三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【 伝統工法「込み栓・貫」と高断熱高気密】

2019年11月15日 08時06分58秒 | Weblog
写真は先日下取材してきた北海道足寄町の木組みの家。
木組みの家は先日の「エコハウスコンテスト」by建築知識ビルダーズさんで
「漢方の本陣」というユニークなネーミングの家がリフォーム部門で
「大賞」を受賞されていました。
設計者の松井郁夫さんや断熱の管理の夏見さんなどが活躍された。
北海道の高断熱高気密派はこういった伝統工法の「対極」というように
見られる方がいるようですが、
むしろ工業化住宅、画一化住宅との関係で対極という意味合いで
共通する部分の方が大きいと思っています。
また、どちらも細部での施工が命という部分があって
親和性がむしろあるのではとないだろうかと。
伝統工法は写真のような「貫」とか「込み栓」のようなディテールから
非常にきめ細かな手順と段取りが要求される。
高断熱高気密でも、気密層の連続や断熱部位の処理方法など、
こちらも「施工」のきめ細かさがポイントといえる。
写真で見る貫などは、構造の柱梁の主体部分と同時に一気に組み上げる
必要があるので、工程管理では段取りが非常に重要になる。
それに気密層の連続、断熱欠損への配慮が加わることになる。
その両方をやらなきゃならないのは大変だ、という考えもありますが、
作り手のメンタルとしては共通性はあるだろうと思います。
こちらの現場では基本の木組みでは、プレカット工場などに発注し、
手刻みのような複雑な工程のショートカットにも努力したとされていた。
込み栓などの「調整装置」は、それを建て主が見続け、
維持管理の重要性を気にかけ続ける、という効果もあるだろうと思います。
こんな風に見えていれば、ちょっとさわってもみたくなる(笑)。

どうもこれからの住宅って2極化するのではないかと思います。
ひとつは合理化が究極的に進んで施工手間簡略化の方向になるもの。
こちらが一般的な志向になることはわかりやすい。
しかしこの方向では中小零細企業である地域工務店は
その「独自性」を発揮できるのか、不明なところがある。
合理性の土俵ではたぶん大企業型工場生産型に有利。
一方で手作りのぬくもりのようなものを求めるユーザーも残るだろう。
手作り、一品生産型の職人仕事が地域で希少価値を持つ可能性がある。
ただしユーザーは前者と後者の違いがよく見えないだろう。
そういったときに、いかにも手作り感が「見える化」した
こういった伝統工法+高断熱高気密が力を持つ可能性があるだろうと。



さてきのうから東京に来ておりますが、
留守を狙ってか、北海道は本格的に雪模様の天気に変わったとか。
汗ばむほどの11月中旬の東京。半袖の人も多い・・・。
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