三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

環境性とデザイン性、わかりやすい建築論

2014年10月25日 05時11分39秒 | Weblog


きのう金曜日は予定が重なってしまいました。
当社スタッフが、健康住宅会議の方でパネラーとして出るのも心配だけれど、
もう一方で、日本建築学会北海道支部の「北海道建築賞」の発表会も。
ということで、はじめに健康住宅会議の方に顔を出してスタッフを激励して、
参加のみなさんにあいさつしてきてから、
北海道建築賞の方に行ってきました。
17:40くらいに健康住宅会議会場ホテルを後にして、
そこから約3kmくらいの北大構内・遠友学舎に移動して
ちょっと離れた駐車場にクルマを入れて、ちょっと遅刻で18:05ころ到着。
滑り込みセーフでありました。



北海道建築賞、本賞は該当作品なしでしたが、
「奨励賞」として、大杉崇さんの自邸「イヌエンジュの家」と
海藤裕司さんの「伊達市総合体育館 あかつき」が選定されました。
大杉崇さんの自邸「イヌエンジュの家」では、
既存の街並み、近隣居住者の生活シーンのなかに
そのあと入っていくもののスタンスとして、どうあるべきか、
という視点がはじめに語られていました。
近隣に暮らしていた人たちとどのような「関係性」を構築したら良いか、
そのひとびとの暮らしようを尊重しながら、なお、敷地の条件を活かして
よい建築に至ろうとする志向性。
そして、解に至る検討過程から、ユニークな計画が意図されていく。
手法については、まことにパッシブそのもの。
結果として紡ぎ出された住宅建築は、きわめて不定型な形状になったけれど、
ある一貫した志を感じさせて美しい。
海藤裕司さんの「伊達市総合体育館 あかつき」では、
体育館施設と、頻発する災害、有珠山の噴火などからの避難所という
まことに現代的なテーマを建築としてしっかり受け止めて
しかもその実現過程で、エネルギーコスト削減のための
真摯な取り組みを可能な限り実践していました。
そうでありながら、環境の中でのデザイン性も同時に追求した。
しかしあくまでも、デザインは環境要因に対する
いわば、パッシブな対応を丹念に積み上げる中から
ある志向性の表現のようなかたちで実現すべきものと考えている。
その姿勢に大いに共感できました。

この「北海道建築賞」、やはりわたしもホームグラウンド。
交わされる言葉がまことにわかりやすい。
奇をてらった難解なフレーズは一切出ない。
むしろ淡々と、与えられた敷地条件を克明に読み取って
環境性の中で、どう建築していくべきなのかが率直に、明瞭に語られていました。
いわゆる「環境建築」ということが、自明のものとして
若い世代の北海道の設計者に根付いているのだと実感される。
その着眼点と、解に至る方法論ともに異議を感じない。
そして出来上がった空間性表現について、
そのコスト面も含めて、率直に批評を求める姿勢もすばらしい。
都のちまたは、国立競技場計画問題で揺れている昨今、
対比的で、まことに清々しい思いでした。

コメント
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