A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

TOUCHING WORD 001

2007-06-27 23:08:54 | ことば


人はみな、それぞれの思想で作られた人間だけれど、思想の数の方が人間よりもはるかに少ないので、同一の思想を持った人間はみな似てしまうのですね。思想にはなんら肉体的なものが含まれてはいないから、一つの思想を持った人間を他の人間たちがただ肉体的にとりまいていても、彼らはいささかもその思想を変えることにならないのです。(p.212)

「それで一つの思想はね」と私はつづけた、「人間の利害にかかわりようのないものだし、その恩恵にあずかることもできないから、思想を持った人間は、利害に影響されないのですよ」(p.214)

そんなわけで、そこは戦場になったんだし、これからもなるだろう。どんな部屋でも画家のアトリエになるわけじゃないし、どんな場所も戦場になるわけじゃないんだ。あらかじめ定められた土地があるんだね。(p.224)

「失われた時を求めて5 第三篇 ゲルマントの方へ Ⅰ」
マルセル・プルースト 鈴木道彦訳 集英社文庫2006

未読日記45 「ジヴェルニーを訪ねて」

2007-06-27 22:56:18 | 書物
タイトル:モネ ジヴェルニーを訪ねて
著者:フランソワーズ・ベイル
デザイン・レイアウト:カリーン・バルー
出版社:artlys
発行日:2004年
内容:
「ジヴェルニーでのクロード・モネを見ずして、彼の気質、嗜好、人柄、つまり彼自身を知ることはできない。[中略]この家も、この庭園も1つの作品であり、モネはこれを創りだし、完成させるのに生涯をかけた。」(ギュスターヴ・ジェフロワ)(本書裏表紙コメントより)

贈呈日:2007年6月27日
コメント:
フランスからのお土産としていただいたもの。フランスのジヴェルニーにあるモネの庭で販売されているものだとか。日本語版を出版しているところが、日本人観光客の多さを物語っている。
中身は、主にジヴェルニーの庭を中心に、写真を豊富に使い紹介している。いわゆるジヴェルニーのガイドブックといった体裁だ。なぜか、本文の文字がところどころ消えかかっているのが不思議だ。インクが乗りきっていないのか(?)。
残念ながら私はまだフランスの土を踏んだことがないのだが、とても魅力的な庭だと思う。

未読日記44 「シュヴァルの夢」

2007-06-27 22:37:20 | 書物
タイトル:シュヴァルの夢
著者:大竹伸朗
出版社:UCA : Uwajima Contemporary Art
発行日:2007年
内容:
1994年に制作された私家版「夕刊宇和島日日2月号」を底本に、「大竹伸朗全景1955-2006」展覧会カタログの予約特典として作り替えた小冊子。
シュヴァルとは、フランス人の郵便配達夫で、33年間に渡って彼の理想とする石の宮殿を作り上げた人物。いわゆるアウトサイダーアート系のエキセントリックな「普通」の人。
そのシュヴァルを敬愛する大竹伸朗によるコラージュアートブック。

配達日:2007年6月24日
購入理由:
内容にも記したように本書は、「大竹伸朗全景1955-2006」展カタログの予約特典の冊子。カタログは展覧会終了後に完成・販売され、会期中に予約した人には郵送される形だった。だが、カタログを予約はしたものの、遅れに遅れていまだ届かない。前代未聞の発行延期続きで、お詫び文とともに先に予約特典の冊子だけが送られてきた、というわけなのだ。これを見ると、早くカタログを見たくなるのだが、遅れた分だけ未曾有のカタログが来るのかしらんと期待は膨らむばかり。このまま引っ張り続けて、パーツごとに送られてきて、1年通して読者が1冊の本に仕立てあげたりしたらおもしろいな、などと妄想を膨らませている。

未読日記43 「ブロークン・ホワイト」

2007-06-27 00:04:22 | 書物
タイトル:マルレーネ・デュマス ブロークン・ホワイト
監修:東京都現代美術館、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
ブックデザイン:折原滋
出版社:淡交社
発行日:2007年5月1日
内容:
マルレーネ・デュマスは、1953年に南アフリカ共和国のケープタウンに生まれ、現在アムステルダムを拠点に活動する女性画家。マス・メディアに流通する写真や映像を題材に、生命のきらめきを繊細かつ鮮烈なタッチで描いた人物像で知られる。その透明感あふれる独特の描写と、社会的テーマで絵画の新境地を提示し、インスタレーションや映像が台頭する現代美術シーンにあって、今もっとも熱い視線を浴びている。
 日本で初めての大規模な個展「マルレーネ・デュマス:ブロークン・ホワイト」の公式カタログとして刊行された本書は、初期作品から、代表的なドローイング・シリーズをふくむ主要作品、最新作の≪ブロークン・ホワイト≫まで、約80点の絵画を収録。自作に寄せた詩やテキスト、インタビューなど、珠玉の言葉とともに、デュマス芸術の全貌を伝える。(本書カバー見返し解説より)

購入日:2007年6月23日
購入店:東京都現代美術館ミュージアムショップ
購入理由:
昨年行われた<アフリカ・リミックス展>(森美術館)、<エッセンシャル・ペインティング展>(国立国際美術館)への出品など、近年見る機会の多かったデュマスの待望の大規模個展。ポップ(マイクロポップ?)な日本の現代絵画シーンに較べると、そのダークでエロスとタナトスが同居するデュマスの絵画は稀有な存在だ。

展覧会場に入ったとき、すぐに荒木経惟の写真を思い浮かべた。それは、新作≪ブロークン・ホワイト≫において、荒木経惟の写真作品からのインスパイア、引用であることからも、その影響がうかがえる。ポップなものとしてではなく、孤独で刹那的なエロス。

ヴァイオレンス。暴力の存在。身体に受ける暴力だけでなく、不穏な空気としての暴力。視線の暴力。あるいは「怒り」だろうか。どのように形容したら彼女の作品から受ける「暴力」を言語化できるのかまだわからないのだが、その作品からは「暴力」という名の「力」が充満している。その日の夜、たまたま久しくなかった怒りに直面する「暴力」を経験をしたのだが、その時感じた震えにデュマスの作品は似ている。
この先何度この「怒り」を感じればいいのだろうか。
行き場のない「怒り」は、まだ消化していない。しかし、この「怒り」「暴力」はなくならない。

「エロス」であり「死」であり「暴力」「怒り」という言葉を並べると、その作品はひどくネガティブなものに感じられるが、そうではない。それは、描かれた人物の眼を見ればわかる。
そこには、「恐れ」という優しさ、弱さが感じられるからだ。

なお、特筆すべき点として展示空間のすばらしさを加えておきたい。
このような絵画の展示空間に自分がいるということが、こんなにも心地よい緊張を与えてくれるとは。