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長岡京エイリアン

日記に…なるかしらん

ヘンなタイミングですまん!! 『大鹿村騒動記』がよかったから

2011年07月30日 23時05分38秒 | ふつうじゃない映画
 おーぱっきゃまらーどーぱっきゃまらーどーぱーおーぱーおーぱんぱんぱん、っときたもんだぁ。
 どもども、こんばんは。そうだいでございます~。蒸すわねぇ!

 いや~、本来ならば、今回の『長岡京エイリアン』のお題は順当に「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の続きのはずだったのですが……

 なんということか! 昨日やらかした「桜木町恨道中2011入店(さくらぎちょううらみのみちゆきとうぇにいいれぶん・にゅうてん)」が、思いの外みのりの多いハイキングになったので、なんともタイミングの悪いことながら、モーニング娘。総まとめの真ん中にどすーんっとおいちゃう感じでこのあたりのことをつづってみたいと思います。
 さらにタイミングの悪いことに、うすうす今月の中ごろから「やば……もしかして?」と思ってはいたのですが、この中断のおかげをもちまして、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の堂々完結は、めでたく実に中途半端なかたちで来月8月にズレこむこととあいなりました。
 中途半端も中途半端、8月に入ったらたぶん、2~3回くらいで終わっちゃうからね。なに、この「チョビッとあまっちゃった。」ていう月またぎ感!?

 でも、しょうがないのよ~。哀しいけど、これ、個人ブログなのよねぇ。
 きれいにやるのならば、昨日のことはまた、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」が大団円をむかえてからゆっくりやればいいのかも知れませんが、そんな理性的で器用なことはわたくしにはできません。

 申し訳ない! でもねぇ、よかったのよぉ、特に桜木町の映画館で観た映画『大鹿村騒動記』が!!


 最近はもう毎月のようにやることにしている、「桜木町を最終ゴールとした、東京方面から見て約15キロ手前の駅から徒歩で向かう」という「桜木町恨道中」。

 自分で言うのもナンですが、まったく意味不明です。
 普通の方が聞いたら「なんで、また……」と私の正気を疑うでしょうし、シャーロック=ホームズが聞いたら、絶対に私がなんらかの『赤毛連盟』なみのなぞの犯罪計画を進めていると確信するでしょう。探偵さん、おらぁなんにもやっちゃあいねぇよ~。

 もうね、タイトルにもあるとおり、「恨み(やつあたりです)」が最初のきっかけになっていたこのハイキングなのですが、もうそんなことはどうでもよろしい。これをやることの明確な目的は「自分の中の桜木町のイメージを良くする」ということだったのですが、それはとっくの昔にクリアされてしまっております。それでも続けてるんですから、もうやること自体が楽しい月課(日課じゃないから)になってるんですね。たーのしいーっ。股関節がガタガタになるけど。

 そうそう! 毎月15~20キロ歩いてるとね、足はだんだん丈夫になるから血マメができたり筋肉痛になったりはいちいちしなくなるのですが、とにかく股関節のフル稼働感はぬけないんですねぇ。もう自分の身体がガンプラになった感じ。スポーンッ、カラカラ……って足が抜けそうになります。アスファルトの地面は固いからね~。

 今回は東急東横線の「綱島駅」(神奈川県横浜市港北区綱島)を下車してから桜木町を目指して出発しました。直線距離にして11キロ。
 県道2号線、いわゆる「綱島街道」を南下して桜木町に向かうのは今回で2度目なのですが、昨日あたりは「雨が降る雨が降る」とさんざん予報されていたので、そんなに暑くなることはよもやないだろうとタカをくくって傘を片手に千葉を出発しました。

 かつて劇団に所属していた時には、東京での公演のためはもちろんのこと、なにかしらの用事で電車を使う機会も多かったのですが、最近はこんなふうにむりくり自分で予定でも作らないと、電車に乗ることはめったになくなっちゃうのよね。
 そういうこともあるので、たまに乗ると電車の中におもしろい人でもいないものかと、ついつい同じ車両の面々をそれとなく視界に入れてしまうんですね。いや、「それとなく」よ!? あからさまにやったら捕まっちゃうご時世ですから。

 そしたらね~、あったあった。ちょっと目にとまった不思議なやりとりが。

 これ、私のストーリイテリングでみなさまにどれだけ伝わるのかは非常に不安なのですが、私はほんっっっっとに! おもしろかったのよ。


 その時、車両はなかなか混んでまして、座席はすべて埋まっていて吊革で立っている人数も多くなっていました。

 ある駅に着きまして、座席にすわっていた50代なかばのスーツ姿の会社員らしい男性が立ち上がり、あわただしく下車していきました。
 その時に、彼が去ったあとに座席にポツンと残されていた扇子を、前に立っていた上品なおばさまがた2人が見つけたんですよ。たぶん、座っていたうちに彼のポケットからすべり落ちてしまったのでしょう。

「(互いに顔を見あわせて)あら、これ……」

 ご婦人のおひとりはあわてて扇子を手に取りますが、下車した会社員の姿はすでにホームの遠くへ。
 困りました、降りて渡そうとしても追いつけるかどうかわからないし、だいいちご婦人の足で電車が出発するまでの短いあいだに車両に戻ってこられるのかどうかもわからない。
 扇子を持って当惑するお2人。そうしているうちにも会社員の姿は遠ざかり、電車の停車時間も刻々と過ぎていきます。
 どうすればいいんだ!? ささいなことながら微妙な空気が車内に流れます。

 するとその時! なんと、そのお2人の真ん前、つまり、扇子を置き忘れた会社員の隣の座席にすわっていた青年がスクッ!と立ち上がった。
 いかにもふつうの大学生風。メガネをかけてイヤホンを耳につけたさわやかな男性です。

 まさか。扇子を受けとってホームに降り立ってくれるというのか!? おのれの身を挺してこの難局を打開する。キリストかこやつは?
 車内の空気が「おお……」と引き締まるなか、青年はご婦人にこう告げました。

「(自分の座っていた場所をさして)あの、よかったら座ってください。」

 !!!! 関係ねぇ!!

 ぷしゅ~。その直後、ふつうに電車の扉はしまりました。

「あら……どうも。」

 かなり釈然としない表情を浮かべたまま、ご婦人2人は青年のどけた座席、つまり会社員のいたスペースもあわせて2人分のあいた場所に腰かけました。所在なげに男ものの扇子をにぎりしめながら。

 そうか青年……イヤホンしてたし、扇子のくだりはぜんっぜん見てなかったのね。
 あのさ。好意はありがたかったんだけど、「その好意」は今はいらなかったんだ! いや、うれしい! うれしいよ!?

 ……わかります? このズレズレ感。私もう、たまんなくってさぁ!!

 あのねぇ、私、「空気読め!」とかっていう言葉、好きじゃないんですよ。私が空気読めないから。「空気」ってなんだよ、って話で。
 このエピソードにはげしく感じ入った私はあらためて認識しました。「私、空気読めない人すき!」おもしろいねぇ~。


 まぁこんな感動もありつつ、綱島駅を下車して始まった今回のハイキングだったのですが……

 雨、ぜんっぜん降らなかったね。あっちいし。

 思い出しました。綱島街道は起伏が大きいのよ! 「山」って言っていいかどうかわかんないんですけど、大倉山と菊名で2ヶ所のアップダウンがあるんでした。
 直線距離は11キロなんですけどね……やっぱそれなりに疲れちゃったなぁ~今回も。
 時間はだいたい2時間くらいでしたね、桜木町まで。まぁタイムは上々だったでしょうか。雨降ると思ったんだけどなぁ。

 で、恒例行事として桜木町からさらに片道2キロ歩いて「あるお店」に行くというミッションも遂行したのですが、こっちはやりはじめてから4回目ぐらいでしょうか。なんと今回はじめて「成果」らしいものが得られたんですよ!

