A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 011

2007-09-05 22:44:08 | ことば
何も知らず、何も教えず、何も欲せず、何も感じず、眠ること、さらに眠ること、かくのごときが今日、私の唯一の願いなのだ。忌まわしくも嫌悪すべき、だが誠実なる願い。


(p.404 「ボードレール全詩集Ⅰ」シャルル・ボードレール 阿部良雄訳、ちくま文庫、1998年)

未読日記92 「美術論集」

2007-09-05 22:39:17 | 書物
タイトル:美術論集 アルチンボルドからポップ・アートまで
原題:L'OBVIE ET L'OBTUS
著者:ロラン・バルト 沢崎浩平訳
カバー:アルチンボルド「春」1573年
表紙:サイ・トゥオンブリ「ナポリ湾」1961年
発行:みすず書房
発行日:1999年6月4日(初版1986年7月10日)
内容:
「意味形成性の場としての眼差しは共感覚をもたらす。つまり、(心理的)諸感覚の区別を曖昧にする・・・したがって、すべての感覚が≪見る≫ことができ、逆に、眼差しは、匂いを嗅ぐ、音を聞く、物に触れる等々のことができる。ゲーテ、≪手は見ようと欲し、眼は愛撫しようとする≫」(バルト)
 本書は、バルトによって書かれた≪美術論≫の初めての集成である。『第三の意味』所収の写真・映画・演劇・音楽論と『明るい部屋』に本書を併せると、バルトの主要な芸術論がすべて邦訳されたことになり、つねに現代批評の先端を走ってきた彼の軌跡をたどることができる。また、これらのエッセー群は1969年から80年にかけて執筆されたが、これはバルトの思想展開において、彼の関心が記号学からテクスト、快楽、身体へと移行していった、きわめて重要な時期にあたっている。
 バルトは書く人であると同時に、みずから演奏する人=描く人でもあった。この経験は本書において、とりわけサイ・トゥオンブリやレキショを語る場合の、生き生きとした自在な眼差しに、またエレテやアルチンボルドを考察する場合には、刺戟的な分析となって遺憾なく発揮されている。
(本書カバー裏より)

購入日:2007年8月26日
購入店:幻游社(下北沢)
購入理由:
数ヶ月前、美術批評家である林道郎氏の『絵画は二度死ぬ、あるいは死なない ①Cy Twombly』(ART TRACE)を読み、その際に参考文献として挙げられていたのが本書だった。林氏の論考がバルトのサイ・トゥオンブリ論に則って進められていくため、いつか読みたいと思っていた。その思いが通じたのか、偶然下北沢の古本屋で見つけ購入。フーコー、ラカン、ドゥルーズなどがひしめく良書揃いの古本屋であった。

未読日記91 「倫理という力」

2007-09-05 22:15:24 | 書物
タイトル:倫理という力
著者:前田英樹
カバー・イラスト:坂野公一
装幀:杉浦康平+佐藤篤司
発行:講談社/講談社現代新書1544
発行日:2001年3月20日
内容:
なぜ人を殺してはいけないのかわからない子供があちこちにいる今、真に大切なことは何か。人間が本来持っている「倫理の原液」をとり戻すための根源的な提案。
(本書表紙より)

してはいけないことがある-もう、だいぶ以前のことになったが、なぜ人を殺してはいけないの? という中学生の質問を、ある文芸雑誌が大特集で取り上げていた。雑誌特集には、予想されるあらゆる意見が出揃っていた。もちろん倫理学の公式を持ち出すものがあった。人はどんどん殺してよいという意見もあった。質問自体の論理的矛盾を突くものもあった。自分が殺されたくないなら殺すなという意見もあった。それこそ文学の大問題で、簡単には答えられぬという意見もあった。何やら意味不明の回答もいろいろあった。私が呆れたのは、ここに並んだ意見の例外なしの理屈っぽさである。泳ぎ自慢がそれぞれ得意の型を披露してくれる。みな自分は個性的で鋭利なつもりだが、理屈を言い募ることに個性などはない。はっきりしていることは、理屈は誰も救われない、決して誰をも賢明にしないということだ。-本書より
(カバー見返し裏より)

購入日:2007年8月26日
購入店:DORAMA 下北沢パート6店
購入理由:
現在、東京都写真美術館で開催中の<鈴木理策 熊野 雪 桜>展の関連企画として開催される鈴木理策×前田英樹トークショーの予習として購入。前田英樹氏は中村英樹氏とよく間違えるが、前から著作を読みたいと思っていた。今回、このタイミングで読むしかないと思い、その著作を古本屋で調べていたのだが、前田氏唯一の新書であるこの本を幸いにも安く手に入れることができた。
<倫理>をテーマとした本書は、新書にしては扱いにくい重いテーマだが、どのように捌くのか興味深い。目次を見ると「理屈は人を救わない」というテーゼが目をひいた。