長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

すべてはひとりから始まった  映画『ゴーゴー仮面ライダー』、災い転じて伝説となす ~やっと本文!!~

2021年12月26日 21時32分15秒 | 特撮あたり
≪資料編はこちら!≫

 はい~、というわけでありまして、我が『長岡京エイリアン』でも、もはや定番となりつつあります、「数年ぶりの記事更新シリーズ」でございます。
 え~……今回は何年ぶりですか、え? 「7年ぶり」? ふーん……7年前か。まだ千葉で一人暮らしをしてた時ですね。まさかそんときにゃあ、何気なく話題にしようとした映画レビューのために、年号も変わった未来の自分が年賀状書きがてら DVD見直すはめになってるとは思いもよらなかったでしょうね。やっとですよ! でも、こんな感じの「資料だけとりあえずのっけて塩漬け」モノ、このブログはいっくらでも残ってますからね!! いや~、まだまだ死ねないネ☆

 さてさて、なんでこの映画作品(と言ってよいものかどうか……)を取り上げるのかといいますと、ちょうど今、年末恒例の東映ヒーロー映画、そして「仮面ライダーシリーズ50周年記念作品」として映画館で公開中の『仮面ライダー ビヨンド・ジェネレーションズ』に、あの『シン・仮面ライダー』の抜け駆けをするかのような形で、仮面ライダー1号が登場しているというニュースがあったからなのでした。しかも、演じるのは藤岡弘、さんの実子の藤岡真威人(まいと 18歳)くんなんだとか! 藤岡弘、さんって、いま御年75歳ですよね!? やりおるわい!!
 ただ、こんな記事を挙げてる人間としては一も二もなく映画館に走るべきなのでしょうが、ちょ~っとこの『ビヨンド・ジェネレーションズ』、二の足を踏んでるんですよね……たぶん、観には行かないな。評判はすごくいいみたいなんですけどね。
 なんでかっていいますと、私もいよいよオッサンになってきたというべきなのか、シリーズ最新作の『仮面ライダーリバイス』のノリ……というか、ハイテンションな山寺宏一さんのノリについていけそうにないんだよなぁ。途中で絶対に「るっせぇ!!」と叫んで退場するような気がするんだよなぁ、私。やかましいバディは嫌いなんですよね。バディはやっぱり、次元大介じゃなきゃ!
 だいたい、前作『仮面ライダーセイバー』にもぜんぜんついていけなかったので、そこに「1号出るヨ!」と言われても、おいそれと観にはいけないかなぁ。扱いもなんか、中途半端じゃない? だって1号のビジュアルはピッカピカの新1号バージョンだし、ショッカー幹部が出るっていってもゾル大佐じゃないみたいだし。なんなんだよ、それ!!
 結局『ビヨンド・ジェネレーションズ』を観たくないのは単なる食わず嫌いなわけなんですけれども、シリーズ最新作とのコラボは映画『仮面ライダー1号』でもういいんじゃなかろうかと。あとはもう、1号をかつぎ出してやるんだったらゲスト扱いなんかしないで『 THE FIRST』か『シン・仮面ライダー』くらいに腹をくくって主役に据えてほしいですよね。あっ、『仮面ライダー BLACK SUN』も楽しみ!

 さてさて、このように実に50年もの長きにわたって続く、日本を代表する特撮ヒーロードラマの仮面ライダーシリーズなんですが、その始まりの特異点たるシリーズ第1作『仮面ライダー』の、記念すべき劇場版作品第1作『ゴーゴー仮面ライダー』をひもとき、温故知新、原点回帰、その魅力、情熱、爆発力に迫ってみようという記事なのであります、今回は! 伝説の爆心地!!


なんとなんと、映画第1作は TV通常放送回の再放送(上映)だった!?


 これ、ファンの間では驚きもしない基本知識なんですが、当時の特撮番組やアニメの劇場版上映って、オリジナル新作じゃなくて TV放映回のブローアップ上映がふつうだったんですよね。第1・2期『ゲゲゲの鬼太郎』とか『帰ってきたウルトラマン』とか、そうでしたよね?
 そういうわけで『仮面ライダー』も、毎週ヒーヒー言って「2号編」を撮影していた TVシリーズ制作陣にとっては非常にありがたい、通常回のブローアップ上映だったのですが、すぐに一世を風靡する大ブームとなった『仮面ライダー』、劇場版の次回作はめでたく制作陣を殺しにかかるオリジナル新作の撮影となったのでありました。これも大傑作、『仮面ライダー対ショッカー』! ザンジオー!!