 夕方6時ちかくにお店に行ったら、開いてた! お店が! いた! 店の方!
 うれしいねぇ~!! やっと人に会えたね~。

 私の「計画」とは、そのお店で買い物をすることです。そして、ついでにそのお店の「さるお方」に会うこと。うむむ、買い物とその方に出逢うことは、どっちも同じくらいに重要な目的となっています。
 このへんの話はいつこの『長岡京エイリアン』で公表することができるのか。「買い物」の話と「出逢う」話、これ、お互いまったく別の案件として秘密裏に進めていきたいので今は明らかにできないんですけど……まぁ、なんらかのおもしろい展開があったらご披露ということで。

 んで、待望の「入店」に際して、そのお店にいらっしゃった方は、「そのお方ご本人」ではなかった。ひっぱるよねぇ~!!
 昨日はお店にいた方にもろもろの商品説明をしていただき、近日中にまた私が出向いてあらためて初のお買い物としゃれこむということとあいなりました。
 そして、その日には「さるお方」もそのお店にいらっしゃると。

 ……緊張するなぁ……おぼえてるかな、私のこと。いっそ、忘れてくれているほうが……

 ドキドキするよね~! おとこ31歳、眠れない日々が続くよね~。或る阿呆の夜はふけてゆきます。


 でよォ、やっと本題に入るんだけどよォ、話はそのあと観た映画のことなんだィ。

 いつもどおり、また桜木町に戻って、駅の近くにあるビル内のシネコン「ブルク13」で映画を観ることにしました。食べたジェラートは「ピンクグレープフルーツ」。おいしゅうございました。
 で、ちょうど上映時間がぴったしあっていたので選んだのが!

『大鹿村騒動記』(監督・阪本順治 主演・原田芳雄)

 いやぁ~……これだけは観ておきたかった。「特別料金1000円」という設定も非常にありがたかったし。私はずかしながら、実は『どついたるねん』や『顔』で有名な阪本監督の作品をまともに観るのは初めてだったんですよ。

 おもしろかったねぇ~!!
 これは断じて言わせていただきますが、奇しくもついてしまった「名優・原田芳雄の遺作」という付帯条件は私の評価とはまっっっったく!! 関係ありません。
 だいいち、この作品に登場する原田さんにそんなにおいはひとっつもしない。実際、撮影がおそらく去年の秋であるらしい描写が随所に見られるので、闘病中だったとはいえ体調も今年とはだいぶ違っていただろうし、スクリーンに映っている原田さんはもう、ノリにノッた「原田芳雄ここにあり感」全開で長野県の大鹿村(おおしかむら)という実在の村を縦横無尽に駆け回っていました。

 かっこいいですよ~。だって、70歳をこえた老人であるはずの人が、嵐の吹きすさぶなか、

「たかこォオ~! たァかァアくうゥォオおお~!!」

 と絶叫しながら、いなくなった妻の姿を捜して疾走するんだぜ!? くうぅ~。

 この作品はなにかと、およそ300年前から大鹿村に実際につたわっている伝統芸能「大鹿歌舞伎」が物語の中心にすえられているという部分が話題となっていますし、事実それは確かにそうなのですが、私がとにかくおもしろかったのは、その年に一度だけ開催される農村歌舞伎にいたるまでに流れる大鹿村の日常の描写でした。

 秋の収穫を祝う行事として村人が総出で役者も裏方もつとめる歌舞伎が興行されるわけなので、山の木々は紅葉に美しく色づき、ある人は農作業の追い込みにいそしみながら演じる役のセリフをつぶやき、ある村役場の役員は「地デジアンテナつきテレビ」への交換をスピーカーで呼びかけながら軽トラックで村をのったらのたらと練り走る。
 村全体は2045年に敷設されるという「東京・大阪直通リニアモーターカー」の停車駅を誘致するかしないかという問題で二分されているものの、

「ンなこたァいいから、はやく稽古しようぜェ。」

 という看板役者の原田さん(ふだんはバイク旅行者向けのシカ料理食堂を経営)の一言でしぶしぶ会議をおひらきにするというぐだぐだ感。

 そういった、300年の伝統と今そこにある21世紀の問題というあたりが混在しているようでぱっかり分離している大鹿村に、原田さんの元親友(岸部一徳)と、彼と駆け落ちして失踪していたはずの原田さんの妻(大楠道代)がふらっと戻ってきたところから映画の物語は始まるわけなのですが。

 いやぁ~、いい喜劇を観ました。
 「伝統」と「村の現状」と「過去のロマンス」という、たった今さしせまって困っているわけではないんだけど、確実に頭痛のタネになっている3つの問題の並立にほんろうされる面々の姿がおもしろいおもしろい。

 このあたりの「困っちゃいねぇんだけど……困ったなぁ。」という「立ちつくし感」から喜劇を生み出すことは、なまなかな演技力の俳優さんには不可能な繊細な作業であるはずなのですが、それをなんなく演じきり、観客に安心して肩の力を抜かせてくれる俳優陣には本当に脱帽でした。
 原田・大楠・一徳の三角関係はもちろんのこと、三国連太郎、石橋蓮司、小野武彦、佐藤浩市、松たか子……三国さんと浩市さんは父子役ではありません。
 物語の重要なキーマンとなる大楠さんと三国さんの2人はちょっと他の人たちとは違う立ち位置なのですが、それ以外の村人のみなさんはとにかく、決して「気を抜いている」わけではない、「力を抜いたように見せる演技」の競演を見せてくれていました。予算ばっかガチャガチャかけた作品では観られない牧歌的な雰囲気ができていてとってもラク~に楽しめました。

 特に良かったのがねェ~、やぁっぱり、でんでん!!
 でんでんさん、いいわぁ~。『冷たい熱帯魚』を観てしまった人って、けーっこう、「まさかとは思うけど、この映画でもまたでんでんさんが『裏でんでんコード the BEAST』を発動させるんじゃないかとな~んか気になっちゃう」症候群にかかっている方、多いんじゃないでしょうか。私はテキメンにそうです。
 でも、もちろんそんなわきゃあないわけなんですが、この映画でのでんでんさんはボケもするしツッコミもするし、とにかく「ごくふつうの良識あるトボけたおじさん」ならではのフットワークの軽さを発揮させています。リベロ。うん、『冷たい熱帯魚』でああいった役を演じきった実績がついた分、今のでんでんさんは現在の日本映画界でも最高の「おじさん俳優リベロ」になっています。

 まぁとにかくね、いろいろ言いましたけど、この映画の良さはとにかく「スケールは大きくなくても現場の一致団結感がすばらしいアンサンブル」! こういうことかと思います。
 もちろん「主役・原田芳雄」や「農村歌舞伎の舞台裏」もいいわけなんですけど、それ以上に語ることができる良さがもっといっぱい散らばっている豊かさがあります。

 それでも1ヶ所だけあげさせてもらえれば、映画後半の要所要所で重要となってくるキーワードの、

「仇(あだ)も恨みも これまで これまで」

 という言葉は、原田さんの持ち味と歌舞伎のヒーローのあり方が見事にかさなりあった(決して「融合」ではない)素晴らしいセリフになったと思います。

 これは原田さんが演じる歌舞伎の主人公「悪七兵衛 景清」(あくしちひょうえ かげきよ)の名台詞で、

「今までこだわり続けていた、自分にとっての正義だった復讐心も個人的な恨みも、きれいさっぱり捨ててやる。」

 という意味の、いかにもヒーローっぽい割り切りの爽快な意思表示なのですが、これをあの原田芳雄が発すると、

「ンなこと言ったって、そんなにあっさり忘れられるワケねぇだろ、ばかやろ。」

 という、実に! じっつに愛らしく人間らしい表情のつぶやきをありありとにじませたセリフになるんだからいいんだよねェ。矛盾じゃなくて、それが人間なの! というメッセージがじんじん伝わってきます。感動。

 私は大笑いさせてもらえたなぁ。一緒にいたお客さんも、多くは私よりも年上に見えるご夫婦やサラリーマンだったんですけど、みんなでワハハッと笑うシーンはいたるところにありました。
 もしかしたら、若い人、あるいは山奥の村という設定にピンとこない人が観たら、「よくわかんないなぁ。」や「ぬるくて飽きちゃう。」という向きもあるかもしれません。それに反論するすべは「よく観て!」と言うことしかないのですが、少なくとも私は、この『大鹿村騒動記』を観て笑うことができる人間に自分がなれたことを非常にうれしく感じています。トクしてんだもんねェ~!

 若いと言えば、このレベルのアンサンブルに加わることができる俳優さんが、松たか子さん「以上」の年齢に限定されてしまっていたことは、それ以下の年齢の私としては多少は残念な気はしました。若い人としては瑛太さん(28歳)も出演しているのですが、ほとんど他の俳優さんとからまないカメオ出演のようなあつかいでしたし。
 もう1人、これはもう見るからにおさない冨浦智嗣(さとし)くんという20歳そこそこの青年がけっこうな重要度で出ているのですが……まぁ、これからの成長に期待ということで!
 人によっては、この冨浦くんが演じている役柄の複雑ゆえの未熟さに「キツいなぁ……」と感じる人もいるかと思うのですが、私はそこらへんは苦痛にはなりませんでした。
 なぜなら私自身が、冨浦くんの役柄、というか冨浦くんがかかえている身体的特徴にはげしく共感できる部分を持っているからなのです。「イケメン」っていう部分じゃないよ!?


