三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【鹿児島ビルダー「シンケン」モデルハウス見学】

2017年08月07日 07時20分12秒 | Weblog




全国の住宅業界紙などで、よく紹介される鹿児島のシンケンさん訪問です。
っていっても、あんまり予備知識は持たずに行ってきました。
与次郎浜モデルハウスで、築17年ということでした。
よくあるテレビ局の住宅展示場に入っているけれど、
その後、こういった路線ではモデルハウスは建てていないようです。
現在、モデルハウスは博多の森とここだけ。
テレビ局主催の住宅展示場は、テレビ広告主体の大手ハウスメーカー志向であり、
当然大量の営業スタッフを抱えて大量販売型の戦略になる。
そういうなかで17年間も同じモデルハウスで、むしろ素材の古びを見せている。
他の大手ハウスメーカーモデルハウスが、ほぼ横並びの
「街路に対して機能的」に建てられているのに対して、
このモデルハウスは配置計画で角度を振って、エントランスに庭を持ってきている。
当然敷地の大きさも、この展示場でいちばん大きめと思われました。
プランについて伺うと、敷地に対して建物は30度程度振って建てられている。
そうすることで庭が4面確保されて「建物+庭」という価値感への気付きを
来場者に促すような仕掛けになっている。
聞くと、住宅建設だけではなく庭も含めた「暮らし方」を提案する姿勢。
ということで、当然やや高額物件中心の営業戦略になる。
北海道札幌でも高級物件需要に対し地域ビルダー数社がしのぎを削る。
鹿児島の状況がどうであるのかまでは、ヒアリングはできませんでしたが、
最近、福岡にも進出しているということなので、この路線では
ある一定数までは伸ばして行けても、成長限界も見えるのかも知れません。
しかしこういった高級路線は、注文住宅の核のような需要なので、
根強く底堅い需要層を取り込んでいるともいえます。



暖房や設備テクニカルの部分では、OMソーラーが基本。
いまはその進化形のソーラーシステム「そよ風2」を採用。
戦後の住宅生産グループとしては、このOMソーラーは先行的なもの。
東京芸大・奥村昭雄先生の提唱になる「太陽の熱であたたまる」という
理念に共感した全国の工務店・設計者が参集した運動体だった。
その後パテントの期限が切れて、いろいろに工法が分化し、
参加工務店はその設計思想から、自然エネルギーや自然派デザインへと
年々レベルが向上していって、いま、全国でそういった工務店は
他の工務店のベンチマークにまでなって来ている企業が相当数ある。
その運動と比肩する、あるいは性能的インパクトとしてはより巨大であった
「高断熱高気密」の方は、より広範な運動としていま定着してきている。
OMソーラーが北国の方ではそれほど普及せず、
一方の高断熱高気密が、いま全国各地に爆発的に普及しつつあるのは
ソーラーでは冬場の暖房設備が事実上ダブルで必要な問題が大。
「太陽の熱であたたまる」理念はまことに素晴らしいけれど、
日の差さない冬場の日ほど、暖房エネルギーが必要なのが現実。
そうすると、ソーラーシステムとは別に「補助」暖房システムが欠かせない。
このモデルハウスでも薪ストーブが設置されているけれど、
北国の場合には、より万全な「スペア」の暖房システムが必要になる。
やはり常識的に言って、それではコスト的に負担可能な施主は限られてくる。
高断熱高気密の提唱者・鎌田紀彦先生も奥村先生に研究協力したけれど、
有為なほどにはシステムの機能向上は果たせなかったといわれる。
そういった経緯もあるようですね。
しかし工務店経営で考えれば、シンケンさんのような成功例も現れる。
理念と暮らし方デザインイチ押しの営業企業戦略は、
より個性的な注文住宅を頼む層にとって現代の有力選択肢といえるのでしょう。
住宅マーケットの未来も見通して今後をウォッチしていきたいと思います。
コメント
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