三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

復興建築でのコミュニケーションの仕掛け

2016年03月06日 06時10分24秒 | Weblog
被災地での住宅復興建築では、多くの場合、
「地域のコミュニケーションを重視した設計」が要望される。
それまでの地域コミュニティを喪失したくない、という希望であって
まったくよくわかるテーマだと思います。
しかし、そこから先、実際にさまざまな制限制約の中で、
まったく違う立地環境、また、ひとりひとりの希望要件を
聞く術もない中で、「どう作るのか」は困難が伴ってくると思います。
そういった難しいテーマに建築者は立ち向かって行かなければならない。

そういうなかで、この災害公営住宅では
1 リビングアクセスの採用
2 2面開口のLDK
3 水回りの集約配置
4 個室(和室)を、LDKと縁側バルコニーに隣接配置。
5 プライバシーや日射をコントロールする工夫
6 (将来的に)LDKの一部が区切られるように工夫
というような設計手法を取り入れながら、
住人たちのコミュニケーションを促進する装置として、
各住戸が対面する中庭空間をバッファーゾーンとして採用し、
それをコミュニケーションの媒体にしようという考えでつくられていた。
そのために各住戸からお互いの生活ぶりが対面的に
「伝わってくる」ような正対配置になっている。
いやおうなく、コミュニケーションが交わされるような装置であると。
そして中庭にはその役割を担わされたベンチが各所に据えられている。
中庭には、芝生が植え込まれているけれど、
そこに木陰をつくってくれる植栽も、そのかけらもなかった。
・・・う~ん、と唸らざるを得ない。
はたしてそうなんだろうか。
住民ヒアリングというような機会があったのか、
そこで過去の生活の中でどのような生活コミュニケーションが存在し、
どのような対話が成立していたのか、という住み手と設計者の
相互理解が存在したのかどうか、知るすべもない。
なので軽々には言えないけれど、一律に多くの住戸で画一的に
住戸を配置させた集合住宅の様子からは、そう伝わっては来ない。

どうも正対した相互関係性って、なかなか難しいのではないか。
わたしたちの普通の生活でも、普段の話って
まっすぐ正対して見つめ合いながらしているだろうか?
一般的には、やや並行的であったり、45度から60度くらいに
やや安心できる「角度」をもって相対しているのではないだろうか?
さらに、こういったコミュニケーションの仕掛けとして日本住宅では、
各戸の応接の簡易拡張であり、庭仕事の作業空間でもあった
「縁側」の方が、むしろ伝統的には相当なのではないか。
縁側は、外部とも内部ともいえない中間領域であり
そこでは、茶による軽い接待が日常的に交わされる生活文化習慣を
わたしたちは持っている。
陽射しを遮る仕掛けもなく、中庭にさみしげであったベンチを眺めながら、
ややモヤモヤ感をぬぐいきれなかった次第です。
こんなわたしのモヤモヤ感が、豊かな隣人間コミュニケーションの成立で
きれいに一掃されることを期待し、念じて止みません。
コメント
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