長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

都全滅!? 大怨霊は仮面ライダーだった!! ~スペシャルドラマ『陰陽師』2020エディション~

2020年03月30日 21時16分03秒 | 特撮あたり
 どうもどうも、みなさまお元気でしょうか? そうだいでございます~。
 なんかこう、コロナウイルスという得体の知れない脅威が去らない……というか、ますます猛威を振るいそうなイヤ~な予感がしたまま、令和最初の年度が終わろうとしております。私の身の回りの生活にも仕事の内容にも、それほど致命的なものではないにしても、今まで経験したことのないような「変容」が起こっていることは明らかでして、来月から一体どんな令和二年度が始まるというのか……まさか、来年度最大のトピックとなるはずだった東京オリンピックが延期となるとは、ねぇ! まぁ、私はそんなにオリンピック熱が高かったわけでもないのでショックはそんなに大きくはないのですが、東京周辺の知り合いの方々のところに遊びに行けないのは嫌だし、現在における私のほぼ唯一の娯楽といっても過言ではない、温泉巡りができないのは非常に痛い!! 県外に出ないからいいでしょ~と言ったところで、温泉施設自体がやってないのですからどうしようもありませんわな。くっそう、規制解除されたら、蔵王も置賜も庄内も、温泉つかりたおしてやる!!

 そんなこんなで、言い知れない不安を抱えたまま終わろうとしている3月も末。まるでこのカオス状態を象徴するかのように、突如として何の脈絡もなく世に解き放たれた、あるスペシャルドラマが、ここに!
 う~ん……なんで、いま!?


スペシャルドラマ『陰陽師』 (2020年3月29日21:00~23:05放送 テレビ朝日『日曜プライム』枠)
 『陰陽師(おんみょうじ)』は、テレビ朝日系列『日曜プライム』枠で放送されたスペシャルドラマ。
 物語の時代設定は、平将門による天慶大乱(935年2月~40年2月)が終結して20年後、天徳四(960)年のこととなっている。

主なキャスティング
安倍 晴明(921~1005年)…… 佐々木 蔵之介(52歳)
源 博雅(918~80年)  …… 市原 隼人(33歳)
如月           …… 剛力 彩芽(27歳)
幼少期の如月       …… 佐々木 みゆ(8歳)
芦屋 道満        …… 竹中 直人(64歳)
橘 露子姫        …… 本田 望結(15歳)
橘 実之         …… 金子 昇(45歳)
露子姫の下男・けら男   …… 南出 凌嘉(りょうか 14歳)
式神・蜜虫        …… 斎藤 めぐみ(34歳)
賀茂 保憲(917~77年) …… 橋本 じゅん(56歳)
平将門の愛妾・桔梗    …… 笛木 優子(40歳)
俵 藤太(891~991年)  …… 国広 富之(66歳)
三善 浄蔵(891~964年) …… 寺田 農(77歳)
薬師の祥仙        …… 升 毅(64歳)
平 貞盛(?~989年)  …… 酒向 芳(61歳)
平 維時(貞盛の孫 ?~1036年)…… 秋沢 健太朗(31歳)
藤原 忠平(880~949年)…… 九十九 一(67歳)
源 経基(?~961年)  …… 奥田 達士(51歳)
小野 好古(884~968年)…… 川野 太郎(59歳)
賀茂 忠行(?~960年) …… 大出 俊(79歳)
平 将門(?~940年)  …… 菅田 俊(65歳)

主なスタッフ
原作 …… 夢枕 獏『陰陽師』シリーズより 長編『瀧夜叉姫』(2005年)、短編『むしめづる姫』(2001年)
脚本 …… 山本 むつみ
監督 …… 篠原 哲雄(58歳)
撮影 …… 上野 彰吾(59歳)
VFX …… 岡野 正広(53歳)
アクションコーディネーター …… 辻井 啓伺(57歳)

