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長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

あらためて立ち返ろう読書メモ 小説『帝都物語』5 『大東亜篇』&『不死鳥篇』

2025年04月08日 20時53分04秒 | すきな小説
≪過去記事の『帝都物語』第1・23・45・11巻も、よければどうぞ~。≫

『帝都物語12 大東亜篇』(1989年7月)&『帝都物語6 不死鳥篇』(1986年7月)
 『12 大東亜篇』は角川書店角川文庫、『6 不死鳥篇』は角川書店カドカワノベルズから書き下ろし刊行された。
 『帝都物語』の『11 戦争篇』と『12 大東亜篇』は、『10 復活篇』(1987年7月刊行)をもって物語がいったん完結した後に、時系列を遡って外伝的作品として発表された。

あらすじ
 昭和二十(1945)年8月15日。第二次世界大戦の敗北は、日本国民に大きな衝撃をもたらした。帝都東京は瓦礫の都市と化し、復興困難な状況に陥っていた。しかも、帝都を守護していた英霊の銅像の封印が解け、数多くの怨霊や地霊たちが跋扈し始める。
 そのさなか、不老不死の肉体を得た魔人・加藤保憲が、中国大陸から日本へと再び舞い戻って来た。いまだ覚醒せぬ平将門の怨霊を呼び覚ますために……


おもな登場人物
≪大東亜篇≫
黒田 茂丸
 二宮尊徳を祖と仰ぐ結社「報徳社」の一員。「尊徳仕法」という経済論を提唱し、地相占術を心得、龍脈を探る力を持つ「風水師」。かつて昭和初期に、加藤保憲の手から帝都東京を護るために目方恵子と共に闘ったが敗れた。以後、北海道へ渡り15年間を過ごしていた。満州帝国の首都・新京へは、満州国建設局の要請により、地下都市開発に伴う地霊の祟りを祓うために招聘されたが、満州へ渡って行方知れずの恵子を捜す目的も持っている。年齢はすでに60歳近い。

出島 弘子(いずしま ひろこ)
 1915年1月生まれの30歳。満州映画協会所属の女優。理事長の甘粕正彦に、新京の地下に出没する怪異を題材にした映画への主演を命じられる。若い頃の目方恵子と面影が似ている。

甘粕 正彦(あまかす まさひこ 1891~1945年)
 元・憲兵大尉。関東大震災の際に無政府主義者の大杉栄を暗殺した、世にいう「甘粕事件」の首謀者。満洲国警察庁長官であり、新京で映画会社「満洲映画協会」の理事長も務めている。東条英機の子飼いの部下であり、加藤保憲とも浅からぬ関係のある、新京の闇の帝王。

加藤 保憲(かとう やすのり)
 明治時代初頭から昭和七十三(1998)年にかけて、帝都東京の滅亡を画策して暗躍する魔人。紀伊国龍神村の生まれとされるが、詳しい生い立ちについては一切不明である。
 長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない20~30歳代の外見をしている。眼光は鋭く、身長180cm 前後という身体の大きさに似合わぬ軽い身のこなしが特徴的である。黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様が染め抜かれた白手袋を着用している。剣の達人で刀は孫六兼元を愛用する。 極めて強力な霊力を持ち、あらゆる魔術に精通している。とりわけ陰陽道・風水・奇門遁甲の道においては並ぶ者のいないほどの達人であり、古来最も恐れられた呪殺秘法「蠱毒」を使う。天皇直属の陰陽道の名家・土御門家が総力を挙げても彼一人に敵わない。さまざまな形態の鬼神「式神」を使役し、平将門の子孫を依代にして将門の大怨霊を甦らせようとしたり、大地を巡る龍脈を操り関東大震災を引き起こしたりした。中国語や朝鮮語にも通じる。
 平将門の怨霊との闘いに敗れ、目方恵子を伴って中国大陸の満州帝国へ渡ったが、秘術により不老不死の仙人・屍解仙となり、再度帝都の崩壊をたくらむ。

目方 恵子(めかた けいこ)
 福島県にある、平将門を祀る相馬俤神社の宮司の娘。15年前に帝都東京の大地霊である平将門に仕える巫女として加藤保憲に闘いを挑んだが敗れ、加藤によって満州国へと連れ去られた。1894年か95年生まれ。
※作中で恵子は終始、結婚後の「辰宮」姓を名乗っているのですが、すでに未亡人となっているし結婚生活も短かったので、本企画では旧姓の「目方」で通させていただきます。

陶 光継
 新京の小路で薬屋を営みながら、甘粕正彦のために不老長寿の秘薬や絶倫になれる媚薬などを調合する「練丹道」の老道士。出島弘子に頼まれ、死者を蘇生させる秘薬を調合する。

岡 大路
 満州国建設局局長。新京の地下街建設現場に出現する怪異を排除するために、かつて帝都東京で地下鉄工事現場に出現した加藤保憲の式神に対処した「学天則作戦」の生き証人である黒田茂丸を招聘する。

内田 勝男
 満州鉄道の調査部員。黒田茂丸と共に新京駅の地下を調査し、怪異の存在を明らかにする。

石堂 淑彦
 満州国建設局の土木科員。岡局長の指示により、新京にやって来た黒田茂丸に地下の怪異の概要を説明する。

森繁 久彌(1913~2009年)
 放送員として満州国の各地を探訪している。黒田茂丸の依頼により、目方恵子の捜索に協力する。

愛新覚羅 溥儀(あいしんかくら ふぎ 1906~67年)
 中国・清帝国第十二代すなわち最後の皇帝。清帝国の滅亡後に天津に移住したが、満州事変の際に大日本帝国陸軍に擁立され満州帝国初代皇帝となる。しかし陸軍関東軍の監視下で疲弊する中でオカルティズムに傾倒し、中国人商人に身を変えた加藤保憲の誘惑に屈するようになる。

山中少佐
 大日本帝国陸軍関東軍の作戦司令。部下の小沢中尉らと共に、加藤保憲率いる八路軍の討伐にあたる。下の名前は「ショウイチ」(字は不明)。

小沢中尉
 大日本帝国陸軍歩兵中尉。山中少佐の部下だが、加藤保憲率いる八路軍の脅威に恐れをなしている。

占術店の老人
 新京で、易術や占術の専門用具や指南書を売る店の老主人。満州帝国皇帝・溥儀にも呪薬を納入している満州第一の秘薬店と豪語し、加藤保憲から買い入れたという伝説の霊薬「華光」を黒田茂丸にさずける。

朱 文順
 満州映画協会の新人監督。理事長の甘粕から期待をかけられ、新京の地下に出没する怪異を題材とした新作映画の監督に抜擢される。

張 香芳
 新京の小路にある袋物屋の娘。6歳だがすでに喫煙している。両親と4歳の妹・蘭と暮らすが、コオロギ賭博にのめり込む母親に代わり店番をしている。店に来た出島弘子と親しくなるが、食中毒にかかり家が貧窮して治療費が無いために死亡する。

≪不死鳥篇≫
辰宮 雪子(たつみや ゆきこ)
 辰宮由佳里の娘。母から強い霊能力を受け継ぎ、そのために加藤に狙われる。
 二・二六事件に深く関わったが、終戦後は中央区日本橋浜町の料亭で、年老いた母・由佳理をかかえ芸者として生きる。1915年8月生まれ。

辰宮 由佳理(たつみや ゆかり)
 辰宮洋一郎の妹。1888年か89年生まれ。平将門の依代となる程に強力な霊能力者であり、強度のヒステリー症状ないしは霊能体質を有するために奇怪な事件に巻き込まれたが、身体の衰弱が激しく、病と共に太平洋戦争の終戦を迎えた。

鳴滝 純一(なるたき じゅんいち)
 東京帝国大学理学士。洋一郎の旧友。1881年か82年生まれ。魔人・加藤の帝都東京破壊を阻止するために寺田寅彦、幸田露伴らと共に活躍した。太平洋戦争の終戦後に大学時代の旧友の誘いで鹿児島県の坊津に移住するが、不穏な動きと加藤の再来を察知する。

大川 周明(おおかわ しゅうめい 1886~1957年)
 超国家主義を掲げる思想家。イスラム教の『コーラン』を指導書に、北一輝や井上日召と並び宗教的熱狂に突き動かされながら武力革命を画策し続けた、霊的ファシスト。太平洋戦争の戦犯となり巣鴨拘置所に収監された後も、大東亜共栄圏の夢は捨てきれていない。

角川 源義(かどかわ げんよし 1917~75年)
 角川書店初代社長。国学院で折口信夫に学んだ新進の国文学徒であったが、敗戦直後の荒廃に際し、日本文化を守り抜く決意をもって28歳で角川書店を創業する。学者、俳人としても名を成した。

平岡 公威(1925~70年)
 後の小説家・三島由紀夫。大蔵省官吏。亡くなった辰宮洋一郎の恩給を届けるために辰宮家と関わり、雪子と出逢う。

ジョゼフ=ニーダム(李 約瑟 1900~95年)
 イギリス大使館顧問。ケンブリッジ大学生化学教授。中国大陸に伝わる不老不死の秘薬調合術「練丹道」と仙術の研究者。

平 将門(たいらのまさかど 903~40年)
 平安時代の関東地方最大の英雄。京の中央集権主義に刃向かい関東を独立国家化したため討伐されたが、その没後もなお千年間、大手町の首塚の下で関東と帝都東京を鎮護し続ける大怨霊。『帝都物語』シリーズ全体の根幹をなす最重要人物。

田丸教授
 精神医学者。精神障害の症状を見せる大川周明を担当する上野医師の依頼を受けて、大川の症状の真偽を確かめようとする。

上野医師
 巣鴨拘置所に収監されている A級戦犯の担当医。独房で錯乱する大川周明の精神障害のような症状の真偽の判断を田丸教授に依頼し、大川が持っていた謎の紙切れを教授に見せる。

長辻 修平
 東京都職員。須田町万世橋の広瀬中佐銅像の消失事件と、GHQ からの東京都内の偉人銅像の打ち壊し指令に疑念を抱く。


おもな魔術解説
屍解(しかい)
 中国大陸に伝わる神仙道の奥義とされる秘術。不老不死の神仙(仙人)となるために深山にこもり、体内に不死の器官を芽吹かせ、星の精気で養う。やがて古い肉体を抜け出して不死者として現世に蘇り、自由に空を飛べるようになる。この状態を屍解といい、屍解を果たした神仙を「屍解仙」という。

西洋錬金術
 エジプト文明やメソポタミア文明を発祥とする西洋錬金術は、本質的には冶金術(金属精製と加工術)であり、人間を不老不死にする秘薬の研究とは無関係だった。しかし12世紀以降、西洋と中国大陸との交流により、神仙道の思想や練丹道の技術が西洋へ渡り、ルネサンス期以降の新しい西洋錬金術を生んだ。有名な錬金術師のロジャー=ベーコン(1214~94年)やパラケルスス(1493~1541年)は、中国由来の魔術を学んでいる。

富士垢離(ふじごり)
 江戸時代に流行した、富士山に登山し、身を清めて願いを成就させる習俗。

導引術(どういんじゅつ)
 中国大陸に伝わる魔術的体操。肉体の筋肉や表皮を動かしてエネルギーを充足させ、病気や老いを克服する。

胎息(たいそく)
 導引術と同じく、中国大陸に伝わる魔術的健康増強術。胎児と同じポーズを取って胎児の呼吸法を行う。

印(いん)
 仏教の密教系の技であり、指を様々な形に組み合わせ、その形によって仏にかける祈願の内容や呪文の種類を示す。例えば知能学才を高める「求聞持法(ぐもんじほう)」を修する時は、親指と人差し指とで半円を作り左右の手を合わせるなど、形が全て決まっている。

摩利支天(まりしてん)
 仏教の護国の神。あらゆる災いを祓い、危険を遠ざける。天女の姿をしているとされるが、武士や軍人の守護神である。

結界
 魔術的な儀礼を施し、神聖な区域と定められた場所。聖人が位置する座、魔除けを置いた空間、社寺の敷地から王宮まで、その規模はさまざまである。魔物の侵入を妨げる霊的バリアとなる。

鎌鼬(かまいたち)
 日本に古くから伝わる怪現象。山から吹き下ろす強い寒風に当たり、身体の一部が突然鋭く切り裂かれる。後に人に悪さをする妖怪の姿に結びつけられた。本作では加藤保憲の強力な攻撃技として使用される。


 ……というわけで、いよいよ始まりました。加藤保憲が「本当の魔人」と化して日本に帰ってきた、『帝都物語』怒涛の後半戦の開幕であります!
 といいましても、ことメディア化という点で見ますと、実は今回の『大東亜篇』以降は、物語のマンガ・アニメや映画化という二次作品が全く無い状況ですので、知名度という点では、やっぱり嶋田久作さんの名演のインパクトが絶大なこれまでの前半部分からは、だいぶ溝を開けられていると言わざるを得ません。いや、原作小説に忠実かどうかはさておいても、実写映画2本にコミカライズにアニメ OVA化と、これまでが恵まれすぎていたんですよね。

 ただ、そうだとしましても、だったら今回の『大東亜篇』以降は別に読まなくてもいいとか、お話としてつまらなくなっているとか、そういうことは全然ないんだなぁ、これが! むしろここからが、メディア化がトンとないのも無理ねぇなとうなずかざるを得ない、とてつもない強烈な展開の猛ラッシュなのであります。さぁ、お遊びはここまでだ!!

 上の概要にもある通り、1995年の角川文庫新装合本版以降は一緒に併録されている『大東亜篇』と『不死鳥篇』ではあるのですが、実際には発表時期にして丸3年の開きがあります。前回の『ウォーズ篇』と同様に、今回の『大東亜篇』もまた『帝都物語』の本編10巻が完結した後に執筆された番外編的エピソードですので、具体的な時系列としては、『不死鳥篇』も含めた小説『帝都物語』本編が1985~87年に発表されていったん完結した後、1988年1月に実相寺昭雄監督による実写映画版『帝都物語』と番外編小説『ウォーズ篇』が同時に世に出て、89年7月に『大東亜篇』が出版されて9月に映画『帝都大戦』が公開されたという順番になっております。商売上手な当時の角川書店のことですから、おそらく『大東亜篇』も映画公開に併せて売り出したかったのでしょうが、映画の公開が2ヶ月も遅れているというところに、監督が土壇場で交代しちゃった『帝都大戦』の苦労のほどがしのばれますね……その当時、私の親戚の家のリビングに置いてあった、テッカテカに黒光りした嶋田さんのご尊顔がプリントされたエッソ石油(現エネオス)の『帝都大戦』コラボのティッシュ箱が子供心に怖くてしょうがなくてよ~う! 遊びに行くたんびに見ないようにしてました。

 まぁこんな流れになっておりますので、『大東亜篇』はまだまだ『帝都物語』ブームも冷めやらぬ時期の最後に発表された作品ということになります。あっそうか、『大東亜篇』だけ、「平成に発表された」『帝都物語』本編ってことになるんですね。まぁ、当時の世間の気分は、まだまだ昭和でしたでしょうけど。

 こういった時系列をなんとなく頭に入れて再読してみますと、ていうかそれを知らずに読んだとしても、実は今回の『大東亜篇』と『不死鳥篇』との間には、なんだか無視できない「質感の違い」があるように感じられました。

 具体的に言いますと、なんつうか、「作品のアブラ成分」がだいぶ違うような気がするんですよね。『大東亜篇』はわりとあっさり系なのに、『不死鳥篇』はコッテリギトギト系! あさりだし塩ラーメンと二郎ラーメンニンニクアブラカラメマシマシくらい違う!!

