goo blog サービス終了のお知らせ 

長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

読書メモ 『幽霊を捕まえようとした科学者たち』 第2章

2016年09月04日 16時40分47秒 | すきな小説
ウィリアム=フレッチャー=バレット(Sir William Fletcher Barrett 1844~1925年)
 サー・ウィリアム=フレッチャー=バレットは、イギリスの物理学者。ウィリアム=クルックスやオリバー=ロッジほど物理学の分野で華々しく活躍したわけではないが、堅実な研究で評価された。イギリスとアメリカ両国での「SPR」創立に貢献。テレパシーやダウジングについての研究報告が多い。なお父は聖職者で、バレットも生涯敬虔なクリスチャンだった。
 催眠状態で引き起こされる現象に興味を持ち、最初は幻覚説、次にテレパシー説を展開した。40年近く研究した後、暗示や無意識、テレパシーだけでは説明できない超常現象があるという結論に達し、1918年には霊魂説を採った。
 1876年、32歳で生物学会にラップ音に言及した論文を提出するが拒否される。ただ人類学部門だけは議長だったアルフレッド=ラッセル=ウォレスの決定票などでその論文を受理した。1881~82年にかけて、イギリスの SPR設立の主導者のひとりとなる。また、1884年9月にはアメリカに旅行し、アメリカSPR 設立のきっかけも作る。
 1887年、バレットがテレパシー研究の対象としてきた霊媒師クリーリー姉妹のトリックがヘンリー=シジウィック夫妻によって暴露される。1890年代にはダウジング研究を始める。1904年、SPR第7代会長に就任する。


1876年10月
 動物学者レイ=ランケスター(29歳)、霊媒師ヘンリー=スレイドの石板書記交霊術を詐欺で告発し有罪判決を下させる(スレイド弁護側の証人にはアルフレッド=ラッセル=ウォレスもいた)。


1882年2月
 哲学者ヘンリー=シジウィック(44歳)、古典文学者フレデリック=マイヤース(39歳)、心理学者エドマンド=ガーニー(35歳)、ケンブリッジ大学で「イギリス心霊現象研究協会」を設立する。初代会長はヘンリー=シジウィック。幽霊担当はマイヤース、ガーニー、ヘンリーの妻エレノア。テレパシー担当はウィリアム=バレット。会員は約200名であり、詩人アルフレッド=テニスン、作家ルイス=キャロル、アメリカの作家マーク=トウェインも入会していた。


エレノア=ミルドレッド=シジウィック(Eleanor Mildred Sidgwick 1845~1936年)
 エレノア=ミルドレッド=シジウィックは、イギリスの数学者。
 義兄に当たるレイリー卿の物理実験に協力、イギリス会報に3つの論文を発表。ニューナム・カレッジ校長としても有名。当時のイギリスを代表する女性のひとりで、SPRにも強い影響力を持っていた。しかし交霊会での現象に恵まれず、長期間、心霊現象は生者のテレパシーによるものだと考えていた。非常に厳格で理知的だったという。
 SPRへの参加後は、1888~97年に会報と議事録を編集。1901年に評議員となり、1907~32年に名誉事務局長。1885~94年の 「幻覚の国勢調査」に協力、膨大な資料を精力的に編纂した。1932年には『SPRの歴史』を発表した。


リチャード=ホジソン(Richard Hodgson 1855~1905年)
 リチャード=ホジソンは、イギリスの法律学者。1882年の SPR創立時からのメンバーで、ASPR(アメリカSPR、のちに SPRアメリカ支部)の共同創立者。優れた知性と極端な懐疑主義で知られた。彼の初期の調査はすべて否定的結果に終わったため、霊媒師パイパー夫人を10年ほど調査するまでは、「ほとんどすべてのプロの霊媒たちは、多少とも互いに結託した、卑しい詐欺師の一団である。」と信じていた。なお、1884~85年に当時隆盛を誇っていた神智学のブラヴァツキー夫人を調査して否定的な報告書を提出したり、1895年、ケンブリッジで行われた霊媒師ユーサピア=パラディーノの交霊会に出席して詐欺だと確信したエピソードなどが知られている。
 1887年5月、ホジソンはヘンリー=シジウィックの説得に応じて ASPRの新事務局長に就任し、併せてパイパー夫人の調査をするため、アメリカ合衆国ボストンに派遣された。まもなく、ASPRに加入した詩人で作家のジョージ=ペラムと知り合い、親しい友人となった。
 1889年、パイパー夫人の調査をするうち、その誠実さを認識したホジソンは、さらに夫人にとって未知な環境での交霊会を観察するため、イギリスに招待した。夫人は厳重な監視下で88回の交霊会を開き、多くの SPRメンバーが死後存続を確信したが、ホジソンはまだ懐疑的な姿勢を保っていた。
 1892年、親友のジョージ=ペラムが事故死。その1ヶ月後、彼の霊がパイパー夫人の交霊会に出現した。ホジソンはすぐには信用せず、ペラムの友人を何人も匿名で交霊会に参加させ、会話の内容を確認した。ペラムは旧知の友人たちをすぐに見分けて名前を呼んで話しかけ、話し方は生前の特徴をよく備えていた。また、子供の頃に会ったきりだった者はわからない様子だった。生前会ったことがない者が混ざっていると、「面識がない」ときっぱり言い切った。ペラムについてさまざまな角度から検証したホジソンは、ついにパイパー夫人の霊媒能力だけでなく、死後存続も真実であると確信するようになった。
 1897年、パイパー夫人を通じて現れる霊が「レクター」と名乗り、これ以上ペラムを当てにしないよう警告した。その後はレクターが主な通信相手となった。


ヘレナ=ペトロヴナ=ブラヴァツキー (Helena Petrovna Blavatsky 1831~91年)
 ヘレナ=ペトロヴナ=ブラヴァツキーは、「近代神智学」を創唱したロシア帝国の人物で、神智学協会の設立者のひとりである。
 彼女の生涯には多くの謎があり、特に1874年にアメリカで活動を始めるまでの前半生はまったくヴェールにつつまれ、多くの神話に彩られている。ブラヴァツキー自身が残したメモや日記、周囲に語った事柄、親族など近しい人々の証言などが再構成され一般にも流布しているが、矛盾が多く、一見荒唐無稽とも思われる事件の連続であり、真偽については議論を呼んできた。神智学協会や支持者は正しさを証明しようとし、批判者は虚偽であることを暴こうとし、現在も毀誉褒貶が激しい人物である。
 神智学協会は、「偉大な魂(マハトマ)」による古代の智慧の開示を通じて諸宗教の対立を超えた「古代の智慧」、「根源的な神的叡智」への回帰をめざしていた。その思想は、キリスト教・仏教・ヒンドゥー教・古代エジプトの宗教をはじめ、さまざまな宗教や神秘主義思想を折衷したものである。「神智学(theosophy)」は、キリスト教世界にすでにあった概念で、「隠された神性の内的直観による認識」を意味している。協会のスローガンは「真理にまさる宗教はない」であり、神智学は宗教ではなく神聖な知識または神聖な科学であるとされる。
 ブラヴァツキーに始まる近代神智学は、多くの芸術家たちにインスピレーションを与えたことが知られている。例えば、ロシアの作曲家スクリャービンも傾倒し、イェイツやカンディンスキーにも影響を与えた。ニューエイジ思想やオカルティズム、新宗教への影響も大きい。
 1884年に、SPRのリチャード=ホジソンがインドの神智学協会本部に赴いて調査を行い、神秘的な現象がトリックであると結論づけた「ホジソン・レポート」が1885年に公表された。これによりブラヴァツキーは詐欺師であるという認識が広がった。


1885年
 アメリカの哲学者ウィリアム=ジェイムズ(43歳)ら、「アメリカ心霊現象研究協会(ASPR)」を設立する。初代会長は天文学者のサイモン=ニューカム(50歳)。
 ASPR会長ニューカム、『サイエンス』誌上でイギリスSPR の研究結果を徹底的に批判し対立する。ASPRの中心人物であるジェイムズ、ニューカムの論調を非難する。


ウィリアム=ジェイムズ(William James 1842~1910年)
 ウィリアム=ジェイムズは、アメリカ合衆国の哲学者・心理学者である。意識の流れの理論を提唱し、ジェイムズ=ジョイスの『ユリシーズ』(1922年)などのアメリカ文学にも影響を与えた。チャールズ=パースやジョン=デューイに並ぶプラグマティスト(実用主義者)の代表的存在として知られている。弟は小説家のヘンリー=ジェイムズ。著作は哲学のみならず心理学や生理学など多岐に及んでいる。
 日本の哲学者である西田幾多郎の提唱した「純粋経験論」に示唆を与えるなど、日本の近代哲学の発展にも少なからぬ影響を及ぼした。夏目漱石も影響を受けていることが知られている。後の認知心理学における記憶の理論、トランスパーソナル心理学に通じる『宗教的経験の諸相』(1902年)など、様々な影響をもたらしている。ジェイムズは1875年にはアメリカで初の心理学の講義を開始し研究室を設けた。ドイツのヴィルヘルム=ヴントが研究室を用意したのは、この4年後の1879年である。
 またジェイムズは超常現象に対しても興味を持ち、「それを信じたい人には信じるに足る材料を与えてくれるけれど、疑う人にまで信じるに足る証拠はない。超常現象の解明というのは本質的にそういう限界を持っている。」と発言した。後にイギリスの作家コリン=ウィルソンは、これを「ウィリアム=ジェイムズの法則」と名づけた。


レオノーラ=エヴェリーナ=パイパー(Leonora Evelina Piper 1859~1950年)
 レオノーラ=エヴェリーナ=パイパーは、アメリカの女性霊媒師。イギリス心霊現象研究協会(The Society for Psychical Research、略してSPR)が協会発足初期に調査対象とした有名な霊媒のひとり。
 パイパーは、1884年に信仰治療師のもとを訪れた際にトランス状態に陥り、ネイティヴアメリカンの霊からメッセージを受け、これをきっかけに内輪の交霊会を開催し始めたという。パイパーは特に、知るはずのない交霊会参加者の個人的な秘密を告げる能力に長けており、このほかに自動書記やサイコメトリーの能力も発揮したという。
 ASPRのウィリアム=ジェイムズは1885年からパイパーの交霊会に参加し、その能力を本物と確信したことで、心霊研究の道に入ったという。1887年には SPRのリチャード=ホジソンの調査を受け、2年後の1889年には SPRの依頼により、ジェイムズとホジソンの調査を受けるためにイギリスへわたった。
 ホジソンは、かつてブラヴァツキー夫人による神秘現象を詐術と暴いたことがあり、パイパーに対しても当初は懐疑的な立場をとっており、周囲からもブラヴァツキー同様にパイパーのトリックを暴くことを期待されていた。しかし、1892年3月に実施されたパイパーの交霊会において、パイパーが先月2月に事故死したばかりのホジソンの亡き旧友ジョージ=ペラムの名を名乗り、交霊会の参加者たちしか知りえないことを語る様子を見て、パイパーのもとに旧友の霊が現れたと認め、死後生存の証拠を得たと考えた。SPRの懐疑派の代表的人物といえるホジソンが、心霊主義を肯定する立場をとってパイパーの能力を本物と認めたことは、SPRにとっては大事件であった。こうした実績から、パイパーをアメリカを代表する霊媒のひとりとする声もある。同様にパイパーを通じて心霊主義を支持した学者にはオリバー=ロッジ、フレデリック=マイヤースらがいる。
 また、心霊主義に関心を持っていたことで知られる作家のコナン=ドイルは、1899年にパイパーがトランス状態で「世界各地で恐ろしい戦乱が生じます」と語ったことを、1914年開戦の第一次世界大戦を示したことだと指摘しており、パイパーをダニエル=ダングラス=ホームと並ぶ世界最高級の霊媒師として高く評価している。
 ただし、SPRの初代会長であるヘンリー=シジウィックらは、ホジソンの旧友の霊が交霊会参加者について語ったとされる件を、パイパーがテレパシーで参加者たちの思考を読み取ったとの解釈できるなどの理由で(超ESP仮説)、本件を心霊主義の確固たる証拠と認めることはなかった。パイパーの支配霊のひとりはフランス人の「フィニィ医師」の霊とされるが、フランス語をほとんど話すことができず、医学の知識もなかったとの批判もある。ホジソンがパイパーの調査を開始した際も、同席していたウィリアム=ジェイムズがパイパーの指導霊と話す際、ジェイムズが少しでも流暢なフランス語を話すと、この霊は返答に詰まったという。また、ホジソンが2人の子供をもうけて長生きすると予言したが、これも当たることはなかった。


