タイトル:倫理という力
著者:前田英樹
カバー・イラスト:坂野公一
装幀:杉浦康平+佐藤篤司
発行:講談社/講談社現代新書1544
発行日:2001年3月20日
内容:
なぜ人を殺してはいけないのかわからない子供があちこちにいる今、真に大切なことは何か。人間が本来持っている「倫理の原液」をとり戻すための根源的な提案。
(本書表紙より)
してはいけないことがある-もう、だいぶ以前のことになったが、なぜ人を殺してはいけないの? という中学生の質問を、ある文芸雑誌が大特集で取り上げていた。雑誌特集には、予想されるあらゆる意見が出揃っていた。もちろん倫理学の公式を持ち出すものがあった。人はどんどん殺してよいという意見もあった。質問自体の論理的矛盾を突くものもあった。自分が殺されたくないなら殺すなという意見もあった。それこそ文学の大問題で、簡単には答えられぬという意見もあった。何やら意味不明の回答もいろいろあった。私が呆れたのは、ここに並んだ意見の例外なしの理屈っぽさである。泳ぎ自慢がそれぞれ得意の型を披露してくれる。みな自分は個性的で鋭利なつもりだが、理屈を言い募ることに個性などはない。はっきりしていることは、理屈は誰も救われない、決して誰をも賢明にしないということだ。-本書より
(カバー見返し裏より)
購入日:2007年8月26日
購入店:
DORAMA 下北沢パート6店
購入理由:
現在、
東京都写真美術館で開催中の<鈴木理策 熊野 雪 桜>展の関連企画として開催される鈴木理策×前田英樹トークショーの予習として購入。前田英樹氏は中村英樹氏とよく間違えるが、前から著作を読みたいと思っていた。今回、このタイミングで読むしかないと思い、その著作を古本屋で調べていたのだが、前田氏唯一の新書であるこの本を幸いにも安く手に入れることができた。
<倫理>をテーマとした本書は、新書にしては扱いにくい重いテーマだが、どのように捌くのか興味深い。目次を見ると「理屈は人を救わない」というテーゼが目をひいた。