 これはまぁ、当然といえば当然なのですが、『大東亜篇』でいいますと、これはいよいよ加藤が日本に本格的に再上陸する直前の状況を語っている内容ですし、実質的に『大東亜篇』の中での悪役は甘粕正彦が担っており、加藤はどちらかというとパートナーの目方恵子を守るヒーローのような立場になっています。そして、高温多湿な日本とはまるで違う荒涼とした中国・満州帝国の首都・新京で終始話が進むので、『大東亜篇』とタイトルこそ大きく出てはいるものの、人工的でどこか空虚な雰囲気のただよう滅亡寸前の街を舞台とした、大いなる後半戦の前の間奏曲といったこぢんまりとしたスケールの挿話となっているのです。作中の主人公として再登板した黒田茂丸も、まぁ加藤の敵ではありませんよね。

 それに引き換え『不死鳥篇』の方はと言いますと、これはもう加藤も屍解仙術でがっつり人間を辞めますし(不死鳥と言うほどカッコよくはないけど)、20年ちかく苦楽を共にしてきた目方恵子とも決別して、本気で帝都壊滅に乗り出す復活宣言を高らかにブチ上げるプロローグとなっています。いきなり加藤が SF映画『遊星からの物体X 』(1982年)ばりのメタモルフォーゼ(つゆだく)を見せる開幕から、怪奇小説の世界的古典『ドラキュラ』そっくりの流れで日本の鹿児島県に上陸する前半、そしてついに、若い人間のぷりっぷりの肝臓をつまみ食いして完全復活した挙句、霊的違法改造をほどこしたスーパー漁船を駆って終戦直後の帝都にたどり着き、先に東京に来ていた恵子や因縁の辰宮雪子と再会する展開は、脳汁でまくりのジェットコースター的スピード感にあふれています。ラストの加藤と恵子のクリスマスダンス対決(字づらがすごい)などは、今までのメディア化された小説版のどのシーンよりも見栄えのする、すばらしい幕切れになっていたかと思います。なんでこれを映画にしないかなぁ!? まぁ、大川周明の独房シーンがとんでもないので、これを映像化したら『帝都大戦』と同じかそれ以上のトラウマ映画になることは間違いないので、ためらわれるのも仕方ありませんが。

 特に、巣鴨プリズンの大川の独房における加藤 with 十二神将 VS 平将門の眷属軍団の幻術バトルは圧巻の一言で、思い返せば、加藤が将門の霊威と互角に渡り合えたのはこの一戦が初めてになるので、とても重要な分水嶺となる名勝負となるわけです。ここで登場する脂したたる醜怪な大男の怪物「父」は、果たして将門に近い眷属なのか、はたまた将門自身の分身なのかは判然としないのですが、少なくとも加藤の十二神将を『北斗の拳』のハート様的な攻撃吸収戦法で殲滅させるほどの驚異的なパワーを持ちつつも、加藤の初披露した強力技かまいたちに撤退を余儀なくされるというシーソーゲーム。ここはほんと、手に汗握るサイキックバトル小説の面目躍如たる名場面ですね!

 ちなみに、ここでもけなげに加藤のために粉骨砕身働く十二神将のみなさんは、主人の約20年ぶりの帝都入りに狂喜乱舞して大復活するわけなのですが、クライマックスのダンスホールでは、ガラス窓に顔をべったり押しつけて加藤と恵子の愛憎ハーフ & ハーフダンスを見守るというお茶目な面も見せてくれます。せっかくだから、十二神将だけじゃなくて個別名もつけてあげたらいいのにねぇ。

 ここでちょっと脱線してしまうのですが、『不死鳥篇』というタイトルの由来になっていると思われる、本エピソード最大のトピック「加藤の屍解仙化」なのですが、屍解仙自体は「不老不死になれる」だの「自由に空を飛べる」だのと、かなり天下無敵なチート能力を得られるかのような解説がなされているのですが、実際に作中での様子を観察してみますと、加藤は単に「肉体を新しくした」だけだし、ましてや空を飛んでるなどという描写はどこにもありません。もちろん、『不死鳥篇』の加藤は肉体をリニューアルしたばっかりですので、脱皮したてのセミのように100% 全力を発揮できていないだけなのかも知れませんが。
 具体的に作中で描かれた情報を整理してみますと、加藤は1945年8月17日に中国大陸の香港で古い肉体を捨てて白くてキモい怪物フォームとなり、上海から出港した密輸漁船に自分を入れた棺のような木箱を運ばせる形で、12月23日に鹿児島県坊津に上陸するのです。
 え……ちょっと待ってください、8月中旬に脱皮して、12月下旬の時点でまだ自力で動くこともしゃべることもできない状態って、体力の回復があまりにも遅くありませんか? 人間の赤ちゃんだとしたら無理もないペースではありますが、過酷な野生の世界だったら生きてけませんよ!?
 ただ、鹿児島に上陸した加藤は、そこで1週間のうちに4人もの犠牲者の肝臓を食べて、その間で急激に20歳代の若い姿の加藤にまで成長しきっていたのでした。ここはここで、逆にペースが速すぎるわ!
 つまりこれ、屍解仙化した加藤の新生に必要なのは、時間よりも、人間の肝臓から摂取する栄養分なのではないでしょうか。おそらく、加藤は日本に上陸するまで、あえて栄養を摂らずに自分の回復を停止させていたのかも知れません。なんでだろ……中国人を襲うことは控えて、にっくき日本人の肝臓を喰らうまで我慢してたのかな? 確かに、加藤ならそのくらいの選り好みはするかも知れませんね。
 いずれにしても、加藤の屍解仙は「空を自由に飛べる不老不死の仙人」というイメージからはほど遠い、「人間の肝臓を最低4コは食べないと元の姿に戻れない若返り術」といったたぐいの、そ~と~に手間ひまのかかる回復呪文程度の役割でしかないような疑惑も持ちあがるのです。う~ん、言い伝えほどスゴくない!
 古い加藤の肉体が真っ二つに割れて白い怪物が出てくるというビジュアルショックは効果抜群なんですけどね……もしかしたら加藤が習得した屍解仙術って、『帰ってきたウルトラマン』の変態怪獣キングマイマイの「キング」くらいの見かけ倒しかもしんねぇぞコレ!


 そういったハードなシーンの他にも『不死鳥篇』は、ここまで身体をボロボロにさせながらもシリーズ皆勤賞だった辰宮由佳理の退場を、かなりロマンチックな幻想シーンで描いています。今までさんざん、兄の洋一郎ともどもひどい目に遭いまくりで、ろくにヒロインらしいおいしい見せ場ももらえない可哀そうな由佳理さんではあったのですが、最後の最後でやっと、美しい晴れ舞台をもらえたようで本当に良かったです。

 でもまぁ、加藤が意味ありげに恵子に残していった謎の骨笛を、何の躊躇もなく口にしてピーピー吹こうとする由佳理さんの危機管理能力のなさもたいがいですよね……そんなん絶対ヤバいアイテムに決まってんじゃん! 近くに置くな!! 目方神社にでも持ってけ!!

 それはともかく、この『不死鳥篇』をもって、『帝都物語』に最初から登場している初期メンバーは、いよいよ加藤と鳴滝純一(と将門サマ)だけになったわけで、『魔王篇』における洋一郎の退場とともに、この『不死鳥篇』はかなり重要なターニングポイントとなるエピソードであることは間違いありません。加藤の野望を阻む主人公パーティも、中心人物は恵子と雪子に絞られてきましたね!

 いや~やっぱりこう見てみますと、加藤不在ながらも帝都東京にとっては非常に重要な存亡の危機であった「太平洋戦争」の戦火を描いた『ウォーズ篇』や、中国大陸潜伏時代の加藤を描く『大東亜篇』といった番外エピソードによる補完は、作者の荒俣先生にとっては必要不可欠な行程ではあったのでしょうが、いかんせん筆の脂ののり方というか、勢いとテンションのレベルが、『魔王篇』やこの『不死鳥篇』とは全然違うんですよね!
 どうしても、いったん完結した後に改めて書いちゃうエピソードって、展開の帰結点がはっきり決まっちゃってるので、な~んかノリが落ち着いちゃうんですかね。おとなしいというか、冷静に話を進めてる感があるんだよな。

 『不死鳥篇』はもう、当時の荒俣先生自身も止められないスピードで驀進してたんじゃなかろうかという、ドーパミンの覇気がものすごい! ま、それが読みやすいかどうかは別の話になっちゃうし、『不死鳥篇』の中で全く関係のない脇役の人物の名前が同じ「田丸」でカブッちゃってるのにも気づかない勢いだったのかな、と余計な詮索をしてしまうのですが、それでこそ『帝都物語』!と言いたくなる唯一無二の高揚感があるんですよね。


 さぁさぁ、終戦直後の荒廃した帝都に、恵子・雪子そして加藤が再集結! さらには、新たなる重要キャラとなりそうな大蔵省の若き官僚青年の姿も……
 いよいよ戦後日本の東京を舞台とする後半戦が本格的に始まろうとしております。屍解仙の術を経ていよいよ「魔人」の名をほしいままにする加藤保憲の帝都壊滅の野望の行方や、いかに~!?

 そんな感じで、さらに物語のテンションが沸騰してゆく『帝都物語』、意外と知ってる人が少ない驚愕の新展開は、また次回ということで、ひと~つ!!
 カトーが、また来たぞォ~! 風呂入れよ!
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あらためて立ち返ろう読書メモ 小説『帝都物語』4 『魔王篇』&『戦争篇』

2025年04月03日 20時35分12秒 | すきな小説
≪過去記事の『帝都物語』第1・23・4巻も、おヒマならばぜひ!≫

『帝都物語5 魔王篇』(1986年3月)&『帝都物語11 戦争(ウォーズ)篇』(1988年1月)
 『5 魔王篇』は角川書店カドカワノベルズ、『11 戦争篇』は角川書店角川文庫から書き下ろし刊行された。
 『帝都物語』の『11 戦争篇』と『12 大東亜篇』は、『10 復活篇』(1987年7月刊行)をもって物語がいったん完結した後に、時系列を遡って外伝的作品として発表された。

あらすじ
 昭和十(1935)年。 
 平将門の怨霊との闘いに敗れ、魔人・加藤保憲は中国大陸の満州へと去った。だが、加藤の数々の秘術により帝都東京の風水は脆弱となり、国内外から新たなる魔人たちの胎動を促すこととなる。その一人は、思想家・北一輝。血気にはやる大日本陸軍の青年将校らを背後から巧みに操り、特異な霊力で「昭和維新」を断行せんとしていた。そしてもう一人は、世界制覇を狙う海外のメソニック協会のトマーゾ。彼は「世界の眼(オクルス・ムンディ)」という究極の力を有し、混迷を極める帝都に恐るべき破壊工作を仕掛けてゆく。


おもな登場人物
≪魔王編≫
辰宮 雪子(たつみや ゆきこ)
 由佳里の娘。母から強い霊能力を受け継ぎ、そのために加藤に狙われる。
 品川のカフェで女給として働くが、二・二六事件に深く関わることとなる。1915年8月生まれ。

中島 莞爾(なかじま かんじ 1912~36年)
 大日本帝国陸軍工兵少尉。雪子と恋仲になるも、北一輝に傾倒して二・二六事件に参加する。

鳴滝 純一(なるたき じゅんいち)
 東京帝国大学理学士。洋一郎の旧友。1881年か82年生まれ。怪事に巻き込まれた辰宮由佳理を助けようとするが、妹の変事に無関心な兄・洋一郎と対立する。

幸田 露伴(こうだ ろはん 1867~1947年)
 本名・成行。小説家で、明治時代最大の東洋神秘研究家。膨大な魔術知識を駆使して魔人加藤と戦い、追い詰める。
 『一国の首都』と題した長大な東京改造計画論を持ち、後年には寺田寅彦とも親交があった。

北 一輝(きた いっき 1883~1937年)
 国家社会主義を掲げる思想家・社会運動家。『日本改造法案大綱』を発表し革命を目論むがシャーマンでもある。二・二六事件を背後から操り、革命を阻害する大怨霊・平将門を倒すべく暗躍する。

北 すず子
 一輝の妻。霊媒体質を持っており、一輝の神降ろしの祈祷によって召喚された神霊を自らに憑りつかせて、霊告を啓示する役割を担う。

寺田 寅彦(てらだ とらひこ 1878~1935年)
 東京帝国大学の物理学者。渋沢栄一の秘密会議に出席して加藤と出会い、迫りくる帝都東京滅亡の危機を必死で食い止めようとする。
 日本を代表する超博物学者でもあり、大文豪・夏目漱石の一番弟子。物理学者でありながらも超自然や怪異への限りない興味を抱き続けた。

辰宮 洋一郎(たつみや よういちろう)
 雪子の伯父(で……)。大蔵省官吏。帝都東京の改造計画に加わり、明治時代末期から大正時代にかけての歴史の奔流を目撃する。1881年か82年生まれ。大蔵大臣・高橋是清の秘書官を務めている。

辰宮 由佳理(たつみや ゆかり)
 洋一郎の妹。平将門の依代となる程に強力な霊能力者であり、強度のヒステリー症状ないしは霊能体質を有するために、奇怪な事件に巻き込まれる。1888年か89年生まれ。

高橋 是清(たかはし これきよ 1854~1936年)
 大蔵大臣。五・一五事件以来、暴走を続ける大日本帝国軍部に対抗する。

石原 莞爾(いしわら かんじ 1889~1949年)
 大日本帝国陸軍大佐。陸軍参謀本部作戦課長。『世界最終戦論』を掲げ、北一輝と同じ法華経オカルティストでありながらも、二・二六事件にて立場の違いから北と対立する。

甘粕 正彦(あまかす まさひこ 1891~1945年)
 元・憲兵大尉。関東大震災の際に無政府主義者の大杉栄を暗殺した、世にいう「甘粕事件」の首謀者。満洲国警察庁長官であり、満州国の都・新京で映画会社の理事長も務めている。東条英機の子飼いの部下であり、加藤やトマーゾと関わり満州国で暗躍する。

トマーゾ
 帝都東京の支配を目論むメソニック協会日本支部を牛耳る、130歳を超える謎のイタリア人。高齢ゆえに目も耳も口も不自由だが、特殊な力を持つ宝石「世界の眼(オクルス・ムンディ)」で補っている。大谷光瑞の呪殺計画を妨害する。髪の毛を意のままに操ることができる。

本吉 嶺山(もとよし れいざん 1883~1958年)
 霊媒師。「天空さん」と称する霊が憑依する。
 洋一郎の依頼により、由佳理を北一輝の魔手から救おうと助力する。

緒方 竹虎(1888~1956年)
 東京朝日新聞社主筆・常務取締役。寺田寅彦とは知己の中で、二・二六事件では栗原中尉らの襲撃を受ける。

西田 税(みつぎ 1901~37年)
 大日本帝国陸軍予備役。北一輝の思想に共鳴し、皇道派青年将校たちを扇動し二・二六事件を影から主導する。

村中 孝次(たかじ 1903~37年)
 元・大日本帝国陸軍歩兵大尉。北一輝を信奉する「皇道派」の国家社会主義者で、同志の磯部浅一と共に1934年にクーデター未遂事件「陸軍士官学校事件」を首謀し、発覚後に免官された。のちに二・二六事件の中心人物となる。

磯部 浅一(あさいち 1905~37年)
 元・大日本帝国陸軍一等主計。北一輝を信奉する「皇道派」の国家社会主義者で、同志の村中孝次と共に1934年にクーデター未遂事件「陸軍士官学校事件」を首謀し、発覚後に免官された。のちに二・二六事件の中心人物となる。

野中 四郎(1903~36年)
 大日本帝国陸軍歩兵大尉。北一輝と皇道派青年将校の計画に参加し、二・二六事件の実行部隊のリーダーとなる。

栗原 安秀(1908~36年)
 大日本帝国陸軍歩兵中尉。北一輝と皇道派青年将校の思想に賛同し、二・二六事件では岡田啓介総理大臣の首相官邸襲撃や東京朝日新聞社占拠を指揮する。

中橋 基明(1907~36年)
 大日本帝国陸軍歩兵中尉。同期の栗原安秀に賛同し、二・二六事件では高橋是清の私邸を襲撃する。

アルブレヒト=ハウスホーファー(1903~45年)
 ドイツ帝国陸軍少将で地政学者の権威カール・エルンスト=ハウスホーファーの長男。
 ナチス・ドイツ政権の外交参謀として世界各国で活躍する。ドイツと大日本帝国による太平洋戦略の折衝のために来日するが、その一方で失踪中の加藤保憲にも関心を寄せる。

門間 健太郎(かどま けんたろう 1895~1944年)
 大日本帝国陸軍歩兵少尉。宮城守衛隊司令官。二・二六事件では、宮城占拠を目論む中橋中尉に疑念を抱く。

馬奈木 敬信(まなき たかのぶ 1894~1979年)
 大日本帝国陸軍歩兵中佐。参謀本部ドイツ班に所属して作戦課長・石原莞爾の腹心として活動するが、ソヴィエト連邦のスパイ・リヒャルト=ゾルゲの暗躍を許してしまう。

平 将門(たいらのまさかど 903~40年)
 平安時代の関東地方最大の英雄。京の中央集権主義に刃向かい関東を独立国家化したため討伐されたが、その没後もなお千年間、大手町の首塚の下で関東と帝都東京を鎮護し続ける大怨霊。『帝都物語』シリーズ全体の根幹をなす最重要人物。

≪ウォーズ編≫
大谷 光瑞(おおたに こうずい 1876~1948年)
 仏教浄土真宗本願寺派第二十二世法主。小磯国昭内閣顧問。日本の仏教界と神道界を総動員した加持祈祷によるアメリカ・イギリス・ソヴィエト連邦の首脳陣の呪殺を画策し、太平洋戦争の戦局を覆そうとする。身長180cm の大柄な人物。