≪特別ふろく 日本最古のバディもの? 映像の中の晴明&博雅コンビのあゆみ≫
1、NHK 連続ドラマ版『陰陽師』(2001年4~6月放送)
 安倍 晴明 …… 稲垣 吾郎(27歳)
 源 博雅  …… 杉本 哲太(35歳)
 芦屋 道満 …… 寺尾 聡(53歳)
2、映画『陰陽師』(2001年10月公開)、『陰陽師II』(2003年10月公開)
 安倍 晴明 …… 二世 野村 萬斎(35~37歳)
 源 博雅  …… 伊藤 英明(26~28歳)
3、フジテレビ連続ドラマ『陰陽師☆安倍晴明 王都妖奇譚』(2002年7月放送 この作品は岩崎陽子のマンガが原作)
 安倍 晴明 …… 三上 博史
4、映画『源氏物語 千年の謎』(2011年12月公開 この作品は高山由紀子の小説が原作)
 安倍 晴明 …… 窪塚 洋介(32歳)
5、テレビ朝日スペシャルドラマ版『陰陽師』(2015年9月放送)
 安倍 晴明 …… 十世 松本 幸四郎(42歳)
 源 博雅  …… 堂本 光一(36歳)
 芦屋 道満 …… 國村 隼(59歳)


 いや~ほんと、なんで今ごろになって『陰陽師』!? しかし原作があの、原作シリーズ随一の大ネタ『瀧夜叉姫』ってんですから、少なくとも志の高さはハンパないようです。
 私、確かこの前に映像化された2015年版の『陰陽師』もテレビで観ているはずなんですが、内容さ~っぱり覚えてない! キャスティングから言っても手堅いつくりになっていたはずなんですが、ちょっと単発でやるには地味すぎたのでは……これも、なんで突然やったんですかね。平安時代で映像作品を作るとしたら、やっぱり藤原道長だとか紫式部だとかを出すよりも、安倍晴明を出した方がウケがいいからなんでしょうか。それってどうなんだろう?

 とはいえ、私自身は安倍晴明が嫌いというわけではないのですが、なんというか、大学時代の2001~02年ごろに到来した「晴明さまブーム」になすすべもなく……というか、なかば自分からダイビングしていく勢いでハマった人間なので、めんどくさいファンならではの「世間の猫も杓子も晴明サマ~💛状態を逆に苦々しく感じてしまう病」に罹患してしまい現在にいたる、という精神的遍歴があるんですね。
 このへんの平成安倍晴明カルチャーについての愛憎半ばする感情は、これまでもこの『長岡京エイリアン』内で、たとえば映画『源氏物語 千年の謎』を観た感想だとか、マンガ『ぬらりひょんの孫』についてのつれづれだとかで吐露してきたわけです。
 それでもって、今回再び映像化された夢枕獏先生の手になる『陰陽師』シリーズについて思い出しますと、私は実にミーハーなことに、岡野玲子さんによるマンガ版にハマってから原作小説にいく、というベタなルートをたどり、それこそ今回の『瀧夜叉姫』くらいまで読んでいたでしょうかね。マンガと並行して読んでいたような形だったので、岡野版で真葛姫とかいうオリジナルキャラクターが登場して、読者の体感時間が『珍遊記』なみに遅い異次元ゾーンに入りだしてからついていけなくなって、巻き添えを食らうかたちで原作小説からも遠のいていってしまいました。そういえば、2000年に催された第1長編『生成り姫』とマンガ最新刊の同時刊行記念夢枕&岡野ダブル先生サイン会に行ったよ、私! 新宿の紀伊国屋書店! なっつかし~な~。夢枕先生のサインしかもらわなかったけど。