 『大鹿村騒動記』、おもしろかったですよ~。希代の「原田芳雄俳優」原田芳雄の一世一代の花道でございます。なるべく多くの人数で笑って送り出してさしあげましょ~!
 原田さんの生涯最後のショットとなったラストカットは、実に原田さんらしい味わいのものになっています。いいよ~、ぜひともスクリーンでご覧ください。そして、あなたも「はへ?」ってなって。


 ということでいつにない収穫の多さで終わった今月の桜木町ツアーだったわけなのですが、

 来週、また桜木町に行きます。「あのお店」でお買い物をするために。そして「あのお方」に逢うために。

 次はどの駅からどのルートで行こうかナ~? あぁ、緊張する。
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風の吹いた日 ~桜木町恨道中と『さや侍』~

2011年06月24日 22時35分29秒 | ふつうじゃない映画
 はいど~うもっ。そうだいです。

 いや、暑いよ……梅雨じゃなかったのかよ。2~3日連続でむしむしむしむし。カンベンしてくださいよ~。


 そんな中でもね、昨日やっちゃったんですよ、予告通りにアレを!

 やっちゃった! 「桜木町恨道中2011年 狂風(さくらぎちょううらみのみちゆきとうぇにぃいれぶん きょうふう)」を!!

 感想はもう、「なんでよりによって昨日にやらかしてしまったんだ……」のひとことにつきます。
 昨日はねぇ、暑いのもひどかったんですけど、もうなによりもキツかったのが「強風」!!

 今回も「やるたびに出発駅を変えて少しずつ桜木町に近づけていく」というルールにのっとりまして、

「京浜急行線 六郷土手(ろくごうどて)駅」

 から出発いたしました。六郷土手駅は「京急線東京最南端の駅」ということでつとに有名、じゃないね。
 相変わらずゆっくり運転の各駅停車に乗りまして、2~3回の急行通過待ちをへて到着した六郷土手駅は、さすがに東京都内の駅舎なので「ボロい」ということはなかったのですが、平日の午後ということもあってか降りる人はまばらで、おりからの節電のためにかなり屋内が薄暗くなっている雰囲気もあいまって私に妙な不安をいだかせるのに充分な説得力をもつものがありました。

 そう、実は今回、私は出発して間もない段階で、

「今回はたぶん、楽しいハイキングにはならないかもしれん……心してかかろう。」

 という不吉な予感がしていたのです。足のひらが大変なことになったり2時間豪雨にうたれながら歩いたりと、好きでやってないのなら即効で実家の家族に電話をかけたくなるような数多くの苦難(っぽいプレイ)を乗り越えてきた「桜木町恨道中」だったのですが、こんなことは今まで1回もなかったよ。

 別に暑すぎてヤバイ、などと考えたということではありません。いや、まぁ確かにやってみたらヤバい暑さだったわけなのですが、出発したお昼1時の段階では、まだ私のいる千葉はくもりがちでさほど気温が上がるようには感じられなかったのです。
 しかし、風だけはその時からビュンビュン吹きすさんでいたのです。


 そう、風。


 私が不吉な予感をいだいたのも、その風が原因でした。

 これからJRを使って東京に行くぞと思い、もよりの駅に入ってホームで電車を待っていたところ、そこにひときわ強い風が吹き抜け……


 お、おらぁ……おら見ちまったんだ、パンのチラを! じょ、じょじょ、女学生の!!


 普通の子だったんだけど、ほんと! ほんとにマンガみたいに一瞬だけひるがえって、あ、あざやかな、あざやかなICHIGOがらが、がらがらがりんぺいろ。


 ま、まま、待ってくれ! 誤解だ、誤解なんです。いや、見たのは確かだから誤解じゃないんだけど。
 こっちは見るためになんの努力もろうしてないのよ!? それなのに偶然バッチリ見ちゃったんだよ。

 私はつねづね、階段をのぼる時に前にいるミニスカートの女性が、自分のおしりに手をまわしたりバッグをそえていたりしているのを見ては、「あぁ、パンチラがいやなのね、じゃあそんなに短いのはかなきゃいいんじゃん!」と思っていたのですが、

 今こそ真実に気がついた……ミニスカートのパンチラはパンチラにあらず!!
 なぜならば、真のパンチラとは、風をはらむことができる充分な長さをもったロングスカートが、強風という「神のおぼしめし」を受けてひるがえる一瞬の奇跡現象だからなのである。
 だからね、ミニスカートのパンチラはただの「人間による簡易模造品」! 大自然の決断を必要条件とする「真のパンチラ」とはどだいスケールが違うのです。


 ……もし、もしかしたらの話よ? もしこの『長岡京エイリアン』を読んでらっしゃる方の中に女性の方がいらっしゃるとしたら……ひく?


 とにかくですね、昨日の体験に、私は素直に感動してしまいました。いやらしいなんていうキモチは毫もわきおこらないもんなんだなぁ、「本物」は。

 かつて、「観光旅行」の「観光」という文字の本来の意味とは、「光を観る」。つまりは、「人ならざる、日常ならざるもののパワー(光)」をさずかるためにふだん行かない場所へおもむくという重要な意味合いがあったのだといいます。
 そういう意味では、私が昨日体験したパンチラは、しょっちゅう使っている駅のホームでの出来事であったとはいえ、まさに本当の意味での「観光」だったのではなかろうか……とかなんとか、ごたくをならべてみてももう遅い? 俺オワタ?

 そんなわけで、『長岡京エイリアン』はパンツ盗撮に反対します。

 女性の心に重い危害を加える犯罪行為であることも当然ながら、それは「神の意志を自分勝手に捏造しようとする最大級の冒涜行為」です。神に近づこうとしてよけいに神から遠ざかる。愚の骨頂よ!
 嫌な死に方をしたくねぇんだったら、人様のパンツをのぞこうなんていうことは自分からするもんじゃあねぇ。のぞかぬパンツにたたりなしだぜ。


 話をもとに戻しますと、出発のでばなでそんな奇跡体験アンビリバボーをくらってしまった私は、即座に、

「天運つきたり!! 今回の桜木町ハイキングは成果はないであろう。」

 と横山光輝調で予感してしまったのでした。そして、それは実際にあたってしまいます。


 ……っていう、作り話でした!! いやーねぇ、パンチラなんて見るわけないじゃないの、ヘンタイじゃないんだからぁ~。冗談よ冗談! 女性の方、びっくりした? うそうそ!! みんなうそよ!?
 
 これでどうかな。ダメ? やっぱ手遅れ?


 まぁ~実際ね、六郷土手から桜木町、そしてそこからさらに「あるお店」に行くという今回のハイキングはきつかったね。
 暑いし、基本的にず~っと向かい風だし。
 交通標識が強風でたわんでるのは何回も見ましたよ。砂ボコリもひどかったし、みなとみらいあたりの浜風が特にキツくて、私なんか体重のあるほうではないので、マイケル=ジャクソンのアレみたいに基本的に前にかたむきながらの姿勢で歩いていました。
 結局、歩いたトータルは20キロで、飲んだペットボトルは大小とりまぜて3本か。汗をふくもの持ってってて本当によかった。
 もっとも徒労に感じてしまったのは、例の「お店」がやっぱりやってなかったということね。さすがにこれは、どうやら私のそのお店に対する認識が甘かったようなので、まだ桜木町に行ったらそのお店に行くということは続けるけれども、もうちょっと別の手も打たなきゃいけないかなという気になってきました。こっちもそれほどのんびりしてなれない事情があるんでね。

 つうことで、今回の桜木町行も、成功はしたけど収穫はナッシング。ただ、2~3時間炎天下に向かい風のなか歩いても筋肉痛どまりで済む身体になっているということがうれしいですね。私の足のうらも、最初のあの惨劇からくらべるとずいぶんと頼もしくなったもんだよぉ。


 で、恒例ながらミッション終了後は、桜木町の映画館「ブルク13」で映画鑑賞。
 抹茶ジェラートをいただいたあとで今回観たのは、うわさの『さや侍』(監督・松本人志 主演・野見隆明)!! うおお~。

 正直な話、今回は待ち時間中ずっと眠くてしょうがなかったので、「観てる途中で記憶なくなるかも……」と思っていたのですが、うとうとするヒマもなく見入ってしまいました。