中村 雄昴(なかむら ゆうこう)
 大谷光瑞に仕える僧形の美青年。辰宮雪子と出会ったことから、光瑞の計画を妨害するトマーゾの存在を突きとめる。15歳。

小笠原 真教(おがさわら しんぎょう)
 築地本願寺別院の僧。大谷光瑞の側近として、東京・府中に建設された鉄塔の秘密計画に関わる。30歳代後半。

加藤 保憲(かとう やすのり)
 明治時代初頭から昭和七十三(1998)年にかけて、帝都東京の滅亡を画策して暗躍する魔人。紀伊国龍神村の生まれとされるが、詳しい生い立ちについては一切不明である。
 長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない20~30歳代の外見をしている。眼光は鋭く、身長180cm 前後という身体の大きさに似合わぬ軽い身のこなしが特徴的である。黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様が染め抜かれた白手袋を着用している。剣の達人で刀は孫六兼元を愛用する。 極めて強力な霊力を持ち、あらゆる魔術に精通している。とりわけ陰陽道・風水・奇門遁甲の道においては並ぶ者のいないほどの達人であり、古来最も恐れられた呪殺秘法「蠱毒」を使う。天皇直属の陰陽道の名家・土御門家が総力を挙げても彼一人に敵わない。秘術「屍解仙」を用いて転生したこともある。さまざまな形態の鬼神「式神」を使役し、平将門の子孫を依代にして将門の大怨霊を甦らせようとしたり、大地を巡る龍脈を操り関東大震災を引き起こしたりした。中国語や朝鮮語にも通じる。
 平将門の怨霊との闘いに敗れ、目方恵子を伴って中国大陸の満州国へ渡り、馬賊の首領となってソヴィエト連邦との国境付近で活動する。

目方 恵子(めかた けいこ)
 福島県にある相馬俤神社の宮司の娘。帝都東京の大地霊である平将門に仕える巫女として加藤保憲に闘いを挑んだが敗れ、加藤によって満州国へと連れ去られた。1894年か95年生まれ。

島村 義正
 朝日新聞社・撮影班の撮影技師。銀座大空襲の惨状の撮影中に、最上階から砲撃するビルを発見し、大砲を装備したビルの謎に迫るべく調査を開始する。

佐野技師長
 東京・府中に建設された高さ61m、地下30m の巨大鉄塔の工事責任者。

李 香蘭(リー・シャンラン 1920~2014年)
 本名・山口淑子。中国の奉天近郊で日本人向けの中国語教師をしていた日本人の家に生まれたが、中国人歌手として活躍し、満州帝国で甘粕正彦が理事長を務める満州映画協会(満映)の専属女優となり映画スターに昇りつめる。甘粕の寵愛を受けている。

君子
 中国・奉天から満州帝国にやってきて甘粕の愛妾となっている日本人芸者。


おもな魔術解説
霊告(れいこく)
 北一輝のような行者が、法華経を読誦(どくじゅ)しながらトランス状態に陥り、神や狐狸の霊、死霊などを自分もしくは他人の肉体に降ろし、この神降ろしの術によって、降りた霊から予言や忠告、霊界の情報を得ること。これを「霊告を受ける」という。大本教では、降霊術によって信者に取り憑いた霊を祓う修法を、出口王仁三郎や浅野和三郎らが体得していた。

お筆先
 霊力を持つ人間に降霊現象が起きた時に現れる様々な怪現象の中で、突如手が勝手に動き出して文章をつづる現象のこと。大本教の出口ナオは、膨大な量のお筆先を残したことで有名である。西洋でも、これを「自動書記(オートマティック・ライティング)」と呼び、霊告を得るための有力な方法としている。20世紀には、シュルレアリスムの詩人アンドレ=ブルトンがこの自動書記を文学に応用して話題を呼んだ。これは、無意識状態で手が動くままに文章をつづる実験的創作法である。

神字(かむな)
 江戸時代ごろから注目を浴びた、日本の神聖文字(ヒエログリフ)。国学者・平田篤胤らが『古事記』以前の古い日本語文字を研究して世に広めた。これら超古代の日本語文字には、霊力やオカルティックな真理の啓示が含まれるといわれるが、全て偽書とされている。

法華経呪術
 あらゆる仏教経典の中でも最高峰といわれる法華経。法華経を修すれば土や石ころまで成仏できるといわれる。その法華経の本義を、さらに七文字に集約した呪文が「南無妙法蓮華経」である。この七文字を唱えればどのような邪霊でも打ち払えるとされる。また、霊を呼び寄せる時にも極めて強力なパワーを発揮する。雨を降らせたり、元帝国の侵攻を祈りで防いだりした日蓮上人は、北一輝と並んで有名な法華経オカルティストだった。

反魂香(はんごんこう)
 中国の多くの書物に登場する神霊薬。魂をこの世に呼び戻し、死者をよみがえらせる力があると信じられた。例えば12世紀の宋帝国時代の記録書『続博物志』には、漢帝国の第7代皇帝・武帝の時代の有名な魔術師・東方朔(紀元前154~紀元前93年)の語るところとして、中央アジアの遊牧民族国家・月氏国の大使が漢帝国に献上した不思議な香が、当時流行していた疫病で死んだ人々を、たちまちのうちによみがえらせたという。武帝がこの香を使って、寵愛した李夫人の霊を呼び返そうとした逸話は有名である。

調伏(ちょうぶく)
 諸悪を征服する祈祷をあげる行者は、身・口・意の三業(さんごう)を調和させて調伏の経を読誦する。三業を調和させるということは、身体と口(言葉)および意志を一点に集中させ、決して乱れることなく読経祈祷に専心することである。読誦する経は、国家鎮護をおびやかす怨敵調伏の場合は「護国三部経」が選ばれることが多い。護国三部経とは、『法華経』、『金光明最勝王経』、『仁王般若経』のことである。鎌倉時代には、仏教によって国家を鎮護することが寺院の重要な務めであった。元帝国の襲来の際に、日蓮上人が護国のために祈祷した『立正安国論』は、調伏に関する代表的な文献である。古くは平将門の反乱に際しても、全国各地の寺院で調伏祈祷が行われたという。
 この他にも、調伏には特定の個人を呪殺する行為も含まれる。その場合、一般的には山伏(修験者)が護摩壇を築き、不動明王に呪詛の願いを立てる。願いが聞き届けられると、護摩壇に燃える炎の後ろに青い姿の不動明王が姿を現し、また不動明王に仕える八大童子も出現して、呪う相手を捕らえて罰するという。

反閇(へんばい)
 悪を祓い、福を呼び込む陰陽道の儀式。古代、貴人の外出の際には必ず陰陽師が立ち、貴人の踏む土を浄めた。反閇の儀式は、いわゆる足踏み(ステップ)であり、相撲の力士が行う四股も、この流れに属する。反閇の種類には「三足」、「五足」、「九足」などがあり、この魔術的ステップを踏む際には特定の呪文を口にする。例えば九足の場合は「臨兵闘者皆陣列在前」の九字を唱える。五足の場合は「天武博亡烈」となる。悪い方角を踏み破る呪法であり、江戸時代に徳川将軍家が出御する前にも必ず反閇の儀式が行われたという。


映画化・マンガ化作品
映画『帝都大戦』(1989年9月公開 107分 エクゼ)
 原作小説『戦争編』を原作とするが、登場人物の設定も物語の内容も大幅に変更されている(大谷光瑞や魔人トマーゾが登場しない、辰宮雪子と中村雄昴の年齢設定が違う、辰宮由佳理が死亡しているなど)。
 監督は当初、香港映画界の藍乃才が務める予定だったが直前に降板したため、前作『帝都物語』でエグゼクティブ・プロデューサーを務めた一瀬隆重が製作総指揮と監督を兼任した。脚本・植岡喜晴、音楽・上野耕路、特殊効果スクリーミング・マッド・ジョージ、特殊メイク・原口智生。配給収入3.5億円。

コミカライズ版
高橋葉介『帝都物語 TOKIO WARS 』(1989年 角川書店)
 映画『帝都大戦』公開に合わせての刊行で、原作小説の『魔王篇』と『戦争篇』をマンガ化している。


 ……いや~、ついにきました、『帝都物語』の昭和篇!
 今回、私的には中学生時代ぶりの再読ということで、そうとうワクワクしながら読み直したのですが、やはり物語の面白さといいますかヤバさといいますか、ムチャクチャなストーリーをテンションと勢いで突っ走らせていくパワープレイには、改めてうならされるものがありました。
 非常に面白い! でも、人さまには絶対に勧めたくない!! なんでかって、こんなお話を勧めたら常識を疑われるから!!

 『帝都物語』は、言うまでもなく実在の都市である東京を主な舞台にしているということで、明治時代以来の「史実」を踏まえつつ、そこに小説オリジナルの登場人物や「秘史」的な魔術大戦を織り込むという手法で物語の構成を重層的で強固なものにしている一大サーガとなっています。

 そのスタイルはもう、関東大震災を大きな転換点にしていた前巻までの「明治・大正篇」ですでに確立されていたわけなのですが、太平洋戦争への路程もほの見えてきた昭和十年から始まる今回の『魔王篇』&『ウォーズ篇』でも、実在した歴史上の偉人をドカドカ物語に入れてくる剛腕は健在どころか、ますますギアを上げているわけなのです。

 ところが……ちょっと今回の2篇は、いささか「風呂敷を大きく広げ過ぎた」ようなきらいがあるような気がします。荒俣先生、ちょいムリしすぎなのでは!?

 具体的にいいますと、『魔王篇』では思想家の北一輝、『ウォーズ篇』では宗教家(というのもバカバカしい超権威)の大谷光瑞が、物語の大きなキーマンとして大活躍するのですが、ど~にもそれぞれ、その立ち居振る舞いに腑に落ちない点が目立つのです。

 『魔王篇』の北一輝については、まずは、その発言に一貫性がないところが気になります。
 『魔王篇』の前半で一輝は、辰宮由佳理の肉体を依り代に召喚した平将門の怨霊を相手にして「きさまら地霊を、おれの呪力によって永久に封じこめてくれよう」とかまし、なんと「平将門を力づくで黙らせる」という、あの加藤保憲でさえついぞ口にしなかったムチャクチャな「てめーをブッつぶす」宣言をしてしまうのです。ヒエ~そんなこと言っていいんですか一輝さん!? やんちゃすぎ……全盛期の窪塚洋介かお前は。

 ところが、史実通りに二・二六事件が勃発した後半、『帝都物語』ではクーデターを起こした青年将校たちを裏で操る黒幕と設定されている一輝は、クーデターによる日本崩壊を後押しするために将門の怨霊と再び対峙するのですが、そこで『北斗の拳』のラオウみたいな姿で顕現した将門サマの駆る黒王号みたいな巨馬の後ろ足で、文字通りぱっか~んと一蹴されてしまうのです。なんちゅう口バッカくん!!
 その際に一輝は、将門の想像以上の霊力に呆然としつつ、このように悔しがります。「な・ぜ・だ……関東に自由の天地を実現させようとして討たれた将門が、その遺志を継ぐ北一輝の革命に、なぜ敵対するのだ……?」と。

 当たり前だバカー!! 百歩譲って目的が同じだとしても、ついさっきまで「永久に封じこめる」とか言ってたじゃねぇか! それで悪感情もたない怨霊なんか、地球上のどこにいるんだって話ですよ。
 人間、世の中をうまく生きていこうとするのならば、「言い方」というものが、ある意味で言いたい内容以上に大切になるという哲理は良く知っておくべきです……「言いたいことはわかるが、お前のその言い方が気に入らない。」という動機で賛同を得られないという風景は、日常そこらじゅうにゴロゴロしてますよ。

 このように、『魔王篇』の北一輝はとにかくハイテンション一辺倒なばかりで、言動に一貫性がありません。その挙句、作中での最期の描写が「電話ブッチ切られ」という情けないにも程のあるものなので、とてもじゃないですが、あの加藤保憲の大陸亡命という休憩タイムをフォローできる「魔王」になっているとは言えない小物っぷりに堕ちているのです。魔王は魔王でも、子どもの命一つとるのに5分近くかかって四苦八苦してるシューベルトの『魔王』程度でしょ、こんなの。

 その一方で、『ウォーズ篇』の大谷光瑞はどうなのかと言いますと、こちらはそもそも人選に疑問符がつきまくると言いますか、連合国側各国の首脳陣を日本伝統の呪法「加持祈祷」で呪殺するという発想は、いかにも敗戦瀬戸際な藁にもすがりたい末期感があっていいのですが、その肝心カナメの祈祷経典『金光明最勝王経(こんこうみょうさいしょうおうきょう)』の祈祷主が、なんでよりにもよって浄土真宗本願寺派のお坊さんなんやねんという話なのです。これ、ほんとムチャクチャ!!

 私も、別に仏教に詳しい訳でもないしお坊さんでもないのですが、そんなにわかの私にでもわかるごとく、『金光明最勝王経』は4世紀にインドで成立した後に5世紀に中国に、遅くとも8世紀までに日本に伝来しており、インド発祥のありがたい諸天善神のみなさま(帝釈天とか四天王とか)が日本を守護してくれるよう祈る内容で、南都六宗や天台宗、真言宗といった密教系の仏教宗派の聖典となっています。それに対して大谷光瑞が法主を務めていた浄土真宗本願寺派は、それらよりも遥かに後代の13世紀初期に親鸞上人が創始した「鎌倉新仏教」のひとつであり、本尊とするのは阿弥陀さまなのです。
 これ……同じ仏教でも、祈る対象も宗教の目的もぜんっぜんちがいます。少なくとも加持祈祷は、大谷光瑞さんが「日本代表です」みたいな顔をしてやる宗教儀式じゃないですよ。これには召喚された不動明王サマも苦笑い。「呼ばれて飛び出て……誰?お前。」って感じですよね。

 例えが適当かどうかわからないのですが、これはつまり、西野七瀬さんとか生駒里奈さんが紅白歌合戦で堂々と『 LOVEマシーン』とか『恋愛レボリューション21』を唄うようなもので、もはや一部界隈で血みどろの内戦が勃発してもおかしくない致命的な解釈間違いだと思います。本家をさしおいて何してくれとんねんという話なんですね。物騒すぎ……

 いったい、あそこまで博覧強記な荒俣宏先生が、どうしてこのようなムチャクチャな人選を強行してしまったのか、まことに理解に苦しむものではあるのですが、無理を承知で好意的に弁護するのならば、やはり「仏教の一大宗派の最高指導者にして伯爵にして世界を股にかける探検家にして大正天皇の義理の兄(妻が貞明皇后の姉)」という、おいしいにも程のある属性モリモリの大人物を『帝都物語』に出さないわけにはいかなかったということと、奈良や比叡山・高野山の本場の皆様と違って東京に縁の深い人物だったということから、このお人を「宗教界の大谷翔平」として登板させずにはいられなかったという苦渋の決断があったのだと思います。オタ~ニサ~ン!! 当時は江川卓とか落合博満か。

 ……とまぁこんな感じで、『魔王篇』と『ウォーズ篇』は、文章の勢いがすごいので面白く読めてはしまうのですが、いかんせん個性のありまくる登場人物たちがクセ強すぎて、読み終えたあとに「なにこれ?」という当惑感が残ってしまうヘンな番外編的ポジションとなっているのです。

 こうなってしまった理由というのは、こりゃもう言うまでもなく「加藤保憲の不在」! この一言に尽きるかと思います。

 もちろん、さすがに『帝都物語』の大看板ともいえる加藤を長編2作にわたってベンチ入りさせることは無茶と考えたのか、荒俣先生は『ウォーズ篇』のクライマックスで、オリキャラの敵ラスボスこと魔人トマーゾを倒す切り札として加藤を一時帰国させるのですが、ここでの加藤は完全に「お前に東京は滅ぼさせない……東京を滅ぼすのはこの俺だゼ!」という、のちの「ベジータ理論」の先取りをした理屈で「たまにイイことをするヒールキャラ」としてしか機能していません。満州に帰らずにそのまんま大空襲のどさくさにまぎれて東京ぶっ壊せばよかったのに……でも、ここで加藤がトマーゾ討滅後にすぐ満州に帰っちゃった理由については、次なる『大東亜篇』をお読みください、ということで。

 こんな感じでありまして、今回取り上げました2篇は、長い『帝都物語』サーガの中でも加藤保憲がほとんど活躍しない「箸休め」的な異色の存在となっております。それぞれ、北一輝と大谷光瑞&魔人トマーゾというインパクト絶大な名キャラクターが出てはいるのですが、やはりメインは加藤ということで、あくまでも「加藤のいぬ間に洗濯」的な期間限定でちょっとだけの出番となっているのが、なんとも哀しいです。

 特に北一輝にいたっては、『ウォーズ篇』の後半に加藤がトマーゾについて「たぶん、この怪物(トマーゾ)を倒せるのは自分をおいてほかにない。」と決意し、重い腰を上げて約20年ぶりにはるばる満州から東京にやって来るわけなのですが、これは暗に「北一輝……だれだっけ?」という格の違いを如実に示しているのです。無惨なりィ!