 こんな感じで話し出すと思い出がいっぱいできりがないので、ちゃっちゃと今回のドラマ版の感想に入っていきたいのですが、まず主要なキャスティングについて感じたのは、安倍晴明と芦屋道満のライバルペアが、「 NHK大河ドラマにおける新旧秀吉対決」になっちゃってたこと! うをを、まだ佐々木秀吉のお目見えは先のことですが、これは因縁の対決だわ!!
 佐々木蔵之介の晴明とはねぇ。史実の天徳四年における晴明も40歳前後ということになるので、いくらなんでも美青年では通せない知的なナイスミドルとしてはぴったりなんですが、美形という要素はかなぐり捨てた選択で好感が持てました。いや、佐々木さんもカッコよくはあるんですが、公家化粧の似合う男性ではないよね。
 佐々木晴明に加えて、源博雅が市原さんとは! なんか、演技力的には文句はないんだろうけど、平安貴族らしからぬむくつけき感じが! 二人で優雅に牛車に乗ってる絵が想像できない……ていうか、牛車よりもトヨタのプロボックスのほうが数百倍似合うペアですよね。この2人は契約いっぱい取ってくるぞ~!!
 おそらくこれは、今回の敵が非常にマッチョなビッグネームキャラであるということを見越した体育会系シフトなのでしょうか。まぁ、市原さんならば、博雅のまっすぐな性格はこの上なく伝わってくるでしょう。
 つまり、今回の晴明&博雅ペアは、なんならアクションも辞さない刑事もののバディみたいな方向に特化しているということなんでしょうね。この、運動部みたいなほがらかさ!
 いっぽう、芦屋道満に竹中さんって、いかがわしいクセ者キャラとしては申し分ないキャスティングなんだろうけど、なんか原作小説における道満の老獪さとか気持ちの悪さは出てこないような気がするなぁ。特に悪役を演じるときの竹中さんって、ナルシスティックな哲学がにじみすぎて若々しくなっちゃうんですよね。中年からぜんぜん歳をとってない感じ。うすぎたないどころか、むしろ香水つけてそうだし。

 しかし今回、そんなこんなよりも私が「おぉ、そうきたか!!」と膝を打ってしまったのは、メイン敵キャラであるところの「平将門」を、あの菅田俊さんが演じておられるというところなんですよ!
 菅田俊!! なんと、あの「昭和仮面ライダー10号」こと、仮面ライダーZX(ゼクロス)・村雨良を演じた菅田さんが、日本最大の怨霊とも畏れられる平将門を!? いくらなんでも、佐々木晴明のデビュー戦の相手としてこれは荷が重すぎるのでは!? 危うし、都!!

 菅田さん演じる仮面ライダーZX といえば、私としてはさすがに1984年のテレビスペシャル『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』放映時の記憶はないのですが(そもそも山形県で放映していたかどうかすら怪しい……)、その30年後、最近の映画『平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊』(2014年公開)での、異様に ZX愛のこもった劇的な復活が強く印象に残っています。
 ネタバレを承知の上で言ってしまうのですが、この『平成対昭和』で、菅田さんはまず、悪役であるところのバダン帝国大幹部・暗闇大使として登場し、その異様に怖い顔を駆使してかなり終盤まで正義の仮面ライダーたちを苦しめる側に立ちます。
 ところが、土壇場になって仮面ライダーZX としての正体を現し、バダン帝国の裏をかいて仮面ライダーたちの力を温存するべくスパイとして帝国に潜入していたことを暴露するわけなのですが、ZX になっても顔が怖いまんまというところに、かりそめとはいえ長年悪の組織に所属して大幹部にまで出世してしまったがゆえの苦労がしのばれるリアリティが満ち満ちていたのでした。まるで映画『ディパーテッド』みたいな悲喜こもごもがあったんだろうなぁ。正義もつらいよ!
 言うまでもなく、ZX が念願のテレビデビューを果たした1984年版でバダン帝国の暗闇大使を演じておられたのは、あの潮健児閣下であらせられます。しかし、その潮さんを向こうに回しても、2代目・暗闇大使を演じた菅田さんの悪役演技は(ZX の芝居だったとしても)まったく引けを取らないワルさを炸裂させていました。あの眼光、しわの深さ、そして肌の黒さ……どこからどう見ても、道を極めたお仕事の方ですよね。

 そんな菅田さんが、あの平将門を演じるのですから、そりゃ~もう怖いってもんじゃないわけです。正直、他の方々のキャスティングについては「ふ~ん。」くらいなもんで特に驚きもしなかったのですが、この菅田さんの起用に関しては体温が上がらずにはおられませんでした。正義のヒーローも、悪の大物も演じられるお人があの将門を演じるんです。これはちょっと、観ないわけにはいかない!!

 というわけで、令和最初の映像化安倍晴明のお手並み拝見とチョイはすに構えながらも、内心でけっこうワクワクしながら観ました『陰陽師』2020エディション、その感想はといいますと~!?