 ただし当時、所詮はまだ1クールが終わったばっかりの駆け出し番組『仮面ライダー』。問題は、劇場版として胸を張ってさし出せるようなゴージャスな放送回があるのか? ヤドカリンなんてもんじゃ満足しないぞ、第二次怪獣ブームのガキンチョは!!

 それが……あったんだなぁ! これこそが、過去回に登場したオール改造人間が復活、一堂に会する第13話『トカゲロンと怪人大軍団』なわけ!!

 これはすごいですよ……総勢11体もの改造人間が総出撃、仮面ライダー1号に襲いかかる! 果たしてライダーに勝機はあるのか!?
 ところで蛇足ですが、我が『長岡京エイリアン』では、既存の表記がそうである場合は「怪人」としますが、ショッカーの改造人間はあくまでも「改造人間」と表記させていただきます。そんな、がんばってる人を「怪しい人」だなんて呼んじゃダメよ。

 ≪資料編≫の中でも語られていたことではあるのですが、この過去改造人間総復活エピソードの背景には、「主人公不在の状況をなんとかしなければ!」という異常に切迫した緊急事態がありました。すなはち、普通だったら主人公まわりの人間ドラマで稼ぐべき時間が、主演の俳優さんが入院降板しているがために新規撮影できず空いてしまう! そのために、撮影済みの映像の使いまわしに別アテレコでごまかすか、「変身して仮面をかぶった後のライダー」が繰り広げるアクションシーンで尺を埋めなければならないという非常に大人な事情があったからなのでありました。ライダーが常時変身していなければならないのは、敵の改造人間が強すぎるからなんだ! これ、先立つ第11話に登場した最強(当時)の改造人間ゲバコンドルいらいの論法ですよね。
 さらに今作ではそれだけでなく、「よもやこの人が仮面ライダー2号になるのでは?」と思わせるほど異様に高い格闘能力を誇る謎の青年・滝和也の秘密に迫るドラマも加わっています。アクションシーンばっかで中身スッカスカという、後の多くのエピソードで散見される失敗を巧妙に回避しているんですね。さすがは伊上勝!!

 この『ゴーゴー仮面ライダー』、というか『トカゲロンと怪人大軍団』は、いかにも『仮面ライダー』らしくツッコミどころ満載のエピソードではあるのですが、撮影段階では明らかに「旧1号編」の最終回という雰囲気が横溢しており、特にラストシーンにおけるヒロイン・緑川ルリ子との無言の見つめ合いシーンには、自然と涙を誘わせるものがあります。
 ここのシーン、11体もの改造人間たちとの死闘にみごと勝利したライダーは最初、駆け寄ってきた藤兵衛と滝和也に晴れやかに勝利を語るのですが、少し遅れてルリ子が近づくと、途端に無言になって数秒の見つめ合いののち、サイクロン号でひとり走り去るんですよね。
 これはすばらしい演出ですよ! 要するに、自分の正体を声から知られるわけにはいかない、涙を吞んで、拳を血が滲むほど握りしめて、笑顔を見せるルリ子から離れて地獄の闘いの日々に戻る。しかしルリ子への愛から、去り際に数秒の逡巡が生じてしまうという人間・本郷猛の苦悩が実に的確に表現されているシーンなのです。す、すごすぎる……
 そしてひとり去るライダーの背中を見つめながら、

ルリ子 「えらいわ。自分の命を捨ててまで、闘ってるのね。」
藤兵衛 「そう。自分のことばかり考えてちゃ、本当に平和で幸せな世の中にはならないからな。彼は、そのために闘ってるんだ。」