 なかなか、これまでの加藤保憲出ずっぱりの過去巻と比較すると不思議な味わいのあるパートではあるのですが、少しスレた魔性の魅力のあるヒロイン・辰宮雪子の悲恋が二・二六事件の雪景色を背景に実にしっとりと描かれるロマンスや、辰宮洋一郎のあわれな最期もドラマティックな、『帝都物語』に不可欠な挿話ですので、読まないのは損だと思います。面白さは間違いないですよ!

 いや~、1990年代のオカルト系バラエティ番組で、TVタレントとしての荒俣先生をたくさん見てきた身としては、あのボヨ~ンとした外見がどうしても先に立ってしまうのですが、小説家としての荒俣先生って、勢いと感覚でズビズバ作品を書いていく、そうとうに情熱的なラテン系作家さんだったんですかねぇ。若さ大爆発だね~!!

 さぁ、この2巻ぶんで充分に休息をとった魔人・加藤保憲の、次なる一手はいかようなものとなるのか!? ますます目が離せない一大オカルト絵巻の続きは、また次回のココロだ~っと。


≪蛇足であります≫
 今回のパートを語る上で無視するわけにはいかないのが、この『ウォーズ篇』を原作とするというていで制作・公開された実写スペクタクル映画『帝都大戦』の存在です。
 この映画に関しては、すでに我が『長岡京エイリアン』でも、なんと15年前というはるか昔に記事にしたことがあったのですが、昨今の「原作を尊重していないように見える二次作品のアレンジ」問題がかすんでしまうような、小説版との乖離が見られます。っていうか、共通点を探す方が難しいわ!!

 いや~だって、『ウォーズ篇』は加藤保憲もろくに出てこないし、雪子と中村雄昴の恋愛イベントなんか発生するわけがねぇし(雪子からの好意くらいはある)、いっぽうの『帝都大戦』はというと、トマーゾなんかどこにもいないし、大谷光瑞が別の架空の高僧(演・丹波哲郎)にすり替わってるし、日本が呪殺するのもルーズベルト大統領とはまるで正反対のヒトラー総統だしで、これまたムチャクチャきわまりない変更が加えられているのです。ちなみに『帝都大戦』の冒頭では、なぜか東京で死亡している加藤が戦死者たちの怨念を吸収して真の魔人として復活するらしき描写があるので、映画としての前作『帝都物語』ともつながっていない齟齬がみられます。なんかもう、のっけからゴジラとか『13日の金曜日』の殺人鬼ジェイソンみたいな説明不要の災害級モンスターになってるんですよね。

 『帝都大戦』の公開当時、原作者の荒俣先生は Wikipediaの記事によると「原作を読んだ人は怒らないで欲しい」とコメントしていたそうなのですが、ここで話が変にこじれてきちゃうのは、「読んだ人が怒るほど原作がいいわけでもない」というところなのです。
 いや、面白いですよ!? 『ウォーズ篇』だって確かに面白くはあるのですが、いくら物語の舞台が太平洋戦争中の日本だったのだとしても、さすがに「怨敵ルーズベルトが死んだぞ! ヤッター!!」で終わる映画が1980年代の日本で全国公開されていいのかというと、ね……
 映画化に際しては、制作スタッフの方々のごくごくまっとうな判断が働いたのではなかろうかと思われます。ましてや、その呪殺に当たるのが実在する宗教団体の実在した法主さまでいいはずがないでしょ。中村雄昴だって、原作小説だとカルト信者まるだしな危険なかほりただよう美少年だし……いや、ヤバすぎるよこの小説!!

 映画『帝都大戦』は、言うまでもなく2020年代現在の日本では地上波でノーカット放送することはほぼ不可能で、カットしたらしたでたぶん本編時間107分中20分くらいしか放送できないという、とんでもなくデンジャラスなしろものではあるのですが、それとは全く別の方向性で、小説『ウォーズ篇』もまた、実にアブないものなのでしたとさ……


 んも~、「大丈夫、病院は襲わないのっ☆」なんて名シーン、小説のどこにもないよ!! いや~、『帝都大戦』も、やっぱすげぇわ。
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あらためて立ち返ろう読書メモ 小説『帝都物語』3 『大震災篇』&『龍動篇』

2025年02月11日 21時19分50秒 | すきな小説
≪前回の第1・2巻は、こちら!

『帝都物語3 大震災(カタストロフィ)篇』(1986年1月)&『帝都物語4 龍動篇』(1986年2月)
 角川書店カドカワノベルズから書き下ろし刊行された。

あらすじ
 大正十二(1923)年9月1日。
 平将門の怨霊を呼び覚まし、帝都東京の崩壊をたくらむ魔人・加藤保憲は妖術を操り、関東地方に大地震を引き起こした。だが将門の怨霊は完全には覚醒せず、震災後、後藤新平の放射状都市計画と渋沢栄一らによる地下都市計画を元にした壮大な帝都復興計画が開始される。
 しかし、加藤は天体を利用して、帝都の完全崩壊を画策していた! 将門の末裔である巫女・目方恵子はこの危機を察知し、風水師・黒田茂丸と共に、加藤の野望を阻止せんと立ち上がる。


おもな登場人物
加藤 保憲(かとう やすのり)
 帝都東京の滅亡を画策して暗躍する魔人。大日本帝国陸軍中尉。紀伊国龍神村の生まれとされるが、詳しい生い立ちについては一切不明である。
 長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない20~30歳代の外見をしている。眼光は鋭く、身体の大きさに似合わぬ軽い身のこなしが特徴的である。黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様が染め抜かれた白手袋を着用している。剣の達人で刀は孫六兼元を愛用する。 極めて強力な霊力を持ち、あらゆる魔術に精通している。とりわけ陰陽道・風水・奇門遁甲の道においては並ぶ者のいないほどの達人であり、古来最も恐れられた呪殺秘法「蠱毒」を使う。天皇直属の陰陽道の名家・土御門家が総力を挙げても彼一人に敵わない。秘術「屍解仙」を用いて転生したこともある。鳥型、犬型の「式神」や鬼型の「十二神将」など、さまざまな形態の鬼神を使役し、平将門の子孫を依代にして将門の大怨霊を甦らせようとしたり、大地を巡る龍脈を操り関東大震災を引き起こしたりした。中国語や朝鮮語にも通じる。

辰宮 洋一郎(たつみや よういちろう)
 大蔵省官吏。帝都東京の改造計画に加わり、明治時代末期から大正時代にかけての歴史の奔流を目撃する。1881年か82年生まれ。大東京復興院事務官。

辰宮 由佳理(たつみや ゆかり)
 洋一郎の妹。平将門の依代となる程に強力な霊能力者であり、加藤や北一輝に狙われる。1888年か89年生まれ。
 強度のヒステリー症状ないしは霊能体質を有するために、奇怪な事件に巻き込まれる。精神を病んで森田正馬医師の治療を受ける。

辰宮 雪子(たつみや ゆきこ)
 由佳里の娘。母から強い霊能力を受け継ぎ、そのために魔人・加藤の次なる陰謀の的となる。1915年8月生まれ。

目方 恵子(めかた けいこ)
 旧・磐城国の相馬中村藩の地に社を護り、平将門を祖先として祀る俤(おもかげ)神社の宮司の娘。1927年の時点で32歳(1894年か95年生まれ)。

鳴滝 純一(なるたき じゅんいち)
 東京帝国大学理学士。洋一郎の旧友。1881年か82年生まれ。怪事に巻き込まれた辰宮由佳理を助けようとするが、妹の変事に無関心な兄・洋一郎と対立する。

渋沢 栄一(しぶさわ えいいち 1840~1931年)
 明治時代の日本を代表する実業家で、第一国立銀行初代頭取を務めるなど金融体制の設立にも尽力した自由競争経済設立の指導者。子爵。
 帝都東京を物理的、霊的に防衛された新都市にしようと秘密会議を開く。

後藤 新平(1857~1929年)
 内務大臣、前東京市長、子爵。関東大震災後に大東京復興院総裁として手腕を発揮する。

泉 鏡花(1873~1939年)
 小説家。明治・大正・昭和の三代にわたり唯美的文学世界を形成し「異才」と謳われた。「神楽坂七不思議」の一人として目方恵子を支える。

早川 徳次(はやかわ のりつぐ 1881~1942年)
 山梨県出身の実業家。大阪~和歌山間の高野山登山鉄道を再建し、イギリスに倣い東洋初の地下高速鉄道敷設の情熱に燃える。

西村 真琴(1883~1956年)
 北海道帝国大学生物学教授で人造人間の発明・研究家。帝都東京の地下鉄工事にロボットの活用を提案する。「学天則」という東洋哲理を信奉する奇人。

今 和次郎(1888~1973年)
 青森県弘前市出身の民俗学者。考現学(モデルノロジオ)に基づいて帝都東京の人々の動向調査を行い、寺田や早川らに刺激を与える。「銀座三奇人」の一人。

クラウス
 キリスト教プロテスタント派の慈善団体・救世軍に籍を置き、東京府荏原郡松沢村(現在の世田谷区西北部)で精神病患者の治療にあたる、ドイツ人の伝道医師。辰宮由佳理・雪子母娘の治療に携わる。

黒田 茂丸
 二宮尊徳を祖と仰ぐ結社「報徳社」の一員。「尊徳仕法」という経済論を提唱し、地相占術を心得、龍脈を探る力を持つ「風水師」と呼ばれる。

天野 順吉
 三鷹天文台に勤務する天文学者。北斗七星の形が歪んで見える異常現象を寺田寅彦に報告する。

平 将門(たいらのまさかど 903~40年)
 平安時代の関東地方最大の英雄。京の中央集権主義に刃向かい関東を独立国家化したため討伐されたが、その没後もなお千年間、大手町の首塚の下で関東と帝都東京を鎮護し続ける大怨霊。『帝都物語』シリーズ全体の根幹をなす最重要人物。


おもな魔術解説
風水
 古代中国の地相占術。宋帝国時代(960~1279年)にほぼ体系化され、朝鮮、台湾、ベトナム、日本などにも広まり、日本では「家相学」や「墓相学」といわれた。その名の通りに、自然の生命エネルギーの流路である「地脈」あるいは「龍脈」を、風と水の流れや山川の地形から発見し、建築物や墓などの形をそれに調和させ、さらに地磁気や方位を魔術的に加えたもので、自然の力を最大限に活かして生者と死者とが平和に住み分けられる都市を創造する総合土木技術。21世紀現在も、生態学(エコロジー)の観点から脚光を浴び続けている。

狐狗狸(こっくり)
 一般に「こっくりさん」と呼ばれ、明治二十年代(1887~96年)に日本に流入した西洋の心霊術「テーブルターニング」に起源を持つといわれる。日露戦争(1904~05年)をはじめとして、世情が不安に陥るたびに流行したが、こっくりさんのように入神状態になり霊の導きを得る儀式は、同種のものが中国や日本にもすでに存在しており、それがテーブルターニングに習合したものともいえる。

龍脈(りゅうみゃく)
 風水で使用される用語。大地の生命力を龍にたとえたもの。弧を描く場合が多く、東洋の景観美の原点となっている。この龍脈の流れを妨げたり方向を変えたりすると、その土地は衰退するといわれた。清帝国時代末期に欧米列強が中国大陸に進出し、直線的な鉄道や幹線道路を敷設する土木工事を行った際、地元民は龍脈が断たれると激しく抵抗したという。

観音力(かんのんりき)
 小説家の泉鏡花が好んで用いた言葉。荒々しい鬼神の男性的な魔力に対して、魔を祓い人々を救済する慈悲深い女性的な魔力を称したもの。

護法童子(ごほうどうじ)
 単に「護法」ともいう。「式神」が陰陽師に使役される魔物であるのに対し、仏教の密教系の高僧や山伏・修験者系統の道士に使役される神霊。通常は童子の姿をしているが、超自然的な力を発揮する怪物の姿で現れることも多いとされる。

十二神将(じゅうにしんしょう)
 日本史上最大の陰陽師・安倍晴明(921~1005年)が使役していた式神たちのこと。晴明の妻が彼らを気味悪がったため、晴明が自身の邸宅に近い京・一条堀川の「戻橋」の下に置いて必要時に召喚していたという説話は、『源平盛衰記』などでも有名である。
 作中の加藤保憲も、使役する式神たちを「十二神将」と呼び、東京の市ヶ谷大橋の下に潜伏させている。加藤の十二神将は身長1m 弱のオレンジ色の小鬼の姿をしており、爪や牙などによる攻撃力が高いが流水には入ることができない。加藤は十二神将の他にも、巨大な黒い犬の姿をした魔物を使役している。

孔雀明王経(くじゃくみょうおうきょう)
 害悪を流す毒蛇さえも喰らう聖鳥・孔雀の仏神「孔雀明王」に関わる聖典。この経を念じて孔雀明王の法力を召喚する修法を「孔雀経法」という。日本史上に名高い修験密教系の魔術師である役小角(634~701年)や弘法大師空海(774~835年)らが、雨乞い・厄除け・護国のためにこの孔雀経法を行った。尋常を超えた大願の成就をねがう時は、この呪法が最大の効果を発揮するといわれる。

花会(チーハ)
 元来は19世紀半ばから中国大陸で流行した賭博ゲームで、麻雀の成立にも影響を与えたといわれる。ルールは単純で、三十六種の札から親が抜き出す一枚を事前に予想して金銭を賭けるものだったが、そのためにどの札が引かれるのかを予知する呪術もまた広く流行した。これが転じて、トランプ占いのようなものとなった。花会は、明治・大正時代の日本でも賭博として大流行した。

百魔を祓う燈明
 百の魔を祓う呪符が書きつけられた中国製のランタン。中国では、文字の呪力を重視し、紙に漢字を書いた霊符を焼いて灰にして服用したり、柱に貼りつけたりして使用していた。

永遠の満月の方程式
 フランスの数学者ジョゼフ・ルイ=ラグランジュ(1736~1813年)が作成した方程式。18~19世紀の西洋科学は神秘主義に強く接近していた。
 ラグランジュは、月のような衛星や微小惑星が永遠に停止しているように見える地点を求めるための五次方程式と、正三角形解と直線解の「ラグランジュの特殊解」を発見した。それによると、太陽・地球・月が一直線に並び、地球と月との距離が太陽と地球との距離(約1億496万km)の1/100(約149万6千km)になった時に、月の動きが永遠にとまってしまうという試算が導き出せる。しかしそのためには、月が現在の地球との距離(約38万4千km)の約4倍離れなければならない。

フラウンホーファー線の曇り
 イギリスの小説家アーサー=コナン・ドイルの有名な SF小説『 The Poison Belt(毒ガス帯)』(1913年発表)に登場する、地球破滅の予兆現象。フラウンホーファー線とは、太陽光を分光器にかけた際に連続スペクトルの中に現れる黒い線のことで、太陽光が地球の大気中の気体などに吸収されて発生する。したがって、地球付近に巨大彗星や星雲が接近すると、吸収の度合いが変化してフラウンホーファー線に曇りなどの変異が生じることとなる。


映画化・アニメ化・マンガ化作品
映画『帝都物語』(1988年1月公開 135分 エクゼ)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』の映画化作品。日本初の本格的ハイビジョン VFX映画。加藤保憲の役に、当時小劇場俳優で庭師として生計を立てていた嶋田久作が抜擢された。登場する人造ロボット「学天則」の開発者・西村真琴の役を、真琴の実子の西村晃が演じている。 監督・実相寺昭雄、脚本・林海象、製作総指揮・一瀬隆重、特殊美術・池谷仙克、画コンテ・樋口真嗣、特殊メイク・原口智生、コンセプチュアル・デザインH=R=ギーガー。音楽・石井眞木。製作費10億円、配給収入10億5千万円。

OVAアニメ版『帝都物語』(1991年リリース 全4巻 マッドハウス)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』のアニメ化作品。加藤保憲の声は実写版と同じく嶋田久作が担当した。脚本・遠藤明範、キャラクターデザイン・摩砂雪、シリーズ監督・りんたろう。作画スタッフには鶴巻和哉、樋口真嗣、前田真宏、庵野秀明らが参加していた。

コミカライズ版
川口敬『帝都物語』(1987~88年 小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて連載)
 映画『帝都物語』公開に合わせての連載で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。未単行本化。
藤原カムイ『帝都物語 Babylon Tokyo 』(1988年 角川書店)
 映画『帝都物語』公開に合わせての刊行で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。


 ……というわけでありまして、『帝都物語』序盤のヤマ場となる「魔人・加藤 VS スーパー巫女・目方恵子」の激突でございます! きたきた~。

 この『龍動篇』は、まんま映画版やアニメ版の『帝都物語』のクライマックスともなっておりますので、おそらくいちばん多くの人に知られている『帝都物語』のイメージが、ここまでの流れになるのではないでしょうか。その後はもちろん映画第2作の『帝都大戦』が続くわけなのですが、メディアミックスの規模で言えばやっぱりこの第1作を超えることはなかったでしょう。

 思えば、この『帝都物語』の超先輩ともいえる日本幻想文学の最高峰『南総里見八犬伝』だって、だいたい世間一般に知られているのは前半の八犬士が集合するくだりくらいまでですし、やっぱり長い物語の最後まで有名ってわけにはいかないんでしょう。現代でも『ワンピース』とか、そうなんじゃないでしょうか。犬江親兵衛が京の都にいくあたりが一番好きって人、そんなにはいないよね……『忠臣蔵』はその稀有な例外なのでしょうが、あれはあれで中盤がキビシイし。

 それはともかく、この『龍動篇』にいたるまでの約20年間の流れは辰宮兄妹や目方恵子と加藤の因縁をめぐる物語の構造が非常に引き締まっており、確かに映画のようなひとまとまりにするにはもってこいなブロックになっています。関東大震災を超えてさらにスケールアップした加藤の「月をぶっ飛ばして北斗七星をいじめて帝都壊滅」大作戦も、ちょっと何言ってるのかわからないけどすばらしいですね。おお! ことばの意味はわからんが、とにかくすごい自信だ!!

