A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

Recording Words 095 技は心と一緒

2011-08-08 23:41:16 | ことば
 親方のいうことにいちいち反対しているうちは、親方のいうことがわかりませんのや。一度、生まれたままの素直な気持ちにならんと、他人のいうことは理解できませんのや。素直で、自然であれば正直に移っていきますな。そのなかから道が見つかるんです。こないなこと言葉で説明してもややこしいだけですが、こんな意味のことを、実際、弟子に話しますのや。
 弟子も始めは何にもわかりません。そのほうがよろしい。何にも知らんということを自分でわからなならん。本を読んで予備知識を持って、こんなもんやろと思ってもろても、そうはいかんのです。頭に記憶はあっても、何にもしてこなかったその子の手には何の記憶もありませんのや。それを身につけにくるのが弟子です。技は技だけで身につくもんやないんです。技は心と一緒に進歩していくんです。一体ですな。

(西岡常一「木のいのち木のこころ〈天〉」、西岡常一・小川三夫・塩野米松『木のいのち木のこころ―天・地・人 (新潮文庫)』新潮社、2005年、pp.75-76)

 「技は心と一緒」。いまは、技だけ教えようとしている風潮がないだろうか。そして、素直さは才能ではないかと思う今日この頃である。みな我が強い昨今、素直になるのは難しい気がする(自分含めて)。
 以前、某ギャラリーでギャラリストの方と展示中の作家さんと雑談していたら、ギャラリーの方が、美術というのは、作品だけ進歩するということはなくて、自分も進歩しないと作品はよくならない、という旨のことを仰った。今回の言葉は、その発言に通じるものがある。