 と語り合うエンディングの完成度よ! つまりは、誤解から本郷猛を父親の仇と憎むことになったルリ子との和解を象徴する場面であり、同時に「本郷猛=仮面ライダー1号」という事実に、理屈でなく感情でたどり着くルリ子を暗に示唆している演出なんですよね。くぅう~! 
 また、気を遣って本郷猛をあえて「彼」と呼ぶ、藤兵衛の思慮深さ!! なんか後年のシリーズでは、脚本や演出上のこういった繊細な配慮がトンとなくなってきますよね。一般人がかなり近くにいる状況で「本郷! 変身だ!!」とか叫んだりね。これはいかにも一文字隼人らしいおっちょこちょいっぷりですが。

 さてさて、さらに物語としての『ゴーゴー仮面ライダー』の魅力に迫っていきたいと思うのですが、大きいポイントは3つあると思います。

1、あくまでも「改造人間による革命」にこだわるショッカー大首領の鋼の狂気
2、改造人間を超える「挫折し成長し続ける人間」としての本郷猛
3、「ピュキュィイイ~ン」とか「ピィヨォオ~ン」とかいう効果音の常識外の多用

 ざっとこんな感じでしょうか。順を追っていきましょう。


1、あくまでも「改造人間による革命」にこだわるショッカー大首領の鋼の狂気

 今作での悪の秘密組織ショッカーの作戦は、「東洋原子力研究所を破壊して放射能を拡散させ東京を壊滅させること」です。しかしくだんの東洋原子力研究所には、さしものショッカーでさえ舌を巻く堅牢な防御策が。ショッカーの先兵として、ちゃちゃっと守衛2名を葬って研究所に侵入せんとする再生さそり男と再生蝙蝠男でしたが、謎の見えない防壁の電撃によってあえなく弾き飛ばされてしまいます。互いに転倒する相手を献身的に介抱するさそりとこうもり。ショッカーの改造人間にも友情は芽生えているのだ!

ナレーション「バーリヤ。すなわち、電磁波を利用した見えない壁である。この電磁波防壁は、原水爆のエネルギーにも破れない強力なものである。」

 原子力研究所を守る防壁が原水爆のエネルギーにも破れないって……もうその時点で、守衛を雇ったり原子力を研究する必要がないんじゃないかとも思える超科学がいきなり出てくるわけですが、まぁいろいろ運用が難しいんでしょう。
 はふはふのていでショッカー基地に逃げ帰るさそりとこうもりでしたが、待っているのは言うまでもなく、大首領のおかんむり。

さそり男 「あのバーリヤを破壊しないかぎり、研究所襲撃は不可能です(「なっ。」という感じで隣の蝙蝠男を見る)。」
蝙蝠男  「しかも、我々の力ではどうにもならぬほど強烈です。」
大首領  「弱音を吐くな!! いいか、ショッカーの世界征服計画は、ヨーロッパやアメリカに比べて、日本支部がいちばん遅れている! そのためにあの原子力研究所を狙ったのだ。バーリヤがなんだ! ショッカーの科学者をもってすれば、とるに足らん! 科学者諸君、ただちにバーリヤ破壊ボールを使用させろ。」
科学者A 「お言葉ですが首領、あのバーリヤ破壊ボールは、20メートルの距離から投げ込まなければ、威力を発揮できません。」
科学者B 「それに、あのボールは5キロも重量がありますから、20メートルの距離から投げ込む力を持つ改造人間は存在しません。」
大首領  「馬鹿者!! ただちに、その能力を持つ改造人間を創り出せぇ!!」

 ここでの、一見たんなるコントともとれるショッカー基地内でのやりとりの中には、多くの情報が詰め込まれています。
・ショッカー大首領は、配下の改造人間たちや科学者陣にかなりイライラしている。
・イライラの原因は、大首領たる自分が直接指揮している日本支部が、よその部下たちが運営している世界の支部よりも計画進行が遅れているから。
・秘密兵器「バーリヤ破壊ボール」はもう完成しているが、それを使いこなせる改造人間がまだできていない。
・ショッカー科学者陣はバーリヤ破壊ボールの運用に改造人間を投入したくない。

