三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

1200年前の「わび」住まい

2008年11月27日 05時46分07秒 | Weblog



だんだんと「心に迫ってくる」美しさ、というものはあるようで・・・。
写真は先日、釧路湿原の「北斗遺跡」で見た竪穴住居群。
人間の暮らしの痕跡って、竪穴の場合、
それこそ言葉通り、穴が残っていくものなんだそうですね。
この遺跡は、縄文から続縄文、檫文、さらにアイヌ期という
連続した歴史が重なっている遺跡。
現在では、釧路湿原の中の高台に位置しています。
しかし、昔は海水面が上下していたので、
海面上昇期には、この高台の少し下まで海が迫っていたようです。
ようするに、狩猟採集を基本とした生活様式からすると、
この立地条件は、たいへん居住環境に優れていた地域だったのですね。
なので、集落が永続してきていた。
たぶん、2千年くらいは継続して人間の暮らしが営まれてきた。
そういう痕跡が、点々とした穴に残されている、というわけ。

写真は1200年前、平安時代北海道での竪穴住居を5軒復元させた「集落」。
すべてがアースカラーで、質朴な美しさが迫ってくる。
形は、やはりユーモラスで、自然動物がうずくまっているかのようで、
適度な距離感で営まれている。
それぞれの住居同士が対話しあっているような印象も受ける。
ミニピラミッドのようなたたずまいも感じます。
現代都市としての釧路から、ほんの指呼の間にありながら、
ラムサール条約によって、悠久の時間を感じさせるこういう住居群を見ることができる。
なんともカルチャーショック的で、たぶん、あまり観光的には
寄与はしていないだろうと思うのですが、
価値は高いものがあると思いますね。

そしてやはりなんと言っても、「美しい」・・・。
利休さんの師匠、武野紹鴎さんという方が、
「わび」ということについて、
「正直で慎み深く,おごらぬさまを言う」と規定されているのだそうですが、
北の果て、それもいまから1200年前くらいの
こういう建築からは、まさにそういう美しさを感じます。
まぁ、文化性を表す言葉には、ある種の韜晦がそこに含まれているのでしょうが、
その言葉を胸にしまい込みながら、この建物群と向き合っていると、
なんとも痛切な思いが起こってくることを抑えられません。
きっと、これから機会があれば、
繰り返し、訪れることになるような、そんな、
不思議なタイプの美しさに、惹かれる思いが募っております。
どうなんでしょうか、わたしやはり少し、偏っているでしょうか?



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