A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

memorandum 226 For The Good Times

2016-01-05 23:23:01 | ことば
それから、日が暮れてくるだろう。
空が昏くなって、道行く人の
影は濃くなるだろう。果物屋の
店先の果物たちは輝きをますだろう。
果物のように
つややかな時間を、
つまらないものにはするな。
自分をいじりすぎるな。
よい焼酎みたいに、心は
すっきりと、透明なのがいい。
大きくて、頑丈な食卓が、好きだ。
よい食卓の上には、
よい時間が載っている。
おいしい食事とは、
おいしい時間のことだ。
食卓を共にするとは、
時間を共にするということだ。
いちばん大きな、空の話をしよう。
どこかで、この大きな空は、地に触れる。
その場所の名を「終わり」という。
アフリカの砂漠の民の、伝説だ。
「終わり」がわたしたちの
世界の一日が、明日はじまるところ。


長田弘「人はかつて樹だった」『長田弘全詩集』みすず書房、2015年、477頁。

長田さんはかつて詩集『食卓一期一会』のあとがきで「かんがえてみれば、人生はつまるところ、誰と食卓を共にするかということではないだろうか。」と述べていたが、ほんとうにそうだと思う。
おいしい時間を過ごしたい。