 インターリュード的な番外篇も含めて12巻ある『帝都物語』ではあるのですが、早くもこの第4巻の段階で、加藤の魔術のレベルが地球を軽く超えちゃってるというギアの上げ方が頭おかしすぎていいですよね。これから一体、残り8巻分もどう盛り上げていくつもりなのかな……!?

 ただまぁ、これは『帝都物語』唯一無二の味でもあるので一概に批判するわけにもいかないのですが、加藤の野望を阻止するための正義側のやり方が非常に現代的な価値観を超越したものになっていまして、辰宮兄妹は妹の体内に加藤の呪念が侵入することを防ぐために兄貴があんなことをしでかしちゃうし、目方恵子も「観音力」という独特の攻め方で加藤の怨念を鎮める(?)決死の策に打って出るので、当時から、こういった終盤の展開に不満をおぼえる方も多かったのではないでしょうか。ちょっとね、女性陣と幸田露伴先生が苦労しすぎなんですよ、ここまで!

 そらまぁ、ヤマトタケルのために荒波に身投げして窮地を救うオトタチバナとか、柳田国男先生の『妹の力』を例に挙げるまでもなく、日本で昔っからある難局打開・怨霊調伏の最終手段はヒロインの自己犠牲であるわけなのですが、これを、よりにもよってマッチョなヒーロー大活躍な西洋ファンタジー隆盛はなはだしい1980年代に復活させてみせたことこそが、小説『帝都物語』の意義なのではないでしょうか。

 でも……それが映画になった時に大方の観衆に支持されのかと言うと……まだ早すぎたんじゃないっすかね。さすがにそこらへんに危機感をおぼえたのか、映画版では護法童子のデザインをギーガーさんにお願いして、なんか未来的でメカメカしいクリーチャー(のちの機怪につながる? 韮沢さーん!!)にして無理矢理に盛り上げていましたが、やっぱり付け焼刃感はいなめず……21世紀の今から観ると、ふつうにルンバみたいでかわいいし。

 あと、前回にも行ったようなキャラクター設定の改変で、映画版では兄貴の洋一郎もかろうじて命賭けてるくらいの貢献度で加藤に立ち向かってはいたのですが、そこらへんの苦労が原作小説では一切ないので、あの最終手段に出るまで内心の苦悩はあったにしても、やっぱり洋一郎の人でなし感はぬぐい切れないというのが、『龍動篇』までの読了後のスッキリしなさにつながっています。結局、由佳理も雪子もバッドエンドもいいとこな状況になっちゃってるし……

 それでもわずかな救いなのは、恵子が生存しているらしいことと、恵子の偉業を理解している人物が、少なくとも帝都に2人はいることでしょうか。でも、この2人も恵子くらいに苦労して加藤に対峙しているとは言えないのでありまして。だからって、むさいおじさんが恵子と同じ方法で加藤に迫ったとしても、加藤も困惑するだけでしょうし……一周まわって、2020年代の今だったら一部界隈に受け入れられるかもしれませんけどね。これが今話題のマヴってやつか。

 結局、キリはいいにしても『龍動篇』は次巻への引っぱりの意味も込めてあえて未消化感を残した締めくくりになっていますので、これを映画としての大団円に持ってこざるを得なかった映画版の悲劇は、公開される前から決まっていた宿命だったのでしょう。21世紀の今みたいに「3部作構成」とかのパッケージを前提にできる時代でもなかったし。そのためには『スターウォーズ』くらいに超絶ヒットしなきゃねぇ。

 こういった、原作小説を読んでみてわかる『帝都物語』の難しさみたいなものを拾いあげてみますと、4巻分もの展開をギューギューに詰め込んで、サイキックウォーズあり関東大震災あり学天則地下特攻作戦ありという波乱万丈さで乗り切ろうとしたとしても、やはり物語の根本にある、西洋的な論理では絶対に解釈できないアクの強さをまぎらわすことはできなかった、ということなのでしょう。
 おそらく、当時の映画業界の強引さを考えてみれば、辰宮由佳理や目方恵子の役割を大幅に削減し、もっと男衆に活躍の場を分け与えて『コナン・ザ・グレート』みたいな娯楽映画に捻じ曲げられる恐れもあったのかも知れませんが、そこをぐっと押さえて原作準拠で通そうとした実相寺監督の判断は、興行的には成功につながらなかったとしても、評価されるべき英断だったのではないでしょうか。

 にしたって、カットこそしなかったにしても、辰宮兄妹の間に何があって、加藤と恵子の対決の行方がどうなったのかを具体的に描かなかった……のか描けなかったのかはわかりませんが、直接的に映像にせず、な~んかモヤっとした描写にとどめざるをえなかったのは、映画としては致命的でしたよね。とにかく難しい小説なんだな、『帝都物語』って!
 なんにせよ、映画だけを見てよくわかんなかった方は、絶対に小説を読んでみてください。説明はちゃんとされてるから! でも、その説明を聞いて納得できるのかどうかは、また別の話ですが。


 ま、ま、いずれにしましても、見どころが盛りだくさんな『帝都物語』の明治・大正・昭和一ケタ篇はかくのごとく終結し、まだかろうじて生身の人間である加藤は、いったん日本列島を離れることとなりました。再び訪れる捲土重来のチャンスを待ち望みながら……

 いちおう、ここからは映画『帝都大戦』の内容に相当する昭和戦前・戦中へと時代が切り換わっていくのですが、ここからがまた、原作小説とメディア化作品とでイコールではない複雑な関係になっていくんですよね! これに比べれば、映画版『帝都物語』の、原作に対してなんと優等生なことか。
 実際、高校生時代の私も、この後の合本新装版でいう「第参番」を読んで混乱しまくっちゃったんですよ。『帝都大戦』とじぇんじぇん関係ないじゃ~ん!みたいな。それでも中途半端に登場人物がリンクしてるってのが、逆にいっそうタチが悪い。
 そういった記憶もありますので、いや、だからこそ! まっさらな気持ちになってまた一から読み直すのが楽しみでなりません。
 
 さぁ、中国大陸に潜伏することとなった加藤は、激動のアジア情勢の水面下で、いかような次の手を打とうとするのでありましょうか!? そして、加藤と共に姿を消した目方恵子はどうなってしまったのか? 心身ともにボロボロとなった辰宮由佳理と、大いなる可能性を秘めし忌み子・雪子の運命やいかに?

 『帝都物語』サーガは、まだ始まったばかり! カトーは、まだ来るぞォー!! 歯ぁ磨けよ!
 そんな感じで、まったじっかい~


~超蛇足~
 高校生当時、私は『帝都物語』の腹中虫のくだりと加藤 VS 恵子の最終対決のくだりを読んで、かなりエロいぞこれ!と脳を焼かれた記憶がありました。ま、腹中虫がエロいのは映画版もそうなのですが。
 それで今回、喜び勇んで読み直してみたのですが……うん、ふつう。当然っちゃ当然なのですが、官能小説じゃあるまいし、そんなに踏み込んだ描写も無かったので、「あぁ、ハイティーンだった頃のおれは、この程度でウキウキワクワクしてたんだよなぁ。」と、感慨にふけってしまいました。

 それが今はどうだい、あんなんでもこんなんでも物足りないナなどとほざくスレっぷりの中年になりやがって……

 バッキャロー! もう一度あの頃の、山川草木にエロさを見いだしていたハングリーなおのれを呼び覚ませ!!
 ぜいたくは敵だ!! スマホ禁止! 保健体育の教科書の再読1万回ぃいい!!
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あらためて立ち返ろう読書メモ 小説『帝都物語』2 『神霊篇』&『魔都篇』

2025年02月06日 13時24分55秒 | すきな小説
≪前回の序説は、こちら

『帝都物語1 神霊篇』(1985年1月)&『帝都物語2 魔都(バビロン)篇』(1985年4月)
 角川書店の小説誌『月刊小説王』にて、1983年9月創刊号から1984年13号まで13回が連載された。

あらすじ
 明治四十(1907)年4月。一匹の鬼が帝都東京に現れた。
 その鬼の名は、加藤保憲。加藤は摩訶不思議な超能力を自在に操り、帝都最大の守護神である平将門を怨霊として目覚めさせ、帝都の壊滅をたくらむ。加藤の魔の手から帝都を守らんとするのは、明治維新の大実業家・渋沢栄一、若き文士・幸田露伴、森鴎外、物理学者・寺田寅彦ら、近代日本を草創した偉人たちと、将門の末裔である辰宮洋一郎とその妹・由佳理、一千年にわたり日本を呪術で護持してきた土御門家の陰陽師・平井保昌。多くの人々がそれぞれの命をかけて、魔人・加藤に立ち向かう。


おもな登場人物
加藤 保憲(かとう やすのり)
 帝都東京の滅亡を画策して暗躍する魔人。大日本帝国陸軍少尉、のち中尉。紀伊国龍神村の生まれとされるが、詳しい生い立ちについては一切不明である。
 長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない20~30歳代の外見をしている。眼光は鋭く、身体の大きさに似合わぬ軽い身のこなしが特徴的である。黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様が染め抜かれた白手袋を着用している。剣の達人で刀は孫六兼元を愛用する。 極めて強力な霊力を持ち、あらゆる魔術に精通している。とりわけ陰陽道・風水・奇門遁甲の道においては並ぶ者のいないほどの達人であり、古来最も恐れられた呪殺秘法「蠱毒」を使う。天皇直属の陰陽道の名家・土御門家が総力を挙げても彼一人に敵わない。秘術「屍解仙」を用いて転生したこともある。さまざまな形態の鬼神「式神」を使役し、平将門の子孫を依代にして将門の大怨霊を甦らせようとしたり、大地を巡る龍脈を操り関東大震災を引き起こしたりした。中国語や朝鮮語にも通じる。

辰宮 洋一郎(たつみや よういちろう)
 大蔵省官吏。帝都東京の改造計画に加わり、明治時代末期から大正時代にかけての歴史の奔流を目撃する。物語の冒頭で平将門の霊を降ろす依代として加藤に利用される。1907年4月の時点で25歳(1881年か82年生まれ)。
 妹の由佳里に執着しており、彼女が霊能力を持つに至った経緯や雪子の出生に関わりを持つ。

辰宮 由佳理(たつみや ゆかり)
 洋一郎の妹。平将門の依代となる程に強力な霊能力者であり、加藤や北一輝に狙われる。1907年4月の時点で18歳(1888年か89年生まれ)。
 強度のヒステリー症状ないしは霊能体質を有するために、奇怪な事件に巻き込まれる。精神を病んで森田正馬医師の治療を受ける。

鳴滝 純一(なるたき じゅんいち)
 東京帝国大学理学士。洋一郎の旧友で同い年の25歳(1881年か82年生まれ)。純朴な性格だが、由佳理を思慕するあまり、暴走することもある。

織田 完之(おだ ひろゆき 1842~1923年)
 三河国生まれの農政家で歴史学者。平将門の名誉回復に尽力した。
 豪農の出身で勤王派に加わり、桂小五郎や高杉晋作らと交友したが、明治維新後は新政府の農業・干拓事業を担当、特に印旛沼の治水事業に尽力した。明治二十五(1892)年の引退後は「碑文協会」を設立し、二宮尊徳や佐藤信淵の思想体系の顕彰活動に尽力した。

幸田 露伴(こうだ ろはん 1867~1947年)
 本名・成行。小説家で、明治時代最大の東洋神秘研究家。膨大な魔術知識を駆使して魔人加藤と戦い、追い詰める。
 『一国の首都』と題した長大な東京改造計画論を持ち、後年には寺田寅彦とも親交があった。

寺田 寅彦(てらだ とらひこ 1878~1935年)
 東京帝国大学の物理学者。渋沢栄一の秘密会議に出席して加藤と出会い、迫りくる帝都東京滅亡の危機を必死で食い止めようとする。
 日本を代表する超博物学者でもあり、大文豪・夏目漱石の一番弟子。物理学者でありながらも超自然や怪異への限りない興味を抱き続けた。

森 林太郎(もり りんたろう 1862~1922年)
 大日本帝国陸軍軍医監。筆名・鴎外(おうがい)。明治時代の大文豪の一人で、軍医としても多くの業績を残した。高級官吏と文学者との両道を追究する。幸田露伴とは親友の間柄である。

大河内 正敏(おおこうち まさとし 1878~1952年)
 物理学者、実業家。子爵。江戸時代以来の名家・大河内家の英才。東京帝国大学では寺田寅彦以上の天才と謳われ、寺田と共同で物理学の実験も手がけた。大正六(1917)年に設立された日本の応用科学研究の総本山「理化学研究所(理研)」の総裁となる。美丈夫の誉れ高く、人柄も名家にふさわしく寛大。

渋沢 栄一(しぶさわ えいいち 1840~1931年)
 明治時代の日本を代表する実業家で、第一国立銀行初代頭取を務めるなど金融体制の設立にも尽力した自由競争経済設立の指導者。子爵。
 帝都東京を物理的、霊的に防衛された新都市にしようと秘密会議を開く。

森田 正馬(もりた まさたけ 1874~1938年)
 精神科神経科医で精神医学者。巣鴨病院に入院した由佳理の治療にあたる。
 寺田寅彦が幼少期を過ごした高知県に生まれ、犬神憑きなどの憑霊現象を研究する。後に「森田療法」として知られる独自の精神病治療法を確立した。

平井 保昌(ひらい やすまさ 1840~1912年)
 日本陰陽道の名家・土御門家につらなる老陰陽師。奇門遁甲の術に長けている。幸田露伴の依頼を受け、秘術を尽くして宿敵たる加藤と渡り合う。

カール・エルンスト=ハウスホーファー(1869~1946年)
 ドイツ帝国陸軍少将で地政学者。ミュンヘンに生まれ、1887年にインド、東アジア、シベリアを旅行し、1909年から約2年間、日本にも滞在し、秘密結社「緑竜会」に入会した。
 地政学(ゲオポリティーク)を戦争の実用科学にまで高め、ミュンヘン大学の教授・学長を歴任し、初期ナチズムの神秘的教養を形成する影の参謀となった。

洪 鳳
 朝鮮半島の秘密結社「天道教」に所属する女。

林 覚
 中国・清帝国の秘密結社「三合会」に所属する青年。

長岡 半太郎(1865~1950年)
 東京帝国大学物理学教授。辰宮洋一郎から帝都東京改造計画への参加を要請されるが、自分よりも適任だとして教え子の寺田寅彦を推薦する。

阪谷 芳郎(1863~1941年)
 大蔵省官僚、政治家、元大蔵大臣、前東京市長(1916年当時)。渋沢栄一の娘婿。大正九(1920)年に義父・栄一の複葉飛行機による東京遊覧飛行を実現させる。

平 将門(たいらのまさかど 903~40年)
 平安時代の関東地方最大の英雄。京の中央集権主義に刃向かい関東を独立国家化したため討伐されたが、その没後もなお千年間、大手町の首塚の下で関東と帝都東京を鎮護し続ける大怨霊。『帝都物語』シリーズ全体の根幹をなす最重要人物。

佐藤 信淵 (さとう のぶひろ 1769~1850年)
 江戸時代末期の経世家、鉱山技術家、兵法家。理想郷の実現を目指し、平将門ゆかりの下総国印旛沼をはじめ内洋すべてを干拓する生産向上計画を提唱した人物。統治論書『宇内混同秘策』は神道家・平田篤胤(1776~1843年)の日本中心主義を内包しつつ全世界を征服するための青写真を描いた一大奇書で、この中で「東京」という名称が初めて用いられたとされる。