 現在、家にTVのない私は映画の批評などの情報にだいぶうとい状況が続いており(雑誌もあまり読まないし、ラジオでも映画批評の番組をやっている時間は働いていることが多いため)、そういうときに頼りになるのは「知り合いの感想」だけになってしまうのですが、『さや侍』の場合はどうだったかといいますと、みんながみんな「う~ん。」と沈黙する解答だったんですね。ただ、期待感があったのは「まず観てもらわないと話ができない。」という「う~ん。」だったことなのです。いいですねぇ。おもしろそう!
 余談ですが、私の身のまわりでは、松本監督の作品は「『大日本人』は観たけど『しんぼる』は観ていない。」という人が圧倒的に多いです。実はかくいう私もそうでして……早くDVDが観られるようになりたい。

 結論から申しますと、『さや侍』は、おもしろかった! 私は非常に楽しめました。

 映画が始まる前、私は意外とお客さんに大人の方(40~50代)が多かったのを見て不思議に感じていたのですが、観終わった後は非常にそのことに納得がいきました。
 いろいろ考えたくなる点はあまたあったのですが、残り30分くらいからの展開は思った以上にストレートに監督の言いたいことが直球で伝わってくる流れになっていて、素直に感動できました。

 感動! そうなのよ、『さや侍』を楽しめるかどうかは、この映画が「感動できる作品である」という事実に観る人がどう対処できるかによるんですね。受け入れられるかそうでないか。

 この映画は「しっかり泣ける映画」です。
 ただし、この映画の監督が「あの松本人志」であるということ、そしてこの映画にも天才松本特有の「はしょり感」があることが観る人にとって障害になってしまった場合、せっかくの『さや侍』もその人にとっては「どう観ていいのかわからない笑えない作品」ということになってしまうのではないかと。


 ところで、私は人に「あなたがいちばん好きなお笑い芸人は?」と問われたら、迷うことなく、

「1998年までの松本人志。」

 と答えます。要は、坊主頭にならずに独身貴族でタバコをくゆらせ不摂生にふとり、全身全霊をこめて『一人ごっつ』や『VISUALBUM』シリーズにうちこんでいたころまでの松本さんです。

 比較したところでしょうがないのですが、今現在活躍している松本さんはもはや私の中では勝手ながら別人となっており、松本さんが結婚しようが禁煙しようが病気療養しようが特に気にはならず、TVが観られなくなってもなにひとつ困ることはありません。
 そして、そういう気持ちが私にとって悪く反応したのが『大日本人』(2007年)でして、「松本の笑い」を馴れない映画の世界で全盛期のように自由自在に提示しようとして苦戦し、最終的に映画という手法を放棄してしまったその姿に、私は少なからぬ失望を感じてしまいました。
 その影響で『しんぼる』にも二の足を踏んでしまったわけなのですが、『さや侍』は観て本当によかった。

 『さや侍』は、映画になっている! 細かいデティールをあげつらって「時代劇がわかってない」とか「キャラクターの考えがわからない」とか言うのは簡単ですが、一本しっかりと筋が通っていることをちゃんと見れば、この映画は見事に成立していると言いきれるはずです。

 つまるところ『さや侍』は、「ダウンタウン松本人志」でない「映画監督松本人志」が初めて誕生した作品なのではないかと。
 ダウンタウン松本人志は間違いなく「笑いの鬼」であり、『さや侍』も「人を笑わせるということ」にこだわりまくった内容の作品になっています。

 でも、『大日本人』やそれまでの無数の名作コントの中にあった「これが最高の笑い。これで笑えんヤツは知らん。」というスタイルではなく、

「人に笑ってもらうって、どういうことやと思う?」

 ということを問いかけてしみじみ考えさせてくれる『さや侍』は、間違いなく松本さんの新しい闘いが始まったことを高らかに告げるものになっていると思いました。

 他人にたとえて言うのもどうかと思いますけど、小説の『たけしクン、ハイ!』を読んだり映画の『キッズ・リターン』を観たりして、
「ビートたけし、つまんねぇぞ! タケちゃんマンやれ!」
 って言う人はもういませんよね。いてもおもしろいけど。
 『さや侍』をもって、このくらいに「映画監督松本人志」は「ダウンタウン松本人志」から独立した存在になったんじゃないかと感じたんですね、私は。 

 いや~しかし。「人の親になる」って、こんなに人を変えるのね……

 何をするにしてもカミソリのように鋭利でニトログリセリンのようにデンジャラスだった「あの松本人志」は変わらず大好きなのですが、今はただ素直に、なるべく多くの人が『さや侍』を観てくれることと、松本監督の「次なる一手」を期待したいと思います。

 ほんとにいい映画だった。
 私は1時間半くらいある映画のうち、たった1ヶ所でもいいから心にひびく笑顔があったらもうそれで充分だという感覚があるのですが、ラストシーンで主人公の野見さんが見せた笑顔は最高でしたね。泣けるねぇ、愛だねぇ。
 あと、私は役者としての板尾創路さんは特に名優だとは思わないのですが、父をたよりなく思いながらも誰よりも強く心配している娘役の熊田聖亜(せあ)ちゃんとのやりとりでは素晴らしい演技を見せていたと感じました。実際の父親役である野見さん以上に「父」だったその姿は、「人間・板尾創路」の人生の彫りの深さを見事に反映したものだったと思います。いい!!


 はいっ。ということで昨日は、メインの桜木町ハイキング自体はさんざんでしたが、奇跡のパンチラに『さや侍』にと、非常に収穫の多い1日となったのでした~。

 あ……あの、パンチラはうそね、うそうそ、作り話! ハハハ、ハハ……
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粗でも野でもないけどとにかく卑!! 『ブラック・スワン』観てきたよ~

2011年05月23日 22時22分54秒 | ふつうじゃない映画
 ハハハ~イ、どうもこんばんは。そうだいです。先週はもう、梅雨こえちゃったのかってくらいに暑い日もあったのに、日曜日あたりからはまた寒い日が戻ってきちゃいましたね! カゼひかないように気をつけないと。

 私いま、「カゼひかないように気をつけないと」って言いましたよね?
 はい、これから180度真逆の行動に走ってしまった日曜日のことをお話ししたいと思います。走ったっていうか、歩いたのね、18~9キロくらい。
 もうね、まさに「バカはカゼひかない」イズムを体現した1日になったわけなんですが、もう私も30すぎですからね……いい加減にしないといけないんだけど、やっちゃったんだな~。
 我が『長岡京エイリアン』で18~9キロ歩くといえば、もうこれしかありませんよね。

「桜木町恨道中2011 豪雨 (さくらぎちょううらみのみちゆきとうぇにぃいれぶん ごうう)」!! やった~。

 そもそも私が桜木町に軽い地縛霊なみの一方的な執着をみせるようになった最初の道ゆきは、JR横須賀線の新川崎駅から横浜市街の桜木町までを歩く15~6キロの地獄行だったわけなんですが、今回はその本来のルートを再びなぞってみました。
 今のところ桜木町まで歩くときに私が選んでいるのはその「JR線ルート(途中から国道1号線と合流)」と、その東にある「京急線(国道15号線)ルート」、そして西にある「東急東横線(綱島街道)ルート」の3本であるわけなんですが、最初に経験したのが今回のJR線ルートだったものですから、そのトラウマ感たるやはなはだし! 道に迷って5時間かかるは、友だちとの集合時間はすっぽかすは、血まめはできるはカゼひくは……あ、カゼひいてんじゃん。

 当初はただ桜木町まで歩くという行為だけをねらっていたハイキングだったのですが、3本の道を歩いたりいろんな使ったことのない電車ラインに乗ったりして、加えて桜木町にほど近い場所に私がさらに執着してしまう「あるお店」を見つけたりもしまして、今年に入ってからというものの、みるみるうちにこの「桜木町恨道中」の内容は変質していきました。そんなわけで、最近はいろんなラインの新川崎駅~桜木町駅のあいだにある駅から桜木町をめざして歩き、それから横浜地下鉄の吉野町駅まで歩いて「そのお店」をたずねてからまた桜木町まで帰るというのが具体的なハイキングコースになっています。