 ここで大首領がやけにイライラしているのは、たんに日本支部での失敗がこんでいるからだけではありません。
 確かに、ヨーロッパ支部の死神博士やアメリカ支部のサボテグロンといった部下に任せている地域よりも、自分が直接面倒を見ている日本の方が成績が悪いというのはみっともない話ではあります。なんせ当の日本支部長にすえる予定だった本郷猛がショッカー最大の敵になっちゃってるんだもんねぇ。
 でも、ショッカー大首領の怒りの根本にあるのは、そこではないと思うんだなぁ。

 つまりその根本とは、さそりもこうもりも科学者陣も、のきなみ現状「できない」ことだけを言うだけ! 弱音吐きまくり!! リーダーであり経営者、雇用者(雇用体系はメチャクチャだけど)でもある大首領は、これにカチンときてるわけだ。
 対する仮面ライダーは、論理的に見ればライダー以上の強さを発揮できたはずの最強(当時)改造人間ゲバコンドルを、「挫折しても弱音を吐かない」精神で打ち破っているのです。もはやライダーは、弱音を吐いて勝てる相手じゃないんだぞ、わかってんのか!? ショッカー大首領は、直接ライダーの絡まないこの原子力研究所襲撃作戦においても、ショッカー日本支部に「意識革命」をうながしていたのです! そりゃ若干、銭形のとっつぁん入りますよね。
 でも哀しいのは、ライダーにとっての藤兵衛なり滝なりルリ子なりといった指導者・支援者が、大首領はいないってことなんですよね。結局、脳改造しないとだぁれも自分についてこないんじゃないかという人間不信……これこそが、永遠にライダーに勝てない根本の原因なんですが、ご本人は知ってか知らずか。

 そしてここで無視できないのは、大首領と科学者陣との間に、放送開始1クールにしてすでに無視しがたい「溝」が生まれているということなのでした。いちおう、科学者陣も大首領の恐怖政治におびえてか、明確な裏切り行為は数年後の別組織デストロンにおける科学部門幹部・結城丈二の離反まで発生しません。ですが、ここでの会話の中で科学者陣は明らかに、「5キロくらいのボールなんか、大砲かなんかで撃てばいいだろ……なんでわざわざ改造人間なんだよ?」というごくごく常識的な反論を、喉元まで出しかかっているのです。必要なのは大砲と、それをカモフラージュして搭載するトレーラーかなんかでしょ、トカゲロン1体よりは絶対に安上がりですよね?
 しかし、そこであくまでも「改造人間に蹴らせる」という手段に固執する大首領の狂気こそが、ショッカーの存在理由であり、弱点でもあるわけなのです。
 自らの手によって創造する新たな人類・改造人間。その子らが、既存の薄汚れたルールにまみれたひ弱な世界を破壊し、強靭な心身を持つ物のみが生きてゆく新世界を築きあげていくことこそが、ショッカーの目的なのです。その哲学ゆえに、なにがなんでも大首領は改造人間を作戦に無理くりねじ込み続ける!!
 現実的に直近の作戦を成功させるために、多少弱気と取られようとも冷静に現状を分析する現場スタッフ(科学者陣と改造人間)と、そんな根性じゃなんにもできんぞといきり立つ経営者(大首領)。これ……現実世界でもよくある風景じゃない? 現状認識が先か、理想が先か……ニワトリが先か卵が先か、みたいなやつ~!? そうか、だから大首領はニワトリをモチーフにした改造人間を作らなかったのか。ジョッカーはニワトリ男創ってたけど。

 ともかく、そんな感じで明らかに感情的になっている大首領と、そこに込められた狂気の哲学が見え隠れするエピソードなわけです、本作は。おもしろい!!


2、改造人間を超える「挫折し成長し続ける人間」としての本郷猛

 やっぱり、仮面ライダーが「ショッカーのバッタ男」じゃなくて「正義と大自然の使者」なのは、自ら考え、挫折をも糧として成長していく、力強い「生物」だからなんだと思うんです。
 そういう意味で、ショッカーが初期設定した技「ライダーキック」でなく、藤兵衛との猛特訓を経て自分で編み出した新必殺技「電光ライダーキック」で、一度は敗れた強敵トカゲロンを倒すという流れは非常に熱いわけなのです。まぁ、この流れはゲバコンドルの時もあったわけなんですが。