どこをどう料理したら、あの原作小説がこんなにもアレな出来になっちゃうのよ~!? でも、菅田さんの将門だけは素晴らしかった。


 う~む……いかんせん、正味100分くらいのテレビドラマなんだもんね。比較的、予算が潤沢な映画じゃないんだから、そりゃ無いものねだりな意見にもなってしまうのでしょうが……原作小説を読んでハラハラドキドキしていたあのシーンこのシーンが、ここまでチープ&薄味なものになってしまうのかと!! まぁ、仕方はない。仕方はないのですが、原作小説がいかにも夢枕先生らしいこってりギトギトな表現のオンパレードだっただけに、いかにも残念な「あっさり時代劇」に仕上がってしまいました。
 じゃあ『瀧夜叉姫』選ばなきゃいいじゃん!と言ってしまいたくなるほど、百鬼夜行の襲来シーンとか、平貞盛の奇病シーンとか、クライマックスでのバトルシーンとかが淡泊。テレビの放送コードがあるからしょうがないんですが、貞盛の首が変貌しちゃう見せ場なんか、まんま NHK大河ドラマ『八代将軍吉宗』とおんなじ演出処理の仕方で、驚くどころか笑っちゃいましたよ! ずいぶんときれいに変身したなオイ!!

 そういうスペクタクルというか、VFX の部分で残念な点があるのは、予算の関係もあるでしょうから目をつむるとしても、もっと問題なのは、物語の構成に関して、ただでさえ長編小説(文庫本2冊分ですよ!?)を100分に収めるのに四苦八苦しているのに、そこにもってきて何の関係もない別のエピソード(『むしめづる姫』)を中盤にぶちこんでしまう無謀さですよ! もう定員オーバーなんですけど、なんで!?
 なんでって……そりゃまぁ、ぶっちゃけちゃえば、今回のドラマにかわいい若手女優さんを出したかったから、なんでしょうねぇ。いや、そりゃあ、芋虫とか毛虫を愛する美少女(しかも男装あり)っていうのは充分にキャラクターも立っているしドラマのアクセントとしては良いのかもしれませんが、だったらだったで、本筋の将門エピソードにちゃんとからませてほしかったなぁ。結局、中盤にあの神々しい常世虫が羽化した時点で出番終わっちゃったじゃないっすか! なんなんですか、その中途半端さ!!
 どうせだったら、クライマックスで将門が都を本格的に滅ぼそうと動き出した時点で露子姫が『モスラの歌』か『ミヤラビの祈り』みたいなやつを2番まで唄って、覚醒した常世虫が毒鱗粉攻撃で将門を苦しめるみたいな展開を加えていただきたかった。いや、でもこれじゃあ常世虫の遺した卵から双子の幼虫が出てくるところまでやんなきゃいけなくなるから、時間的に無理ですね。残念!
 露子姫の父親を、映画『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年)主演の金子昇さんが演じていたあたり、絶対にねらったキャスティングだなと感じていたのですが、それ以上ぜんぜんお話が発展していかなかったのが、もったいないというか、無計画にもほどがあるというか……いたずらに将門エピソードの時間を圧迫してただけですよね。
 いくつかの短編エピソードの映像化の中に『むしめづる姫』があるんだったら何の問題もないんですが、よりにもよって『瀧夜叉姫』の映像化なんですよ、今回は!? また、悪いことをなんにもしない常世虫の誕生が、「蟲毒」の恐ろしさをぼやかす効果しか生まないんですよね。そもそもあの虫、蟲毒となんの関係もないでしょ!?

