に対する脅威と見なし、
警戒を強めていることがある。
クリントン政権下で科学技術政策補佐官を務めた、
ニール・レーン氏は「オバマ新政権は、
それらすべての課題を抱えることになるだろう」とし、
「外交と国家安全保障への影響を考慮せねばならない」と指摘した。
07年に衛星破壊実験を決行した中国は、
宇宙飛行計画を大きく推進している。
軍部の推進により08年9月には中国人初の宇宙遊泳を成功させ、
12年には月面に無人探査車を送り込む計画だ。
米国家安全保障調査会社CNAコープのシニア・アジア・アナリスト、
ディーン・チェン氏は「中国が有人月面着陸に成功しても、
それ自体が米国への脅威となるわけではない。
だがそれは中国が宇宙において米国に匹敵する能力を確保したことを
意味する」と述べた。
国防総省の宇宙計画には08年度で、NASA予算を大きく上回る
220億ドル(約2兆20億円)の予算がつぎ込まれている。
オバマ次期大統領はリセッション(景気後退)が
連邦政府支出を圧迫するなか、同計画を活用してNASAの目標達成を
後押しすることも可能だと述べている。
スペースシャトルが退役する10年から、
宇宙飛行士を国際宇宙ステーションを経由して月へと運ぶ、
6人乗りの宇宙船「オリオン」が初めて打ち上げられるまで
5年の期間がある。
その間、米国はロシアに有料で宇宙飛行士を宇宙ステーションに
輸送してもらわねばならない。オバマ次期大統領は、
その期間短縮を目指したいと述べている。
政権移行チームと協議した、米国立航空宇宙博物館の政策専門家、
ジョン・ログスドン氏は「NASAがどの程度コスト削減できるかは、
誰にもはっきりとは分からない。
だが、軍事ロケットはほぼ開発済みだ。一から始める必要はない」
と述べた。
中国の国営企業各社は既に、月への飛行も可能な
重量物打ち上げロケットの組み立てを開始している。
13年に打ち上げる計画だ。有人飛行に向け、
残すところは月着陸船の建設のみだと、
06年に中国の宇宙計画を視察したグリフィンNASA長官は述べた。
同氏は7月、米国が20年に月への有人飛行を行うよりも先に、
中国がそれを成功させるだろうと述べている。
中国は10年に月面着陸に不可欠となる、
宇宙船2隻の軌道上でのドッキングを計画している。
中国国営の新華社通信によると、
中国の宇宙計画に関するスポークスマンは昨年9月、
「月面着陸は極めて困難で複雑な作業であると同時に、
戦略的に重要な技術分野だ」と述べている。
◆脅威の中国衛星
月面着陸以外にも中国の宇宙計画は米国にとって脅威だ。
ゲーツ国防長官は米誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号のなかで、
中国が対衛星ミサイルや弾道ミサイル、
その他の兵器の開発を進めることにより、
「米国が太平洋地域において権力を誇示し、
同盟国を援助するのに必要な拠点や、航空および海洋資産、
ネットワークなどの基本的資産が、脅威にさらされる可能性がある」
との認識を示した。
米中経済安全保障検討委員会が米連邦議会に11月20日に提出した
報告書によると、中国が設計中の衛星は、
米国のスパイ衛星および通信衛星を破壊する威力を持っているという。
中国当局は、対衛星ミサイルおよび有人宇宙計画について
コメントを差し控えた。
NASAと国防総省との連携促進に向けオバマ次期大統領は、
1958~73年の全盛期を中心に、過去4政権にわたって
宇宙分野全般を監督してきた航空宇宙会議の見直しを約束した。
これにより文化も基本方針も異なる国防総省とNASAの連携が
深まるだろう。
元NASA職員で、現在はワシントンの宇宙政策研究所理事長を務める
スコット・ペース氏は「このような協力関係が成功するかどうかは
不明だが、それはオバマ次期政権が問わねばならない問題である」
と指摘した。(Demian McLean)
URL:http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200901200076a.nwc
本文:
オバマ次期政権は、米国防総省とNASA(米航空宇宙局)
の宇宙計画の間に長期にわたり存在してきた隔たりを埋め、
今後予想される中国との競争に備えて、月への飛行計画を
加速する見通しだ。
オバマ次期大統領の政権移行チームは国防総省とNASAの
連携を検討している。NASAが2015年の打ち上げを計画する
ロケットよりも軍事ロケットのほうが低コストで
準備もより早くできる見込みだからだ。
同チームと協議した関係者らが明らかにした。
◆時間短縮、低コスト
このような方向転換の背景には、国防総省が中国の促進する
宇宙計画を米国の軍事衛星に対する脅威と見なし、
警戒を強めていることがある。
クリントン政権下で科学技術政策補佐官を務めた、
ニール・レーン氏は「オバマ新政権は、
それらすべての課題を抱えることになるだろう」とし、
「外交と国家安全保障への影響を考慮せねばならない」と指摘した。
07年に衛星破壊実験を決行した中国は、
宇宙飛行計画を大きく推進している。
軍部の推進により08年9月には中国人初の宇宙遊泳を成功させ、
12年には月面に無人探査車を送り込む計画だ。
米国家安全保障調査会社CNAコープのシニア・アジア・アナリスト、
ディーン・チェン氏は「中国が有人月面着陸に成功しても、
それ自体が米国への脅威となるわけではない。
だがそれは中国が宇宙において米国に匹敵する能力を確保したことを
意味する」と述べた。
国防総省の宇宙計画には08年度で、NASA予算を大きく上回る
220億ドル(約2兆20億円)の予算がつぎ込まれている。
オバマ次期大統領はリセッション(景気後退)が
連邦政府支出を圧迫するなか、同計画を活用してNASAの目標達成を
後押しすることも可能だと述べている。
スペースシャトルが退役する10年から、
宇宙飛行士を国際宇宙ステーションを経由して月へと運ぶ、
6人乗りの宇宙船「オリオン」が初めて打ち上げられるまで
5年の期間がある。
その間、米国はロシアに有料で宇宙飛行士を宇宙ステーションに
輸送してもらわねばならない。オバマ次期大統領は、
その期間短縮を目指したいと述べている。
政権移行チームと協議した、米国立航空宇宙博物館の政策専門家、
ジョン・ログスドン氏は「NASAがどの程度コスト削減できるかは、
誰にもはっきりとは分からない。
だが、軍事ロケットはほぼ開発済みだ。一から始める必要はない」
と述べた。
中国の国営企業各社は既に、月への飛行も可能な
重量物打ち上げロケットの組み立てを開始している。
13年に打ち上げる計画だ。有人飛行に向け、
残すところは月着陸船の建設のみだと、
06年に中国の宇宙計画を視察したグリフィンNASA長官は述べた。
同氏は7月、米国が20年に月への有人飛行を行うよりも先に、
中国がそれを成功させるだろうと述べている。
中国は10年に月面着陸に不可欠となる、
宇宙船2隻の軌道上でのドッキングを計画している。
中国国営の新華社通信によると、
中国の宇宙計画に関するスポークスマンは昨年9月、
「月面着陸は極めて困難で複雑な作業であると同時に、
戦略的に重要な技術分野だ」と述べている。
◆脅威の中国衛星
月面着陸以外にも中国の宇宙計画は米国にとって脅威だ。
ゲーツ国防長官は米誌「フォーリン・アフェアーズ」最新号のなかで、
中国が対衛星ミサイルや弾道ミサイル、
その他の兵器の開発を進めることにより、
「米国が太平洋地域において権力を誇示し、
同盟国を援助するのに必要な拠点や、航空および海洋資産、
ネットワークなどの基本的資産が、脅威にさらされる可能性がある」
との認識を示した。
米中経済安全保障検討委員会が米連邦議会に11月20日に提出した
報告書によると、中国が設計中の衛星は、
米国のスパイ衛星および通信衛星を破壊する威力を持っているという。
中国当局は、対衛星ミサイルおよび有人宇宙計画について
コメントを差し控えた。
NASAと国防総省との連携促進に向けオバマ次期大統領は、
1958~73年の全盛期を中心に、過去4政権にわたって
宇宙分野全般を監督してきた航空宇宙会議の見直しを約束した。
これにより文化も基本方針も異なる国防総省とNASAの連携が
深まるだろう。
元NASA職員で、現在はワシントンの宇宙政策研究所理事長を務める
スコット・ペース氏は「このような協力関係が成功するかどうかは
不明だが、それはオバマ次期政権が問わねばならない問題である」
と指摘した。(Demian McLean)
URL:http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200901200076a.nwc