藤兵衛 「本郷……!」
1号  「立花さん!」
藤兵衛 「いつかこの山で、一流レーサーになるためにトレーニングしたな。お前は死に物狂いで、それに耐えた。本郷、もう一度、あの時の苦労をやろう!」
1号  「(無言で力強くうなずく)」
藤兵衛 「よし!!」

 この熱さよ……そりゃ死神博士も藤兵衛をトレーナーに起用したくもなるわ! 博士は、大首領の想いを理解していたのだなぁ。
 それにしても、この険しい断崖での猛特訓シーンで流れる BGM「ライダーファイト!」のピッタリ感ね!! サンバ調のトランペットとドラムの乱れ打ちが、ただカッコいいだけじゃない、泥臭くもある1号の苦闘を力強く物語る! これだ、これが正義の味方なのだ!!
 余談ですが、立花藤兵衛と言えば「おやっさん」なわけですが、上記のように、この時点での本郷猛は、藤兵衛のことをまだ「立花さん」と呼ぶ他人行儀感が残っていますね。いや、ここでの特訓を経てはじめて「おやっさん!」と呼べる関係が出来上がったというべきなのか? でも、いま「タチバナサン!」っていうと、別の仮面ライダーシリーズを連想しちゃいますよね。発音というか、言語がちょっと違うけど。

 ところで、ライダーは電光ライダーキックでトカゲロンを直接攻撃したのではなく、あくまでもトカゲロンのシュートしたバーリヤ破壊ボールを電光ライダーキックで蹴り返して、それを受け留めたトカゲロンとその周辺に倒れていた改造人間たちが、ボールの起爆によって一瞬で灰燼に帰するという、間接的な方法で相手を撃退していました。
 でも、原子力研究所の「原水爆のエネルギーにも耐えられる」バーリヤを破壊できるボールが爆発しちゃったんでしょ? それって、11体の改造人間が爆散する程度で済むのか……? 後年の『仮面ライダー V3』第2話以上の惨劇っていうか、ショッカーの作戦目標の東京壊滅って、原子力研究所にこだわらずに、単純にボールを爆弾として使えばよかったんじゃないの? ま、いっか……なんか、グリム童話の『牛とがまがえる』を彷彿とさせる、東西軍拡競争のカリカチュアということにしておきましょう。さすがは伊上ワールド!!

 一方、対するショッカー側にも彼らなりの成長はありまして、今作では、仮面ライダーに投入するだけ無駄だったベレー帽戦闘員のみなさんは極力ライダーにはぶつけず、改造人間軍団が不在にしている基地の留守番にまわすという的確な采配がありました。まぁ、頭と左腕をケガした状態の滝に全滅させられちゃったみたいですけど……
 他方で、唐突に全員復活の光栄にありついた再生改造人間軍団も、最初こそ威勢よくライダーを包囲して、

1号  「お前たちは、死んだはずの改造人間たちだな?」
蜘蛛男 「驚いたか? 改造人間は死なん! 貴様にやられた箇所を直せばな!!」
蝙蝠男 「この通りだ!!」
トカゲロン 「(笑って)おれ1人にもかなわぬお前が、11対1でどうやって勝てる!?」

 とスゴむのですが、それ以上の殺気をもって無言でサイクロン号を駆り、1人のこらず轢き殺しにかかる1号がコワすぎる。再生改造人間軍団は蜘蛛の子を散らすように逃げ回ります。これにはさすがのトカゲロンも口をぽかんと開けて棒立ち。
 ここの戦闘シーンも、さすがにモブ戦闘員とのアクションとは一味違うゼといった気合で、サラセニアンはツタ、蜘蛛男は棒術、かまきり男は鎖鎌を駆使してライダーを倒しにかかるのですが、どうやら彼らはスペックがライダーとの初戦から全く変わっていないか、むしろ劣化複製されたもののようで、幾多の決戦を経て成長し続けるライダーとは戦力に雲泥の差がありました。

