オセンタルカの太陽帝国

私的設定では遠州地方はだらハッパ文化圏
信州がドラゴンパスで
柏崎辺りが聖ファラオの国と思ってます

『王は踊る』。

2007年07月11日 22時01分12秒 | 映画

フランスオペラと太陽王ルイつながりで。2000年のフランス映画。
見てて後味は悪いんだけど、ちょっと印象に残る作品です。

主人公は「フランスオペラを作った」人物、ジャン・バティスト・リュリ(1632~87)。
なにが凄いって、力強い音楽です。(ヘンデルとは性格が正反対ですけど)。リュリはCDはあんまり無くて、『町人貴族』かオムニバスぐらいしか持ってないのですが、正直、CDで聴く限りではあんまり面白くない。耳に残らないし印象にも残らないんです。それがこの映画で聴いてみるとまあ! すべての旋律が耳に良く馴染むし、胸に鋭く斬り込んでくる。それだけで「すごい映画だ」と思いました。

主役はリュリ。
、、、、というよりも「太陽王の成長と友にフランスの歴史は造られた」という物語だったです。幼少時のルイ14世は無邪気でダンスと音楽とお笑いが大好きだったのに、専制を進めていくに従ってどんどん複雑な性格になっていく。リュリは太陽王のことが大好きで(恋愛感情に近い倒錯的な愛)、王になんとか気に入られようと工夫を重ねるのですが、最後は王に捨てられてしまうのです。そのリュリという人が、変態で独善的で自堕落であまり共感できず、むしろ少年王ルイの成長物語として楽しみたい気がしました。

リュリの指揮姿が一番かっこよかった。この時代はまだ指揮棒なんてものがありませんので、いろんなものを使って指揮をするのです。

14歳のときのルイ王。かわいい。
と言いたい所ですが、5歳で即位したルイ王はすでに名君としてのキレを見せ始めていて、この歳ですでにフロンドの乱(宗教的対立がきっかけで起こったとてもややこしい紛争)を見事に解決したりしていました。

 

14歳のときの踊り姿。かわいい。
しかしさすがに王者。力強いです(まだこの時はリュリは演奏できる身分ではないみたい)。のちに仲違いをすることになる母后も、感涙しながら「あのかわいい子がまぁ!」とか言っています。母にとっては王者もかわいい子なんですね。隣りに座っているのが天下の大宰相マザラン。一瞬だけの登場です。
しかし、王はどうしてダンスなんかに興味を持ったんでしょうね。次の6年後のシーンで母は王に「アンタは狩りとダンスとギターばかりが得意で、政治なんてできるわけがないじゃないの!」と言われていますが(ギターも得意だったのか…)、「母に疎まれる淋しさが高じて」とか「ダンスをやっているときだけ世界の主人公になれるから」とか「全ての実権を母に奪われていたから、ダンスにのめり込んだ」とか「ダンスが一番集中感を高められる」とかとか、いろんな解釈が可能であります。「なんで王はいつも踊ってるの?」というこちらの感想をよそに、王はいろんな場面で力強く踊り続け、そして寵愛されるリュリはどんどん調子に乗っていきます。

 

23歳となったルイ14世。マザランが死んだので摂政だった母に反旗を翻します。とはここでも、リュリの音楽と、同時期に活躍した劇作家モリエールが効果的に利用されます。モリエールは古い文化と聖職者を笑い物にする劇を作り、リュリは力強く王に舞わせる事で、母后と聖職者たちに古い時代の終焉を告げるのです。


<母后アンヌ・ドートリッシュ。いい役者さんですね。この女性が三銃士の王妃アンヌだなんて。時代の流れが怖い。母は息子がかわいくてたまらないのに、為政者として育ってもらわないとならないので厳しいことしか言わない>


<一番力強く踊っていたころの太陽王。要するに幼い頃は母によってすべてが押さえられていたから踊るしかできなかったのだけど、この頃はリュリの音楽と踊りが王に自信を与えた。踊りながら「ハアッ!」と何度も叫ぶのがかっこいい>

母からすべてを奪って王は新政を開始したのに、母はまだことあるごとにルイ王のやることに口を出そうとします。確かに若い王であるルイのやることは無理をゴリ押しで(ヴェルサイユの建造とか)、派手すぎる。しかしこの頃のリュリは、大王の片腕として大王の理想を芸術的なものへと押し上げる為に、音楽とダンスを通じて大王と見事な融合を果たします。この頃がリュリの一番幸せだった頃で、リュリとモリエールの興奮的な芸術は母(=フランスの古い体制)と対置するものであり、国王はリュリの音楽を通して戦場を思い描き、戦闘の指揮のすべを学ぶことができた。(←自分でも何を言っているかわかりませんが、この場面がこの映画で一番素晴らしい部分ですよね)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« きょう麁鹿火で(BlogPet) | トップ | コレルリ作曲の変奏曲『ラ・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

映画」カテゴリの最新記事