 んでね、23日の日曜日に1人で開催した桜木町ハイキングだったのですが、今回の出発地は、すべての始まりとなったJR横須賀線の新川崎駅から南に1キロほどくだった所にあるJR南部線の矢向(やこう)駅でした。位置としては新川崎駅よりは桜木町に近かったはずなのですが、実際に歩いてみて、国道1号線に合流するまで遠回りする必要があったために、結局歩く距離は新川崎駅からとほとんど変わらないという、地味にずーんとくる事実が判明。
 とにかく、新川崎駅と桜木町駅とのあいだにあるすべての電車駅をしらみつぶしに降りてみるために、今回は新川崎駅の1コ南にある矢向駅を選んだわけなんですが……
 みんな知ってる~? 南部線って、おんなじJRでも横須賀線とぜんぜんラインが違うから、東京から矢向駅に行くとしたら、いったん桜木町により近い「川崎駅」まで東海道線で行ってから、南部線に乗り換えて北の矢向駅までのぼっていかなきゃならないんだぜ~!? 桜木町に行きたい人間がなぜ桜木町から遠ざかる! 完全に思考回路がいかれてます。

 そんな矢向駅から始めた今回のハイキングなんですが、結果から言いますと、途中で豪雨に襲われました。

 日曜日はねぇ、午前中はホンットに! 天気が良かったんですよ~。あったかかったし。
 だからね、ラジオ予報でもさんざん「昼過ぎからけっこう降りますよ。」って言ってたのに、いまいちピンとこずに「カサ重いし、いらないや。」とかなんとか判断して完全てぶらで1時ごろに千葉を出発したんですよ。
 そしたら、2時半に矢向駅を出たら完全に曇り空になってるのね。
 で、3時半ごろに国道1号線の「諏訪坂」にさしかかったあたりでポツポツきまして、モヤ~っとした空の下にボ~ンヤリとランドマークタワーが見えてきたころには土砂降りんこ。

 いや~濡れたねぇ。よくツタヤさんとかのレンタル店の邦画コーナーで、長渕剛さん主演の伝説のSF坊さん映画(本当)『ウォータームーン』って、おいてあるじゃないですか。あれのジャケット写真の長渕さんぐらいにビショ濡れになってましたね。わかりづらい?

 まぁ向かってたのはメガロポリス横浜だったんでね、道端のどっかにカサのひとつでも転がってるんじゃないかという打算もあったのですが、横浜駅をちょっと越えたところでなんとか手に入ったね、ボロッボロのビニール傘。ゴールもう近いよ!
 結局、日曜日は日が暮れるまで雨はやみませんでした。自分で言うのもなんですけど、カサをゲットするまでたっぷり正味1時間雨にうたれてカゼをひかなかったって、やっぱ……バカなんだにゃ~。

 ただねぇ、今回は収穫があったねぇ! なによりも、足の裏にまめができていない史上初のゴールになりました。しかも、時間は今までで最短の2時間半! 最初の新川崎駅スタート時の半分になったよ。
 人間のからだって、きたえれば丈夫になるんだねぇ! やってみるもんだよぉ。頭はなかなか成長しないみたいだけど。

 日が長くなってきたこともあって、夜じゃない桜木町を見たのも初めてになりましたね。つかめてきたぞ~、「楽しい恨道中」。私の怨念も成仏まであとすこしだ!

 で、実質的なゴールになっている「吉野町のお店」なんですが……前より早い夕方5時半にたどり着いた今日も、閉まってました。
 でも今回は、たしか先月にはなかったお店のポスターとカードがシャッターの近くにはりだされてありましてね、

「土日不定休」

 だって。まぁいいよ! 次回こそ、必ず店内に入ってみせる。


 で、で! 今回の本題はハイキングじゃないのよ。そのあと観た映画のほうがメインなの。
 いつもどおりね、そのお店からトボトボ桜木町に帰ってきて、それから駅に隣接しているビル内のシネコン「ブルク13」に入ってキャラメルジェラートを食べて、

 観たんですよ~、ウワサのバレエスリラー映画『ブラック・スワン』(ダーレン=アロノフスキー監督)を!

 いや~まいっちゃいましたね。私、「バレエもの」といえば、「こわい白目を描かせたら天下一」の山岸凉子大先生のマンガ諸作しか知りませんし、そのお凉サマの作品にも同タイトルの短編があったので、てっきりそういった氷のようなコールドプレイが展開される作品なのかとたかをくくっていたのですが……

 あんなに「俗っぽい映画」だったとは思わなかったね!! 観ていて思わず頭に浮かんでしまった第一印象が「マンガみたい」だったんですけど、この言い方はプロのマンガ家のみなさんに失礼だわ。少なくとも山岸先生はこんなうすっぺらい作品は描かないと思います。
 なんだか言い方がずいぶんと手キビしい感じになっておりますが、まず最初の大前提として、私はこの『ブラック・スワン』をじゅうぶんに楽しんでおります。
 だって、1時間半電車に揺られたあとに20キロ近く歩いて、いったんはズブ濡れにもなっていた人間が、眠くもならずに最後まで集中して観ることができたんですからね。「物語がうすっぺらい」ってことも、約2時間で話をシメなきゃならない映画である以上は、ひとつの選択肢としてありうることかとは思います。それ自体は別に悪いことではないでしょう。

 たださぁ。アカデミー主演女優賞はおおいに賛成なんですけど、それ以外は本当に「チャラい」つくりの映画ですよね。お話も監督の手腕も。
 もちろん受賞はしなかったわけですが、「アカデミー監督賞」にノミネートされたということさえ、私にはとても信じられません。

 パンフレットを読んだら、この『ブラック・スワン』がバレエ界の一部に批判を浴びているということにふれて、監督が「それだけ本当のバレエ界を描く作品になったからだ。」とか語っているんですけど。
 そうじゃねぇだろう。これ、「バレエ界VS映画界」みたいな高いレベルで議論されるべき作品じゃないよ。バレエうんぬん関係なく、単純に監督のセンスが好きじゃない人が多いってだけですよ。

 とにかくね、最初から最後までもんのすんご~く「まっとう」な進行のしかたをする物語なんですよ。ほんとにNHKの朝ドラか民放の昼ドラみたい。
 前半は、主人公のナタリー=ポートマン(以下、ぽっちゃん)演じるいち若手バレエダンサーが、所属するバレエ団の一大イベントとなる公演『白鳥の湖』のプリマ(主役)に抜擢されるにあたってのドロドロ劇。そして後半は、突然ふりかかってきたプリマの重圧に苦しむぽっちゃんがさまざまな虚実いりみだれる幻影の世界に迷いこんでしまうというところから急転直下のラストへ。

 こういった感じなんですけど、前半は抜擢されたぽっちゃんへの嫉妬に狂う面々の描写もありきたりだし、「なんで私がこんな目にあうの?」みたいなぽっちゃんのリアクションもどこぞの少女マンガで見たような定番のふぜいです。
 かといって、途中からはどんどん、ぽっちゃん目線からみた「現実なのか幻覚なのかがわからない不可解な出来事」が連続して起こってくるわけなんですけど、その「みよ~ん」な空間の歪み具合も、どこぞのB級ホラー映画か、「変なのできちゃった。」映画で見たことがあるものばっかりなんですよね。
 こう言っちゃなんなんですけど、監督はかなり「まじめ」か「理屈っぽい」人間だと見ました。思いっきり不条理なはずの幻影も最終的には破綻してないんですよ。

 たとえば、なんせ「スリラー映画」なもので展開の詳細は言いたくないのですが、後半で自暴自棄になったぽっちゃんが経験してしまった「一夜の体験」にたいして、監督は映画の中で、その翌日にぽっちゃんに会った登場人物にわざわざ、
「それ、現実じゃないわ。まぼろしよ~。」
 みたいな内容のセリフを言わせるシーンを用意してるんですよ。

 私、このくだりで完全にさめてしまいました。
 ええ~……そこはうそかほんとかわかんないフワッとした感じのままでいいでしょ? そんな、翌日すぐにハッキリ答えを出さんでもいいだろうよ。そんなこと、キューブリック師匠とかリンチ兄さんだったら余裕ガン無視で話を進めてるとこよ!?

 この『ブラック・スワン』は、やたらセクシャルなシーンとか痛そうなシーンとかが出てくるんですけど、なんか全体的に「1人のふつうの人が変な作品を作ろうとして思いついた感」がぬぐえないのよね。
 最終的なぽっちゃんの役のおとしどころも、まさにマンガみたい。あれじゃあ、結局なんの救いも主人公の成長もないまま映画はおしまい、ってことになりますよね。
 いろいろ言いましたけど、この映画は「ふつうの人が計算して変な映画を撮ったらこうなる」という例の典型だと思います。私はそういう意味ではアロノフスキー監督という人を再確認することができた気がしたので収穫はありましたが、あらためて好きにはなれないな、と感じました。
 ただ、実にすみずみまで整理整頓された映画だったんでねぇ。話もわかりやすいし、キャストのみなさんもキレイどころばっかりだし。今、映画館で気軽に観るにはうってつけの作品ですよ。スカッとはしないけど。

 ここまで読んでこられた方、「おまえ、ほんとにおもしろかったのかよ!?」って思ってらっしゃるでしょう?