1886年6月
 イギリスの有名な霊媒師ダニエル=ダングラス=ホーム、結核により死去(53歳)。


フランク=ポドモア(Frank Podmore 1856~1910年)
 フランク=ポドモアは、イギリスの作家。社会主義運動でも有名。
 超常現象の信憑性には、オクスフォード大学在学中から個人的に確信を抱き、終生関心を持っていた。しかし思想としてのスピリチュアリズムには疑問を抱き、社会主義者ロバート=オーエンに傾倒。現在のイギリス労働党の基礎となった「ファビアン・ソサエティ」創立に協力し、「スピリチュアリズムのよきライバル」と言われた。なお、心霊現象研究協会には創立時から長期間関わり続け、科学的厳正さと文才で、行き過ぎた超常現象賞賛に対してブレーキの役割を果たしたという。
 1882年、SPR創立時に評議員に選ばれ、その後27年間在籍し続けた。またフレデリック=マイヤースと共同で名誉幹事をつとめる。1886年、マイヤース、エドマンド=ガーニーと共同執筆で SPRの研究報告書『生者の幻像(Phantasms of the Living)』を出版する。
 1906年、文筆活動に専念するため、25年間つとめた郵政官僚を退職。理想的社会主義者のロバート=オーエンに傾倒し、「社会主義とスピリチュアリズム双方の父」と賞賛する。
 1910年8月、イングランド地方の有名な保養地モルヴァン丘陵の泉で溺死。54歳。同性愛スキャンダルに巻き込まれたことによる自殺説も流れた。


オリヴァー=ロッジ(Sir Oliver Joseph Lodge 1851~1940年)
 サー・オリヴァー=ロッジは、イギリスの物理学者・作家。初期の無線電信の検波器に用いられたコヒーラ検波器の発明者である。また点火プラグの発明もした。エーテルの研究でも知られる。また、心霊現象研究協会のメンバーで、心霊現象を肯定する立場での活動、著述もおこなった。
 ロンドン大学で科学を学び、1881年にリヴァプール大学で教鞭を取るようになる。1900年にリヴァプールを離れてバーミンガム大学に移り、1919年の引退までそこに留まった。イギリスの生んだ世界的物理学者であると同時に、その物理学的概念を心霊現象の解釈に適用した最初の心霊学者でもあった。
 ロッジは、目に見えない世界こそ実在で、それはこの地球をはじめとする全大宇宙の内奥に存在し、物質というのはその生命が意識ある個体としての存在を表現するためにエーテルが凝結したものに過ぎないと主張した。その著書は大小あわせて20冊を超えるが、いずれも現実界は虚の世界で霊界こそ実在界であるという、仏教でいう色即是空の哲学に貫かれている。
 彼は霊の世界について50年以上も研究し、その結果ますます宇宙を支配する超越的知性すなわち神への畏敬の念を深めたと述べている。科学的探究がかえって宗教心を深める結果となったのである。もちろんここでいう宗教心は、特定の宗教に限るものではない。早世した自身の息子レイモンドと交霊しえたと信じた著作『レイモンド』は日本でも大正時代に野尻抱影らが翻訳し、川端康成などに影響を与えた。
 ある心霊現象に係わる詐欺容疑の訴訟問題で、ロッジは証人として法廷に立ったことがある。その時、「霊の世界というのは一種の幻覚ですね」と尋問されて、ロッジは首を横に振って、「この世こそ幻影の世界なのです。 実在の世界は目に見えないところにのみ存在します。」と返答した。


1886年10月
 イギリスSPR、テレパシーと霊体に関する研究報告書『生者の幻像』全2巻を刊行する(本文エドマンド=ガーニー、序文フレデリック=マイヤース)。しかし多くのマスコミからは評価されず。
1887年1月
 アメリカSPR のウィリアム=ジェイムズ(45歳)、イギリスSPR の『生者の幻像』を『サイエンス』誌上で高く評価するが、多くの科学者は批判する。
1887年4月
 アメリカ・ペンシルヴェニア大学の超常現象研究機関「セイバート委員会」(委員長は心理学者のハワード=ファーネス)、霊媒師や石板書記を徹底的に批判する研究報告書を発表する。
1887年
 イギリスの小説家オスカー=ワイルド(33歳)、恐怖小説『カンタヴィルの亡霊』を発表する。
1888年6月
 イギリスSPR のエドマンド=ガーニー、調査先の行楽地ブライトンでクロロホルムの誤用により事故死。享年41歳。
1888年10月
 ハイズヴィル事件の有名な霊媒師マーガレット=フォックス(50歳)、40年前のラップ現象はトリックであったことを告白する。
1889年
 パリで開催された国際実験心理学会議の分科会で心霊研究が議題となり、SPRの提案により欧米6ヶ国が参加する国際的な「幻覚統計調査」の実施が決定される。
1889年11月
 霊媒師マーガレット=フォックス(51歳)、昨年の自らのトリック告白を金銭目的の虚偽として撤回する。
 霊媒師レオノーラ=パイパー(30歳)、SPRの要請により心霊現象研究のためにロンドンに渡る。
 霊媒師エウサピア=パラディーノ(35歳)、イタリア・ナポリで精神科医ロンブローゾ(64歳)の調査を受けるがトリックではないと判断される。
1890年
 匿名人物「霊媒師A」による心霊現象トリック暴露本『ある心理霊媒師の暴露』が出版され話題となる。
1892年
 ウィリアム=ジェイムズの弟の小説家ヘンリー=ジェイムズ(49歳)、SPRの故エドマンド=ガーニーをモデルとした恐怖小説『エドマンド=オーム卿』を発表する。
1892年8月
 SPR、国際実験心理学会議で「幻覚統計調査」の結果を発表し、幽霊の存在を裏付ける(人は偶然の430~440倍の確率で幽霊らしき存在に出遭う)。
1893年12月
 アメリカの哲学者ウィリアム=ジェイムズ(51歳)、SPR第3代会長に就任する。
1894年
 SPRのシャルル=リシェ(44歳)、フレデリック=マイヤース(51歳)、オリヴァー=ロッジ(43歳)ら、リシェの別荘のある地中海のルボー島で霊媒師エウサピア=パラディーノ(40歳)の調査研究を行い(ルボー島実験)、パラディーノの霊能力を本物であると認める。
1895年4月
 SPRのリチャード=ホジソン(40歳)、SPR会報でルボー島の研究結果を徹底的に否定する。
 SPR、パラディーノをイギリス・ケンブリッジに招いて霊媒実験を実施するが、ホジソンにより霊能力はトリックであると断定される。
1895年12月
 ウィリアム=クルックス(63歳)、SPR第4代会長に就任する。
1897年5月
 イギリスの小説家ブラム=ストーカー(50歳)、長編恐怖小説『ドラキュラ』を発表する。
1897年12月
 リチャード=ホジソン(42歳)、「第2次パイパー報告」で初めて霊の存在を認める。
1898年
 小説家ヘンリー=ジェイムズ(55歳)、恐怖心理小説『ねじの回転』を発表する。
1898年10月
 物理学者ウィリアム=クルックス(66歳)、イギリス学術協会の会長に就任するが、変わらず霊や超能力の存在を主張する。


シャルル=ロベール=リシェ(Charles Robert Richet 1850~1935年)
 シャルル=ロベール=リシェは、フランスの生理学者。1913年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。アレルギー研究の父でもある。
 パリ大学に入学後、医学を学び外科医を目指すが、生理学を志すようになる。1869年に医学博士号を取得後、1878年には理学博士号も取得。1879年にパリ大学医学部生理学講師に着任、1887年には生理学教授となる。1913年、アナフィラキシー・ショックの研究によりノーベル生理学・医学賞を受賞した。体温調整機能の研究も業績の一つである。1927年に大学を引退後は、平和論の推進、航空科学の研究、精神感応術の研究を進めた。
 心霊現象の研究でも知られ、1905年には心霊現象研究協会(SPR)の第8代会長もつとめている。1893年には当時話題になっていたイタリア人霊媒師エウサピア=パラディーノを調査する過程で、エーテル体を物質化または視覚化する半物質を発見し、「エクトプラズム」という新語をつくりだしたことでも知られている。


チェーザレ=ロンブローゾ(Cesare Lombroso 1835~1909年)
 チェーザレ=ロンブローゾは、イタリアの精神科医で犯罪人類学の創始者である。「犯罪学の父」とも呼ばれることがある。
 ロンブローゾは心霊研究家(心霊主義者)としての顔も持っていた。1891年、彼を含む6名の学者からなる委員会は、当時の有名な物理霊媒師であったエウサピア=パラディーノがミラノで開催した交霊会に立ち会って調査を行い、彼女が起こした心霊現象について「真実である」と判断した。


ネリー=タイタス事件
 1898年10月にアメリカ合衆国ニューハンプシャー州で発生した超常現象事件。失踪した少女の霊を感じ取った近所の主婦ネリー=タイタスが少女の遺体を発見した。事件を公表した ASPRのウィリアム=ジェイムズは、ネリーの霊視能力を科学的に確かに存在していると認めた。


1900年8月
 SPRの創設者ヘンリー=シジウィック、死去(62歳)。
1901年1月
 SPR第5代会長フレデリック=マイヤース、死去(57歳)。
 イギリス帝国皇帝ヴィクトリア1世、崩御(81歳)。
1902年
 ウィリアム=ジェイムズ(60歳)、自身の哲学講義を基にした『宗教的経験の諸相 人間性の研究』を発表する。
1905年12月
 ASPRのリチャード=ホジソン、死去(50歳)。
1906年1月
 霊媒師レオノーラ=パイパー(47歳)の交霊会に、死亡した直後のリチャード=ホジソンの霊が出現する。
1906年12月
 オリヴァー=ロッジらSPR、レオノーラ=パイパーをロンドンに招き2回目の検証実験を行う。
1908年12月
 SPR、イタリア・ナポリで霊媒師エウサピア=パラディーノ(54歳)の交霊会の検証実験を行い、パラディーノの霊能力を改めてトリックでないと認める。
1909年
 SPRのウィリアム=バレット(65歳)、霊媒師パイパーやパラディーノに関する長年の研究をまとめた著書『新しい思想世界の入り口で』を発表する。
1909年12月
 ハーヴァード大学の心理学者ヒューゴー=ミュンスターバーグ(46歳)、パラディーノの交霊会のトリックを暴露し、SPRのウィリアム=ジェイムズを批判する。
1910年8月
 ウィリアム=ジェイムズ、アメリカ合衆国ニューハンプシャー州の自宅で死去(68歳)。
1918年
 霊媒師エウサピア=パラディーノ、死去(64歳)。
1919年
 故ヘンリー=シジウィックの義弟であるノーベル賞物理学者レイリー男爵ジョン=ストラット(77歳)、SPR第13代会長に就任する。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

読書メモ 『幽霊を捕まえようとした科学者たち』 第1章

2016年09月03日 20時18分45秒 | すきな小説
ノンフィクション小説『幽霊を捕まえようとした科学者たち』(2006年 デボラ=ブラム)


エマヌエル=スヴェーデンボリ(Emanuel Swedenborg 1688~1772年)
 エマヌエル=スヴェーデンボリは、スウェーデンの貴族・科学者・神学者・神秘主義思想家である。多くの場合、姓は「スウェーデンボルグ」と表記される。生きながら霊界を見て来たと言う霊的体験に基づく大量の著述で知られ、その多くがイギリスの大英博物館に保管されている。スウェーデンボリによる霊界の描写は、現代人に起こる臨死体験と共通点が多いとされる。両者に共通する点は、広大なトンネルを抜ける体験や光体験、人生回顧や時空を超えた領域を訪れる体験などである。


実録幽霊体験談集『自然の夜の側』(1848年刊行 イギリス)
 児童文学者キャサリン=クロウが編集した実録幽霊体験談集。イギリス国内でベストセラーとなり、「ポルターガイスト」という言葉が一般化した。


ハイズヴィル事件
 1848年3月にアメリカ合衆国ニューヨーク州ハイズヴィル村で発生した、フォックス家の姉妹の周辺で発生した超常現象事件。フォックス姉妹が、霊と交流できると告白したことで一大交霊ブームを引き起こし、近代スピリチュアリズムのきっかけを作った。
 次女マーガレット(1838~93年)と三女キャサリン(1841~92年)の2人は、後に超常現象のひとつとされる「ラップ現象」を起こす事が可能で、死者の霊と音を介して対話や交信できる霊媒師として有名になり一大センセーションを巻き起こした。また、その現象に対して当時のマスコミや大学研究者を巻き込んでの騒動や論議となったことでも有名となった。
 この事件がきっかけとなり、19世紀後半から20世紀初頭にかけて顕著になった交霊会や心霊主義による心霊現象研究が盛んとなった。特にアメリカやイギリスでこういった研究やイベントが盛んとなり、ヨーロッパ各国や日本にも、研究目的、好奇問わず広まってゆくこととなる。


1850年代初頭
 1840年代にアメリカで発祥した交霊会(テーブル・トーキング)がヨーロッパ諸国で大流行する。
1851年~
 霊媒師ダニエル=ダングラス=ホーム(18歳~)の交霊術が話題となり、イギリス国内にとどまらずヨーロッパ各国で一大ブームを巻き起こす。
1853年
 ヨーロッパの宗教界や物理学者マイケル=ファラデー(62歳)が、当時大流行していた交霊会を批判する書物や論評を発表する。


マイケル=ファラデー(Michael Faraday 1791~1867年)
 マイケル=ファラデーは、イギリスの化学者・物理学者で、電磁気学および電気化学の分野での貢献で知られている。ファラデーは高等教育を受けておらず、高度な数学もほとんど知らなかったが、史上最も影響を及ぼした科学者のひとりとされている。「科学史上最高の実験主義者」とも呼ばれる。ファラデーはイギリス王立研究所初代フラー教授であり、死去までその職を務めた。
 ファラデーは信心深い人物で、1730年に創設されたキリスト教徒の一派であるサンデマン派に属していた。伝記作者は「神と自然の強い一体感がファラデーの生涯と仕事に影響している」と記している。