安倍 晴明(あべのせいめい 921~1005年)
 平安時代の大陰陽師、天文博士にして、日本最大の白魔術師。当時の呪術コンサルタントとして皇族や貴族・民衆の間で絶大な信望を集めた。一説に「信太の狐の子」ともいわれ、官制魔道の宗家・土御門家の開祖となった。


おもな魔術解説
神降ろし
 神霊や邪霊を一時的に生身の人間に宿らせ、啓示や予言を受けること。死者の霊を呼び出す場合は「口寄せ」ともいう。

依り童(よりわら)
 神降ろしで呼び出された霊の容れ物となる少年や少女。依り童となるのは感応力の強い特別な気質を持つ子ども達である。

式神(しきがみ)
 単に「式」ともいう。吉凶を占い、魔を祓うオカルティスト・陰陽師に使役される目に見えぬ鬼といわれ、陰陽師が創った人造人間ともいわれる。人を呪う時に式神が放たれ、式神は呪う相手にとり憑き、生命をおびやかす。呪われた人は一瞬でも早く、より強力な陰陽師に頼んで相手に式神を打ち返さない限り、助からない。

ドーマンセーマン
 五芒星の形をした魔除けの印。ほぼ世界共通に存在し、もともとは人をとり殺す魔力を持つ「邪眼」に睨みつけられた時、その視線をそらすために使われた。日本では、史上最大の陰陽師で土御門家の開祖である安倍晴明にちなみ「晴明判」と呼ばれる。ドーマンセーマンとは紀伊国とその周辺地域で使われる言葉で、「ドーマン」は、これも有名な陰陽師である道摩法師(蘆屋道満 958?~1009年以降)、「セーマン」は晴明のことといわれる。六芒星や籠目もドーマンセーマンの類のものである。

蟲術(こじゅつ)
 中国大陸で発達し、日本でも平安時代ごろまでに盛んに用いられた、相手に生物の霊を憑かせる呪殺術。ヘビ、サソリ、虫など魔力あるいは毒のある生き物から特別な方法で魔のエキスを採取し、これを呪う相手に飲ませたり、持たせたりすることで発動する。古代の日本ではしばしば蟲術の禁止令が出されるほど流行した。

鏡聴(きょうちょう)
 鏡の透視能力を利用した予言予知法で、中国大陸で用いられた。鏡を沈めた井戸に顔を映すなど使用方法も種類が多い。西洋童話『白雪姫』に登場する「真実を告げる鏡」も鏡聴の一種と考えられる。

腹中虫(ふくちゅうむし)
 中国大陸の魔術信仰に登場する魔物。人間の体内に入り込み、時には内部から話しかけてくることもある。憑き物の類とも考えられる。

一母道(いちぼどう)
 19世紀の中国大陸北部で勢力を持った魔術の秘密結社。呪殺をはじめ、神霊との交感、不老不死の探究を目的とした。当時の中国には、これに類する秘密結社が多数存在した。

九字(くじ)を切る
 伝統的な魔除けの方法。呪文を唱え、指で縦4本と横5本の線を描く。計9本の線が多くの「目」を作るため、邪眼を持つ魔物の視線がそこに釘付けになり、魔物が目の数をかぞえている間に逃げるか対抗手段を取ることができる。

奇門遁甲(きもんとんこう)
 中国大陸で発明された方術。陰陽二気の流れに応じて、身を隠したり災難を避けたりするための方位魔術。天の九星、地の八卦に助けを借り、「八門遁甲」ともいわれる各方位への出入り口「門」のうち、どれが吉でどれが凶なのかを知ることができる。自分の行方をくらましたり、敵を誘い込む罠にも利用された。

八陣の図
 奇門遁甲術に含まれ、中国大陸で諸葛亮公明が編み出したものといわれる。巨大な岩石を一定の形式に配置して、迷路のようになった内部に敵を誘い込んで混乱させる方術。

風水
 古代中国の地相占術。日本にも伝わり「家相学」や「墓相学」ともいわれた。自然のエネルギーを最大限に活かし、生者と死者とが平和に住み分けられる都市を創造する、魔術による総合土木技術。その基本は、山川の地形や風の流れなどを読み、「地脈」あるいは「龍脈」と呼ばれる生命エネルギーの流路を発見することにある。

陰陽道
 風水と共に、中国大陸と日本のあらゆる魔術の基本原理を定める宇宙生成システム。陰陽とは、「気」という万物の原質のプラスとマイナスの活動から世界の運行を解釈する思想。「道(タオ)」とも呼ばれる。日本に伝来して、物事の吉凶占いに利用されるようになった。

陰陽五行
 宇宙の全存在に、霊的あるいは物理的な性格付けを行う5つの要素「木火土金水」を規定する哲理。これらには「相性(そうしょう)」と「相克(そうこく)」との違いがあり、例えば、木は燃えて火となる(相性が良い組み合わせ=相性)、木は土から養分を吸い取ってしまう(相性が悪い組み合わせ=相克)といったそれぞれの関係により、事物や人同士、日取りなどの相性が決定される。占術の代表である「易(えき)」も、陰陽五行の原理の上に成り立っている。

天文暦法
 日本における、天変地異を知り吉凶を読み解く方術で、常に陰陽道と共に存在した。魔術的な日取り選びにつながる技術で、現代の天文学や暦学とは多くの点で違うものである。

きつね憑き
 人間にとり憑く妖怪の代表的存在。これを使役して他人をきつね憑き状態に陥らせる「きつね使い」も多かった。関東地方には、四国地方の「犬神」と並ぶ奇怪な憑き物「管狐(くだぎつね)」がいた。管狐は小さく、竹の筒(管)に入れて飼うこともできる。人を呪う時に管から出すが、相当な能力を持つ術師でないと管狐を元の竹筒に戻すことはできなかったという。

斎(ものいみ)
 魔物や呪い、数々の凶事を祓うために一定期間行われる行(ぎょう)のこと。この期間は身を慎み、禁忌を守り、読経や浄めなどを行う。現代にも残る葬式時の「忌中」や、願いが叶うまで好きなものを断つことも、大きな意味での斎である。

錬丹道(れんたんどう)
 中国大陸における錬金術。卑金属を貴金属に変えるのが主体の西洋錬金術に対し、不老不死を得る霊薬「丹」の精製に力点が置かれた。この思想は13世紀ごろに西洋にも伝わり、西洋錬金術を不老長寿探究のシステムに変化させる原動力となった。

土砂加持(どしゃかじ)
 真言宗の霊山・高野山の土をはじめ、霊能を備えた土砂を人間の死体や遺骨、墓に撒き、真言を唱えて浄化する呪法。また、世俗ではこの土砂を飲んで病気や傷を治したといい、江戸時代には長崎・出島のオランダ人の間でも行われていたという。同類のものに、女性の堕胎に使われた「伊勢おしろい」があった。

弓乙の霊符(きゅうおつのれいふ)
 かつて朝鮮半島にて流行した魔術的医療用具。霊力のある道士が紙に「弓」または「弓乙」と書いたものを焼いて灰にして病人に飲ませることにより、万病に効いたという。このような霊符による病気治療は、19世紀に発足した秘密結社「東学」の教主たちが実践したといわれる。

舞剣騰空(ぶけんとうくう)の術
 弓乙の霊符と同じく東学の秘術。伝説の宝剣「湧天剣(ゆうてんけん)」を握った者が特別な呪歌を詠いながら舞うことで空に浮かび、敵を討つ。19~20世紀初頭の朝鮮半島の民衆は、日本や西洋列強諸国の侵略と、国内宮廷の腐敗をこの秘術で祓おうと信仰していた。

日取事(ひどりのこと)
 陰陽師が用いた、日取りを使った吉凶判断術。安倍晴明が編纂したと伝承される陰陽道の秘伝書『三国相伝陰陽輨轄簠簋内伝金烏玉兎集』に掲載されている秘伝の一つだが偽書による流布も多く、仏教(特に密教)の影響も強い。占い盤により日取りを選ぶ方法で、「初」「中」「後」の三種の盤を用いて吉凶を判断する。また、時間帯ごとの吉凶を占う『鬼一法眼右日取事』という盤も存在する。この占い盤と同種のものに西洋の「ピタゴラス盤」があり、この場合は占う年月日や場所名をゲマトリア秘術によって数値化して合算し、吉凶を判断する。


映画化・アニメ化・マンガ化作品
映画『帝都物語』(1988年1月公開 135分 エクゼ)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』の映画化作品。日本初の本格的ハイビジョン VFX映画。加藤保憲の役に、当時小劇場俳優で庭師として生計を立てていた嶋田久作が抜擢された。登場する人造ロボット「学天則」の開発者・西村真琴の役を、真琴の実子の西村晃が演じている。 監督・実相寺昭雄、脚本・林海象、製作総指揮・一瀬隆重、特殊美術・池谷仙克、画コンテ・樋口真嗣、特殊メイク・原口智生、コンセプチュアル・デザインH=R=ギーガー。音楽・石井眞木。製作費10億円、配給収入10億5千万円。

OVAアニメ版『帝都物語』(1991年リリース 全4巻 マッドハウス)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』のアニメ化作品。加藤保憲の声は実写版と同じく嶋田久作が担当した。脚本・遠藤明範、キャラクターデザイン・摩砂雪、シリーズ監督・りんたろう。作画スタッフには鶴巻和哉、樋口真嗣、前田真宏、庵野秀明らが参加していた。

コミカライズ版
川口敬『帝都物語』(1987~88年 小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて連載)
 映画『帝都物語』公開に合わせての連載で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。未単行本化。
藤原カムイ『帝都物語 Babylon Tokyo 』(1988年 角川書店)
 映画『帝都物語』公開に合わせての刊行で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。


 ……というわけでありまして、今回からさっそく『帝都物語』本編についてのつれづれを語っていきたいと思います。
 いや~、すごいですね! これ、長い長い『帝都物語』というサーガのほんのとっかかりなのですが、そこだけでも基本情報が上のごとく山ほどありますよ! まず、この文字情報の多さにビビってしまうのですが、いざ読んでみるとそんなに難解な文章でもありませんから、大丈夫ですよ、たぶん……

 まず小説の内容に入る前に、いつものように「『帝都物語』とわたし」という思い出語りをしていきます。個人ブログなので何卒ご寛恕くだせぇ。

 実相寺昭雄監督の映画版『帝都物語』が上映された1988年当時、私は洟ったれの小学生でありまして残念ながらその存在すら認識することが難しく、その次作『帝都大戦』が、なんだかむっちゃくちゃ怖い映画らしいという情報に恐れおののくことしかする術がない状態でした。それなのに、親戚の伯父さんの家に遊びに行くと、あのおっかない加藤保憲の顔がでかでかとプリントされたエッソ石油の宣伝ボックスティッシュが置いてあってよぉ……あのティッシュ箱、ほんとキライだった!
 そんな感じなので、その恐怖の権化である『帝都大戦』本編がフジテレビ系列の『ゴールデン洋画劇場』で放送された(1990年11月)としても当然観られるはずがなく、観た弟に「どうだった……?」と尋ねることしかできませんでした。な~さけねぇえぇえ~♪(作詞・秋元康)

 ということで、私がちゃんと魔人・加藤保憲の威容を目にしたファーストコンタクトは、あの『仮面ノリダー』(フジテレビのバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』内の伝説のコントコーナー)の第47話『恐怖帝都大戦男 東京大破壊計画の巻』(1989年9月放送)への加藤こと嶋田久作サマのゲスト出演だったのでありました。でも、そういう出会い方の子ども達、当時けっこう多かったんじゃない!? 加藤は、顔が怖かった!!(中江真司さんの声で)

 ただ、そんないびつな出会いであったとしても、「あの加藤って軍人は、一体何者なんだべ?」という疑問は私の心の中でいつまでも澱のように残り続け、その数年後、めでたく高校に進学できたくらいの頃に、原作小説の『帝都物語』シリーズが一気に「2篇合本版を6冊」という形で新装リリースされるとの報を耳にしたのでした。表紙イラストは、あの田島昭宇大先生! エロこわい!!

 そんなことでしたので、私は喜び勇んで「加藤保憲なにするものぞ」という気概で小説を読み始めたわけだったのですが、途端にぶち当たってしまった衝撃の事実こそが、「映画化されたの前半ほんのちょっとだけ」ということだったのです。えー!!

 これはビックラこきました……いや、そりゃそうですよ、分厚い文庫本6冊分が2時間やそこらの映画におさまるわけがないんだもの。しかも、後半にいくにつれて「昭和が終わってない」とか「三島由紀夫が死後ヒロインに転生」だとか「角川春樹がメインキャラ」とか……なんかうさんくさい展開がモリモリわいてきて、私はやっぱり「なんだずこれ~!?」といった感じで、文庫を2~3冊読んだくらいで放り投げて敵前逃亡してしまったのでした。ちなみに、角川春樹さんはこの1995年の新装版『帝都物語』リリースの2年前に麻薬取締法違反などの罪状でお縄になっております。嗚呼、事実は小説よりも奇なり!!

 そんな感じの思い出が『帝都物語』にはあるのですが、リアルタイムではなかったものの、現役で活躍している小説家さんにハマったのは星新一、綾辻行人に続きこの作品でしたし(荒俣先生はどちらかというと TVタレントの印象でしたが)、何と言っても「安倍晴明」や「陰陽道」の世界を知るきっかけとなった記念碑的名作ですので、いっぱしの大人になった今、あらためてこの原点をたどってみようという気になったわけなのです。
 ちなみに余談ですが、私が本格的に「安倍晴明うんぬんかんぬん」にハマる決定打となったのは、NHK総合の歴史バラエティ番組『歴史誕生』で1992年3月に放送された回『上方三都事始め・京都 桓武天皇怨霊と闘う』をビデオ録画して繰り返し観てしまったことでした。小松和彦せんせ~!!


 ささ、そんなこんなで思い出話はこのくらいにしておきまして、いよいよ小説の内容に入っていきたいと思います。もう、字数の関係でちょっとしか感想言えないよ~!!

 今回あつかう『神霊篇』と『魔都篇』は長い長い『帝都物語』のまさに序曲にあたるわけなのですが、読んでみてまずびっくりするのは、


加藤保憲がかなり人間っぽい……ていうか、むしろヒーローっぽい!!


 という事実なのです。こりゃもうびっくりですわ。

 まず映画版『帝都物語』との相違点として大きいのは、「帝都破壊」というめちゃくちゃ極悪な目的があるのにも関わらず、加藤がかなりアツい情熱をもって計画に邁進する姿がミョ~に好感触で、しかも相棒(いけにえ?)の辰宮洋一郎の質問に答える形で、読者に向けて「これはこうこうこういう呪いなのだ!」とか「平将門を目覚めさせるとこうなっちゃうから、帝都は大変なことになるのだ!」と、なんかショッカーの改造人間あたりの「冥途の土産に教えてやろう!」ゆずりの懇切丁寧さで、物語中に発生する奇々怪々な事象のからくりや自分の行動目的を分かりやすく説明してくれるので、敵なんだか気のいい兄ちゃんなんだかがよくわからなくなるポジションになっているのです。いや~、やっぱ悪役はこういう風に「いいひと」じゃないとネ! 原作版加藤の口癖は「ばかな!」です。かなり熱血系。

 本来ヒールであるはずの加藤がヒーローに見えてしまう原因は、多分にその相手サイドに起因するフシも数多くあります。
 まず、この最初期の2篇に関していえば、「なんか帝都をぶっ壊そうとしてるヤバい奴がいるらしいぞ」といううわさを聞きつける形で、東京のあちこちから全然ジャンルの違う有志たち(実業家、物理学者、小説家、官僚、農学者、陰陽師 etc...)が集うという筋立てになっているので、正義チームがまだまだ結成できていません。しかも、それぞれが有名人だったとしても加藤ほどの濃い情熱を持てていないので、どうしてもインパクトが薄いのです。たぶん、その中では比較的にいちばん有名な渋沢栄一だって、今でこそ NHK大河ドラマの主人公になってはいますが……ピンとは来ませんよねぇ。第一線で加藤と闘うわけでもないし。
 だいたい、物語前半の最重要キーパーソンとなる元祖メンヘラヒロイン辰宮由佳理の兄である洋一郎がかなりおとなしい存在なので、絶妙に頼りないチームにならざるをえないわけで、結局、勢いと若さだけの鳴滝純一と、ぜんぜん肉体派じゃない幸田露伴先生が主戦力になってしまうというていたらくになってしまうのでした。ダメダメだ~!