 いやいや、私は充分に楽しみましたよ。

 この映画の「真の」おもしろさはね、そんな感じの作品の俗っぽさと、主演のぽっちゃんの気品とが200%ミスマッチになってるってところなの!
 作品がこんなうすっぺらさであればあるほど、そんなものに、あのハリウッドを代表する知的スター・ぽっちゃんが、異常なまでの気合いの入れ方で全身全霊をそそいでド真剣に取り組んでいるという違和感がきわだってくるんですね。
 ぽっちゃんが母子アパート暮らしで無名のダンサーなわけがないじゃない……地下鉄に乗って毎日稽古場にかよってるわけないじゃない……「かわいいね。」って男に言われてとまどうわけないじゃない……
 しかし、気丈に気高く、ぽっちゃんはこれらの無理のあるミッションをなんなくこなして話を進めていきます。ぽっちゃんが顔丸だしで地下鉄に乗ってたら、あんな程度のチカンじゃすまねぇだろ!

 これは素晴らしい。まさしく「空気を読まないこと」がスターの条件。ここでぽっちゃんが映画のレベルにあわせて力をセーブしていたら、それこそ目も当てられない「やっすいドラマ THE MOVIE」に堕ちきっていたことでしょう。
 監督がどこまで計算していたのかはわかりませんけど、「こんなに下世話な作品にぽっちゃんが出ている。」という唯一の説明不能な不条理さが、この映画の最大の魅力となっているのです。
 要するに、効果音とかCGとかを弄して監督がコチャコチャやっていた小細工なんて、「本物の不思議」の前ではなんの役にも立たないってことなんですよ。CGといえば、クライマックスのシーンでのCGの使い方にはぶったまげちゃいましたね。
 監督はさぁ、「人間」があえて『白鳥の湖』で「鳥」を演じるってことを、そんな程度にしかとらえてないわけ? って思っちゃいましたっ。ぽっちゃんに失礼よ! あやまりなさいよ、男子~。

 まぁ、こんなわけでね……最終的に私が言いたいのは、

 ウィノナ=ライダーがあんな役をやっててくやしかった。でも「おめおめと生きてやる」みたいな気迫を垣間見てうれしくもあった。

 ってことと、

 ぽっちゃん、元気な子ども産んでね~!

 ってことですね。

 よ~し、私も明日からがんばって生きていくぞ~。
 まずは、「ざっくりすぎるアイドルグループ史」の再開から……はぁ~い!
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「バットマン」シリーズ最新作、始動す!! わおわお~

2011年04月02日 13時06分43秒 | ふつうじゃない映画
 どもども、こんにちはー。そうだいです。今日はちーっと寒くなりましたが、それでも今のところは過ごしやすい休日の土曜日になっているようですね。あたしゃ仕事ですよ~、これから。

 さっそく本題に入っちゃいましょう。2~3日前、ついに! ついに、私がながらく気にし続けていたハリウッドのビッグプロジェクトに動きがあったとのニュースが報じられました。きたきたっ!


「バットマン」シリーズ、リブートへ? ノーラン監督は製作に(3月30日付 日刊アメーバニュースより)
『ダークナイト』続編、2012年7月公開決定!

 アメリカのワーナー・ブラザーズが、クリストファー・ノーラン監督の手がける「バットマン」シリーズ第3弾『ザ・ダークナイト・ライゼズ(原題)』の公開後に「バットマン」をリブート(再起動)する意志を持っていることが明らかになった。
 同社のジェフ・ロビノフ社長が、ロサンゼルス・タイムズ紙のインタビューで明かしたもの。ノーラン監督版「バットマン」は、次回作『ザ・ダークナイト・ライゼズ』で完結する予定であることが分かっているが、ロビノフ社長は「その後はまたバットマンを新たに作り変える必要がある」と明言。ノーラン監督と妻でプロデューサーのエマ・トーマスは、引き続きプロデューサーとして残り、シリーズの方向性を決める役割を果たすという。  
 『ザ・ダークナイト・ライゼズ』は、バットマン役のクリスチャン・ベールほか、アン・ハサウェイ、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、トム・ハーディ、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンらの出演。今春にクランクインし、2012年7月20日のアメリカ公開を予定している。


 うおお! 『ザ・ダークナイト・ライゼズ』!! うおおお! 来年の夏の公開予定かぁ、じゃあ、まずそれまでは死ねねぇな。
 イギリスの生んだ俊英クリストファー・ノーラン監督が手がける「バットマン」シリーズ。『バットマン・ビギンズ』(2005年)、『ダークナイト』(2008年)に続く3作目。記事によると、ノーラン兄貴が監督するシリーズはこの3部作で完結するようです。
 しっかし、気が早いねぇ! まだ『ライゼズ』のクランクインもしていないのに、その後の「リブート」バットマンシリーズの構想がお披露目されちゃってるんですから。いや、もちろんそっちも楽しみだけどさぁ。

 私はねぇ……「バットマン」シリーズが、ほんっっっっとに!! 大好きなの。

 もう何もかも好きです。残念ながら、アメリカを遠く離れた極東の地に棲んでいるため、1939年かられんめんと続いている「バットマン」サーガのすべてを知っているわけではもちろんありません。ほんとのファンの方から見たら、ほんのちょっとの部分しか知らない私なんですが、それっでも! 大好きなんです。
 好きねぇ~。連載前期の単純明快・勧善懲悪な原色テイストも、60年代以降のさまざまな設定に対する再考をこころみるシリアステイストも、80年代後半以降の主人公ブルース・ウェインの心の闇にまでおよんでしまうダークテイストも。
 でもさぁ、邦訳アメコミって、なんであんなに高くて部数が少ないのかなぁ。日本でも有名なわけなんだから、もっと多くの人にとって入手しやすいかたちになってもいいと思うんですが……まぁ、アートの域に達しているものもザラですから、1冊2~3000円しても高いことはないんですけどね。
 アニメシリーズも観たいんですけどねぇ。数は多いし、私、ケーブルTVとかぜんぜん加入してないしなぁ。

 『スーパーマン』でも有名なアメコミ出版社・DCコミックの雑誌『Detective Comic』で『バットマン』が連載開始されたのは1939年5月のことだそうです。戦前だよオイ!
 以来、現在にいたるまでさまざまなアーティストによって無数の物語が創造されて70年以上続いている超絶長寿シリーズなわけなんですが、アメコミの世界では、原作者(「バットマン」シリーズの場合はボブ・ケイン)のつくった設定を守って正式な許可を得ているのであれば、作画者が誰でもすべてが「正統なシリーズ作品」になるわけなんですね。原作者と作画者が同一人物であることが主流となっている日本のマンガとはだいぶちがった印象がありますなぁ。
 日本におきかえると、『ドラえもん』を藤子F先生だけでなく、A先生、水木しげる、永井豪、水島新司、鳥山明、桂正和、大和和紀、矢沢あい、岩明均といった面々が描いているようなものなのです。君はどれが見たいかナ~?

 あとひとつ、アメコミでは「原作者」と「お話をつくる人」も別人であることがふつうであり、例をあげますと、私の大好きなエピソード『バットマン キリング・ジョーク』(1988年)を作っているのは、アラン・ムーアという「ライター(作家)」とブライアン・ボランドという「イラストレイター(作画者)」の2人です。
 つまり、1939年に原作を担当していたボブ・ケインは今現在はまったくタッチしていないのです。まぁ、当たり前っちゃあ当たり前ですよね。1人で70年間も考え続けられるわけないもんなぁ。

 1939年のコミック連載開始に続いて、1943年の初映画化、1966年の初実写ドラマ化、1967年の初アニメ化……早くから「バットマン」の複数メディア展開は始まっていました。このあいだに第2次世界大戦があったんですからね。まさしくヒーローに歴史ありですよ。

 そして、なんといっても忘れてならないのが、1989年からな~んとなく続いているワーナー・ブラザーズ制作によるハリウッド映画化シリーズですね。この流れが2012年公開予定の『ライゼズ』まで続いているわけなんですなぁ。もう20年以上前のことなのね、第1作は。
 具体的な流れとしましては、世界おたく史上最大の成功者ことティム・バートン監督による『バットマン』(1989年)と『バットマン・リターンズ』(1992年)。天下のアメコミヒーローに自分の趣向を包み隠さずのっけてしまった薔薇っ気むんむんジョエル・シュマッカー監督の『バットマン・フォーエヴァー』(1995年)と『バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲』(1997年)。そして、前4作の設定をすべてリセットしたノーラン監督の『ビギンズ』と『ダークナイト』とくるわけです。