ダニエル=ダングラス=ホーム(Daniel Dunglas Home 1833~86年)
 ダニエル=ダングラス=ホームは、イギリスの有名な霊媒師。幼少時から霊能力があり、また結核にもかかっていた。 近代以降でもっとも強力な物理的霊媒師であり、生涯一度もイカサマだという証拠を掴まれたことはなく、部屋の暗さや静けさなども問題にしなかった。現象が起きないときも平然としており、慌てたりごまかそうとするようなことはなかった。
 彼の心霊現象を見た者の人数が桁はずれに多く、さまざまな王室の人々や著名人も含む。またウィリアム=クルックスのような研究者の調査にも快く応じている。それでもヒュームを詐欺師として非難する者は多かった。
 物理的現象は非常に数多く報告され、スケールが大きい。空中浮遊、身長が30センチ近くも伸びること(脚や腕などもそれぞれ伸びた)、真っ赤に燃える石炭で顔を洗ってみせたり、同席した者にも同じように触れさせること、テーブルやソファなどの重い家具が動くこと、ラップ音やさまざまな音、匂い、楽器の演奏、手が現れて出席者と握手したり品物を運んだり楽器を演奏したりとさまざまな動作をすること、光や火球が飛ぶこと、部屋が地震のように激しく振動すること、霊の全身が物質化して出席者に見られること、入神して(知らない言語でも)話すこと、霊の姿を見て会話すること、等々である。
 霊との通信内容に関しては他の一般的な霊媒師とそれほど際立った違いはなく、同時代のアンドリュー=ジャクソン=デイヴィスやウィリアム=ステイントン=モーゼスなどのように一貫した思想を伝えることはなかった。
 性格は穏やかで紳士的、禁欲的だった。経済的に逼迫したときにも、心霊現象を見世物にしたり相談に乗って金儲けをしたことは一度もなかった。機会があれば一般人にも現象を無料で見せていたという。


1857年
 アメリカのハーヴァード大学研究チーム、ニューヨーク州バッファローの霊媒師アイラ&ウィリアム=ダヴェンポート兄弟の霊媒ショーのトリックを暴けず心霊ブームに拍車をかける。
1858年7月
 イギリスの博物学者チャールズ=ダーウィン(1809~82年)とアルフレッド=ラッセル=ウォレス(1823~1913年)、共同で「自然淘汰説」を発表する。
1859年11月
 チャールズ=ダーウィン(50歳)、『種の起源』を出版する。
1860年2月
 イギリスの生物学者トマス=ヘンリー=ハクスリー(1825~95年)、ダーウィンの進化論を弁護する議論をイギリス国教会と展開し、科学界と宗教界との対立を激化させる。
1864年
 イギリスの詩人ロバート=ブラウニング(Robert Browning 1812~89年)、交霊会のトリックを暴露する詩『霊媒スラッジ氏』を発表する。


アルフレッド=ラッセル=ウォレス(Alfred Russel Wallace 1823~1913年)
 アルフレッド=ラッセル=ウォレスは、イギリスの博物学者・生物学者・探検家・人類学者・地理学者。アマゾン川とマレー諸島を広範囲に実地探査して、インドネシアの動物の分布を2つの異なった地域に分ける分布境界線「ウォレス線」を特定した。そのため「生物地理学の父」と呼ばれることもある。チャールズ=ダーウィンとは別に独自の自然選択を発見した結果、ダーウィンは理論の公表を決断した。また、「自然選択説」の共同発見者であると同時に、進化理論の発展のためにいくつか貢献をした19世紀の主要な進化理論家のひとりである。その中には自然選択が種分化をどのように促すかという「ウォレス効果」と、「警告色」の概念が含まれる。
 心霊主義の唱道と人間の精神の非物質的な起源への関心は当時の科学界、特に他の進化論の支持者との関係を緊迫させた。イギリスの社会経済の不平等に目を向け、人間活動の環境に対する影響を考えた初期の学者のひとりでもあり、講演や著作を通じて幅広く活動した。インドネシアとマレーシアにおける探検と発見の記録は『マレー諸島』(1869年)として出版され、19世紀の科学探検書として最も影響力と人気がある一冊だった。
 ウォレスは1861年に義兄に宛てて、「人類の多数にとってある種の宗教は必要である」と書いた。ウォレスはまた骨相学を強く信じており、若い頃から催眠術にも関心を持っていた。レスターの学校では生徒たちを使って実験を行った。彼はまず催眠術の実験から始めた。これは論争の的であった。ジョン=エリオットストンのような初期の催眠術の実験者は医学界と科学界から厳しく批判された。ウォレスの催眠術に関する経験は後年の心霊主義の調査に引き継がれた。
 1865年に姉ファニーと共に心霊主義の調査を始めた。まず文献を調査し、その後は交霊会で観察した現象をテストした。そしてそれらは自然的な現象であるという信念を受け入れた。ウォレスは少なくともいくつかの交霊会での現象は本物だったと確信していた。たとえ多くの詐欺の告発が行われても、トリックの証拠が提出されても、彼にとって問題ではなかった。
 歴史家と伝記作家は、いったい何がウォレスに心霊主義を受け入れさせたかで意見が一致していない。ある伝記作家は婚約者に婚約を破棄された時に受けた衝撃を示唆した。他の研究者はそれに対して、物質界と非物質界、自然界と人間社会のあらゆる現象に対して科学的で合理的な説明を見つけたいというウォレスの願望を強調した。心霊主義は完全に唯物論的で機械論的な科学にさらされており、イギリス国教会のような伝統的な教義を受け入れがたいと感じていた教養あるビクトリア朝時代の人々の心に響いた。しかしウォレスの視点を深く追求した研究家は、これはウォレスの科学や哲学の問題ではなく、宗教に関する問題だったと強調した。
 心霊主義と関係した19世紀の知識人には若い頃のウォレスが憧れた社会改革者ロバート=オーウェンや、物理学者ウィリアム=クルックス、ジョン=ウィリアム=ストラット、数学者オーガスタス=ド=モルガン、スコットランドの出版業者ロバート=チェンバースなどがいた。
 ウォレスの心霊主義の公然とした支持と、心霊主義に向けられた詐欺の告発に対する擁護は1870年代に彼の科学的評判を傷つけた。以前は親しいであった同僚の科学者たち、例えばベイツ、ハクスリー、ダーウィンとの間は緊迫し、彼らはウォレスがあまりに信じやすいと感じた。他の人々、生理学者ウィリアム=カーペンターや動物学者レイ=ランケスターは、この問題に関して公然とウォレスの敵対者となった。ウォレスと他の心霊主義擁護の科学者(特にウィリアム=クルックス)は、当時のマスコミから広い批判を受けた。


ヘンリー=シジウィック(Henry Sidgwick 1838~1900年)
 ヘンリー=シジウィックは、イギリスの哲学者・倫理学者である。
 1859年、ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジのフェローに選ばれ、そこで古典学の講師になり、10年間その職に就き、1869年、その職を以前から彼が注目していた道徳哲学の講師職と交換した。
 同年、イギリス国教会の信仰告白を拒否したため、フェローシップを辞退した。彼は講師職は維持し、1881年に名誉校友に選ばれた。1874年、初めて世間での評判を勝ち取った『倫理学の諸方法』を出版した。1875年、トリニティの道徳・政治哲学の講師に指名され、1883年に哲学のナイトブリッジ教授に選ばれ、さらに1885年にケンブリッジ大学はもう一度彼をフェローシップに推挙した。
 シジウィックは教職員や著述家としてだけでなく、大学の運営や、多くの社会・慈善事業に積極的に貢献していた。また、「イギリス心霊現象研究協会」の設立者のひとりであり初代会長で、形而上学協会の会員だった。彼の名が最も知られているのは、女性の高等教育の促進への貢献である。
 彼は心霊現象に深い関心を持っていたが、彼の活動力は宗教と哲学の研究に優先的に注がれていた。イギリス国教会のもとで育ったシジウィックは、伝統的なキリスト教からは離れ、1862年には早くも自分を無神論者とみなしている。従って彼はキリスト教を「社会学的視点からは不可欠でかけがえの無いもの」とみなしてはいたが、自身が宗教を受容することはできなかった。


フレデリック=ウィリアム=ヘンリー=マイヤース(Frederick William Henry Myers 1843~1901年)
 フレデリック=ウィリアム=ヘンリー=マイヤースは、イギリスの古典文学者・詩人・心霊研究の開拓者。また初期の深層心理学研究における重要な研究者であり、ウィリアム=ジェイムズ、ピエール=ジャネ、カール=グスタフ=ユングらに影響を与えたと言われている。
 幼いころからギリシャ語、ラテン語を中心とする古典教育を受け、14歳で詩のコンテストに優勝するなど才能を示し、次代を担う詩人になると期待されていた。詩人として立つ夢とその重責の間で葛藤し、最終的に詩人となることをあきらめるが、彼の詩人としての本質やロマン主義復興の影響は、後の心霊主義の研究にも表れている。『聖パウロ』(1867年)、『洗礼者聖ヨハネ』(1868年)など数多くの詩作に加えて、古典語の知識を生かしたプラトン、ホメロス、アイスキュロス、ルクレティウス、ウェルギリウス、ホラティウス、オウィディウスなど古代ギリシア・ローマ文学の研究、ワーズワースの評伝などの業績が知られている。
 牧師の息子であったが、信仰と理性を和解させることができず、キリスト教から離れた。青年期は同性愛者であったという。キリスト教を離れたことで、霊魂が死によって消滅するという不安に悩み、1873年以降は知人が開いていた交霊会に積極的に参加し、オックスフォード大学出身の霊媒師ウィリアム=ステイントン=モーゼスの交霊実験に感銘を受ける。霊魂の死後存続の予感から、その証明のために心霊主義の研究を行い、彼の神なき世界において神のような存在であった恋人アニー=イライザの死を契機に、本格的に心霊主義を研究するようになった。1882年には、師であるヘンリー=シジウィックらと共に「イギリス心霊現象研究協会(SPR)」を創立した。
 当初は死者の霊との交流を目指していたが、心霊現象そのものについても思索を深めていった。精力的に心霊研究を行い、イギリス心霊現象研究協会の会報に論文を発表し、当初は全ての論文に目を通し学術的水準の高さを保った。全2巻からなる大著『人間の人格とその死後存続』(死後刊行)は、彼の心霊研究の集大成であると共に、心霊主義の契機となったハイズヴィル事件(1848年)以降の心霊現象全体を統一的に俯瞰する内容であり、「潜在意識」、「天才における潜在意識の奔出」、「催眠現象」、「自動現象」などが扱われている。後の心霊学に多大な影響を与えた。彼の「心霊主義(超心理学)」の研究と「サブリミナル・セルフ(閾下自我)」というアイデアは当時大きな影響を与えたが、主流派の科学者には受け入れられなかった。
 マイヤーズは科学界からは白眼視され、宗教からは非難されていた事象を研究し、宗教の根本教義に関わる魂の死後存続や、キリストの復活を始めとする諸現象を、科学的に証明しようと考えた。人格の一部は、外見上身体組織とは独立した仕方で作動でき、分離した人格はメタエーテルの場でその活動が顕在化すると考えた。これが霊であり、存続する個人エネルギーの顕現であるとした。人間の識閾上の部分でのコミュニケーション(知的・意識的交渉)が存在するのと同じように、識閾下の部分(無意識)でのコミュニケーションが存在するに違いないと考え、テレパシーはそこに関わってくるのではないかと推測した。よって、人間は互いに四肢(メンバー)であり、識閾下の部分で常に交渉しているのだから、テレパシーは愛の証明になり、これが聖者たちの共同体の地上における始まりであると考えたのである。
 彼が創案した「超常 supernormal」、「テレパシー telepathy」などの用語は現在も使われている。霊による現象と、霊媒師や同席者の潜在意識やテレパシーによる現象を区別しなければならないと考え、厳密な調査や実験を行った。この考え方は後の SPRの懐疑主義、特に心霊現象のほとんどは潜在意識とテレパシーによるものだとする姿勢につながったとも言われる。


1868年
 ウィリアム=ジェイムズの弟の小説家ヘンリー=ジェイムズ(25歳)、自身初の恐怖小説『古衣装の物語』を発表する。
1869年4月
 アルフレッド=ラッセル=ウォレス(46歳)、「自然淘汰には神の存在が関係している」という論文を発表し、ダーウィン(60歳)やハクスリー(44歳)と対立する。