 ただし、ここらへんのポリスアカデミーなみに頼りにならない正義チームの弱体化設定は、おそらくは第3巻『大震災篇』以降に出てくる超ヒロイン目方恵子のためにあえて苦しいメンツで引っぱっておくという意図があるかと思われるのですが、その結果として、作者が想定した以上に加藤保憲が魅力的なキャラになるという副作用があったのではないでしょうか。だって加藤は、自身の計画を成功させるために、軍人としての仕事もこなしながら(当時)、中国大陸にまで駆けずり回って汗水たらして3ヶ国語をペラペラしゃべって頑張ってるんだぜ!? 正義サイドで、ここまで努力してる人、いるか!? 全員、本業の忙しさにかまけて大変なことを押し付け合ってる感じなんですよね。そんなんで帝都を護れんのかと!

 こういう感じで、原作小説の第1・2巻は、なにはなくとも饒舌だし汗もかく生身の人間・加藤保憲の魅力と情熱を全面的にプッシュした内容となっており、実相寺監督の映画版とはだいぶ違う印象をもたらす群像小説となっているのです。
 この原作と比較するとよく分かるのは、映画版がいかに正義チームを頼もしく強化してるかというところなんですよね。まず、「文弱の辰宮洋一郎」と「情熱的な鳴滝純一」というキャラ付けを全く逆にして、洋一郎を一つの映画の主人公ヒーローたりえる人物にまでフィーチャーしているし、原作では「土御門一門でも持て余してる偏屈老人」程度の扱いだった平井保昌を、なんか土御門一門の総帥くらいにまでアゲアゲにしてるのも、映画オリジナルの味付けですよね。原作での平井の自害なんか、ほぼナレ死みたいな処理の仕方で、あんな映画みたいな加藤とのやり取り、まるでありませんからね!? いや~、万人に勧められる名画かと問われればそうとは言えないのですが、映画版『帝都物語』は、よくやってますよ! 由佳理の腹中虫げろげろシーンも必要以上にエロくなってるし。さすが変態けろっぴおやじマエストロ!!

 そうそう、原作小説はちゃんと、明治時代末期の陰陽師界隈が、呪術師集団としてはすでに壊滅しているという史実をちゃんと反映させていて、その中でも時代に迎合しなかった異端派の平井と、そのわずかな賛同者のみがゼーゼーハーハー状態で加藤に立ち向かうという窮状となっているのです。そこらへんが映画ではかなり大げさに修正されちゃって、まるで大正の直前まで陰陽師たちが平安時代以来の伝統を継承して健在でいるみたいな絵空事になってましたよね。ま、映画なんだからしょうがないですけどね~。演じてるのひらみきだし。

 また、原作ではあんなに情熱的だった加藤を、まるで天災か怪獣のように冷血で人間離れした怪人に仕立て上げた映画版の演出も、結果的には嶋田久作さんという稀代の個性を得て大成功したのではないかと思われます。確かに、これを原作のまんまに小林薫さんくらいの名優が上手に演じていたら、感情移入しやすすぎて『砂の器』とか『飢餓海峡』の犯人みたいになっちゃって、映画史に残るエターナルな名悪役キャラにはならなかったのではないでしょうか。映画は映画で、あの舵の切り方でよかったのよ。


 というわけでして、今回取り上げた『帝都物語』の第1・2巻は、1923年の関東大震災をいったんのクライマックスとして、まだ生身の人間で喜怒哀楽の感情も豊かな加藤保憲の、アジア三国を飛びまわる尋常でない努力と一方的な攻勢をかなり高い温度で語りまくる内容となっております。正直いうと、主語を省略したり時制を文章の途中にしれっと差し込んだりする若々しい荒俣先生の筆致は、慣れるまでは読みやすいとは言えないものなのですが、それでも、式神や依りわらや八陣奇門遁甲術といったおいしすぎるワードが乱れ飛ぶ物語のスピード感は、まさに大長編の開幕にふさわしい勢いあるものになっていると思います。盛り上がってまいりました!

 この、極悪非道だけどなんか嫌いになれない加藤の猛威を止める者はおらぬのか!? そんな、断りきれない損な性格のためにけっこうなとばっちりを喰らってしまう幸田露伴先生の満身創痍の嘆きに応えるかのように現れ出でたるは、平将門の大いなる遺志を継いで立ち向かう巫女、ひとり!!

 以下、次号! かんのん、りっき~!!(消臭力のリズムで)


~超余談~
 今回再読している1995年初版の「合本新装版」のまえがきで記されているように、作者の荒俣先生は1923年の関東大震災と95年の阪神淡路大震災に共通している「亥の年」というキーワードの不吉さを強調しておられます。
 でも、2025年現在に生きている身から振り返ってみるに、同じ亥の年である2007年と2019年に、それらに匹敵する凶事があったのかと言われると……新潟県中越沖地震(07年)とか京アニスタジオ放火事件(19年)とかはあったんですけど、ね。
 そもそも、あの東日本大震災がぜんぜん亥の年じゃないので(2011年は卯の年)、結果論ではあるのですが、亥の年がどうのこうのいうのは今や信ずるに値しないと断じるほかはないかと思います。

 ま、なに年だろうが、用心するに越したことはねぇってことさね! ドーマンセーマン☆
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あらためて立ち返ろう読書メモ 小説『帝都物語』1 序

2025年02月02日 23時16分11秒 | すきな小説
 どわわ~! みなさまどうもこんばんは、そうだいでございます~。
 気がつけば、あっという間に1月も終わってしまいました……私の住んでいる山形では、ここ最近になってやっと雪がドカドカっと降り積もってきまして、「これが東北の冬なんだずねぇ~」としみじみ痛感しながら雪かきをしていましたら、もう2月! 今年もボヤ~ッとしてたら、一年なんかすぐに終わっちゃうぞ。気合い入れていかねば!

 私は相変わらず、適度に頭をウンウンひねらせながらも毎日楽しく過ごしているのですが、最近は気分転換にと映画を2つばかり観てまいりました。『怪獣ヤロウ!』(監督・八木順一朗)とアニメ『ベルサイユのばら』(監督・吉村愛)です。趣味全開!!
 どっちも非常に面白く鑑賞したのですが、ちょっともろもろ忙しいので我が『長岡京エイリアン』では独立した記事にはしません。こういうフレッシュな話題を記事にしないで、新鮮味もへったくれもない今回のタイトルみたいなやつを記事にするんだもんなぁ~!! それでこそ、このブログ。

 簡単な感想だけ述べさせていただきますと、『怪獣ヤロウ!』は純粋に笑いあり緊張あり感動ありの娯楽映画として非常に完成度の高い作品で楽しめました。特撮ファンでなくとも、岐阜県関市に縁のある人でなくとも万人が観るべきエンタメ作だと思いますよ。
 もちろん、昨今巷を騒がせている特撮作品のような CG技術などはほとんどない手作り感満載の映画なのですが、そのチープさこそが作品の味ですし、出演陣も実力のしっかり備わった粒ぞろいでかなり安心して観られる手堅さなのです。これ、ほんとにお笑い芸人のマネージャーさんが撮った映画なの!? 主演のぐんぴぃさんをはじめ演者は全員素晴らしいのですが、私はその存在感のリアルさと味わいの深さにおいて、主人公の中学生時代の恩師役として出ておられた田中要次さんがズバ抜けていいお仕事をされているなと感じ入りました。あの先生、すっごくいいポジションだった! 最後の出演カット、本気で泣きそうになりました……そうそう、あのわけわかんない「空中の肉塊」に象徴されるように、この映画の主人公のアツすぎる行動の中核にあるのは確かに「怪獣映画撮りたい!」という自分中心の欲望が源泉ではあるのですが、それが渇望しているのは間違いなく、「その努力を認めて受け入れてくれる他人」の承認なのです。それはまぁ、ゲラゲラ笑って喜んでくれる観客でもいいのですが、中学生時代の蹉跌を知っている先生の満足そうな穏やかな笑顔が、最も欲しかったものなのではないでしょうか。そこを見落とさずにちゃんと用意してくれる八木監督の微に入り細にうがった心遣いは、さすが天下のバキ童のマネージャーという一心同体感だと思いました。ここらへんの作り手と主人公の近さが生み出す感動は、それこそその両者が正真正銘の同一人物だった、あの『ロッキー』第1作(1976年)に通じるものがありましたよね。映画の中盤でもしっかりロッキーオマージュがありました。でも子どもが一緒に走ってたから、あれは『ロッキー2』のほうだ!
 ただ、ひとつだけ苦言を呈させていただけるのであれば、クライマックスで登場する「巨大ヒーロー」のお姿が、お笑い好きならば見ないわけがない「あの映画」を強く想起させるものになっていたのがちと残念でした。制作予算が無いという設定でそうなっちゃうのは仕方ないのですが、そこはなんとかオリジナリティが欲しかった……裸の肉体しか残されたものが無いという状況を語ることも大事ですが、やはり演じるぐんぴぃさんもお笑い芸人なので、最後の最後に同業のあの人の影がちらつくのは避けるべきだったのではないでしょうか。あの映画だって、別にリスペクトするべきほどの作品でもないしねぇ。そんなん旧世代の先輩の仕事なんて、蹴っ飛ばしちゃえばいいんだよ!

 あとこれはほんとに蛇足。本編中では見ていて別になんの感慨もわかなかったのですが、本多英二監督の工房から拝借して作った怪獣シン・セキラを陰影つよめの処理で撮影したらしきパンフレットの裏表紙の写真が、ほんとにぞっとするくらい「怪獣」していて、ある意味で映画本編以上にほれぼれしてしまいました。これこれ! この「かわいさと気味悪さ」、「生物感と作りもの感」、「親しみやすさと意思疎通のできなさそうさ」がひとつの姿に同居しているデザイン。これこそがジャパニーズ怪獣なのだと再認識しました。これ、私的には2025年ベストの映画パンフレットになるかも!!

 もうひとつの『ベルばら2025』に関しましては、ほぼほぼ義務で観に行った感があるのですが、とにかく映画館の客席が「年配夫婦」か「母と娘」、「祖母と娘」で構成されているという異様な状況に感動してしまいました。40代男性がひとりで? そんなん、俺しかいねぇわ!! 一人客がほんとにいなかった。
 私は別に池田理代子先生と宝塚どちらのファンでもないのですが、ことこの『ベルばら』に関しましては看過できない「おぼえ」がございまして……少なくとも私の現在の勤め先である隣町の上山市の中で言うと「私が観に行かなくて誰が観に行く」という程度の思い入れはあるのです。仕事に関わりのあることなので詳しくは言えないのですが、まぁそのくらいお世話になったことのある作品なのです。
 それで観に行ったのですが、やはり当代随一の名優であらせられる沢城みゆき閣下の声で八面六臂の活躍をみせるオスカル隊長の一生は、やっぱりすばらしかった。劇場に観に行ってほんとによかったですね。平野綾さんの年齢別にしっかり分けた演技の変遷もすごかったです。それだけに、マリー・アントワネットの生涯はそのご最期まで演技でつづっていただきたかったのですが……それじゃ「本編3時間コース」になっちゃうしねぇ。
 それは良かったのですが……やっぱり私は、「チャキチャキのパリっ子」とか「オーストリア育ちの娘ッコ」が、感極まった時にかぎって妙に発音の良いイングリッシュで熱唱するという違和感を拭い取ることができない人間でして、それはもう本作の副題が『 The Rose of Versailles』な時点で察してネという話なわけですが、それでもなぁ……今回ばかりは、平野綾さんの歌唱力があだとなった気はしました。むしろそこは、カタカナ英語感バリバリの昭和な距離感があった方がよかったのかも。1970年代当時は「英語もフランス語もおんなじ外国語」だったんでしょうけど、ね。
 ダイジェスト感の強い作品ではあるのですが、「庶民パート」をほぼ全カットするという(黒騎士がぁ~!!)大いなる犠牲を払いつつも、とにもかくにも「あの大作を2時間以内におさめる」という離れ業をやってのけた金春智子さんの脚本はお見事でした。『ベルばら』も、昔の年末大型時代劇ドラマ『忠臣蔵』とか『戦国三英傑のだれか』くらいにはしょっちゅうテレビでやっててもいい古典的名作ですよね。こういう王道的作品こそ、どんどん地上波でリピート放送していってほしいなぁ。そして、ゆくゆくは我が愛しの山岸凉子神先生の『とこてん』の NHK大河ドラマ化を……そんな時代が来ちゃったら、そのとき日本は果たして「はじまってる」のか「おわっちゃってる」のか!?


 テレビといえば、もう今年は正月からの大地震こそなかったものの、かの業界では年明けからとんでもない大騒動が出来しておるようでして、先月27日の悪夢のような会見いらい、フジテレビさんは大変なことになっております。
 CM から大企業が次々撤退していくという現在の状況は、まさしく前代未聞の異常事態なわけなのですが、今現在のフジテレビに、ていうかテレビ業界全体に関しても NHK大河とかテレ朝のニチアサ枠とか、 BSの『刑事コロンボ』やら昔の金田一耕助シリーズやらの再放送くらいにしか興味がない私にとりましては特になんの感慨もわきません。そろそろ、テレビ局も切磋琢磨、淘汰されてもいい時代なのかも知れませんし。

 ただ、私にとって今回の企業 CM撤退騒動で嬉しいのは、あの名優・嶋田久作さんが出ておられる ACジャパンの「決めつけ刑事」CM がバンッバンリピート放送されていることなんですよね。これ、CM 自体はそうとうに怖い事であるはずの誤認逮捕がおもしろくなっちゃってるのであまり良いものではないと思うのですが、それだけ嶋田さんの演技が面白いのがいけないんですよね。キャスティング失敗! でも嶋田さんだからヨシ!!


 と、いうわけでして、嶋田さんといえばの、この企画でございます。強引すぎて、もうイヤンなっちゃう♪


『帝都物語』シリーズとは……
 『帝都物語』(ていとものがたり)は、小説家・荒俣宏による日本の長編伝奇小説。
 1983年から発表された荒俣宏の小説デビュー作であり、1987年に第8回日本SF大賞を受賞し、1988年の映画をはじめとして様々なメディアミックス化が行われ、荒俣の出世作となった。小説誌『月刊小説王』(角川書店)に1983年の創刊号から1984年まで13回連載された後は新書判レーベル「カドカワノベルズ」から書き下ろし形式で発表され、シリーズはベストセラーとなった。
 平安時代の大怨霊・平将門を目覚めさせ帝都東京の破壊を目論む魔人・加藤保憲の野望と、それを阻止すべく立ち向う人々との攻防を描く。明治時代末期から昭和七十三年(実際の昭和は六十四年で終わったため、現実の元号に直せば平成十年となる)までの約100年にわたる壮大な物語であり、史実や実在の人物が物語中で登場・活躍する特徴がある。荒俣が蓄積してきた博物学や神秘学の知識を総動員しており、風水思想を本格的に扱った日本最初の小説とされている。陰陽道、風水、奇門遁甲などの呪術用語をサブカルチャーの世界に定着させた作品でもある。

シリーズ作品一覧
『帝都物語1 神霊篇』(1985年1月)
『帝都物語2 魔都篇』(1985年4月)
『帝都物語3 大震災篇』(1986年1月)
『帝都物語4 龍動篇』(1986年2月)
『帝都物語5 魔王篇』(1986年3月)
『帝都物語11 戦争篇』(1988年1月)
『帝都物語12 大東亜篇』(1989年7月)
『帝都物語6 不死鳥篇』(1986年7月)
『帝都物語7 百鬼夜行篇』(1986年10月)
『帝都物語8 未来宮篇』(1987年2月)
『帝都物語9 喪神篇』(1987年5月)
『帝都物語10 復活篇』(1987年7月)
※10 復活篇までの刊行後に、時系列を遡って外伝的作品として11 戦争篇と12 大東亜篇が発表された。
『シム・フースイ』シリーズ(1993~99年 全5作)風水師・黒田茂丸の孫である黒田龍人が主人公の怪奇ホラー小説シリーズ。『東京龍 TOKYO DRAGON 』(1997年)として TVドラマ化された。ちなみに黒田龍人は小説『帝都物語外伝 機関童子』にも登場する。
『帝都物語外伝 機関(からくり)童子』(1995年)
『帝都幻談』(1997~2007年)江戸時代を舞台とする。
『新帝都物語』(1999~2001年)江戸幕末期を舞台とする。
『帝都物語異録 龍神村木偶茶屋』(2001年)江戸幕末期を舞台とする。

『妖怪大戦争』(2005年)荒俣宏が脚本プロデュースした映画作品。加藤保憲が登場する。
『虚実妖怪百物語』(2011~18年)京極夏彦の妖怪クロスオーバー小説。加藤保憲が登場する。
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(2021年)荒俣宏が製作総指揮を担当した映画作品。加藤保憲が転生したとおぼしき人物が登場する。