 まぁあなた、そうそうたるハリウッドスターの競演でございますよ。ちょっと、主人公バットマン(昼の姿は大富豪ブルース・ウェイン)役と、シリーズを変態的な極彩色でいろどった主要なヴィラン(悪党)役を演じられたみなさまの名前をならべてみましょうよ。カッコの中の数字は、みなさんがその役を演じられた時の年齢でございます。


主人公バットマン(ブルース・ウェイン)
 マイケル・キートン(38~41歳)……バートン版2作
 ヴァル・キルマー(36歳)……『フォーエヴァー』
 ジョージ・クルーニー(36歳)……『&ロビン』
 クリスチャン・ベール(31~34歳)……ノーラン版2作

「犯罪界のプリンス」ジョーカー(原作では1940年に初登場)
 ジャック・ニコルソン(52歳)……『バットマン』
 ヒース・レジャー(28歳)……『ダークナイト』 

「元祖怪盗猫女」キャットウーマン(原作では1940年に初登場)
 ミシェル・ファイファー(34歳)……『リターンズ』
 ハル・ベリー(38歳)……2004年のスピンオフ作品『キャットウーマン』で主演し、輝ける栄光のラジー賞を受賞
 アン・ハサウェイ(29歳)……『ライゼズ』の予定

「とんでる犯罪紳士」ペンギン(原作では1941年に初登場)
 ダニー・デヴィート(48歳)……『リターンズ』

「天下御免のなぞなぞ男」リドラー(原作では1948年に初登場)
 ジム・キャリー(33歳)……『フォーエヴァー』

「悪と善、ふたつの顔を持つ男」トゥーフェイス(原作では1942年に初登場)
 トミー・リー・ジョーンズ(49歳)……『フォーエヴァー』
 アーロン・エッカート(40歳)……『ダークナイト』

「かかし姿なのに意外と強敵」スケアクロウ(原作では1941年に初登場)
 キリアン・マーフィー(29~32歳)……ノーラン版2作

「凶悪カルト教団の悪魔教祖」ラーズ・アル・グール(原作では1971年に初登場)
 渡辺 謙(46歳)……『ビギンズ』

「地球環境のためなら犯罪もやらかす」ポイズン・アイヴィー(原作では1966年に初登場)
 ユマ・サーマン(27歳)……『&ロビン』

「なんでも凍らす氷結博士」Mr.フリーズ(原作では1959年に初登場)
 アーノルド・シュワルツェネッガー(50歳)……『&ロビン』


 は~。もうため息しか出ませんなぁ。まさに錚々たる大スターのオンパレード!
 やっぱり目立っちゃうのは、おんなじ「ジョーカー」を演じているのに親子ほどの年の差のあるジャックおじきとヒース兄さんね。あらためてヒース・レジャーの若さがきわだってしまいます。ああ、ヒース「ジョーカー」が、ストーカーのように自分につきまとう女ヴィランの「ハーレイ・クイン」を引き連れながら再びゴッサム・シティを恐怖のどん底にたたき込む新作が観たかった……いつか現れるであろう、第3の「ジョーカー」に期待することにいたしましょう。

 私としましては、ワーナー版「バットマン」シリーズの中でもっとも好きなのは、やっぱりまわりまわって第1作の『バットマン』かなぁ。いろいろと粗い点はあるのですが、やっぱり「暗いヒーロー」と「明るいヴィラン」という逆転した構図がここまで綺麗にきわだった作品はないですからね。キートンとニコルソンの見事なキャラクター造形がすべて!
 1位は『バットマン』で、僅差で2位が『ダークナイト』(私、映画館で3回観ました)、さらにちょっとの差で3位が『リターンズ』といったところでしょうか。

 いやぁ~、楽しみですねぇ、『ライゼズ』! なんてったって、『インセプション』を撮っちゃったあとのノーラン監督最新作なんですから。
 ニュースによりますと、わかっている配役としては、クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、モーガン・フリーマンという超いぶし銀レギュラ-陣はそのまま続投。
 『ライゼズ』に登場するヴィランたちとしましては、新生「キャットウーマン」にアン・ハサウェイ、『&ロビン』でも登場していたもののあまりの筋肉バカぶりに誰からも相手にされなかった怪力マスクマン「ベイン」にトム・ハーディ、『ビギンズ』で倒されたラーズ・アル・グールの1人娘「タリア」にマリオン・コティヤールといった名前があがっておりまして、物語のカギをにぎる謎の連続殺人鬼「ホリデイ・キラー」に、『インセプション』で次元大介なみに頼もしいディカプリオの相棒役を演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットが配されているのだとか。
 うむむ……「ホリデイ・キラー」が登場するということは、1997年に発表された名作『バットマン ロング・ハロウィーン』がおおもとの原作になるんだろうけど……ちょびっと悪者が多すぎなんじゃないの? まぁ期待しましょう。

 あとね、ノーラン監督の作品って、けっこう男くさいですよねぇ。女優さんもちゃんと出てはいるんですけど、おとなしく男社会の中を生きている賢くてしっかりしたレディばっかりで、いわゆる男の理論の通用しない「女の魅力」をフル活用した人ってあんまりいなかったじゃないですか。『インセプション』だって、男が勝手に自分でふくらませた「妄想の女」に振り回されてるってお話だったし。
 そんな「ブリティッシュ・ハードボイルド」ノーラン監督が、女のカンだけを頼りに生きてるようなキャラ「キャットウーマン」をどう描くのか? すっごい楽しみですねぇ。

 がんばれ、それいけ、ノーラン監督~!! ロビンはムリに出さなくてもいいですよ。
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れっつ・激シブおっさんたいむ  『英国王のスピーチ』

2011年03月21日 21時36分43秒 | ふつうじゃない映画
 どんも~こんばんは、そうだいでございます。今日は久しぶりに一日中の雨となりましたね。みなさんは良い休日を送ることができましたでしょうか。
 私の身のまわりは、この3連休に入ってやっと落ち着きを取り戻してきたような気がします。いちばんわかりやすいのは、コンビニの食べ物コーナーね! ようやく、からっぴっぴになっている時間が減り始めてきました。
 結果として連休中は計画停電もついに実施されることはなく、私のお店も、看板灯や店内の照明の一部がついていないことをのぞけば、いつも通りの休日らしい感じになりました。
 ただ、依然として福島の原発は未曽有の危機のまっただ中にあるし、余震も少なくなったとはいえゼロになることはまだないし、計画停電は週明けから再開されるだろうし。いまだに被災地も予断を許さない状況のままですし、「日常が戻ってきた!」と気を抜くことができるのはまだまだ先のことのようです。
 と思ったらねぇ、最近あったかかったり寒かったりと気温の上下がはげしすぎたせいか、この非常時に職場でインフルエンザにかかったスタッフが出てきちゃいまして。今ですか!? 人手不足でもうタイヘンですよ。こういうときは、なおさら体調管理に気をつけないと!

 ……と言っておきながら、かくいう私も、病気にかかる気配は幸いにしてないものの、意味不明な長距離徒歩を決行してみずからの両足のひらをムチャクチャにするていたらく。なぜ自分からすすんでケガをする!? バカなのねぇ~、どMなのねぇ~。
 問題の「雑色~桜木町ツアー」は19日の土曜日にやらかしまして、翌20日、職場で私は、常にお能のようなスロースピードで仕事をする気味の悪い店員になっていました。なんだよ、そのけだるい動き! 有閑マダムかお前は。

 でもねぇ、感謝すべきは健康なこの身体! 「よく食べてよく眠る」という『カリ城ルパン』式治療法を実践したところ、本日21日にはふつうに歩いていて痛くないくらいまでに回復しました。人間のからだって素晴らしい! 昨日はもう、一歩一歩あるくごとに「やるんじゃなかった! やるんじゃなかった!」って思ってましたからね。
 そして、今日になってからの筋肉痛スタート。運動の2日後って……私も立派なおっさんです。ムリももうできねぇかもなぁ。

 ただ、今回も知らない街を3時間歩いてみて楽しんだ部分は多くありました。さまざまな場所で見慣れない風景に出会うことができたのはいい収穫だったのですが、さすがに2~30台の車やバイクがズラズラっとならんでいるガソリンスタンドを3~4回見かけたのにはゲンナリしてしまいました。あれ、何時間待ちなんだろう……大変な世の中ですよ。