ウィリアム=クルックス(Sir William Crookes 1832~1919年)
 サー・ウィリアム=クルックスは、イギリスの化学者・物理学者である。タリウムの発見、陰極線の研究に業績を残している。
 1848年にイギリス王立化学大学に入学し、ドイツから来たアウグスト=ホフマンの下で有機化学を学んだ。グスタフ=キルヒホフの分光学研究に刺激を受け、自らも分光学に転じた。1861年には、分光分析により、硫酸工場の残留物からタリウムを発見した。
 1875年ころから、陰極線(放電現象)に興味を持ち、従来より真空度の高い放電管を作って研究を行った。クルックス管を発明し、この中に羽根車をおいて陰極線をあてて回転させた実験は有名である。この実験により、陰極線は帯電した微粒子からなることを明らかにした。この微粒子はその後「電子」と名づけられ、その性質が明らかにされていった。
 クルックスはクルックス管で実験を行うと、周囲の写真乾板を露光させる現象があることを認識していたが、それを深く追求はしなかったため、X線発見の機会を逸してしまった。15年後、同様の現象を見出したレントゲンにより、X線が発見された。
 物理学に留まらず、様々な分野における研究を行った。例えばテンサイからの砂糖製造の研究、フェノールの防腐作用の発見(1866年)、ダイヤモンドの起源に関する研究、都市排水に関する研究といったものである。また、1860年代後半から心霊現象の研究をはじめた。「心霊現象研究協会(SPR:Society for Psychical Research)」の創設メンバーに加わり、1896年には第4代会長に就任した。
 1871年、信奉者の間で「霊媒の王者」と呼ばれていた霊媒師ダニエル=ダングラス=ホームについて研究し、「ホームの心霊現象にはトリックの片鱗すら見出せなかった」との結果を発表した。 また、1872年からその真偽をめぐり論争が起っていたロンドンのフローレンス=クックという17歳の女性霊媒師についても研究を始めた。クックが自身のエクトプラズムを使って物質化させたというケイティ=キングと名乗る霊の脈拍を測ったり、何十枚もの写真撮影を行なった。そして、クルックスはクックの起こす現象は本物であると発表した。多くの科学者はクルックスは騙されたか、発狂したのだと考えた。それらに対し、クルックスは「私はそれが可能だと言ったのではなく、事実だと言ったのだ。」と反論した。クルックスは妻と共に、クックが1904年に他界するまで面倒を見続けた。


1874年
 化学者ウィリアム=クルックス(42歳)、霊媒師ダニエル=ダングラス=ホーム(41歳)の霊媒ショーにトリックが無いとの結論を下し、未知のエネルギー「心霊力」の存在を論文で発表するが、ダーウィン(65歳)、ハクスリー(49歳)、イギリス学術協会会長ジョン=ティンダル(54歳)ら科学界の主流派からは徹底的に非難される。
 ダーウィン、ハクスリーの主催した霊媒師の交霊会を検証しトリックを暴く。
1875年
 ケンブリッジ大学の哲学者ヘンリー=シジウィック(37歳)、古典文学者フレデリック=マイヤース(32歳)、心理学者エドマンド=ガーニー(28歳)、霊媒師の霊媒ショーの研究を始める。
1876年
 霊媒師ダニエル=ダングラス=ホーム(43歳)、同業者のトリックを暴く著作を発表し、心霊現象肯定派のウィリアム=クルックス(44歳)と対立する。
 クルックス、霊媒師フローレンス=クック(20歳)との不倫関係疑惑をマスコミに騒がれ心霊現象研究から身を引く。


ジョン=ティンダル(John Tyndall 1820~93年)
 ジョン=ティンダルは、イギリスの物理学者・登山家である。物理学者として一般に知られる業績としては、「ティンダル現象」を発見したことである。その他にも、赤外線放射(温室効果)、反磁性体に関して突出した業績を残した。
 登山家としては、アルプス山脈5番目の最高峰ヴァイスホルンの初登頂に成功した(1861年)。また、マッターホルンの初登頂を競い、1862年に山頂から標高230m下の肩にまで達した(その後エドワード=ウィンパーが1865年に初登頂した)。1868年にはマッターホルンの初縦走に成功している。なお、登山の元々の目的は物理学者としてアルプスの氷河を研究することであった。


フローレンス=クック(Florence Cook 1856~1904年)
 フローレンス=クックは、イギリスの有名な霊媒師。イギリス最初の完全物質化霊媒として有名。化学者ウィリアム=クルックスによる調査を受けた。
 1回だけ非常に原始的なトリックを暴かれたことがあり、また同じく物質化現象を起こすことがあった霊媒師ダニエル=ダングラス=ヒュームが「あれは本物ではない」と述べたという説もある。 一方で大量の証言、綿密な調査報告、写真があり、むしろあのトリックは何だったのか謎だという意見もあり、未だに真偽が取り沙汰されている霊媒のひとりである。
 ロンドンのイーストエンドに生まれ、幼少時から霊を見たり、その声を聞いたりすることがあったが、本人は想像だと思っていたという。15歳の時に自宅で交霊会を開くようになる。1872年4月、自宅でトランス状態に入ったところ「ケイティー=キング」と名乗る霊が現れ、以後3年間訪れて様々な現象を示すことを約束する。
 1873年、交霊会に出席したウィリアム=ボルクマンが、「ケイティー=キング」がフローレンスに似ていたため詐欺だと怒り、霊を掴む。驚いた他の出席者が慌ててボルクマンを取り押さえると、霊は消えた。ボルクマンがすぐにキャビネットを開けてみると、縛られたままのフローレンスが鼻血を出していたが、無事だった。ボルクマンはその後すぐ別の霊媒師と結婚したため、意図的にフローレンスの交霊会を妨害したのではないかという嫌疑がかけられた。なお、「ケイティー=キング」の容貌はあまり一定していなかった。基本的にはフローレンスに似た年恰好だったが、肌や髪の色が変わったり、顔立ちが変わったりすることもしばしばあったという。
 1874年2月、ウィリアム=クルックスがフローレンスと「ケイティー=キング」に関する調査を発表。しかし同年5月21日、「ケイティー=キング」が二度と現れないことを宣言して去る。フローレンスもその直後に結婚し、霊媒をしばしば休業するようになる。「ケイティー=キング」が去った後は「マリー」と名乗る霊が現れるようになり、交霊会で踊ったり歌ったりするパフォーマンスを行っていた。
 1904年4月24日のフローレンスの死の後、ウィリアム=クルックスは「自分の死後存続に対する確信の多くは、彼女の確かな霊媒能力による。」と再度宣言した。


エドマンド=ガーニー(Edmund Gurney 1847~88年)
 エドマンド=ガーニーは、イギリスの心理学者・作家。
 初期SPR を支えた研究者のひとり。古典、音楽、医学、法律など様々な領域を学ぶ。1883年からは心霊研究に没頭し、特に催眠やテレパシーを研究。テレパシーはガーニーによって最初に報告された。「彼は、あらゆる十分な技能をもって催眠の心理学的側面を研究した、最初のイギリス人である。」(マイヤース)
 鋭い知性とユーモアと暖かい人柄で友人が多く、ウィリアム=ジェイムズ、サミュエル=バトラー、ジョージ=エリオットなどと親交があった。聖職者の家庭に生まれ、少年時代に両親と死別、さらに姉妹の3人がボートの事故で死去。ガーニー自身も躁鬱病と顔面の慢性神経痛を抱えていた。ヴィクトリア朝文化の楽観的な雰囲気の中、ガーニーの著述には醒めた悲観的なものが多く、異彩を放っている。1888年6月に死去。いつも顔面の神経痛の緩和に使っていたクロロホルムの誤用による事故死だったが、後に自殺説も取り沙汰された。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これから読もうと思ってるんだけどさぁ13 ~前勉強をつらつら~

2016年07月15日 22時09分17秒 | すきな小説
『終わりのクロニクル 第3巻(上・中・下)』(2004年4~7月刊)

 『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
 川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。


あらすじ
 2005年、初夏の夜。西東京・奥多摩の街外れに突如として現れた概念空間で、ある戦闘が繰り広げられた。それは、かつて3rd-G が創造した巨大人型機械「武神」同士によるものであった。3rd-G は、神々の力を持つ人々が創り上げたロボット「自動人形」と武神の世界。そこは現在、60年前の概念戦争時に発生したある出来事により2つの「穢れ」を持っているという。
 佐山御言たちは、この3rd-G を次の全竜交渉の相手に選ぶが、この穢れにより他の全G を敵に回す危険性を抱え込むことに……果たして、3rd-G が持つ2つの穢れとは何か? 武神同士の闘いの意味は? 佐山たちは過去の遺恨を取り除き、無事に交渉を成功させることができるのか?


3rd-G
主要概念 …… 金属が生命を持つ概念、小規模な重力制御
対応神話 …… ギリシア神話
対応地域 …… ギリシア / 日本の瀬戸内海地方

3rd-G の世界観
 有限の空に無数の大陸が浮かぶ構造で、古代には海もあったが概念戦争以前に消滅した。人類は個々が細分化した概念核を持ち、恩恵として何らかの自然を操る能力と数千年単位の長寿を有した。細分化した概念核は保有者の死で本体へ戻り新生児に付加されるため、3rd-G の人類は概念核を「冥府(タルタロス)」と呼び、後に制御装置「冥府機構(タルタロス・マキナ)」を建造した。人口の少なさを武神と自動人形で補い、政治は王族によって全大陸が統治されていた。

3rd-G の概念戦争
 当時、全G の中でも最高位の技術力で勝利しようとしたが、開戦で後手に回ったこと、ただでさえ少ない3rd-G 人類が戦死と原因不明の出産率低下で急速に減少したこと、9th-G により大陸を一つ破壊されたことで余裕を失った。当時の王クロノスはゼウスに幽閉され、新王となったゼウスは生存のために同胞や捕虜を武神に改造し、王妃レアとの子(後の飛場・美影)をクローン技術で増産し母体とする近親相姦の計画を練った。それでも優勢を得ず、3rd-G人類が王族のみになった末にゼウスは9th-G に恭順した。しかし乗り込んできた飛場・竜徹によってゼウスやアポルオンは殺され、概念核の半分を奪われて3rd-G は滅んだ。


作中の専門用語
3rd-G製の概念兵器
神砕雷(ケラヴノス)
 荒帝が使用する。3rd-G製の武神用杭打機で、攻撃時は雷を伴って相手を撃ち抜く。元々はテュポーンに装備させる予定だったが、クロノスの計らいで荒帝に組み込まれる。飛場・美影の進化に応じて荒帝とともに強化されていく。古代ギリシア神話においては、ゼウスがテュポーンを封印するために放った雷を意味する。

自動人形
 人型等身大のアンドロイドで、3rd-G を象徴する機械のひとつ。3rd-G人類が身の回りの世話をさせるために開発したものであり、そのほとんどは侍女の姿をしている。感情は持たないが自ら思考して行動し、主人と定めた人間を助けることを至上の目的とする。「共通記憶」という同形式の自動人形のみが参加できる一種のチャット能力を持っている。

量産型自動人形
 最も一般的な自動人形。全部で117体存在する。基本的に同一規格だが、開発時の先天的要因と、経験の差などの後天的要因により個体差がある。モイラシリーズは量産型の上位機種であり、共通記憶を共有できる。3rd-G崩壊の際に3rd-G残党に連れ添った者たちと、神田研究所に流れ着いた者たちの2派に別れている。

モイラシリーズ
 1st、2nd、3rd の3体が存在する。1st は記憶消去、2nd は子体自弦振動の観測、3rd は偽装記憶生成の能力を持ち、2ndは特に多重並列重力制御に長ける。概念戦争によって異G に3rd-G人類が漂流した可能性があり、発見した場合に速やかに保護して3rd-Gの情報を与えるために造られた。量産型自動人形の上位体であり、共通記憶を共有できる。
 かつては120体製造されていたが、概念戦争を経て現在は63体。アイガイオンが Low-Gのファミリーレストランから大量に盗難してきた従業員用の制服(アンナミラーズのように胸部を強調したもの)を全員が着用している。

ヘカトンケイルシリーズ
 ギュエス、アイガイオン、コットスの3体が存在する。戦闘用に例外的に造られた自動人形。3rd-G人類やテュポーンの警備と守護を担う。

人間に進化する自動人形
 シビュレと飛場・美影の2体が存在する。3rd-G人類を増やす母体の不足を補うため、「出産可能な女性に成りうる自動人形」として開発された、非常に特殊な機体である。シビュレは試作品で、彼女を元に美影の機体は造られた。

武神
 全高およそ8メートル前後の巨大な人型機械。3rd-G を象徴する機械のひとつ。元々は3rd-G人類の移動能力を強化するために造られたが、後に戦闘用として用いられるようになる。総じて遠距離兵器よりも剣などの近接兵器を主力としている。翼を有し、飛行能力を持つ機体も多い。3rd-G 製の純正品は搭乗者が機体と一体化することで操縦するが、遠隔操縦できる形式も存在している。また、ヘカトンケイルシリーズのコットスのボディは武神の機体を用いている。他G の機竜に比べると戦闘力は劣るが搭乗時の危険性が少なく、汎用性も高い。

荒人(すさひと)、荒人・改
 護国課が3rd-G製武神の残骸を研究して修理した武神。3rd-G では標準的な機体。
 荒人は概念戦争で飛場・竜徹が搭乗し、3rd-G との決戦で使用不能となった。その後日本UCAT が回収し修理・改造を施して荒人・改となり全竜交渉時代には飛場・竜司が搭乗している。

荒帝(すさみかど)
 飛場・美影が有する概念空間に収納されている黒い武神。美影の意思に応じて通常空間に出現し、彼女と飛場・竜司と合一する。美影の進化に伴い武装の追加や彼女一人で遠隔操縦もできるようになる。3rd-G の概念核兵器「神砕雷」を装備している。

