三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【無落雪の日射遮蔽 軒の出&バルコニー】

2017年05月23日 07時34分24秒 | Weblog


「最小限オフグリッド」の住宅についての詳細情報です。
櫻井百子さんは、北海道の女性建築家としてたいへん頑張っています。
たいへんやさしそうな印象とは裏腹に、表現方法はなかなかにダイナミック。
北海道の建築家として、まっとうな寒地住宅技術に取り組んでいる。
今回の住宅でも、素器としての環境的性能で、
だれもがいま、考えるべきテーマとしての課題に回答を探っている。
断熱をより強化していって、次のテーマになってくる日射コントロールに対して
長い軒の出や、2階バルコニーなどの手法で取り組んでいます。
軒の出については、基本木造構造の上に、ちょうど
壁への付加断熱と同様の考えで2×6材で面的に被覆させる考えだとか。
端部には写真のような構造骨組みが現れています。
積雪荷重と軒の長さとの見合いで、正直に骨組みが決まってくる。
一方で玄関から階段室の空間では全開放型の日射取得を行っている。
断熱が強化されていって、パッシブに日射熱を確保していって
一方で、その過剰なまでの日射熱のコントロールも果たすべきという、
きわめてシンプルな北方住宅の解が見えてくる気がします。
そしてきのう紹介したように、設備的な要件、
万が一の災害時での延命装置についても、
過剰ではなく、いなすような考え方で対応しようとしている。



2階のバルコニーの床の幅はやや長め。
確認していませんが、90cmは大きく超えて135cmくらいはある感じ。
これくらいの広さがあると、アウトドアリビングの感覚にも近づく。
正面には最近注目されてきている新川サクラ並木が眺望できる。
そういった眺望を楽しめる装置ではありますが、
主たる用途は夏も冬も問わないオーバーヒート防止の日射遮蔽でしょう。
北海道では通常の屋根形状では屋根端部の軒先に氷柱がつき、
それが「すがもれ」被害の拡大とともに巨大化していった経験から、
いっそ軒の出をやめるという、まことに防御的な考えだったのが無落雪工法。
牧歌的に隣家との距離感が確保されていた時代には、軒先から落雪しても
隣家に被害を及ぼすと言うことは想定しなくても良かったけれど、
札幌などの人口密集地ではそもそもの土地面積もどんどん狭小化していった。
その結果、落雪屋根から無落雪屋根が考案された経緯がある。
なので、軒の出を出すということへの地域としてのためらいもあった。
しかし最近は、このようにまっとうに無落雪屋根で軒を出す家も増えてきた。
そういう意味では一回転してもう一回、
日本的な住宅デザインの要素が復権してきている。
外壁仕上げについても、風致地区という周辺環境も踏まえて、
ほぼ全面的に木質外装仕上げとしている。
住宅地ですが、防火の基準もムリせずにクリアさせている。
この家の日射取得のカーテンウォール部分と、バルコニー・軒の出の
配置バランスを見ていて、モンドリアンの絵のようでもありますが、
こういった機能要件とデザイン仕上げの応答が
今後の北海道住宅の基本的な問題意識として共有されていく、
そんな思いを持った次第です。
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