A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記870 『東京昭和十一年』

2014-04-28 23:48:32 | 書物
タイトル:東京昭和十一年―桑原甲子雄写真集 (1974年)
著者:桑原甲子雄
ブックデザイン:平野甲賀
発行:東京 : 晶文社
発行日:1974.4
形態:255p(おもに図) ; 27cm
内容:
雪の2.26、真夏の阿部定事件に彩られた昭和11年と、
この年を中心とする1930年代の東京下町――
「私の写真は、記録とか報道とかいったよそゆきの製品ではなく、
私と対象とのあいだの親密な出会いと交情による、
ごく私的な記念写真だと思っている。」

池波正太郎
この写真を見ていると、桑原さんが私を撮ったような気がする。下町の人びとは、どのような貧乏暮しをしていても、それなりのたのしみがあって、いつも活気をうしなわなかった。町々の道はすべて子供たちの遊び場であり、大人たちの社交場だった。

佐多稲子
古い東京の写真はまずなつかしい。写っている女の姿に自分の若い日の姿が重なる。しかしこのころは、一般にいわゆる暗い時代であった。写真の市電にぶらさがる男たちの表情に明るさはない。女たちのつつましさも何かを押さえている。時局のゆくえを自分の上において、その不安を黙っているしかない表情にみえてしまう。

写真を読む わたしの東京
私の東京 芥川比呂志
浅草六区 池波正太郎
三館共通の写真がでてきた 植草甚一
大勝館 北村太郎
雪の六区 北村太郎
昭和の一銭蒸気 小林信彦
エゴイスティック・カメラ 鈴木志郎康
一本胴 谷川俊太郎
路傍の商い 小沢昭一
市電にぶらさがる人たちの背景 佐多稲子
時間潰し 佐藤信
夢を見る前 佐藤信
鏡の中の三〇年代を愁い顔して振り返るな 中平卓馬
時に撮られた子供 谷川俊太郎
下町の少年 池波正太郎

桑原甲子雄の人と仕事
キネさん・桑原甲子雄 濱谷浩
孤独な人間の後ろ姿 多木浩二
現像しつつ興奮した 荒木経惟
おぞましい記憶 桑原甲子雄

索引
あとがき

購入日:2014年4月26日
購入店:Amazon.co.jp
購入理由:
 家族の記念写真が収録されていると知り、家族写真の参考文献として購入。
 本書を知ったのは、IMA vol.1「特集:家族の肖像」だった。家族写真の比重は少ないが、当時の家族像を知る上で興味深い。
 それにしてもページをめくって驚くのが、昭和11(1936)年の日本がいまとまったく違うことである。人も街もこんなに変わる(変わってしまう)ことに途方に暮れる。