テュポーン
 3rd-G概念核を原動力にした白い武神。3rd-G王族の専用機。
 概念戦争時代に「蒼白の武神」の副搭乗者だったアルテミスが、搭乗して殺されたアポルオンと己の死を置換し、更に搭乗席をテュポーンに移された際に己の死とテュポーンの生を置換したため、アルテミスそのものが宿る機体となった。ただし置換が不完全であったため、テュポーンが破壊されればアポルオンの肉体も破壊される。アルテミスが、自分が死んだ瞬間を思い出すと、テュポーンはアポルオンを搭乗させて暴走する。
 アポルオンとアルテミスの能力を利用して小規模な時間制御が可能であり、「防御と回避の時間」を「相手の死角に回り込む時間と攻撃準備時間」に転化させる「瞬間攻撃」の能力を持つ。

蒼白の武神
 アポルオンの専用武神で、アルテミスの肉体を部品とし、彼女の意思をナビゲータとして副搭乗者としていた武神。概念戦争の際に一度大破し、搭乗者席はテュポーンに移された。

赤い武神
 ギュエスが所有する武神で、肩は無いが6本の腕を有する。主要武器は腕それぞれに持つ6本の剣。遠隔操縦型で、普段は彼女が持つ概念空間で待機している。ギュエスがこれを操るのはかなりの負担がかかるため、長時間の稼動はできない。

白銀の武神
 元々はレアが所有していた武神。ゼウスによってレアごと大破したが、後に遠隔操縦型に改修され、シビュレが使用する。

灰色の武神
 ゼウスの搭乗する武神で、2本の剣を持つ。ゼウスの意思のコピーが動かしているとされていたが、実際はゼウス本人が動かしていた。

3rd-G残党の武神
 3rd-G の残党が所有していた緑色の武神。同形式の物が複数存在しているが、全てモイラ2nd によって遠隔操縦されている。

日本UCAT製武神
 日本UCAT が3rd-G の武神を参考に開発した武神で、ボディカラーは白と黒。3rd-G との全竜交渉には3体が参戦する。

自動人形仕様武神
 長田・竜美との戦闘で大破したヴァイオレットが、修復が終わるまでの間ボディとして使用していた武神。自動人形の侍女服を参考にしたカラーリングがされている。

冥府(タルタロス)
 3rd-G での概念核の呼び名。
 3rd-G人類は概念核の一部を体内に保有しており、死亡すると概念核の一部と死者の意思は概念核に回収される。回収された概念核の一部は新生児に付与されるが、死者の意思はそのまま概念核の中に残留する。すなわち、概念核が3rd-G人類にとっての死後の世界であることからこう呼ばれている。

冥府機構(タルタロス・マキナ)
 冥府(概念核)に死者の意思と概念核の一部を導く機構。
 テュポーンの内部に出力炉として内蔵されているが、概念戦争時に大破している。その制御は誰にもできないとされていたが、アルテミスが冥府機構を搭載しているテュポーンを乗っ取ることで、制御に成功した。

穢れ
 3rd-G が概念戦争の中で得た罪業。多くは、同胞や捕虜への人体改造や機械の部品化、近親相姦や子孫を増やすための母体をクローンで増産しようとしたことを指す。しかし個人的な「第2の穢れ」、そしてそれを解消しようとすると発生する「第3の穢れ」が存在する。
 第2の穢れとは、3rd-G概念核を得ようとすると概念核によって擬似的に死を免れているアポルオンを殺すことになること、つまり「大義を優先して人を殺すこと」である。そして第3の穢れとは、アポルオンの死を回避しているテュポーン内のアルテミスを消し身代わりを立てて死をすべて引き継がせる、つまり「罪を逃れるために死者を再び殺し、そして逃れるために費やした人物をも殺すこと」である。

主な登場キャラクター
佐山・御言
新庄・運切
出雲・覚
風見・千里
大城・一夫
大城・至
Sf(エスエフ)
リール=大樹
シビュレ
ロベルト=ボルドマン
ジークフリート=ゾーンブルク
田宮・遼子
田宮・孝司
飛場・竜徹
ディアナ=ゾーンブルク
ブレンヒルト=シルト
月読・史弦
ハジ
戸田・命刻
田宮・詩乃
長田・竜美

飛場・竜司(ひば・りゅうじ)
 全竜交渉部隊の対武神戦力。尊秋多学院生徒会会計補佐。1年生。美影と荒帝を共有する。
 3rd-G との全竜交渉から佐山たちに合流した少年。美影や竜美とは姉弟同然に育つ。飛場・竜徹によるマンツーマン指導で格闘戦や武器戦に優れている。自動車部所属でダン・原川の後輩。全竜交渉部隊きってのいじられキャラで、次第に扱いが適当になっていく。美影を溺愛している。
 全竜交渉以前から美影を狙う3rd-G と戦闘を繰り返しており、3rd-Gと の全竜交渉の際に初めて全竜交渉部隊と対面する。当初、3rd-G の穢れを己一人で清算しようとしていたが、出雲と佐山に敗れ諭されたこと、彼の身を案じた美影から拒否されたことから己の考えを改め、佐山たちへの協力を決める。

美影(みかげ)
 全竜交渉部隊の対武神戦力。飛場・竜司と荒帝を共有する。
 子供を産める身体になるため、人間に進化する自動人形の機体に魂を移された3rd-G人の少女。当初は人間に進化することへの恐れから進化が滞っていたが、次第に人間へ進化していく。荒帝を召喚する機能を持ち、後にある程度なら単独で動かせるようになる。2nd-G の八又封印時に荒王の制御機構に組み込まれたこともあった。

月読・京(つくよみ・みやこ)
 月読・史弦の娘。
 Low-G の一般人として育つが、テュポーンと荒帝の戦闘に巻き込まれ3rd-G残党に関わる。そこでアポルオンや自動人形たちに認められ、アポルオンの子を身籠る。以降はアポルオンが復活するまでの3rd-G の暫定指導者となり、出雲UCAT の技術者に就職する。

アポルオン
 当代3rd-G王。日中の時間を司る。
 先王である父ゼウスの遺志を継いで概念戦争では Low-Gと戦闘を繰り広げたが、多くの臣民や妹アルテミスを失ったことで反抗を諦めた。後に飛場・竜徹に殺され、アルテミスの計らいで半端ながら蘇生する。その後は諦観から漫然と生活していたが、月読京との交流で気概を取り戻す。

アルテミス
 アポルオンの妹。故人。夜中の時間を司る。
 生殖能力の欠如から武神の部品に変えられ、水色の武神の副搭乗者になる。瀕死の兄アポルオンを生かすためにテュポーンを乗っ取り、アポルオンを不完全ながら蘇生させる。その精神はテュポーンに宿り、死の瞬間を思い出すとアポルオンの意思を奪い暴走する。

クロノス
 3rd-G の先々代王。息子ゼウスに王位を奪われ幽閉された。
 優秀な技術者であり、幽閉後も多様な自動人形や武神を開発している。人間に進化する自動人形のボディもクロノスが造った。美影が奪われた後にゼウスの目を盗んで日本の護国課に現れ、「荒人・改」の改修をシビュレに命じた。自らの肉体を荒帝の部品に変えている。

ゼウス
 3rd-G の前王。父クロノスを幽閉した。アポルオンとアルテミスの父。
 概念戦争に生き残るべく圧政を敷き、「穢れ」と呼ばれる無数の罪を作る。王妃レアを殺して美影を奪い、9th-G と同盟して Low-Gに侵攻した。自ら冥府に落ち、相談役として人格の複製を持った武神を残したとされるが、実際は本人だった。飛場・竜徹との交戦で死亡、その直前にアポルオンを自動人形たちに託す。

レア
 元ゼウスの侍女で王妃。美影の母。Low-G に3rd-G の情報をもたらした人物。
 3rd-G の政略によりゼウスとの間に子を宿すが、3rd-G人類増産用となる母体のクローン元になることを拒否して亡命した。護国課とは衝突もあったが、Low-G で美影を出産したのをきっかけに和解する。後に美影を奪うべく乗り込んできたゼウスとアポルオンに襲撃され死亡したが、右目は飛場・竜徹に移植された。

モイラ1st(ファースト)
 モイラシリーズの1号機でモイラ3姉妹の長女。金髪で巨乳。
 量産型自動人形の指導者で、他機よりも判断基準が高く設定されている。記憶を偽造する機能を持ち、モイラ3rd と組んで人間の記憶管理を行える。戦闘では自動人形部隊を指揮し、重力レールガンの指揮と弾丸補充を務める。

モイラ2nd(セカンド)
 モイラシリーズ2号機でモイラ3姉妹の次女。
 3rd-G 残党の本拠地の客人を世話をする任にあるが、来る者全てに恐れられ、諦観から表情も言葉も失っていた。しかし月読・京との交流でそれを払拭する。記憶や体調などの生体の機微を感知する能力に長ける。戦闘では精密制御能力を活かして最大8体の武神を同時に遠隔操縦できる。

モイラ3rd(サード)
 モイラシリーズ3号機でモイラ3姉妹の末っ子。
 小柄で言動も幼く、非常にハイテンション。人間の記憶を封印する機能を持ち、モイラ1st と組んで人間の記憶管理を行える。戦闘では主にモイラ1st の補佐につく。

ヴァイオレット
 3rd-G残党の自動人形。本来の名は「13th」で、月読・京の計らいでスミレの名を得た。
 他に比べて能力が劣ることから内向的で遠慮がちな性格だったが、京との交流で前向きになった。ボディとの相性が芳しくないが、逆にそれが特性となって高い戦闘力となる。

ギュエス
 ヘカトンケイルシリーズの生き残り。近接戦闘を担当する。
 一見すると赤いスーツを着た短髪黒髪の女性だが、袖の中に軟質金属の剣を隠し、重力制御でそれを硬化・制御して戦う。また専用の武神を短時間なら遠隔操作できる。当初、月読・京とは衝突したが後に主と認める。モイラ3rd とつるむことが多い。

アイガイオン
 ヘカトンケイルシリーズの生き残り。中距離・広範囲戦闘を担当する。
 常に八百屋の装束をした巨漢。情報収集として日本の八百屋で働くが、そこの家族とは縁が深い。しかし八百屋の人々はアイガイオンが自動人形だとは知らない。

コットス
 ヘカトンケイルシリーズの生き残り。長距離戦闘を担当する。
 概念戦争中にクロノスが完成させた唯一の「自動人形が搭乗した」武神。会話能力が低く、単語の羅列のみで会話を行う。普段は武神同然に格納庫で待機している。

八号(はちごう)
 日本UCAT の神田研究所に所属する3rd-G製自動人形のまとめ役。
 短髪赤毛でオレンジ色の瞳をした泣きぼくろのある侍女。当初は佐山・御言に敵対するが、3rd-G全竜交渉で恭順、大城・一夫の世話役として転属される。戦闘用ではないが、冷静な判断力から優れた戦闘力を持つ。密かに御言を主と慕うが、運切の存在からそれを表立って伝えることはない。

四号(よんごう)
 日本UCAT の神田研究所に所属する3rd-G製自動人形の元代表。金髪の少女の姿をしている。
 概念流出時の起動で他の自動人形と共に蜂起して神田研究所を占拠するが、人間への対応に悩み行動不能になったところを佐山・薫との交渉で解決した。それ以降は薫を主として慕い、薫の死後は薫の孫である佐山・御言が来るのを待っていた。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これから読もうと思ってんだけどさぁ12  ~前勉強をつらつら~

2016年06月17日 23時11分12秒 | すきな小説
『終わりのクロニクル 第2巻(上・下)』(2003年10・11月刊)

 『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
 川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。


あらすじ
 マイナス概念による世界の崩壊を防ぐため、全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」の長となった佐山御言が次に相対することになったのは、「2nd-G」と呼ばれる、日本神話の炎竜「八叉(やまた)」を概念核に持つ世界だった。
 2nd-G は、60年前の概念戦争ですでに滅び、現在は Low-G、しかも佐山と同じ UCATに帰属しており、交渉は簡単に成立するかに思われた。しかし、過去の遺恨を残した彼らとの交渉は難航し、新たな戦闘へと発展していく。
 選ばなければならない未来への2つの道。果たして、2nd-G の人々が、そして佐山が、新庄が選んだ答えとは……


2nd-G
主要概念 …… 名前の意味が力を持つ概念
対応神話 …… 日本神話(『古事記』・『日本書紀』)
対応地域 …… 日本 / 伊豆七島

2nd-G の世界観
 何もない空間に地中・地表・空のみで構成される一種の筒状構造であり、天体に関しては明確にされていない。2nd-G の人類は概念核を自然制御装置として地中に置き、2nd-Gを巨大なバイオスフィア(密閉型の人工生態系)として改造した。人種は Low-Gの日本人とほぼ同様である。概念柄、世襲制が中心となり、皇族を中心にして統治されていた。名が一生ついて回る以上、多少の変更は効くものの姓名の意味と能力は一生付き合わなければならない。

2nd-G の概念戦争
 戦争に向けた準備は行われたが、炎竜八叉となった概念核の暴走で危機に瀕したため、最も早く Low-Gに恭順した。助力を求められた大城・宏昌の対処も間に合わず2nd-G は焼き尽くされ、Low-G に亡命した2nd-G人類を追って八叉も2nd-G を去ったために2nd-G は滅びた。その後、宏昌は2nd-G の技術者たちと協同して超巨大人型機械「荒王」と概念核兵器「十拳」を開発。荒王の溶解と自らの死を代償にして十拳に八叉を封印した。


