ウォールストリートジャーナルの新年3日の記事で
【オピニオン】日中韓の歴史問題、今年が正念場―第2次大戦終結70年
と題した署名記事が掲載されていた。
保守党が多数派を占めている現在のアメリカの世論の中で
比較的に本流に近い現実主義的世論を代表するメディアだと思うのですが
アメリカのホンネの所在をうかがえる記事でした。
中国はことし、反日世論の操作で排外主義を煽りやすいという見立てと
韓国も、建国の経緯から反日になりやすい状況を分析して
東アジア世界の緊張激化を危惧している。
結論としては、日本に自制的な対応を求めるというスタンスを取っている。
「安倍首相はすべての関係国が知る具体的な事実を挙げ、日本の戦争犯罪を
はっきりと認めることで、新たな時代を切り開くことができる」。
たしかに現実政治外交はそのような形に落ち着かざるを得ないだろうが、
そのことは、中国韓国との関係で当面は無期限に
日本は「敗戦国」体制を強いられることを意味する。
もしそのように、結果としてなったとしても、
ではそれを受け入れるに足る「国益」を得なければ、いかに強い政権とはいえ、
安倍政権も国内的に持たなくなるのではないか。
南京虐殺、従軍慰安婦というふたつの70年以上前のことで
くりかえし外交カードとしてそれが語られるけれど、
その主張の根源を求めれば、おのずと
それはアメリカを主導とする戦後世界体制の永続化というものが起因であり、
高等な中国側戦略としての日米離間工作であることは明らか。
戦勝国としての立場を永続的に日本に対してブラフとして使うぞ、と
言い続けてきているのだ。まぁ中国には主張に法理論的な根拠はあるけれど、
しかしそれでは日中友好条約締結とその合意はなんだったのかとなる。
まぁ韓国はどう考えても違うはずだけれど・・・。
ウォールストリートジャーナルでも、欧米では戦後はとっくに終わっているのに
東アジア地域では、依然として外交問題であると言われている。
これをどう「解決」できるのか、
儒教的で退嬰的な宗主国体制がながく続いてきた東アジア世界、
それから距離を置き続けてきた歴史を持つ日本として、まことに難しい。
で、最近の日本国内の論調を注意深く見ていると、
アメリカによる原爆投下の非人道性について一部で語られはじめている。
戦前の日本が悪逆無道であったとしても
あの原爆投下を是認することには、やはり日本として異議は唱えるべきだ。
これは冷静な主張として、反米ととられない範囲で
自制的に唱えていくべきだと思う。
たぶん、人権外交を掲げるアメリカが
もっとも触れられたくないセンシティブな部分ではあるけれど、
それを正面から言える国は、やはり日本しかない。
さてこうした危機感を抱いていた矢先、
連休中での安倍訪米がアナウンスされた。
どうやら、東アジア近隣国との話し合いの前に、
日米間で話し合って、戦後70年に当たっての「安倍談話」を
発表するような方向を目指しているのではないか。
そこで発表される「戦争への謝罪」として語られる範囲で、
中韓との話し合いの大枠を設定しようとしているのだと思われる。
基軸的な外交として日米関係重視というのは、この場合、有意義な策だと思う。
そうだとすれば安倍政権、なかなかしたたかな動き方をしている。
っていうか、よく考えたら、その手しかないだろう。
このあたり、平和のために大いに知恵を絞った外交交渉をして欲しい。