戦闘開始から
41秒後  …… 蝙蝠男、1号のふつうのキックとチョップを受け崖から転げ落ちて殉職
1分10秒後 …… さそり男、1号に投げられ地面にめり込み殉職
1分15秒後 …… サラセニアン、1号に巻きつけた自分のツタで逆にシバかれ殉職
1分22秒後 …… 改造コブラ男、蜘蛛男の棒を奪い取った1号に腰のあたりをぶっ叩かれ殉職
1分25秒後 …… 蜘蛛男、自分の棒を1号に奪い取られ、胸を突かれ殉職
1分30秒後 …… かまきり男、鎖鎌を1号にかけるが、鎖をつかんだ1号に逆にぶん回され地面に激突し殉職
1分33秒後 …… 蜂女、1号に跳びかかったところをかわされ、かまきり男にぶつかり殉職
1分36秒後 …… 死神カメレオン、ライダーキックを受けて殉職
※ゲバコンドル、ヤモゲラスはいつの間にか殉職(50秒くらいまでは生存が確認できる)

 な、なんだ、この、絶望的な歯の立たなさは。『信長の野望』の上杉謙信みたいな1号に対して、あつあつのホットコーヒーに入れた角砂糖のように瞬時に溶けていく、はかないいのち!!
 改造コブラ男、火ィ吐けないのか!? トカゲロンのバーリヤ破壊ボールが近くにあるから火気厳禁!? ベロクロン2世じゃないんだから。
 蜂女さんは……あの和智正喜先生の名作小説『仮面ライダー 誕生1971』の設定を持ってるのかな? よけられたら死亡って……それでよく、後年スーパーショッカーの大幹部になりたいだなんてぬけぬけと言えたな!

 ここらへんの戦力差の原因って、時代も番組も全然ちがいますが、『ウルトラマンメビウス』のウルトラマン VS メフィラス星人戦がわかりやすく説明してましたよね。経験の積み重ねで強くなるのが、本物よね。
 この作品に端を発する「悪の組織の再生改造人間」って、たぶん、初回に登場した改造人間の素体(人間)とは全く何の関係もない素体を捕まえて、同じか、それをもっと安上がりにした設計法で同じ姿の改造人間にして、殉職ギリギリ直前までの初代の記憶(記録)を、新素体の脳に上書きしてるんじゃないのかなぁ。だから、1回負けてる記憶もあるんじゃないの? あのサイクロン号からの逃げようは、そうとうなトラウマが刻み込まれていると見ました。それ余計だな~!!
 だいたい「貴様にやられた箇所」って、ほぼ全員、全身を溶かされたり粉々に爆死したりしてますからね。全とっかえだろ!

 とまぁこんな感じで、人間らしく挫折を克服して強くなり続ける仮面ライダーと、ガワは強そうでも戦闘員さんとそう大差のない戦力劣化に見舞われている再生改造人間軍団との、哀しすぎる格差が目立つ構図なのでありました。
 むろん新型のトカゲロンは強いですよ。通常ライダーキックを1発受けてもちょっとよろけたくらいでしたからね。それに引き換え、再生改造人間軍団ときたら……特に蜂女と改造コブラ男にいたっては、この後ショッカーでは二度と再生産されてないんですよね。そりゃあ、こんなやられっぷりじゃ戦力外とみなされるわ。

 最後に、どうしても触れずにはおられないのが、ライダーが改造人間軍団との決戦時に、のちに「ライダー変身ポーズ」としてつとに有名になるポーズ(右腕を横斜め上に伸ばし、同じ方向に向けた左腕を胸の前でそえる)をとりながら2度叫んだ「ライダーファイト!!」発言について。この時点で1号に変身する際のポーズは確立されていないので(腰のベルトに風圧を受けて変身するだけ)、ポーズの初出はここなのでした。超重要!
 これ、別に言ったところで「ピキィイーン!」とかいう効果音が響いて全身が光るとかの見た目の変化は特にないのですが、1回目は10体の改造人間軍団との激戦の直前に、2回目は大将トカゲロンと対峙しながらという大事な時での、この雄叫び。大切なことなので2回言いました!!
 果たしてこれは、必要な掛け声だったのか? そう、これは絶対に必要不可欠なライダーの儀式なのであります。
 だって、ひとりで11体と闘うんだぜ。誰も応援してくれないんだぜ。自分が自分を応援しないで、いったい誰が応援してくれる!?
 素晴らしい。孤独な闘いに心が折れそうになりながらも、勇気を賭して己を奮い立たせ、既存の自分を超えてゆく!!
 このポーズ、特殊効果こそありませんが、おそらく精神論では片付けられない「内的変革」があったからこそ、ライダーは11体もの改造人間軍団に勝てたのではないのだろうか。だからこそ、それ以降の1号は風力だけに頼らず、己のライダーファイトポーズによって発生するエネルギーで、いつでもどこでも自由自在に変身できるようになったのではなかろうかと! さすが、劇場版に採用されるだけの重要な契機だったんだなぁ、この一戦は!!
 ライダーファイト。単なる見栄とあなどるなかれ。伝説の始まりは、ここにもあったのだ! あなたも今度、ピンチに陥った時にやってみては? 少なくとも、周囲のあなたに対する視線は変わるぞ! あんまりいい意味じゃないかもしんないけど……