作中の専門用語
十拳(とつか)
 通称「神剣」。2nd-G の概念核兵器。
 2nd-G と Low-Gが共同開発した長剣型の機殻剣(カウリングソード)で、2nd-G の全姓名(八百万種)を打ち込んだ鉄片を束ねて造られた。2nd-G の概念核である炎竜八叉を封印しており、概念戦争後は荒王の艦橋部分に放置されていた。

フツノ
 2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。
 かつて鹿島・昭緒が技術の粋を賭けて製造したもので、「断ち切る音」を示す名前に由来し、あらゆる物質を切断する。試験運行で過剰な攻撃力を発揮し、鹿島・奈津(当時は高木姓)を巻き込む崩落事故を起こした。その後は壊れたまま封印されていたが、鹿島の手で修復され全竜交渉に用いられる。

火迦具土(ひのかぐつち)/ 武雷剣(たけみかづちのつるぎ)/ 阿武さん
 2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。2nd-G 概念下ではそれぞれ炎・雷・水を放つ。

クサナギ
 鹿島・昭緒が造った2nd-G 概念対応の Low-G製機殻剣。熱田・雪人の後期専用武装。
 所有者が存在を明確にすることで、視界にある空間そのものを切断できる。強大な攻撃力を持ち、熱田も両手を用いなければ使用できない。当初は使用回数に制限のある試作品が登場したが、後に制限のない完成品ができた。

機殻弓(カウリングアロー)
 弓の形態をとる概念兵器の総称。これに分類されるのは月天弓のみである。

月天弓(げってんきゅう)
 2nd-G 皇族専用武装。月読・史弦が使う。
 2メートルを超える長大な弓。月読の姓により月光を光の矢に収束して射撃する。弦を引き続けることで溜め撃ちが可能。概念戦争で用いられる予定だったが、実際に使われることはなかった。先代所有者は月読・有人。

荒王(すさおう)
 2nd-G 概念対応の Low-G製超巨大人型機械。炎竜八又封印専用の兵器であり、行動力は著しく低い。飛場・美影を反射機構の中核として搭載していた。炎竜八又の封印時に艦橋部が焼滅している。

UCAT空白期
 日本UCAT内における、1985~95年の従業員に関する資料が大量消失している事実と該当時期のこと。空白期の後に幹部陣の大刷新が行われており、その時期が日本UCATの旧体制と現体制を分ける分岐点となっている。

関西大震災
 1995年12月25日に大阪で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として現地に向かい、そこで死亡した。

五大頂(ごだいちょう)
 UCAT空白期に旧・日本UCAT に存在していた5名の総称。実際には最前線に立って戦い現場の指揮をとる臨時のチームであった。それぞれが機竜と正面から戦って打ち勝てる程の実力者だったが、関西大震災でディアナ=ゾーンブルクを除く全員が死亡した。該当メンバーは佐山・浅犠、飛場・竜一、ジェイムズ・=サンダーソン、アルベルト=ノースウィンド、ディアナ=ゾーンブルク。

八百万の神々
 2nd-G に存在していた姓の総称。多種多様な能力と役目を持っており、その全てを記録あるいは書き込んだ物は強い力を持てる。文字通り八百万種存在する。

軍神
 2nd-G において戦闘を司る姓の総称で、武器は戦いの道具であることから転じて剣工の力を持つ。鹿島はその最高位に位置する。いかなる刃にも傷付けられず、自在に使いこなすことができるが、剣で戦うという点に関しては剣神に劣る。

剣神
 剣を扱う能力を示す姓の総称で、熱田はその最高位に位置する。姓名が宿す力の度合いにもよるが、剣で戦うことに関しては軍神を上回る能力を持つ。剣でこそ最大の力を発揮するが、メスのような小型の刃物でもかなりの能力を発揮できる。

炎竜八叉
 2nd-G の概念核の化身。2nd-G の概念核が自身の抱える世界管理システムの過負荷によって暴走したことで変貌した姿。己の本来の名を失ってしまった八叉は怒り狂って2nd-G を焼き尽くし、Low-Gに出現した際に十拳に封印された。


主な登場キャラクター
佐山・御言
新庄・運
出雲・覚
風見・千里
大城・一夫
大城・至
Sf(エスエフ)
リール=大樹
シビュレ
ロベルト=ボルドマン
ジークフリート=ゾーンブルク
ハジ
戸田・命刻
田宮・詩乃
田宮・遼子
田宮・孝司

飛場・竜徹(ひば・りゅうてつ)
 飛場道場の道場主。かつて3rd-G を滅ぼした八大竜王。1919年生まれの86歳。
 赤い右目をした小柄な老人。佐山・御言や孫である飛場・竜司に飛場流格闘術を教えた。しかし竜徹本人は全竜交渉には一切参戦しない。

大城・宏昌(おおしろ・ひろまさ)
 1906~45年。かつて2nd-G を担当した八大竜王。炎竜八叉の封印時に死去している。
 大城・一夫の父で、優秀な技術者だった男。2nd-G の滅亡を太平洋戦争時の東京大空襲に重ね、後に Low-Gに出現するであろう八叉に対抗するべく、荒王や十拳を開発した。鹿島昭緒の祖父とは犬猿の仲として知られていた。東京大空襲の影響で視力を落としていた。

ディアナ=ゾーンブルク
 全竜交渉のドイツUCAT 監査。生存する唯一人の五大頂。「母猫」の異名を持つ。
 ジークフリート=ゾーンブルクの姪にあたる灰色の髪の女性。不老技術を受けているが延命処置はしていない。現存最高と謳われる女性術式使い(魔女)。ブレンヒルト=シルトとは仲が悪い。大城・至とは旧知の関係である。

ブレンヒルト=シルト
 ディアナ=ゾーンブルクと事あるごとに衝突する。

鹿島・昭緒(かしま・あきお)
 日本UCAT 開発部主任。タケミカヅチを意味する2nd-G 最高の軍神。
 過去に未完成の機殻剣フツノの試作実験で事故を起こし、鹿島・奈津(当時は高木姓)の心身に重傷を負わせた。以降は自分の力を厭い、概念兵器のアドバイザーや出力調整に徹する。責任をとるために事情を知らない奈津を娶った。極度の愛妻家で家族を撮影するのが趣味。

月読・史弦(つくよみ・しづる)
 日本UCAT 開発部部長。2nd-G 皇族。
 亡父である月読・有人の調査を条件に日本UCAT に所属したため、高齢だが UCAT空白期を知らない。ツクヨミの姓により月光を操り、月天弓と併用して戦う2nd-G の最大戦力。

熱田・雪人(あつた・ゆきひと)
 日本UCAT 開発部所属。スサノオを意味する2nd-G 最高の剣神。鹿島・昭緒の旧友。
 並外れた戦闘力を持つ機殻剣使いで、複数の相手に対しても「歩法」を発動できる。田宮・遼子の同窓で、彼女を慕うが一向に気付いてもらえない。荒い言動と奇特な歌のセンスから、UCATではある種の禁忌扱いをされている。

鹿島・奈津(かしま・なつ)
 鹿島・昭緒の妻で、鹿島・晴美の母。
 他ギアの存在すら知らない Low-Gの一般人。過去に昭緒の起こした事故に巻き込まれて左の薬指と小指を失い、重度の降雨恐怖症となっている。良妻賢母を絵に描いたような人物だが、昭緒に対して負目を感じている。父親は日本神話専攻の学者で絵本を出版している。

鹿島・昭緒の両親
 いずれも2nd-G人。刀工の道を捨て農業で生活している。鹿島・奈津を「なっちゃん」と呼び溺愛している。飛場・竜徹とは農業仲間。

鹿島・昭緒の祖父
 大城・宏昌とは犬猿の仲とされる。2nd-G の滅亡後もLow-G に馴染むことを嫌い、生涯名前に漢字を当てることはなかった。孫の昭緒が学生だった時代に死去している。

長田・竜美(ながた・たつみ)
 「軍」の主力。戸田・命刻に戦闘技術を教え、また迷いの多い彼女を諭す。ハジの養女たちの中で年長者的な性格だが、エロに対する免疫が低い。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

これから読もうと思ってんだけどさぁ11  ~前勉強をつらつら~

2016年06月06日 22時20分07秒 | すきな小説
『終わりのクロニクル 第1巻(上・下)』(2003年6・7月刊)

 『終わりのクロニクル(おわりのクロニクル)』は、川上稔のライトノベル。イラストはさとやす。電撃文庫(メディアワークス)より2003年6月~2005年12月に刊行された。単行本全14巻。
 川上稔による架空の世界観「都市世界」における「AHEAD」時代を取り扱った作品。総じてページ数が多く、最終巻は1000ページを超えて当時の電撃文庫における最厚記録を樹立した。


あらすじ
 第2次世界大戦(1939~45年)という歴史の裏側にもうひとつ、決して表に出ることのない戦争があった。平行して存在し干渉しあう性質を歯車に例えて「ギア(G)」と呼ばれる11の世界が生き残りをかけて戦ったその戦争は、全ての物事の究極の理由「概念」を奪い合い滅ぼすことから「概念戦争」と呼ばれた。そして概念戦争に勝利したこの世界「Low-G」に全てが隠蔽されてから60年後、ある問題が発生した。
 Low-Gのみが所持する「マイナス概念」の活性化。それにより、今や唯一のギアとなった Low-Gは再び滅びの道を歩み始めた。滅びを回避するためには、かつて滅ぼした10のギアの概念の力が必要だった。概念戦争を知り、10のギアを滅ぼした組織「UCAT」は、各異世界の生き残り勢力との交渉のための専門部隊である全竜交渉部隊「チームレヴァイアサン」を編成する。
 そこで、ひとりの少年が祖父からその代表たる役目と権利を譲られ、「自分が本気になるために」交渉役を引き受ける。自ら悪役を名乗る少年、その名を佐山・御言。全ての遺恨を収め世界を救うための交渉、全竜交渉(レヴァイアサンロード)が、彼の言葉「佐山の姓は悪役を任ずる」とともに始まる。


ギアと概念戦争
 ギア(G)とは、Low-Gと10の異世界の総称。10の異世界は独自の物理法則「概念」とそれに由来する文化・技術を持ち、一定周期で Low-Gに接近することで Low-Gの文化などに影響を与えた。 各ギアとの接点は地球上の特定の地域に多く、そのため各ギアは Low-Gの世界各地における神話の原型であるとされている。 また、地脈の流れから見た世界と日本列島が相似で互いに影響を与えうるとする説「神州世界対応論」により、日本に各ギアへの接点が作られることになる。
 後に Low-Gの西暦1999年12月25日に全ギアの周期が重なり、その時最も多くの概念を持つギア以外の全ギアが滅びることが判明する。それによって各ギアが概念核の略奪のために他ギアに侵攻する戦争、「概念戦争」が勃発した。


1st-G(ファースト・ギア)
主要概念 …… 文字が力を持つ概念
対応神話 …… ニーベルンゲンの災い(西暦5~6世紀に Low-Gに伝来?)
対応地域 …… ドイツ / 日本の近畿地方

 テーブル型の大地をドーム状の空が覆う内向型構造で、星はドーム内面に張り付き、太陽は地下道を通って周回する。昼夜は太陽の出没で区別し、月は存在しない。大気には1st-Gにとっての文字の役割を担う精霊が存在し、1st-G住人は説得によって自然を操作できた。生物は文字という力が進化と突然変異を繰り返した末に誕生した。そのため1st-G生物は体内に遺伝子として文字があり、多様な能力を持つ反面で1st-G外での生存能力を著しく欠く。
 文化はヴォータンという王国が周辺の集落や街を統治する体制をとっていた。土地は狭かったが文字と対話によって事象を操り、不便は少なかった。しかし文字を書くとそれが現実化してしまう危険があったために、筆記系の文化は王族や専門職にのみ与えられ発達しなかった。

1st-Gの概念戦争
 元来戦闘力が低い1st-Gは、種族の戦闘力強化や5th-Gの機竜を解析して自前の機竜を開発して抗った。しかし戦争中に王妃を失った1st-G王は世界の「門」を封鎖して概念戦争から離脱し、衝突時間ギリギリで生き残った他ギアに亡命する処置を定めた。しかし、第一王女グートルーネや王弟レギンの庇護を受けていたジークフリート=ゾーンブルクがグラムを強奪、ハーゲンを除く王族とファブニールを殺して概念核の半分を持ち去った。それによって衝突時間以前に1st-Gは滅びたとされている。


Low-G(ロウ・ギア)
主要概念 …… 矛盾許容概念
対応神話 …… 聖書
対応地域 …… 現在の世界全体

 本シリーズの舞台となる世界。マイナス概念を有するためにいかなる長所も持たない「最低の世界」。『聖書』の原型とされ、各ギアを神話や伝説として現在に伝えている。
 各ギアの負荷を抱え込んだ「吹き溜まり」で最弱と蔑まれたが、概念戦争に勝利して現存唯一のギアとなった。各ギアの亡命者が多数存在しているが、その全てが UCATに恭順しているわけではない。現在はマイナス概念の活性化による自滅の危機に瀕し、全竜交渉によるプラス概念の全解放で危機を脱しようとしている。

