A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記693 『飛騨の円空』

2013-02-10 23:19:03 | 書物
タイトル:飛騨の円空 : 千光寺とその周辺の足跡 : 東京国立博物館一四〇周年 : 特別展
別書名:Enku's Buddhas: sculptures from Senkoji Temple and the Hida region
編集:東京国立博物館読売新聞社NHKNHKプロモーション
デザイン・制作:D_CODE
印刷:凸版印刷
発行:読売新聞社、NHK、NHKプロモーション
定価:1,800円
形態:141, viip : 挿図, 地図 ; 31cm
注記:展覧会カタログ
   会期・会場: 2013年1月12日-4月7日:東京国立博物館本館特別5室
   主催: 東京国立博物館, 千光寺, 読売新聞社 [ほか]
   一部英語テキストあり
   折り込図あり
   参考文献: p30
   円空年表: p32-33
   出品目録: p140-141
   List of works: pv-vii
内容:
「祈念(いのり)~木っ端に込めた鎮魂と救済~」大下大圓
「飛騨の円空――その活動の一端に関する試論」浅見龍介
図版
円空年表
円空仏めぐりマップ
「ひだびとと円空――飛騨に伝わる円空伝説・逸話から――」大石崇史
作品解説
出品目録
List of Works

購入日:2013年2月9日
購入店:東京国立博物館
購入理由:
 2006年に東博で開催された「仏像 一木にこめられた祈り」展は彫刻好きとしては最高の展覧会だった。その仏像展の最後に展示されたのが、円空、木喰の仏像だ。奈良・平安時代初期からの仏像を通史的に見ていったとき、私は円空と木喰には「近代」が感じられてあまりいいと思わなかった。鎌倉期の神々しさはなく、前衛的な仏像だと感じたのだ。
 だが、今回あらためて円空をまとまって見て、その思いは考え直した。円空の仏像は荒彫りで、かつての仏像と比較すれば清楚な造形は見いだせない。だが、円空のすごいところは、木の年輪や経年変化さえも考慮に入れて、制作している点である。作品を見ているうちに仏像を見ているのか、木を見ているのかわからなくなってくる。なかには抽象彫刻に見えるものさえあり、仏像のメタモルフォースかと思った。もとは立ち木の仁王像《金剛力士(仁王)像 吽形》などは、木の乾燥、ひび割れが呪術的な相貌を帯びて壮観だった。
 それにしても、円空仏の顔は鉈で切り込みを入れただけにもかかわらず、表情が豊かだった。いまの時代こんな表情を作れる人はもういない。