3、「ピュキュィイイ~ン」とか「ピィヨォオ~ン」とかいう効果音の常識外の多用

 これはもう、本編を観てもらうしかないわけなんですが、作り手が「理屈なんかどうでもいいから、とにかく子どもの心にささるタイミングで効果音を入れろ!」と確信的にやっている感がハンパない! ただライダーが振り返ってこっちを見るだけ、ただ崖の上でポーズを取るだけで鳴り響く、あの独特の効果音!! もう最高……
 わたし本気で思うんですけど、かの映画『仮面ライダー THE FIRST』がうまくいかなかったのって、この昭和シリーズの効果音の伝統をいっさい排しちゃったからなんじゃないでしょうか。いや、それはリアル志向な平成映像文化の勇気ある選択ではあったのでしょう。でも、それがあるとないとでは、観る者に伝わってくる熱量が段違いというか……結局、距離感のあるクールな印象になっちゃうんですよね、生々しい音しか響かないアクションは。
 映画『仮面ライダー1号』は、ライダーがパンチをする時の過剰すぎる「ドゴォオン!!」という効果音をちらっとだけ再現していましたが、ちょっと思いきりが足りなかったな。もっとやればよかったのに!

 この点、コメントの中で「効果音」が『仮面ライダー』の大きな魅力の一つであると明言している庵野秀明監督の『シン・仮面ライダー』は非常に期待が持てます。『シン・ゴジラ』も、音楽やら効果音やら昭和流用のオンパレードでしたもんね。まぁ、なんでも古いやつを使えばいいってもんでもないんだけれども、良いものをほっぽらかしておくのも、損ですから。


 そんなこんなでいろいろ言いましたが、『ゴーゴー仮面ライダー』は、もともと劇場用作品として作られたものではないのですが、主人公不在というとんでもない状況をなんとかしたいという制作スタッフの熱意と、仮面ライダー1号の勝利に賭ける情熱とが驚くほどきれいにシンクロした奇跡の作品になりおおせているのでした。TV の流用とあなどるなかれ、ここには50年も続く魅力の核心が秘められている。ぜひとも観てみて! 30分もないし!!
 ところで、タイトルにでかでかと「ひとり」とうちましたが、忘れてならないのは、あくまで全ての責任を負うヒーローが1人なのであって、それを支える市井の人々は何人もいる、ということです。藤兵衛、滝、そしてルリ子……ヒーローの成長は、それを見守る者たちの真実の愛がなければ望むべくもないものなのだ!
 関係ないけど、藤兵衛さんの「スナックアミーゴ」って、このトカゲロンの回を最後に閉店して、次回からは「立花オートコーナー」に業種替えするんですよね。正義のヒーローを助けながらの経営も大変だったんだろうなぁ! でも、スナックアミーゴはこの17年後に中目黒で再オープンできたみたいだから、よかったですね!

 しかし、当時の年齢で藤兵衛さんは40歳、野本健(トカゲロン)は25歳か! 野本選手、ものすごい貫禄だよなぁ……そりゃ、のちのちネオショッカーにスカウトされて大幹部に出世するよな。令和の感覚をくつがえす25歳ですよね。自宅でサングラスにバスローブって!

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