Low-Gの概念戦争
 元来、他ギアの概念すら知らなかった Low-Gは衣笠・天恭の「神州世界対応論」により地脈という形で他ギアと接触し、そして機竜と武神の残骸を見たことで概念戦争の存在に気付いた。大日本帝国の出雲社護国課は第2次世界大戦終結後に日本UCATとなり、8人の異G調査員が集めた技術、恭順した他ギアの勢力や亡命者らと協力して戦力を整え、調査員たちが概念核を奪うことによって全ての他ギアを滅ぼした。その戦争の影響によって日本では関西大震災が発生した。


作中の専門用語
概念
 あらゆる事象の原因にある「それはそういうものだから」と言わざるを得ない、物理法則のようなもの。

自弦振動
 概念の力を示す可変一定周期の震動波。大きく分けて「母体自弦振動」と「子体自弦振動」の2つが存在し、あらゆる存在はこの2種を有している。

母体自弦振動
 保有している存在がどのギアに所属しているのかを示す自弦振動。人名における「姓」のようなもの。

子体自弦振動
 保有している存在の個性を示す自弦振動。人名における「名」のようなもの。

存在率 / 崩壊率
 自弦振動は物体の存在を支えるものであり、一定量以上破壊されると物体は存在できなくなりなんらかの形で崩壊する。その破壊の程度を表した用語が存在率と崩壊率であり、5割以上の存在率が失われると崩壊が起きる。
 概念空間は周囲の物体の存在率の一部を取り込んでいるため、概念空間内の物体が破壊されると物体の存在率が欠けていき、何度も繰り返すと本体も崩壊してしまう。このルールはギア自体にも適用され、半分以上の概念核が奪取・破壊されるとそのギアは崩壊することとなる。

概念核(がいねんかく)
 大規模な概念の塊。基本的にギアを形成する概念の半分以上を占める塊であるため、ギアそのものともいえる重要な存在。Low-Gで用いられる概念は、基本的に他の各ギアの概念核から抽出された劣化複製である。概念戦争を経て、各ギアの概念核は竜または武器(概念核兵器)に封じられている。

マイナス概念
 Low-Gの中核を成す概念。プラス概念の負荷として発生し、一切の特性を持たず万物を害する力である。Low-Gには他ギアのマイナス概念も落とし込まれており、概念核の対となるように10個存在している。2005年12月25日に活性化し、Low-Gを内側から滅ぼすことが予測されている。

概念空間(がいねんくうかん)
 概念を空間に付加して生まれる擬似的な異世界。空間の母体自弦振動の一部を書き換えることで、存在の一部を異世界側へと分化させて作成される空間であり、残りの母体自弦振動によって現実ともつながっているため、作成するのも戻すのも比較的簡単である。
 物体も存在の一部だけを送り込むことはできるが、その際に劣化してしまうため動くたびに徐々に崩壊していってしまう。そのため人間など中で活動する物体は自弦振動を100% 送りこまねばならない。

概念条文(がいねんじょうぶん)
 概念空間に入った生物の脳裏に聞こえる概念の効果内容。声は聞き手本人と同じ声として聞こえる。聞こえるものは概念空間内で特に強い概念のものであり、条文として聞こえないだけで実際は他にも微細な概念が大量に存在している。

概念兵器
 概念を内蔵する武器の総称。主に「機殻(カウル)」の名を冠するタイプとそうでないタイプがあり、概念核を収めたものは「概念核兵器」と称される場合が多い。「概念を内封した戦闘用機械」と定義すれば、機竜・武神・戦闘用自動人形も概念兵器に含まれる。

機殻武器
 戦闘目的で運用するために武器の形状を取るタイプ。機殻は内蔵した概念に対する耐久力であると同時に、機能の方向性を定めるために付けられている。作中では「機殻剣(カウリングソード)」、「機殻杖(カウリングストック)」、「機殻槍(カウリングランス)」、「機殻鉄鎚(カウリングハンマー)」、「機殻弓(カウリングアロー)」、「機殻銃(読み不明)」の6種類の機殻武器が登場する。

機殻剣(カウリングソード)
 剣の形態をとる概念兵器の総称。登場する中では最も該当する概念兵器が多い。

V-Sw(ヴィズィ)
 自意識を持つ6th-Gの概念核兵器で、出雲・覚の専用武装。
 6th-Gを維持するために造られた6th-G製機殻剣「ヴァジュラ」に、6th-G概念核「ヴリトラ」を納めたもので、普段は身の丈程もある白い大剣の形態をとる。性格はマイペースでのんびり屋。

聖剣グラム
 1st-Gの概念核兵器。
 長大な剣であり、また自意識を持つ。概念戦争時代にファブニールの原動力に使われていた概念核の半分を収め、全竜交渉ではファブニール改から残り半分を回収した。性格は人格者。

機殻槍(カウリングランス)
 槍の形態をとる概念兵器の総称。登場する物は少ないがいずれも強大な性能を秘めている。

G-Sp2(ガスプツー)
 通称「神槍」。自意識を持つ10th-G概念核兵器。風見・千里の専用武装。
 普段は身の丈程もある長大な白い槍の形態をとる。性格は従順なペット気質。元々は10th-Gの内乱鎮圧用機殻鉄槌「雷神鉄槌」が、10th-G概念核の保存器兼武器として機殻槍「G-Sp(ガスプ)」に改造さたものだったが、全竜交渉で千里に合わせて改修を受けてG-Sp2となった。

機殻杖(カウリングストック)
 杖の形態をした概念兵器の総称。その機能は杖というよりも火器のバズーカ砲に近い。

Ex-St(エグジスト)
 Low-G製概念兵器。新庄・運の専用武装。
 砲塔の交換によって砲撃の種類を変更し、あらゆる概念下での運用が可能。運の要望により、出力は所有者の意思で調整される。トリガーがボタン型であるため、使い方次第で高速連射が可能であり、ある程度の追尾機能や余剰出力による溜め打ち機能も持つ。

機殻銃
 銃の形態をとる概念兵器の総称。特筆するべき高性能の物はないが、平均的な武装として広く使われている。1st-Gの王城派も武装しており、その機構は1st-G概念に基づいたもので、装填した書物に込められた熱意を弾丸として放つ。

ゲオルギウス
 詳細不明のグローブ型概念兵器。佐山家・新庄家の専用武装。
 プラスのメダルを嵌める左手用と、マイナスのメダルを嵌める右手用の一対で、メダルは脱着が可能。右手用が紛失し、全竜交渉で大城・至からもうひとつを探すように佐山・御言へ左手用のみが託された。概念の増幅や効果を逆転させる機能を持つ。

X-Wi(エクシヴィ)
 2nd-G概念対応の飛行用概念兵器。風見・千里が使用。バックパック型。光に力を与える概念を内蔵し、自力で概念空間を展開出来る稀少な機体。

鎮魂の曲刃(レークイヴェム・ゼンゼ)
 1st-G冥府管理長の専用概念兵器。大鎌型。冥府と現世の境を切り開いて死者と対話する機能を持ち、時には戦闘力として召喚することもできる。元々はハーゲンが持っていたが、ハーゲンがファブニール改と合一したためブレンヒルト=シルトに預けられた。

賢石
 概念を封印した結晶体の総称。所有者の母体自弦振動を変えることなく、概念空間を作らずとも概念を使用することができる。概念兵器の燃料にも用いられる。

機竜
 概念戦争時代、単体では最強の戦闘力を誇った竜型の機械。強大な戦闘能力を有しているが、合一搭乗すると搭乗者は二度と分離できない欠陥があり、Low-Gの機竜は通常の搭乗手段を採用している。1st-G、5th-G、Low-Gなどのギアで開発されているが、本家は5th-Gでありその他の機竜は5th-Gの技術の模倣か複製である。

ファブニール / ファブニール改
 5th-G機竜の残骸を研究して開発された1st-G製の機竜で、それぞれ出力炉に1st-G概念核の半分を搭載する。陸上戦闘用であり、射撃や高速機動ではなく格闘による戦闘を行う。ファブニールは出力炉が1基しかなく、概念戦争時に出力炉を破壊されて機動停止した。ファブニール改は複製概念を積んだ2つ目の出力炉を搭載し、どちらかが壊れだけでは停止しない構造になっている。


 自分の母体自弦振動を変化させ、異なる母体自弦振動のギアにも移動できるようにする機能を有した空間の穴で、異なるギアや概念空間への入り口。概念戦争の時代は巨大な装置が必要であったが、現代では人間ほどの大きさなら腕時計型の小型装置で開けるようになっている。

概念符
 身体強化系の概念が封じられた符で、札型の賢石ともいうべき物。1st-Gの文字に寄る能力付加などで造られている。

全竜交渉(レヴァイアサン・ロード)
 来たる2005年12月25日のマイナス概念活性化に向け、異ギアの生き残り勢力から概念核の使用権を得るために行われる交渉。佐山・薫によって提案され、その交渉役には彼の孫である佐山・御言が推薦されている。

全竜交渉部隊(チーム・レヴァイアサン)
 全竜交渉を遂行するために設立された特設部隊。選りすぐりの優秀な課員のみが所属される。監督には大城・至、交渉役は佐山・御言が務める。

UCAT(ユーシーエーティー)
 正式名称は「Universal Counter Attack Team」。世界各地に出現する未確認生物(実際は他ギアの生物である)に対応するために設立された世界規模の機密組織。表面上は別の組織を名乗っており、日本では総合企業「IAI」がそれに該当するが、それ以外では各国軍の名を使っている。自国に対応するギアがある UCATは発言力が強いらしく、中でもドイツUCAT、アメリカUCAT、中国UCAT、日本UCATの発言力が特に強い。

日本UCAT
 かつての出雲社護国課を前身とする、概念戦争を終結に導いた UCAT。装甲服のカラーリングは白と黒。日本各地に基地が確認されている。所属する者たちは方向性こそ違うものの、全てハイレベルな変態である。日本は神州世界対応論によって最も他ギアの概念に触れたため、概念戦争に深く関わった。

ドイツUCAT
 1st-G概念を元にした「術式」の技術に優れた UCAT。魔女が多く所属しているため、装甲服は魔女の服を模している。自動人形の開発にも長けており、Sfを開発したのもドイツUCATである。概念戦争時代はジークフリート=ゾーンブルクが護国課顧問を勤めていた。

尊秋多学院(たかあきたがくいん)
 東京都秋川市(現在のあきる野市)にある私立高等学校。佐山・御言を始めとする全竜交渉部隊メンバーが通い、他にもブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクなど日本UCAT関係者も多く所属している。過去には佐山の両親や新庄の母親も在籍していた。学生寮を備え、マラソン用トラックもあるなど設備が整っている。JR五日市線秋川駅に近い。

衣笠書庫(きぬがさしょこ)
 尊秋多学院内にある図書室。創立者は衣笠・天恭で、現在はジークフリート=ゾーンブルクが司書を勤めている。非常に大規模で、尊秋多学院2年次普通校舎1階の8教室分と更にその廊下、地階にも広がっている。

IAI(アイエーアイ)
 日本UCATが表向きに掲げている総合企業。出雲社の出雲航空技研が前身となっており、元々は航空技術を専門とする企業だった。だが神州世界対応論遂行のために設立された護国課が概念戦争に関わったために他Gの技術を触れ、密かにそれを解析して製品に用いて数々の成果を上げ、世界有数の大企業にのし上がった。
 手掛ける事業は幅広く、航空旅客事業から自動車・家電製品等の製造、清涼飲料水販売まで取り扱っている。現社長は出雲・烈。息子である覚が次期社長候補である。

護国課(ごこくか)
 第2次世界大戦直後、衣笠・天恭が提唱した神州世界対応論を遂行するために出雲社(後の IAI)に設立された部署。衣笠・天恭を中心にして佐山・薫、新庄・要、出雲・全、大城・宏昌、飛場・竜徹が所属し、ドイツから来たジークフリート=ゾーンブルクが顧問を勤めた。神州世界対応論によって世界中の地脈に干渉したことで概念に対する知識と技術を早い段階から取得していた。
 後に UCATに吸収されるという名目で協力し、日本UCATに発展したが、衣笠・天恭と新庄・要は日本UCATには所属しなかった。

神州世界対応論(しんしゅうせかいたいおうろん)
 衣笠・天恭が提唱した理論。その内容は「日本は世界の地形と対応する、世界全体の地脈の中心である。各国の地脈をそれと対応した日本の地脈と接続、そして日本側の地脈を活性化させれば接続先の国の地脈の活性化につながり、世界全体の情勢を左右出来る。」とするものである。実際にその接続が成功したために、日本は世界全体の情勢管理を担い、他ギアの災厄を一身に背負うことで第2次世界大戦後の占領を免れたとされている。
 日本列島を世界大陸に当てはめており、この論によると東北沿岸部は中国大陸からロシアの東側沿岸、東京湾は黄海、伊豆半島はタイ、静岡はインド、伊勢湾はペルシャ湾、紀伊半島はアラビア半島。琵琶湖はカスピ海、大阪湾は黒海、児島半島はギリシャ、呉周辺がイタリア、対馬はイギリス、島根半島はノルウェー、四国がオーストラリア大陸、九州はアフリカ大陸、佐渡が北極の島々となる。北海道については、渡島半島がアラスカ、中部が北米、根室・北方領土が南米となる。この理論における日本は伊豆七島に、富士山はエベレストに相当する。
 この理論は他ギアの Low-Gにおける勢力図にも関わっており、他ギアは神州世界対応論で自らの世界に対応した国か地域に門を開いて亡命し、居留地や UCATに従わない残党の拠点の位置もこれに寄る。

