知床の観光船沈没では、船会社のずさんな実態が次々に明らかになっていますが、行政やツアー会社の責任もあるように思います。
NHK 2022年4月30日 6時02分 掲載 「知床 観光船遭難 通信設備を携帯電話で申請 国の検査を通過」によると、『北海道の知床半島沖で26人が乗った観光船が遭難した事故で、事故の3日前に行われた国による船舶検査の際、会社側が搭載が義務づけられている陸上との通信設備として携帯電話を申請し、検査を通過していたことが分かりました。 携帯電話は航路で通信ができる場合にかぎり認められますが、現場海域には電波が届かないエリアもあり、専門家は「会社側の申請も疑問だが、国の検査にも問題がある」と指摘しています。』
とのことです。無線が故障していたためでしょう。しかし電波の届く範囲は携帯会社が公表しており、各社によって違います。検査官は船長が電波は届くと言ったことを鵜呑みにしましたが、実は船長の持っていた携帯の通信エリアは予定航路の大半で通話不能でした。調べればわかることですし、他の遊覧船会社や地元自治体、海上保安庁などに問い合わせてもいいのです。何もしないで検査をパスさせたことは業務上の過失になるのではないでしょうか。
また、スポニチアネックス 2022年配信 『山口真由氏、観光船の遭難事故で行政に注文「国交省の管理監督は利用客の安全を守るためにある」』によると、TBS系情報番組「ゴゴスマ~GOGO!Smile!~」(月~金曜後1・55)に出演の山口氏は「過去に1年間に2回といわれているが、3回事故にあったという話もありますよね。3回、事故があるというのは異常な事態。どうして国交省は行政処分を出さなかったのか」と苦言。 「行政処分を出せばホームページに公表されるそうです。」
と発言しています。2021年の5・6月の2回の他、2020年にも事故を起こしていたということで、1年ほどの間に3回も事故ったことになります。そういう危ない会社に対して、どのように行政処分を行ったのか、しなかったのかを明らかにするべきです。場合によっては業務上の不作為責任を問われるでしょう。
検査や行政指導の不備が明らかになれば、国の責任は免れません。船体の引き揚げに国費を投入するのは当然のことになるでしょう。
そしてツアー会社の責任はどうでしょうか。多くの乗客が企画ツアーで乗船していたものと思われます。 時事ドットコムニュース 2022年04月28日16時04分 掲載 「GW目前、キャンセル相次ぐ 知床遭難、地元観光業に影響」 によると、「北海道・知床半島沖で起きた観光船の遭難事故は、書き入れ時のゴールデンウイーク(GW)を控えた地元の観光業にも影響を与えている。ツアーの多くに観光船が組み込まれていたこともあり、宿泊予約のキャンセルが相次ぎ、関係者から不安の声が漏れる。」
とあります。個人で安全な会社かどうか調べるのがいいとか言われますが、事故歴などは当の会社のホームページなどには書きませんから、企画ツアーの内容をいちいち個人で調べるというのは現実的ではありません。利用する船会社などが信頼できる会社かどうかを確認する、それはツアーを募集するツアー会社の責任ではありませんか。事故歴や安全設備について聞いたり調査したのかどうか、そもそも調べてさえいないのか? しかし、まだどこからもツアー会社の責任を問う声が上がっていません。保険金が下りればいいというものではありませんよ。不思議なことですね。