 あと、キャスティングに関しても、いかにも残念と感じてしまうところがありまして、それは今回の物語において、原作小説を読んでいる誰もが「こいつぁそうとうにヤバい人だぞ……」と慄然としてしまうであろう、「俵藤太藤原秀郷」と「興世王」という2人のキャラクターが、なんか実にテレビの枠にきちんとおさまった、ごくごく常識的な範疇の人物になっていた、という点でした。
 な~んか、2人とも、ふつう! 少なくとも菅田さんの将門ほどの異形性がないから、俵藤太なんて一瞬で将門に斬り伏せられてしまいそうな感じがするし、興世王だって、あれだけ将門と関東地方一円を引っ掻き回したうえに20年間も雌伏していたにしては、アブナイ教祖的な狂気が全く感じられないんですよね。せいぜい、都に不満を持つ忍者集団の棟梁みたいなスケールの小ささ。
 これは、どちらも役者さんの資質の問題……なのだろうか。原作小説でもことあるごとに「将門と表裏一体の存在」と語られていた俵藤太ですよ。近江国の大ムカデを弓矢で退治して、将門からの刺客を逆境どころかむしろウキウキ気分で次々と斬り殺していき、鉄の肉体を得た大怨霊将門を相手に「楽しいなぁ~、将門よ!!」と笑いながら切り結んでいく俵藤太よ!? そんなの、千葉真一さんか藤岡弘、さんレベルの超人でなきゃ演じられないでしょうが……別段、私は国広さんのことをことさらに批判するつもりは毛頭ないのですが、彼の演じた藤太は、自分の正義に特になんの疑いも抱いていない、平和を愛する非常に単純明快なヒーローですよね。そうじゃないと思うんだけどなぁ。将門がいなければその代わりに覇者になってしまいかねない危険さがあるはずなんですよ、『瀧夜叉姫』の俵藤太は。
 まさしく、映画『ダークナイト』でジョーカーがバットマンを指して言ったセリフそのものですよね。「お前さんも、世間にとっちゃあ俺とおんなじ化けモンなんだよう!」

 まぁそれはそれとして、菅田さんの将門はやっぱり良かったなぁ~!! 予想通りの貫禄でした。惜しむらくは、鬼と化する前、正妻とその子たちを惨殺される以前の、生身の英雄然とした平将門を演じるパートが少なすぎたことでしょうか。そこがあるからこそ、悪役になった将門の深みも増すというものなのにねぇ。

 やっぱりね、『瀧夜叉姫』の肝は、安倍晴明とか瀧夜叉姫とかは意外とどうでもよくて、あくまでも平将門と俵藤太との、悪と善、外道者と英雄という、正反対ながらも最も近い場所にある表裏一体の関係の永遠の対立だと思うんです。この哀しさ、生命のスパークよ!! まさにこれはジョーカーとバットマン、キングギドラとゴジラ、ばいきんまんとアンパンマンの永久輪廻ですよね。この2人をしっかりと描かなければ、原作小説に伍する熱量を持った作品にするのは不可能かと思います。
 いや、ほんと、『瀧夜叉姫』における晴明&博雅ってほんとにただの狂言回しですもんね。お話をうまく進めてまとめるためだけの存在。会話シーンはもちろん味わい深いけど。
 そういえば、この晴明&博雅ペアを「名探偵と助手」の関係になぞらえると、この『瀧夜叉姫』はまさしく、あのシャーロック=ホームズ譚の中でも特に物語の構成が古臭い、長編『緋色の研究』、『四つの署名』、『恐怖の谷』あたりとまるでそっくりな古典的作りになっていることがよく分かります。そこはそれ、夢枕先生は20年前の将門パートと天徳四年の晴明パートをうまく交差させて退屈さを回避していますけど。

 そう考えると結局、長いシリーズの中のひとつの特別編としてならともかくも、1回こっきりになるかも知れないテレビスペシャルの、しかも佐々木晴明にとってのお披露目となる1発目に選んではいけなかったのかも知れないですね、『瀧夜叉姫』って。晴明さんが悠長に自己紹介してるヒマなんてないんですよ!

 最後に一つだけ。この『瀧夜叉姫』って、原作小説からして、タイトルになっているはずの瀧夜叉姫の印象がかなり薄いというか、キャラクターが前半と後半とでまるで違うんですよね。前半は純然たる悪役なのに、後半になると一転して悲劇のヒロインになるという。意地悪な見方をすると、形勢の移り変わりを見はからって、自分の悪行をまるっと興世王に転嫁してとんずらこいたような感じさえします。将門と藤太の命のやり取りに比べると、ほんとに人物としての魅力がうすいんですよね。
 なので、ドラマ版で誰が瀧夜叉姫を演じようが、んなこたど~でもいいわけで……キャスティングを見ても、あぁそうですかってなもんです。今回、女優活動の本格的再開としての舞台に『瀧夜叉姫』を選ぶべきではなかったと思うんですけどね。もっといい役のある作品にすればよかったのに。

 はっ!? まさか、今回の『瀧夜叉姫』ドラマ化自体が、関係者のキャリアに傷をつけんとする、なんらかの呪詛のかかった「官打ち」的な陰謀だったのでは……こわ~!! たすけて、晴明☆

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