三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

鎌田紀彦氏の真髄 木造工程を科学探求する

2016年03月20日 07時42分21秒 | Weblog


さてきのうは、新住協北海道地区大会2日目。
9時スタートから午後1時まで、中身の濃い研究大会。
大きいテーマは、断熱の厚みをもっと厚くするための工法の科学探究。
そしてそのような環境での暖房装置選定の科学研究。
いかにも北海道地域から進化してきた新住協のコア大会。

鎌田紀彦先生がほかの住宅建築研究者と決定的に違うのは、
理念だけを語るのではなく、その理念を現場工程で
どのように具体的に、工務店・設計者にとっての死活的テーマである
「安価に、合理的に、どうつくるか」を
きわめて実戦的に探求していく姿勢にあると思います。
日本における住宅建築工法は、在来の柱・梁で構成する工法。
その条件下で、それを進化させる方向で、
現代が求める最前線レベルまで性能を引き上げていく努力。
それも、相方としての工務店が組織丸ごととして理解出来、具体的に
すぐにも実践できる手法、手順まで解析していく。
そのためには、大工さんの現場心理まで飲み込んでもいる。
氏は、「建築システム工学」の研究が専門領域であるのですが、
そのなかでも木造の工法進化、現代化を追求されてきた。
北海道の工務店は、暖かい家を合理的に、そして安価につくる手法を求めて
氏と協同して、自らの建築現場を活用し工法開発の実験場としてきた。
そういった関係性が、明瞭な形で伝わってきます。
厚い断熱壁面になってくると、その断熱材を安定的に保持させるための
それも出来るだけ安価な手法開発が不可欠になってくる。
2枚目の写真のような「断熱材保持」の金物の設計まで必要になる。
さらには、具体的には垂木をどう主体構造に緊結させるか、
長いビスを正確に下地構造に安定させるか、
というような方法の研究も欠かせなくなってくる。
そのために垂木に事前にビス穴を開けておき、
そこに貫通させるビスの寸法、種類にまで解析範囲は及んでいました。



こういった部分まで、工務店の具体的な現場力解析は及んでいる。
ここまで実戦的な木造研究者は、やはりなかなか稀有な存在。
上の写真は、会場で展示されていた、
ビスを使わずに屋根にPVを据え付けるための装置。
木造住宅を進化させていく技術開発は、時代の変化につれて、
これからも、より深まっていくでしょう。
考えてみれば、法隆寺の六角形の「ログ」構造など、
日本には、木造を科学するという強い伝統はあるのだと思います。
いまダイナミックに進化しつつある木造、面白いと思います。


コメント
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