三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

【来年10周年、地域工務店グループ情報発信】

2016年12月05日 06時49分35秒 | Weblog
北海道の地域工務店のグループ・アース21では、
年に1冊のペースで地域工務店の家づくりのポリシー、立場を伝える
オリジナル情報誌の発刊を続けてきています。
サブタイトルは「北海道の家づくりの現場から」。
ことしも年末の発刊に向けて写真のような大詰めの作業。
当社では、この情報発信のお手伝いを継続してきています。
迎えて今年は9年目ですが、来年にはなんと10周年にあたる。
まさに、「継続は力」だと思います。

地域工務店は、地域での基本的な住宅建築の「作り手」であり、
技術的にも経済主体的にも、さらには地域の「製造力」の要としても
もっとも不可欠な存在だと思います。
住宅というのは、結局はその建てられる土地から切り離れては存在できない。
単純に、なにか問題が発生したとき、もっとも役立つのは
その同じ地域に存在する地域製造業としての工務店であることは、
誰が考えても自明なこと。
同じ地域の生活者として、住み手とも同じ目線を持っているので、
気候風土条件について、きわめて至当な技術対応が可能だと思います。
しかし、ながく全国均一であることの方が上位概念であるかのような
そういった価値感が多くの業界・産業領域で根付いてきている現実がある。
南北に長く、亜寒帯から亜熱帯までの気候地域偏差をもっているのに、
「大手」ハウスメーカー優位の市場構造が全国的には進んでいる。
ある地域では7割以上がそうしたハウスメーカーの寡占率とか。

そういった全国的市場構造の中で「特異的」にか、
いやむしろきわめて「先進的」と言うべきだけれど、
北海道では約7割の戸建て住宅を、地域工務店が作ってきている。
残る3割についても、いわゆる地域の「大手」企業が高い割合をもっている。
ようするに住宅に於いては、北海道では「全国共通」という価値感よりも、
「地域に根付いた」という価値感に優越性が認められるようになっている。
このことにはさまざまな要因が与っていると思われますが、
やはり地域の「製造業」を支える技術基盤、高断熱高気密技術が大きい。
気候風土的に圧倒的に「寒冷」であることが、地域企業の追い風になっている。
北海道では地域自治体や研究機関など官学民一体で、
住宅技術についての強い地域基盤、バックアップ体制を作っている。
全国メーカーはたかだか4%程度の市場規模のマーケットのために
全国共通の製造プラットホームを変更したりはできない。
それを変更すれば、そもそも「全国一律」というコスパメリットが喪失する。

こうした地域工務店にとってのいちばんのマイナスポイントは
情報収集力という部分だけれど、このアース21のような
地域工務店の立場に立ったグループでの情報交流が
そうした面での各社の経営力をも高めている。
地域工務店同士はもちろんビジネス的にはライバルでもあるのですが、
情報共有を進めることで、そういうお互いは同時に最大の協同者にもなれる。
このアース21の活動、出版はそれを雄弁に語っています。
そしてその情報について、さらに自らの立場をアピールする活動まで
こうして蓄積してきているということだと思います。
年末の発売まで、もう少し。発売されたら
これから北海道で住宅を考えているみなさんは参考にされてください。
また、全国の同じ立場の地域工務店のみなさんも、
ひとつの情報発信例として、大いに参考にして欲しいと思います。乞うご期待。
コメント
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