最近、出張時に持っていく本として
「北条氏と鎌倉幕府」というのを持って行っております。
最新刊の「講談社メチエ文庫」です。
この文庫、どうも最近、お気に入りでして、
面白い企画を連発していると思います。
メジャーになる寸前の著者を発掘している企画なんだと思うのですが、
なかなかいい。
で、なぜか、このタイトルに惹かれて
購入してしまったのですね。
読み進めているところで、まだ読了していないんですが、
自分がなぜ、この時代の様子について興味を持ったのかの
潜在意識的な部分が見えてきた。
ようするに、元寇・蒙古の襲来という
「国難」への対応を潜在的に探る心理なのではないか。
現在の状況局面と照らして、あの時代はどうであったかの検証なのか。
日本の危機管理の歴史的事実で考えると、
戦争指導とか、その体制とか、
いろいろ考えていくとこの時代と、直感したように思う。
著者は、細川重男さんという方で、國學院大學の非常勤講師の歴史の先生。
ちょうど、元寇に直面する時期に、
漁民出身の僧侶、日蓮が「国難」を建白する。
たぶん、海の生業者たちは
独自の海外情報ネットワークを持っていたのではないかと思われるのですが、
そういう情報から日蓮は、蒙古の侵略的体質を知り、
それを「予言」として鎌倉という軍事政権首都で呼号したのでしょう。
直接的にそれを受けたのは北条時宗のお父さんの時頼であったのですが、
はじめはマジメに取り上げられなかったのでしょう。
しかし、この著者の検証では、こういうことへの権力構造の側での対応が
徐々に進行していったと、そういう流れが見えてくる。
集団指導的な、いわば合議を旨とする体制から、
北条時宗の専制的権力構造への改変が意図されていったかのように展開する。
そうなんですね、危機に対応するには
権力構造は専制的な方が機動的だという無意識なのか、意識的なのか
あるいは偶然であったのか、
そういう選択に、日本の権力構造は向かった。
権力基盤の強化のために、兄を粛正したりして
独裁的体制を準備しているのですね。
で、元からの脅迫的外交使節の到来、という事態を迎えるようになる。
北条時宗という権力者が、この事態にうまく対応したかどうかは
まったく別の問題ですが、
体制としては、そのような状態で国難を迎えている。
現在の状況は、未曾有の国難ではあるでしょう。
まぁ、この時代に独裁権力ではないけれど、
少なくとも強いリーダーシップは求められるものだと思います。
そのように考えると、今の体制が十分なものなのか、
どうも根底的に問題を抱えているのではないかと不安です。