おもな登場人物
加藤 保憲(かとう やすのり)
 明治時代初頭から昭和七十三(1998)年にかけて、帝都東京の滅亡を画策して暗躍する魔人。大日本帝国陸軍少尉、のち中尉。紀伊国龍神村の生まれとされるが、詳しい生い立ちについては一切不明である。
 長身痩躯で、こけた頬にとがった顎、さっぱりとした刈上げといった容姿で、いかなる時代においても老いの感じられない20~30歳代の外見をしている。眼光は鋭く、身体の大きさに似合わぬ軽い身のこなしが特徴的である。黒い五芒星(ドーマンセーマン)の紋様が染め抜かれた白手袋を着用している。剣の達人で刀は孫六兼元を愛用する。 極めて強力な霊力を持ち、あらゆる魔術に精通している。とりわけ陰陽道・風水・奇門遁甲の道においては並ぶ者のいないほどの達人であり、古来最も恐れられた呪殺秘法「蠱毒」を使う。天皇直属の陰陽道の名家・土御門家が総力を挙げても彼一人に敵わない。秘術「屍解仙」を用いて転生したこともある。さまざまな形態の鬼神「式神」を使役し、平将門の子孫を依代にして将門の大怨霊を甦らせようとしたり、大地を巡る龍脈を操り関東大震災を引き起こしたりした。中国語や朝鮮語にも通じる。

 原作者の荒俣は、加藤保憲は連載開始当初、テクノポップバンド「プラスチックス」のギタリストとして活動していたグラフィックデザイナーの立花ハジメをイメージしていたと語り(2019年の取材記事より)、また映画『帝都物語』以降のシリーズ作品で加藤を演じた俳優・嶋田久作の談話(2011年の取材記事より)によると、荒俣は俳優の伊藤雄之助のイメージで執筆したと語っていたという。しかし、実際に加藤を演じた嶋田久作による演技と存在感は強烈で、荒俣自身も「加藤保憲は嶋田さんと2人で作り上げたキャラクターだ」と認めている。
 ちなみに「保憲」の名の由来は、平安時代中期に実在した有名な陰陽師・賀茂保憲(917~77年)による。


辰宮 洋一郎(たつみや よういちろう)
 大蔵省官吏。帝都東京の改造計画に加わり、明治時代末期から大正時代にかけての歴史の奔流を目撃する。物語の冒頭で平将門の霊を降ろす依代として加藤に利用される。
 妹の由佳里に執着しており、彼女が霊能力を持つに至った経緯や雪子の出生に関わりを持つ。

辰宮 由佳理(たつみや ゆかり)
 洋一郎の妹。平将門の依代となる程に強力な霊能力者であり、加藤や北一輝に狙われる。
 強度のヒステリー症状ないしは霊能体質を有するために、奇怪な事件に巻き込まれる。精神を病んで森田正馬医師の治療を受ける。

辰宮 雪子(たつみや ゆきこ)
 由佳里の娘。母から強い霊能力を受け継ぎ、そのために加藤に狙われる。
 品川のカフェで女給として働くが、二・二六事件に深く関わることとなる。

目方 恵子(めかた けいこ)
 辰宮洋一郎の妻。相馬俤神社の巫女。辰宮家と帝都東京を守るべく平将門の巫女として加藤と戦う。

鳴滝 純一(なるたき じゅんいち)
 東京帝国大学理学士。洋一郎の旧友。純朴な性格だが、由佳理を思慕するあまり、暴走することもある。

鳴滝 二美子(なるたき ふみこ)
 鳴滝純一の養子。多大な犠牲を出すこともいとわず野望を推し進める養父に心を痛める。

平井 保昌(ひらい やすまさ)
 日本陰陽道の名家・土御門家の老陰陽師。秘術を尽くして宿敵たる加藤と渡り合う。

クラウス
 救世軍の医師。加藤に精神を狂わされた辰宮母娘の治療にあたる。

黒田 茂丸(くろだ しげまる)
 風水師。風水術を操り寺田、恵子と協力して加藤と戦う。

トマーゾ
 帝都東京の支配を目論むメソニック協会日本支部を牛耳る、130歳を超える謎のイタリア人。高齢ゆえに重い障害を患っているが、特殊な力を持つ宝石「世界の眼(オクルス・ムンディ)」で補っている。髪の毛を意のままに操ることができる。

大沢 美千代(おおさわ みちよ)
 ある人物の転生した姿として誕生し、前世の記憶に目覚めていく。

団 宗治(だん むねはる)
 オカルト知識やコンピュータ技術を駆使し、大沢美千代と協力して加藤の放つ水虎や式神と対決する。

土師 金凰(はじ きんぽう)
 土師家棟梁。団や春樹と協力して加藤と戦う。

梅小路 文麿(うめこうじ あやまろ)
 華族出身の人物。新時代のために天皇を人胆の力で生かし続けていた。

平 将門(たいらのまさかど 903~40年)
 平安時代の関東地方最大の英雄。京の中央集権主義に刃向かい関東を独立国家化したため討伐されたが、その没後もなお千年間、大手町の首塚の下で関東と帝都東京を鎮護し続ける大怨霊。『帝都物語』シリーズ全体の根幹をなす最重要人物。

佐藤 信淵 (さとう のぶひろ 1769~1850年)
 江戸時代末期の経世家、鉱山技術家、兵法家。理想郷の実現を目指し、平将門ゆかりの下総国印旛沼をはじめ内洋すべてを干拓する生産向上計画を提唱した人物。統治論書『宇内混同秘策』は神道家・平田篤胤(1776~1843年)の日本中心主義を内包しつつ全世界を征服するための青写真を描いた一大奇書で、この中で「東京」という名称が初めて用いられたとされる。

渋沢 栄一(しぶさわ えいいち 1840~1931年)
 明治時代の日本を代表する実業家で、第一国立銀行初代頭取を務めるなど金融体制の設立にも尽力した自由競争経済設立の指導者。子爵。
 帝都東京を物理的、霊的に防衛された新都市にしようと秘密会議を開く。

織田 完之(おだ ひろゆき 1842~1923年)
 三河国生まれの農政家で歴史学者。平将門の名誉回復に尽力した。
 豪農の出身で勤王派に加わり、桂小五郎や高杉晋作らと交友したが、明治維新後は新政府の農業・干拓事業を担当、特に印旛沼の治水事業に尽力した。明治二十五(1892)年の引退後は「碑文協会」を設立し、二宮尊徳や佐藤信淵の思想体系の顕彰活動に尽力した。

セルゲイ=ドルジェフ(ゲオルギイ・イヴァノヴィチ=グルジエフ 1866~1949年)
 アルメニア出身の民族解放運動リーダー。邪視を用いる超能力者。学生運動のリーダーに呼ばれて来日し、恵子や加藤と戦う。

幸田 露伴(こうだ ろはん 1867~1947年)
 小説家で、明治時代最大の東洋神秘研究家。膨大な魔術知識を駆使して魔人加藤と戦い、追い詰める。
 『一国の首都』と題した長大な東京改造計画論を持ち、後年には寺田寅彦とも親交があった。

カール・エルンスト=ハウスホーファー(1869~1946年)
 ドイツ帝国陸軍少将で地政学者。ミュンヘンに生まれ、1887年にインド、東アジア、シベリアを旅行し、1909年から約2年間、日本にも滞在し、秘密結社「緑竜会」に入会した。
 地政学(ゲオポリティーク)を戦争の実用科学にまで高め、ミュンヘン大学の教授・学長を歴任し、初期ナチズムの神秘的教養を形成する影の参謀となった。

森田 正馬(もりた まさたけ 1874~1938年)
 精神科神経科医で精神医学者。クラウスと共に辰宮母娘の治療にあたる。
 寺田寅彦が幼少期を過ごした高知県に生まれ、犬神憑きなどの憑霊現象を研究する。後に「森田療法」として知られる独自の精神病治療法を確立した。

大谷 光瑞(おおたに こうずい 1876~1948年)
 仏教浄土真宗本願寺派第二十二世法主。加持祈祷によるアメリカ・イギリス・ソヴィエト連邦の首脳陣の呪殺を画策する。

寺田 寅彦(てらだ とらひこ 1878~1935年)
 東京帝国大学の物理学者。渋沢栄一の秘密会議に出席して加藤と出会い、迫りくる帝都東京滅亡の危機を必死で食い止めようとする。
 日本を代表する超博物学者でもあり、大文豪・夏目漱石の一番弟子。物理学者でありながらも超自然や怪異への限りない興味を抱き続けた。

北 一輝(きた いっき 1883~1937年)
 国家社会主義を掲げる思想家・社会運動家。『日本改造法案大綱』を発表し革命を目論むがシャーマンでもあり、革命を阻害する大怨霊・平将門を倒すべく暗躍する。

西村 真琴(にしむら まこと 1883~1956年)
 北海道帝国大学の生物学教授。帝都東京の地下鉄道路線の工事現場に巣食う鬼を人造人間「学天則」で退治する。

大川 周明(おおかわ しゅうめい 1886~1957年)
 超国家主義を掲げる思想家。帝都東京の奥津城に眠る怨霊の正体を探る命を加藤から受ける。

石原 莞爾(いしわら かんじ 1889~1949年)
 大日本帝国陸軍中将。『世界最終戦論』を掲げ、北一輝と同じ法華経オカルティストでありながらも、二・二六事件にて立場の違いから北と対立する。

甘粕 正彦(あまかす まさひこ 1891~1945年)
 満洲国警察庁長官。東条英機の子飼いの部下であり、加藤やトマーゾと関わり満州国で暗躍する。

辻 政信(つじ まさのぶ 1902~61年以降消息不明)
 大日本帝国陸軍将校。戦後、東南アジアに潜入しドルジェフと闘う。

愛新覚羅 溥儀(あいしんかくら ふぎ 1906~67年)
 中国・清帝国最後の皇帝にして満州国皇帝。大日本帝国陸軍関東軍の監視下で疲弊し、オカルティズムに傾倒するようになる。

中島 莞爾(なかじま かんじ 1912~36年)
 大日本帝国陸軍少尉。雪子と恋仲となるも、北一輝に傾倒して二・二六事件に参加する。

角川 源義(かどかわ げんよし 1917~75年)
 帝都東京の怨霊鎮魂のため、人骨を砕いた灰を撒き続けた。

角川 春樹(かどかわ はるき 1942年~)
 源義の長男。角川書店社長となるも突如出奔し、奈須香宇宙大神宮の大宮司として東京の破滅を見届ける。

三島 由紀夫(みしま ゆきお 1925~70年)
 中島莞爾の怨霊に取り憑かれていた大蔵省官吏。後に小説家に転向する。自衛隊に体験入隊した際に加藤から修練を受ける。

フサコ・イトー(重信 房子 1945年~)
 ドルジェフの側近。

藤森 照信(ふじもり てるのぶ 1946年~)
 路上観察学会の建築史家。鳴滝の依頼により震災の瓦礫を発掘する。

滝本 誠(たきもと まこと 1949年~)
 団の友人のジャーナリスト。政府の陰謀を察し、行動する。


映画化・アニメ化・マンガ化作品
映画『帝都物語』(1988年1月公開 135分 エクゼ)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』の映画化作品。日本初の本格的ハイビジョン VFX映画。加藤保憲の役に、当時小劇場俳優で庭師として生計を立てていた嶋田久作が抜擢された。登場する人造ロボット「学天則」の開発者・西村真琴の役を、真琴の実子の西村晃が演じている。 監督・実相寺昭雄、脚本・林海象、製作総指揮・一瀬隆重、特殊美術・池谷仙克、画コンテ・樋口真嗣、特殊メイク・原口智生、コンセプチュアル・デザインH=R=ギーガー。音楽・石井眞木。製作費10億円、配給収入10億5千万円。

映画『帝都大戦』(1989年9月公開 107分 エクゼ)
 原作小説『戦争編』を原作とするが、登場人物の設定などが変更されている。監督は当初、香港映画界の藍乃才が務める予定だったが直前に降板したため、前作『帝都物語』でエグゼクティブ・プロデューサーを務めた一瀬隆重が製作総指揮と監督を兼任した。脚本・植岡喜晴、音楽・上野耕路、特殊効果スクリーミング・マッド・ジョージ、特殊メイク・原口智生。配給収入3.5億円。

映画『帝都物語外伝』(1995年7月公開 89分 ケイエスエス)
 小説『帝都物語外伝 機関童子』を原作とするが、内容は大幅に異なる。監督・橋本以蔵、脚本・山上梨香、主演・西村和彦。

OVAアニメ版(1991年リリース 全4巻 マッドハウス)
 原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』のアニメ化作品。加藤保憲の声は実写版と同じく嶋田久作が担当した。脚本・遠藤明範、キャラクターデザイン・摩砂雪、シリーズ監督・りんたろう。作画スタッフには鶴巻和哉、樋口真嗣、前田真宏、庵野秀明らが参加していた。

コミカライズ版
川口敬『帝都物語』(1987~88年 小学館『ビッグコミックスピリッツ』にて連載)
 映画『帝都物語』公開に合わせての連載で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。未単行本化。
藤原カムイ『帝都物語 Babylon Tokyo 』(1988年 角川書店)
 映画『帝都物語』公開に合わせての刊行で、原作小説の『神霊篇』~『龍動篇』をマンガ化している。
高橋葉介『帝都物語 TOKIO WARS 』(1989年 角川書店)
 映画『帝都大戦』公開に合わせての刊行で、原作小説の『魔王篇』と『戦争篇』をマンガ化している。


 ……はいっ、というわけでございまして、昭和末期の幻想小説界に屹立する伝説のサーガ『帝都物語』のご登場でございます。
 なんで今さらっつうのは、そりゃもう私んちの「積ん読」の中でふつうに順番が回ってきたから、ただそれだけ。何十冊も控えているベンチの中でもぶっちぎりの最古参作品で、未読でもなく再読という形になるのですが、なんせ読んだのが四半世紀以上前の中学生時代なので、ほぼ内容を覚えてない……なので、今回あらためて最初っから最後までしっかり読んでみようというこころみです。

 上の概要説明にもある通り、一般に映画などのメディア化作品でよく知られているお話は『帝都物語』全体のほんの前半だけですし、原作者の荒俣先生は引き続いて『帝都物語』の前日譚、番外編、スピンオフ作品を出している状況です。ここらへんの作品世界のいびつな広がりは、鈴木光司先生の手を離れたり戻ったりしている山村貞子姐さんの『リング』シリーズの大先輩といった感じなのですが、昭和生まれの架空キャラクター、しかも悪役として稀有な存在感のある「加藤保憲」の魅力の原点を読み直してみたいと思います。俳優・嶋田久作さんの影響を受けていない加藤保憲オリジンも、これはこれで魅力的な人物なんですよね!

 時代を超えても愛され続けるキャラクターって、いいですよね。
 こういう話をすると私が必ず思い出してしまうのは、これ、このブログで当時つづっていたのかどうかは覚えていないのですが、特撮界にも甚大な貢献をしてくださったあの天才美術家・韮沢靖さんのトークイベントでのやり取りです。
 2012年だったか13年だったか、新宿かどこかのなんでもないビルの一室で開かれていたイベントだったのですが、質問コーナーの中で私が不遜ながらも韮沢さんに(なんか「先生」と呼べないあたたかみのある方でした)、「魅力的な日本発祥のヴィランは誰ですか?」と聞いたことがありまして、それに対して韮沢さんが挙げられていたのが「ばいきんまん」と「加藤保憲」だったと記憶しているのです。ばいきんまんはすでに描いたことがあると語られていたのですが、加藤は描いてみたいね~、みたいに語っていたような。なつかしいな~。雨の日のすてきな催しでした。
 そういえば、韮沢さんは加藤保憲とは、映画『妖怪大戦争』(2005年)でニアミスしてましたよね。韮沢さんのキャラデザインによる21世紀の加藤保憲、観てみたかったなぁ。

 嶋田久作さんは現在も現役バリバリですし、嶋田さん以降も加藤を演じる俳優さんは散発的に出ている状況ではあるのですが、派生作品へのチョイ出演とかじゃなくて、ちゃんと新鮮な「怪優」さんが作品の中心ど真ん中に入ってリファインされた『シン・帝都物語』が、再び世に生まれてもいいような気もするんですけどね~。庵野さんも樋口さんも関わりのある作品ではあるので、次、どっすか!?

 そんなこんなで、この企画では次回から、小説の方の『帝都物語』とその後続作品をメインに、ひとつひとつを読んでの感想をつったかたーつったかたーと記していきたいと思います。なつかしさ半分の記事になりますが、現代への影響も非常に大きいエバーグリーンな作品であります。古きを尋ねて新しきを知ろうということで、ひとつ!

 カトォが、く~るぞォ~!! 宿題やれよ!!
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