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ヴェルディ作曲『諸国民の讃歌』。

2015年06月02日 19時55分19秒 |   歴史音楽の部屋


だいぶ前に(8年ぐらい前です)「ヴェルディの“諸国民の讃歌”の中のイタリア国歌の部分が好きだ」と書いたことがあって、でも「出回っているトスカニーニのyoutubeの動画では諸国民の中のソ連だけ意図的に省略されている」と書いたのですが、がんばって探したらありましたよ、ソ連入りのが。

(※ヴェルディは1862年のロンドン万博に際して英・仏・伊の各国歌を組み合わせた『諸国民の讃歌』という曲を書きました。大戦末期にアメリカでこの曲を演奏したアルトゥーロ・トスカニーニは、「ナチス憎し」のあまり、勝手に末尾に当時のソ連国歌のインターナショナル歌「立て飢えたる者よ」と米国国歌「星条旗よ永遠なれ」を付け加えた)


インターナショナルから米に移り変わる箇所がやっぱり気持ちいいよねと感じてしまうのは、わたくしが根っからの共産主義者であるから。競争主義では人は幸せにはならないよ。共産主義とは言い換えると「進化した独裁主義」なんですけどね、私は進化したナポレオンや進化したマリア・テレジアや進化したカエサルに支配される世を見てみたい。
この動画を観ようとすると「諸国民の讃歌って30分もある曲だったっけ?」とびびってしまいます。でもそれは讃歌の前に運命の力序曲が演奏されているからで、実際に諸国民の讃歌が開始するのは【12:35】のところから。「栄光あれ(gloria!)栄光あれ(gloria!)」のあとにインターナショナル歌の開始するのは【25:22】、インターナショナル歌からメリケン歌に移り変わるのは【26:36】です。なんか政治的な意図が多分に感じられる動画ですけど、トスカニーニかっこいいですよね。テノールを歌っているのはジャン・ピアースというこれまた歴史的な歌い手ですよ。(※ブリテンと親しかったピーター・ピアーズとは別人です)

トスカニーニは1943年から1944年の間に3回この『諸国民の讃歌』を録音しているのですけど(独唱者はいずれもピアース)、この動画は1944年5月の物で、私の持ってるCDは1943年12月のものですから、あとの1回にもソ連が含まれていた可能性は高いですよね。そういう歴史的録音からわざとソ連だけ省いてしまうことに、なんというか人間というもののさもしさとを愛おしさを感じるものです。(そんなこと言ったら“ソ連”という単語を知らなかったヴェルディの曲に“インターナショナル”という概念を加えてしまうトスカニーニにもですけど)


インターナショナル(「国際的になろう」の意)とはこういうのです。

北鮮版。


日本語版。


決してロシア人が作った歌ではなくて、1871年のパリ・コミューンの蜂起のときにフランス人が作った歌詞に、17年後にベルギー人が曲を付けたんですよ。


で、それに反する地位の英国国歌とはこういうの。


私の愛するフランス国歌。(ベルリオーズによる編曲)


ベルリオーズはあまり工夫もせず国歌を繰り返しながら「オーケストラの魔術師」ぶりを発揮するのみですけど、「フランス国歌は歌詞が長い」というのを良く実感できる曲です。「マルセイユの歌」という題名は、日本で言ったら「名古屋人の歌」ぐらいの位置づけですよね。変なの。


そして真打ちの『マメーリの歌』(イタリア国歌)
とにかく気持ちよい。


「豆利さん」とはこの歌の作曲者の名前なんですって。
君が代が「奥好義さんの歌」というタイトルで演奏されたら違和感しか感じないから、イタリア人ってやっぱり変。
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