八大竜王(はちだいりゅうおう)
 概念戦争において10のギアを滅ぼした8名の総称で、護国課の中心人物5名と、後の日本UCAT発足時に他国の UCATから編入して来た3名のことを言う。元々は他ギアの調査員だったが、紆余曲折の果てに担当したギアの崩壊に携わることとなる。佐山・薫と出雲・全がそれぞれ2つのギアを担当したため、ギアの総数と同数ではない。

佐山・薫(護国課特殊技術部長、中尉 4th-Gと8th-Gを担当)1917年生まれ、本作開始前に死亡
出雲・全(護国課大代表、中尉 6th-Gと10th-Gを担当)1915年生まれ、本作開始前に死亡
大城・宏昌(護国課技術部長、中尉 2nd-Gを担当)1906年生まれ、概念戦争時代に死亡
飛場・竜徹(護国課警備部長、曹長 3rd-Gを担当)1919年生まれ、現在も生存
ジークフリート=ゾーンブルク(護国課顧問 1st-Gを担当)1915年生まれ、現在も生存
趙・晴(中国UCAT 7th-Gを担当)生存
リチャード=サンダーソン(アメリカUCAT 5th-Gを担当)未登場
アブラム=メサム(中東UCAT 9th-Gを担当)未登場

関西大震災(かんさいだいしんさい)
 1995年12月25日に大阪府で突如発生した大規模地震。その禍根は10年が経過した本作においても色濃く残っている。主要人物の親の多くは救助隊として向かい、そこで死亡した。

Tes.(テス / テスタメント)
 各国UCAT共通の言葉で、返事や同意の意味で用いられる。聖書における「契約」を意味する。

バベル
 近畿地方のどこかに聳えるとされる巨大な塔型施設。内部にはマイナス概念が収められており、関西大震災の震源地となったとされる。侵入者を拒むが、衣笠・天恭らは内部に入り、中から概念関係の技術を持ち出したとされている。

半竜(はんりゅう)
 竜の容姿と人間の形態を併せ持った1st-Gの異種族の一種。1st-G概念を宿した概念空間の中でしか生きることができない。非常に長命で記憶力もあり、文字関係の文化が発展しなかった1st-Gでは語り部の役に就くことが多かった。全身が鱗で覆われた頑丈な体とそれを支える強靭な身体能力を有している。「闇渡り」の能力を持つ半竜もいる。

冥界
 1st-Gにおける死後の世界。空想上のものではなく、実際に肉体を失った魂が移送される概念空間である。冥界管理長という役職が存在し、長に与えられる概念兵器「鎮魂の曲刃」は冥界を一時的に開いて冥界の死者と対話することができる。

和平派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファーゾルトを長として UCATに恭順した集団で、普段は居住区内で自給自足の生活を送っている。1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、王城側の門から脱出した者たちで構成されている。基本的に争いを好まない性格だが、攻撃的な者たちは王城派に分裂し、ファーフナーが市街派に所属している。

市街派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。ファブニール改ことハーゲンを長に据え、若手リーダーのファーフナーと王族の庇護者ブレンヒルトを中心とする過激派で、概念核を保有するがゆえに強い影響力を持つ。「軍」の協力によって資材や拠点を確保した。派名の由来は1st-Gから脱出する際、王城側と市街側に発生した門の内、市街側の門から脱出したことに由来する。

王城派
 概念戦争終結後に3分した1st-G残党のひとつ。和平派から概念空間技術を持って分離した武闘派。戦闘意欲と意思は強いが、これといった特徴を持たず勢力は弱い。王城側の門から脱出した和平派から分離したが、しかし和平を望まないためこれを名乗る。

軍(ぐん)
 9th-Gの残党を中心とし、各ギアの UCATに反発する者たちによって構成された、どのギアにも属さない謎の集団。元9th-Gの大将軍ハジをリーダーとし、戸田・命刻、田宮・詩乃らが主力となっている。日本UCATのみを敵と定め、その最終目的はそれを壊滅させることとしている。


主な登場キャラクター
※担当声優は、文化放送『電撃大賞』で2005年11月に放送されたラジオドラマ版(第1巻の内容のみ 全4話)でのキャスティング

佐山・御言(さやま・みこと)…… 平川 大輔(32歳)
 全竜交渉部隊交渉役兼リーダー格。尊秋多学院生徒会副会長。2年生。貘を連れている。佐山・薫の義理の孫で、「悪役」になる事を望む少年。現在は天涯孤独で、田宮家の世話になっている。
 母・愉命と共に死に瀕した過去から、両親に関わることを考えると狭心症を起こす。薫と飛場・竜徹の教育により文武両道だが、中学時代の空手全国大会決勝で左手を砕き、幻痛を起こす後遺症を持っている。

新庄・運(しんじょう・さだめ)…… 釘宮 理恵(26歳)
 全竜交渉部隊メンバーで、前衛援護担当。幼少期から記憶喪失で UCATで育てられた。双子の弟と名乗る「切(せつ)」が尊秋多学院2年生として編入し、御言の男子寮のルームメイトとなるが……?
 奥多摩の山奥で育てられたためか、常識感覚が現代より10~20年ほど遅れている。

出雲・覚(いずも・かく)…… 谷山 紀章(30歳)
 全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会長。現在は留年して3年生。Low-Gと10th-G神族のハーフを父に、10th-G神族を母に持つ青年。幼少時は10th-G居留地で暮らしていた。両親譲りの非常に頑強な肉体を持ち、そのため風見の腕力にも耐えることができる。父親のことを好いておらず、言及されることを嫌う。

風見・千里(かざみ・ちさと)…… 前田 愛(30歳)
 全竜交渉部隊主力メンバーで、前衛担当。尊秋多学院生徒会会計。3年生。Low-G出身の一般人だが、6th-Gと10th-Gの全竜交渉に居合わせたことで UCATに所属する。常識を超える腕力を持つ。父親は TVディレクター、母親はマイナーながら根強い人気を持つ歌手で、自身も学校でバンドのボーカルを勤める。元なぎなた部所属。

日本UCAT
全竜交渉部隊
大城・一夫(おおしろ・かずお)…… 丸山 詠二(75歳 2015年没)
 IAI局長兼日本UCAT全部長。佐山・御言とも付き合いのある丸眼鏡の老人。かつては概念戦争において殲滅戦も実行した厳格で冷酷な人物だったらしいが、現在はその片鱗も見せない。シングルファーザー。

大城・至(おおしろ・いたる)…… 中井 和哉(38歳)
 全竜交渉部隊監督。大城・一夫の息子。Sfを侍女として帯同する。痩せぎすな初老の男。旧日本UCATから残る唯一の人物で、多くの秘密を知っている。1995年の関西大震災で足に後遺症を負い、鉄製の杖を使う。同時にマイナス概念による不治の病も患っている。不平屋。

Sf(エスエフ)…… 鹿野 優以(21歳)
 大城・至専属の侍女。ドイツUCAT製の自動人形。名前はドイツ語の「在るべき婦人(ザインフラウ)」の略。感情を持たない。重力制御で分解した重火器類をスカートの中に隠しており、必要時には即座に組み上げて用いる。

リール=大樹(リール・おおき)
 尊秋多学院の英語教師で生徒会顧問、佐山・御言や新庄・運の在籍するクラスの担任。極度の天然ボケで、遅刻や物忘れは日常茶飯事、日本語はおろか英語も読めない問題教師。だがそれが反面教師となってか、担当するクラスの生徒は自主性に富んでいる。

シビュレ
 全竜交渉部隊の整備・通信管理担当。長い金髪の少女。

ロベルト=ボルドマン
 6th-G人代表。全竜交渉の通常課連携役を担う。
 元は帰化したアメリカ軍少佐だったが、母親から6th-G指導者の血筋であることを知らされ、6th-G残党に合流した。その後10th-Gと協力して UCATを襲撃するが、出雲・覚や風見・千里との戦いを経て UCATに恭順した。禿頭を何かとネタにされる。

出雲社護国課
衣笠・天恭(きぬがさ・てんきょう)
 神州対応論を提唱した護国課の設立者。八大竜王の長。一切の過去が謎に包まれた隻腕の老人。第2次世界大戦を予言して出雲航空技研や大日本帝国政府に神州対応論を認めさせ、それを通して他ギアの存在を知らしめた。1878年生まれ。故人。

佐山・薫(さやま・かおる)
 総会屋の大物。4th-Gと8th-G担当の八大竜王。本作の始まる少し前に死去している(享年88歳)。佐山・浅犠の養父で、祖父として佐山・御言を育てた人物。御言に勝るとも劣らない変人であり、珍奇な技術も含め、多岐に渡る英才教育を施した。

ジークフリート=ゾーンブルク …… 銀河 万丈(57歳)
 尊秋多学院にある衣笠書庫の司書。元護国課顧問兼1st-G担当の八大竜王。禿頭で長身の老いたドイツ人。かつては「魔法使い」と謳われた術式使い。実年齢は90歳だが長命化手術を受けている。ブレンヒルト=シルトとは1st-G滅亡に関して遺恨がある。

趙・晴(ちょう・せい)
 日本UCAT医療班長。7th-G担当の八大竜王で技術の後継者。少女の外見は延命技術と不老技術によるものであり、実際はかなりの高齢者。

1st-G
ブレンヒルト=シルト …… 豊嶋 真千子(33歳)
 尊秋多学院3年生。美術部部長。1st-Gの魔女。「鎮魂の曲刃」を使う。現存唯一の1st-G長寿族の少女。黒猫と小鳥を連れている。市街派に属し、ジークフリート=ゾーンブルクの監視役として尊秋多学院に入学していた。幼年期はナインという名前でグートルーネやレギン、ジークフリートと共に暮らしていた。

黒猫 …… 野田 順子(34歳)
 ブレンヒルト=シルトの使い魔。Low-G生まれの猫。一言多いところがあり、よくブレンヒルトに折檻される。思考が硬直しがちなブレンヒルトを導くことが多い。

ハーゲン …… 阪 脩(75歳)
 市街派の長。ファブニール改と合一している。1st-G王の弟でレギンの兄。元1st-G冥界管理長で、「鎮魂の曲刃」の本来の持主だった。Low-Gで市街派を維持するためにファブニール改と合一した。
 機体とのズレで意識の寿命が近付いている。ブレンヒルト=シルトの過去を知る数少ない人物。長く非戦路線を取っていたが、日本UCATの聖剣グラム運搬を機として全軍を率いて奪取に向かった。

ファーゾルト
 1st-Gの半竜で居留地の長。語り部。1st-Gの全竜交渉における事前交渉の相手となる。恭順の証として両翼を自ら断っている。ファーフナーや一部の生き残りには「保身を望んだ軟弱者」とされるが、本人は1st-Gの誇りを見失っていない。長命で幼い頃の大城・一夫や新庄・運を知っている。

ファーフナー …… 竹本 英史(32歳)
 市街派の主力で若手のリーダー格。ファーゾルトの息子にあたる半竜。闇渡りの半竜であり、意思の届く範囲ならば影の中を移動することができる。父に反して苛烈な性格であり、1st-G種族である事を誇りつつも帰化2世であるために故郷を知らず、そのことに憤り市街派に属した。

グートルーネ …… 小山 裕香(47歳)
 ヴォータン王国の第一王女。故人。概念戦争で傷心した1st-G王に遠ざけられ、レギンの元で暮らしていた。後にブレンヒルト=シルトやジークフリート=ゾーンブルクを保護し、一時期は4人で家族同様に生活していた。暴走したファブニールによって致命傷を負い、残った民を Low-Gへ避難させて死去。

レギン
 賢者と称えられる人物。1st-G王の弟。故人。グートルーネ王女やブレンヒルト=シルト、ジークフリート=ゾーンブルクの身元を引き受けた。かつては侵略者であるジークフリートを疑ったが、後に家族同然の関係を築く。しかし裏切ったジークフリートから概念核を護ろうとファブニールに搭乗、交戦するが殺されて概念核を奪われたとされている。

9th-G
ハジ
 「軍」の長。元9th-G大将軍。命刻と詩乃の養父。隻眼で巨躯の老人。

戸田・命刻(とだ・みこく)
 「軍」主力。黒髪を後ろで結った長身の少女。黒いサマーコートに茶色のスラックスといった姿。

田宮・詩乃(たみや・しの)
 「軍」に所属する少女。命刻の義理の妹。ロングヘアの少女。黒いストールに黒いロングスカートといった姿。

Low-G
田宮・遼子(たみや・りょうこ)
 田宮家家長。警備会社の経営者。かなりの天然ボケだが、締めるときはそれなりに締める和服の女性。母に無理心中に迫られたと傷心した若い頃の佐山・御言を抱いたことがある。

田宮・孝司(たみや・こうじ)
 田宮・遼子の弟。実質的な田宮家のまとめ役。遼子ともども、佐山・御言を「若」と呼ぶ。非常にしっかりした性格で、姉へのツッコミと尻拭いが主な仕事。遼子の破天荒な振る舞いに毎回引っ掻き回される苦労人。包丁さばきが優れている。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする