A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 145 責務

2014-04-20 23:54:07 | ことば
 作家の第一の責務は、意見をもつことではなく、真実を語ること……、そして嘘や誤った情報の共犯者になるのを拒絶することだ。文学は、単純化された声に対抗するニュアンスと矛盾の住処である。作家の責務は、精神を荒廃させる人やものごとを人々が容易に信じてしまう、その傾向を阻止すること、盲信を起こさせないことだ。作家の職務は、多くの異なる主張、地域、経験が詰め込まれた世界を、ありのままに見る眼を育てることだ。
スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、p.219




いま、「作家」はいるだろうか。

未読日記866 『50 years of galerie 16 : 1962-2012』

2014-04-19 23:36:03 | 書物
タイトル:50 years of galerie 16 : 1962-2012
編集:伊藤治美、坂上しのぶ、塩田京子
デザイン:塩田京子
発行:京都 : galerie 16
発行日:2014.1
形態:471p ; 26cm
内容:
リレートーク|50 years of galerie 16
 ・1960年代:林剛・池水慶一・岩田重義・野村久之・井上道子/モデレータ:坂上しのぶ
 ・1970年代:林剛・庄司達・柏原えつとむ・植松奎二・岸田良子・北辻良央・井上道子/モデレータ:坂上しのぶ
 ・1980年代:建畠晢・北山善夫・山部泰司・中原浩大・篠原資明・井上道子/モデレータ:坂上しのぶ
 ・1990年代:太田垣實・小杉美穂子+安藤泰彦・今村源・安喜万佐子・井上道子/モデレータ:塩田京子
 ・2000年以降:太田垣實・加須屋明子・小吹隆文・日高理恵子・井上道子/モデレータ:塩田京子
展覧会記録|1962-2012
出品者名索引
あとがき

購入日:2014年4月18日
購入店:galerie 16
購入理由:
 京都の現代美術画廊・ギャラリー16の50年史。2012年に開廊50年を迎え開催したリレートーク・シンポジウムの模様と、50年分の展覧会記録を収録した大冊である。約500頁近いのに2000円というのも驚き(6月末まで)。日本の現代美術史というのは東京が中心で、関西の美術状況というのはなかなか全容がまとめられないので、現代美術史の参考資料としても必携。

memorandum 144 インディヴィジュアル

2014-04-18 23:26:22 | ことば
 「インディヴィジュアル」という言葉を、私は名詞[個人]としてより、形容詞[個々の、個人の]として使いたい。
 「個」をもち上げる今の時代のとどまるところを知らないプロパガンダは、私にはきわめて疑わしいものに思える。というのも、「個人性、個性」という言葉自体がますます利己性や自分本位の同義語となってきているからだ。資本主義社会は、「個人性、個性」、また「自由」――これらは、自己を際限なく誇大化する権利とか、ものを買い、入手し、使い果たし、消費し、陳腐化する自由とほとんど変わらぬ意味しかない――を称賛することに既得権をもつようになってきている。

スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、p.214

未読日記865 『VOCA展2014』

2014-04-17 23:52:50 | 書物
タイトル:VOCA展 2014 : 現代美術の展望――新しい平面の作家たち
別書名: VOCA 2014 : The vision of contemporary art
編集:「VOCA展」実行委員会、上野の森美術館
翻訳:スタンリー・N・アンダーソン、佐藤実
撮影:上野則宏
デザイン:重実生哉
発行:[出版地不明] : 「VOCA展」実行委員会
   [東京] : 日本美術協会・上野の森美術館
形態:121p ; 30cm
注記:会期・会場: 2014年3月15日-3月30日:上野の森美術館
   主催: 「VOCA展」実行委員会、日本美術協会・上野の森美術館
   英文併記
内容:
「VOCA展2014:開催にあたって
「VOCA展2014」協賛によせて
「選考所感」高階秀爾
「選考所感」笠原美智子
「選考所感」片岡真実
「選考所感」酒井忠康
「不思議さ、奇抜さ」建畠晢
「不透明について」本江邦夫

出品作家(推薦委員)
秋吉風人(森啓輔/ヴァンジ彫刻庭園美術館)
阿部未奈子(柳原正樹/富山県水墨美術館)
荒井理行(能勢陽子/豊田市美術館)
入谷葉子(寺浦薫/大阪府都市魅力創造局文化課)
臼井良平(川谷承子/静岡県立美術館)
大小島真木(山本丈志/秋田県立近代美術館)
大坂秩加(岡里崇/上野の森美術館)
大槻英世(平野到/埼玉県立近代美術館)
小川晴輝(ダリル・ウィー/BLOUIN ARTINFOアジア版編集長)
片山真妃(保坂健二朗/東京国立近代美術館)
狩野哲郎(西川美穂子/東京都現代美術館)
川北ゆう(山下寿水/広島県立美術館)
金光男(森山貴之/京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA)
指田菜穂子(川西弘一/高松市美術館)
佐藤香菜(大島徹也/愛知県美術館)
炭田紗季(高嶋雄一郎/岡山県立美術館)
染谷悠子(五十嵐卓/損保ジャパン東郷青児美術館)
高橋大輔(小金沢智/世田谷美術館)
多田友充(服部浩之/青森公立大学 国際芸術センター青森)
田中望(宮本武典/東北芸術工科大学)
山太郎(野中明/長崎県美術館)
友清ちさと(真武真喜子/Operation Table)
中村航(橋本梓/国立国際美術館)
西野由璃子(是枝開/神奈川県立近代美術館)
二艘木洋行(岩渕貞哉/『美術手帖』編集長)
箱嶋泰美(田中龍也/群馬県立近代美術館)
橋本聡(成相肇/東京ステーションギャラリー)
伴美里(赤松裕樹 DIC川村記念美術館)
平川恒太(木村絵理子/横浜美術館)
松嶋由香利(池上司/西宮市大谷記念美術館)
山川さやか(豊見山愛/沖縄県立博物館・美術館)
山本雄基(佐藤由美加/北海道帯広美術館)
山本萌美(山下裕二/明治学院大学) 

Recommendations
Biography

頂いた日:2014年4月17日
 上野の森美術館よりご恵贈頂いた1冊。どうもありがとうございます。
今年のVOCAは見れなかったが、カタログを見ると良くも悪くも今のアートシーンが垣間見られ勉強になります。今年は、出品作家だけでなく、推薦者にも時代の変化を感じた。それは、新聞社記者や美術評論家がいなかったことである。世は学芸員の時代であろうが、推薦作家の展覧会が美術館で開催されることは稀だから後味が苦い。

memorandum 143 面白い

2014-04-15 23:42:25 | ことば
 面白いとは何だろう。おおかたは、以前は美しい(あるいは、良い)とは思われてはこなかったものごとを指して使われる。ニーチェの指摘どおり、病人は面白い。悪人も面白い。何かが面白いという場合は古い評価への挑戦という含みがある。この種の発言の裏には、不遜ないしはせめて独創的だとみなされたいという思いがある。「面白い」は、調和ではなく衝突を好む心情の後ろ盾となっており、「面白い」の反対語は「退屈」である。
スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、pp.31-32





いまは「面白い」ものは多いが、「美しい」ものは少ないように思う。

未読日記864 『夜の木』

2014-04-14 23:00:26 | 書物
タイトル:夜の木
タイトル別名:The night life of trees
画家:バッジュ・シャーム, ドゥルガー・バーイー, ラーム・シン・ウルヴェーティ
訳者:青木恵都
日本語デザイン&レイアウト:セキユリヲ
印刷・製本:AMMスクリーンズ(チェンナイ)
発行:武蔵野 : タムラ堂
発行日:2014.2第3刷(2012.7第1刷発行)
形態:1冊(ページ付なし) ; 34cm
注記:本書「The night life of trees」はChennai : Tara Books , 2006出版の日本語版
   numbered edition 0955 of 1000
   「『夜の木』についての覚え書き」田村実
   <タムラ堂だより>「夜の木」通信②
内容:
闇夜に光る木
客人たちが帰る
木の創造
創造主のすみか
ドゥーマルの木
蛇の女神
蚕のすむ木
孔雀
果実の誕生
リスの夢
うたの木
蛇と大地
永遠の美しい愛
飲みすぎにご用心
センバルの木に放たれた矢
からみ合う木
蛇の頭の木
まもってくれる木
12本の角のある木
ゴンドの芸術

頂いた日:2014年4月13日
 パートナーより頂いた1冊。どうもありがとうございます。
 本書は、インドのターラー・ブックスが発行する絵本The Night Life of Trees の日本語版。中央インドのゴンド民族出身のアーティスト3人による、樹木をめぐる神話的な世界が、黒い和紙に美しい色彩で描かれている。
 本書の特徴は、すべてがハンドメイドである点だろう。解説によれば「古布を漉いた手漉き紙にシルクスクリーン印刷、そして手製本」をインドのチェンナイの工房で一冊ずつ丁寧に作られているという。初めて聞いたとき、耳を疑った。すべてインドで手作業している本が日本で低価格で販売、流通することができるのかと思ったからである。いま目の前で手にしている本が、人の手で作られて、私の手の上にあるという重さと暖かさ、そして人の手を経て私のもとに届いたことがとてもうれしい。
 シルクスクリーンのインクの盛り上り、手漉き和紙の手触り、セキユリヲによる日本語の美しい文字組みなど、本を見る、触れる魅力に溢れたアートブックのような絵本である。毎回、表紙が異なるのも驚きだが、増刷の度に品切れ・絶版で、次回の増刷は2015年の予定。お楽しみに。

memorandum 142 美

2014-04-13 23:03:38 | ことば
美(こういう語法を使うとしたらの話だが)は深いもので、表層的ではない。ときとして、明白ではなく、むしろ隠れている。攪乱ではなく、慰めをもたらす。自然における美ははかないが、芸術における美は破壊されない。規範的に精神的高揚感をもたらす種類の美は持続する。
スーザン・ソンタグ『同じ時のなかで』木幡和枝訳、NTT出版、2009年、p.25


未読日記863 『REAR 31』

2014-04-12 23:06:03 | 書物
タイトル:REAR : 芸術批評誌リア : 芸術/批評/ドキュメント
卷号:31
編集・制作:馬場駿吉、高橋綾子、増田千恵、楠本亜紀、惣城友美、岩崎愛
デザイン:夫馬孝
発行:名古屋 : リア制作室
発行日:2014.2
形態:172p ; 21cm
内容:
◯特集「震災とミュージアム」
・〈シンポジウム採録〉:「大震災と文化財 場所、記憶、そして…」山内宏泰/村田眞宏/大島徹也/清家三智
・今をよく見るために―「種差―よみがえれ 浜の記憶」展を終えて― 高橋しげみ
・「アートのチカラ、いわてのタカラ」3.11以後 私たちがしてきたこと 大野正勝
・せんだいメディアテークと震災 佐藤泰
・〈レポート〉:「わすれン!」―市民と寄り添うメディエーターの役割― 高橋綾子
・震災とミュージアム~福島県立美術館の場合~ 伊藤匡
・3.11と美術館~福島県立美術館、郡山市立美術館の場合 佐治ゆかり
・〈インタビュー〉:河口龍夫  芸術家の矜持―自身に課した自由
・山口啓介 hakobuneプロジェクト 《歩く方舟》―いわきへ。瀬戸内より― 植田玲子
・〈インタビュー〉:山口啓介 カナリアの沈黙と役割
・〈メール・インタビュー〉:竹久侑 抗いようのない「忘却」に備えて
・あいちトリエンナーレ2013:震災という主題 五十嵐太郎
・災害情報の中の「現実」―一九二三年の関東大震災の事例から 新田太郎
・〈インタビュー〉:畠山直哉 世界とアート―伸び縮みする境界

◯批評
・追悼:村岡三郎 蕎麦を食う人 遠藤利克
・追悼:村岡三郎 千葉成夫
・追悼:村岡三郎 村岡三郎と私 滝顕治
・追悼:村岡三郎 「鉄の墳墓」から「鉄の墓」まで 真武真喜子
・「景」を生み出す力 大竹伸朗試論 麻生恵子
・半泥子の秀作を手がかりに―「茶碗」を旧弊な桃山の呪縛から解放 若手も視野に入れ 井上隆生
・現代臨書考―日本から探る書の過去・未来― 栗本高行
・「苦」から「空」への往還 随想:御空羅供の晩餐―纐纈敏郎とノロ燐の競演 高橋綾子
・開放と立ち塞がれ・フレーム内の葛藤―「歿後20年 中谷泰展」 天野一夫

◯レビュー
・ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展 宮田有香
・ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展 平芳幸浩
・『三沢厚彦 ANIMALS 2013 in 三重』『三沢厚彦 ANIMALS in HAMAMATSU』 土生和彦
・反重力―浮遊|時空旅行|パラレル・ワールド 西川美穂子
・動物のからだに隠された植物『内臓感覚 遠クテ近イ生ノ声』 河合宏一
・ユーモアのそこ『ユーモアと飛躍 ―そこにふれる―』 小林公
・フランシス・ベーコン展 牧野駿吾
・愛岐トンネル群アートプロジェクト2013 荒野ノヒカリ 都筑正敏
・ドールズ・コレクション 時をかける等身大人形―細工人形・菊人形からマネキン・フィギュア・ロボットまで― 副田一穂
・記憶のモニュメント その軌跡の展開 石黒鏘二展 鈴木俊晴
・泥象 鈴木治の世界~「使う陶」から「観る陶」、そして「詠む陶」へ~ 堀尾美紀
・クール・ガイア―ベケットの路地裏から― 海上宏美
・至適の絵画『木全佑輔展』 三輪祐衣子
・中村としろう展 石崎勝基
・主張を抑制した薄明の女性像『増田恵助“water and colors”』 日沖隆
・行為∞思考II オワリノイマ 佐藤雄二
・ふるかはひでたか個展「岡崎の旅」 田中由紀子
・結合が産む絵画『櫻井伸也展 My Favorite Colors』 櫻井拓
・混沌との出会い『山本高之展 Facing the Unknown』 藪前知子
・川井昭夫展 和歌由花
・空間と色『桑山忠明 Titanium-Art as Space, Space as Art』 清水裕二
・平川祐樹展 眠りにつくまで 野中祐美子
・瑞々しい好奇心が弾けるアニマル・ポップの世界『ジェコ・シオンポ「Terima Kos(Room Exit)」』 亀田恵子
・コレなんだ?佐藤慶次郎のつくった不思議なモノたち 淵田雄
・尹熙倉展「一抹:a touch of powder」 加須屋明子
・楢橋朝子展『堀川―Horikawa Horizon』 楠本亜紀
・光と影の旅人 藤松博展―戦後美術の一断面― 馬場駿吉
・栗本百合子 異空間プロジェクト「記憶の遊園地」 増田千恵

◯トピックス
◯バックナンバー

購入日:2014年4月12日
購入店:GALLERY CAPTION
購入理由:
 岐阜のギャラリーめぐりで見かけて購入。重たい特集ではあるが、美術館の末席で働いている身としては、どの記事も現場の生々しいレポートとして興味深いものばかりである。結論がないから現場で問い、考えているし、これからも悩み続けるんだろう。なかでも畠山直哉氏のインタビューは、目の覚めるような喝を与えてくれた。壮絶な現場から生み出された強靭な思考と行動力にはただただ敬意を感じる。

【ご案内】『CLUSTER』

2014-04-11 23:39:12 | 書物
タイトル:CLUSTER 友枝望 : アーティスト・サポート事業enoco[study?]#1
編集:高坂玲子
テキスト:平田剛志
翻訳:Linda Havenstein
英語編集:Mike Kitcher
写真:友枝望
形態:[14]p : 21cm
注記:This catalogue is published on the occation of the exhibition
   "CLUSTER - Nozomi Tomoeda"
   as an artist support undertaking_enoco[study?]#1
   05th - 19th October 2013
   大阪府立江之子島文化芸術創造センター
   部数:100
内容:
図版
「置物の日常」平田剛志
作家略歴

頂いた日:2014年4月10日
 作家の方よりご恵贈頂きました。どうもありがとうございます。
 昨年に大阪府立江之子島文化芸術創造センターにて行われた「アーティスト・サポート事業enoco[study?]」に審査員として参加させて頂いた後、カタログを作成するとのことでテキストを書かせて頂きました。私にとっては、後の宮本博史展へと続く、博物館的展示を考察することの始まりとなりました。友枝氏の作品は、審査で初めて拝見しました。ファイルを見て、コミカル、シニカルなテイストがありつつ、アートのためのアートになっていない視点がとても印象深いものでした。今後も注目していきたいと思います。なお、こちらのミスで誤字脱字がいくつかありますが、ご了承ください。