 さて今回は、その19日、自分で勝手に呼び込んだ惨劇の果てにたどり着いた桜木町で観た映画『英国王のスピーチ』のことでもつづりたいと思います。

 いやー、良かったね。なにが良かったって、まず映画館が良かった!
 私が行ったのは、JR桜木町のすぐ隣にある複合ビルの中にあったシネコン「横浜ブルク13」。その名の通り、ビルの2階分(6階と、そこからのぼる専用の8階)に13ものスクリーンを擁している堂々たる施設でした。
 もう、ビルの中とは思えないほどのゆったりした広々スペースでねぇ。文字通り足を引きずってやってきた流れ者の私をやさしく受け入れてくれました。横浜人じゃない私にもこんなにしてくれるなんて……
 私がやって来たのは夜の8時ちょいすぎで、観たい『英国王のスピーチ』の上映開始は9時20分。1時間半ちかくもの空きをどうしようかと思っていたのですが、休むのに最適な待合い空間がちゃんとある! しかも、ただソファをならべてるってだけじゃなくて、微妙に柱をおいたりして入り組んだ構造になってるので、人目も気にせず隠れて居眠りすることが可能!! 最高だ……
 この待ち時間、ラズベリーのフランボワーズソルベを食べてうとうとしていた幸せといったらありませんでしたよ。あやうく『英国王のスピーチ』をみのがすところだったからね。しかし、はっと時間に気づいて立ち上がると、両足の激痛からたちまち過酷な現実に引き戻されてしまう哀しさよ。スクリーンまでの通路が遠い遠い!

 さて、そんなこんなで観た『英国王のスピーチ』だったのですが……
 まずは、やっぱりおもしろかった! これはもう、揺らぐことのない事実でした。
 とにかく役者さんが軒並み、信頼の演技力なのね。うまいと言うのもバカバカしくなるくらいにうまいんです。観る前に出演者の名前を見て、「主人公・ジョージ6世の王妃エリザベス役にヘレナ・ボナム=カーター」というところだけなんとなく浮いているように見受けたのですが、この作品でのヘレナさんは、抑えめながらもチャーミングな存在感で夫をささえる女性を好演していてとても良かったです。しかし、ヘレナさんも40代なかば……若干、大竹しのぶさんに見えなくもないショットも各所でチラホラしてきました。

 いちおう、この映画のヒロインと言える方はヘレナさん演じるエリザベス王妃(現在の英国王・エリザベス2世の母)くらいで、この『英国王のスピーチ』は、おもしろいくらいにガキンチョかおっさん、おばさんしか出てこない映画です。
 これはもう、主人公のアルバート王子(ジョージ6世)をとりまく当時のイギリス王室や政界がそうだったから、と言うだけなのかもしれませんが、登場人物がやたら年をくった方だけなのね! しかも、みなさんそれなりの教養と品格を持ったひとかどの人物ばかりなのですが、誰からもフレッシュさが感じられない。けなしているわけでなく、ほんとにそうなの! 「ああ、今、私は重厚なドラマを観ているんだなぁ。」ということはひしひしと感じられるのですが、ハリウッド映画のような華やかさは徹頭徹尾ありません。
 物語も、第2次世界大戦直前という非常にきな臭い時代であるのにも関わらず、戦争を直接えがく激しいシーンは皆無で、自身の吃音症に悩むアルバート王子とその治療にあたる言語聴覚士のライオネル・ローグ、そしてその周辺の群像をひたすら淡々と描くことに専念しています。

 脚本は、「アルバートとライオネルの治療トレーニング」、「アルバートの父・ジョージ5世の崩御」、「アルバートの兄王・エドワード8世の即位と退位」、「せまり来る第2次世界大戦の足音」、そしてクライマックスの「吃音を克服したジョージ6世のラジオ演説」といった多くの話題を、やりすぎかと思えるくらいにわかりやすく2時間にまとめあげています。これはアカデミー脚本賞もとるわ。

 私が「やりすぎ」と言ったのは、話をわかりやすくしたために、いささかキャラクターとしての色が単色になりマンガみたいに薄っぺらい印象になってしまった登場人物が少なからずいた、という意味でです。
 それでも、イギリス人以外の人々にとってはちょっとマイナーだった1930年代のイギリス王室事情が、『英国王のスピーチ』によって広く関心を持たれるようになったのは素晴らしいことだと思います。
 そういった意味でも、この『英国王のスピーチ』はあくまでも「入門編」といった感じで、これに対する「応用編」や「反論」といったかたちで、おやじのジョージ5世が主人公の映画とか、『英国王のスピーチ』ではただの放蕩ドラ息子のイメージしかなかった兄貴・エドワード8世が主人公の映画なんかが出てきたら、おもしろいんじゃないですかねぇ。ヒットは……しないかなぁ。エドワードはジュード・ロウなんかがやったら、ええんちゃう? 今回のガイ・ピアースさんは損な役回りでしたね!

 前回も言ったんですが、私がこの映画を観て泣いちゃったのは、やっぱり最後に持ってこられたジョージ6世の「玉音放送」シーンだったんですね。
 まずはやっぱり、演説をするコリン・ファースの名演と、それをサポートするライオネル役のジェフリー・ラッシュ(世界一イギリスの時代劇が似合う役者さん)のいぶし銀の表情が何をさておいても良かったわけなんですが、それにあわせて、「第2次世界大戦」という史上最悪の国難に直面することになったイギリス連邦全国民に向かって語りかけるという流れがいいんだなぁ! ジョージ6世の吃音の克服と王としての勇気ある行動が、ダブルで心を揺さぶるんだなぁ。
 特に、というか、泣いちゃったほとんどの理由はここにあるんですが、今現在、私のいる日本も世界中が注目している史上最悪になるかもしれない国難のまっただ中にあるわけで、今の日本と当時のイギリスとが私の中で勝手にガチコーンとシンクロしてしまったんですね。
 そんなこんなでえらく感動してしまったわけなんですが、もしも今回の東日本大震災が起きていなかったとしたら、私はこの『英国王のスピーチ』をどう観ていたんでしょうかね。もしかしたら、「シブいけど……ただうまくスピーチできたってだけでしょ?」くらいにしか思っていなかったのかも。うむむ、平和って、なんなんだろうか!?

 結論から言いますと、『英国王のスピーチ』は、今だからこそ日本人が観ておくべき映画なんじゃないかと思います。激シブながらも、それゆえに保証された作品の質の高さは確かなもの。特におっさん、おばさん好きな方にはたまらないひとときを提供することはうけ合いの名作です。
 ただ! 国王たる人間がスラングを連発する、幼少期の苦い思い出を告白するといった衝撃の内容はあるものの、全体的には非常にオーソドックスで静かな作品になっています。アカデミー賞を作品賞など4部門で獲得するということは充分に納得できる水準ではあるものの、10年後にも語り草となる伝説の域に達するものなのかどうかは……ちと疑問。
 この作品を若干38歳で撮りきったトム・フーパー監督の手腕は大したものですが、作り方が明解すぎて、ところどころで強調される「イギリス人によるオーストラリア人差別問題」くらいにしか監督独自の視点が感じられないような気がしました(フーパー監督はイギリス人とオーストラリア人のハーフ)。
 まぁとにかく、観ている側がどのくらいアルバート王子の苦悩に共感できるかで、おもしろいかつまんないかも決まってくるかと!

 あとね、忘れちゃいけないのは、この映画が「フィクションとしてよくできた作品」であるということですね。
 例えば、アルバート王子の吃音症の病状と治療の様子はどうやら『英国王のスピーチ』ほどドラマチックなものではなかったらしいですし、感動のスピーチの直後もイギリスはすぐにナチス・ドイツに全面戦争をしかけたわけではなく、映画のようには単純にいかない両国の複雑な事情もあって、半年以上おもだった戦闘を起こさない、いわゆる「まやかし戦争(奇妙な戦争)」というモヤモヤした時期に入っていました。イギリスらしいっちゃあイギリスらしいんですが、あの感動はなんだったのよ?

 でも、実は序盤、霧のロンドンとシルクハットの英国紳士が出てきた時点で、私の自己採点チャートはすでに「88点」くらいになってたりして……結局、ヴィクトリア朝のかおりが好きってだけなんじゃ!? さすがにシャーロック・ホームズは出てこなかったけど。

 『英国王のスピーチ』、おすすめでございます。イケメンだ腐女子だ3Dだという昨今に飽き飽きしておられる方は、ぜひ!
 飲み物でたとえたら、まさにアールグレイティーかヘルシア緑茶といった一品でございます~。
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