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令和4年度掲載映画ギャラリー その1

2023-01-04 | 映画

しばらくMKが帰国してお出かけが続きブログに手をつけられず、
間が空いてしまいましたが、恒例のお絵描きギャラリーをやります。

平成4年は、実質わたしもイベントで外に出ることがなく、
おうち時間を満喫したといってもいいかもしれません。

よかったことは、特に食事をいろいろと見直し、
ドックを受けたりその結果を受けてメンテナンスしたりと、
健康に留意する機会になったこと、そして
時間があったので映画のブログをたくさんアップできたことです。

それでは、例年通り一昨年の12月掲載分からです。

「太平洋機動作戦」Operation Pacific
ジョン・ウェイン出演 第二次世界大戦潜水艦エピ紹介映画

その1

2011年の12月にはなんと2本映画を紹介していました。
そのうち一つがジョン・ウェインの海軍もの、
「太平洋機動作戦」Operation Pacificです。

ウェイン出演の戦争映画の邦題は似たようなものが多くて、
紹介しておきながらその邦題を忘れてしまうことが多いのですが、
この作品も少し経つと題名を忘れてしまいました。


有名な戦時中のエピソードや実在の人物を彷彿とさせるのは
戦後のアメリカ戦争映画あるあるですが、この映画は
負傷した自分を置き去りにして艦を潜航させよと命じた
潜水艦USS「グラウラー」のハワード・ギルモア艦長のエピソードが登場し、
さらには潜水艦USS「クレヴァル」がネグロス島から女子供含む
一般人を収容して脱出したという実際の話が織り込まれています。

後半には、有名な「信管不発問題」を海軍一丸となって解決した、
あの「日本軍艦花魁事件」も登場します。

映画ではジョン・ウェイン扮するギフォード副長に対し、
左下の「パップ」ペリー中佐が潜水艦「サンダーフィッシュ」の艦長で、
この艦長が日本軍との交戦で傷ついた自分を放棄して

「Take her down!」

と艦を潜航させる命令を下すという展開です。

”Take Her Down!”

映画によってその時の気分で絵のタッチを変えていますが、
この度もアメコミを意識して描線多めで描いてみました。

これは、「サンダーフィッシュ」が、かつて「グラウラー」と
日本の「早埼」の間でも起こったように、艦体をぶつけ合った
(実際は突撃してきたのは『早埼』の方だった)
という史実をベースにしており、この場合、彼が主人公なので、
敵への突撃を、自ら艦橋に立って(まぢかよ)命じているシーンです。



また本作ではサイドストーリーとして、ウェインとかつて夫婦だった看護師、
メアリー・スチュアート中尉との絡みがあります。

二人はかつて愛し合って結婚したのですが、ギフォードの多忙が続き、
そんなときに最初の息子が生まれてすぐ亡くなってしまいます。
それがきっかけで二人は離婚してしまうのですが、
実はお互いを(特に男の方は)忘れられない・・・という状況です。

そうはいいつつ、メアリには新しいパイロットの恋人がいて、
ウェインの方はなんとか彼らの仲に割り込もうと必死。

航空と潜水艦は微妙に仲が悪い、という
世界共通の認識をここでもうっすらと思い出させる設定です。

乗員が「デスティネーション・トーキョー」を鑑賞するシーンがあります。
ケーリー・グラント主演の有名な潜水艦映画で、公開は1943年でした。

現在進行形で紹介している潜水艦「シルバーサイズ」で実際に起きた、
哨戒中、突如虫垂炎を発症した乗員を薬剤師がオペする、
というエピソードが盛り込まれているということを知り、
わたしもこの映画を当ブログでも紹介したくて探したのですが、
日本では公開されていないせいで、DVDも輸入するしかないようです。


それはともかく、劇中、潜水艦副長であるウェインが、
この映画を観た若い通信士官にどうだった?と聞くと、

"Oh, all right I guess, sir...
the things those Hollywood guys can do with a submarine."
(ハリウッドスターが潜水艦でできること、って感じですかね)


と本職ならではの感想を漏らすのですが、のちにこの士官が、
実際の戦闘に遭遇し、周りを敵艦に囲まれて思わず、

「俺もう一生ハリウッドの戦争映画バカにしねー」

と呟くのが個人的にツボでした。



「Uボート 最後の決断」In Enemy Hands
潜水艦ファンタジー「呉越同舟」


”Meningitis"(髄膜炎)


久々に映画として楽しめた戦争映画でした。
「Uボート 最後の決断」の原題は、イン・エネミー・ハンズ=「敵の手で」。

もうタイトルでネタバレもいいところですが、何かの弾みで
Uボートに呉越同舟することになってしまった独米サブマリナーが、
敵と手を取り合って難局を脱しようとするという話です。

どうしてそんなあり得ない状態になったかというと、
まずアメリカ側のUSS「ソードフィッシュ」の副長が髄膜炎を発症。
そのうちそれがUー429と遭遇し、新米艦長の指揮する米潜水艦は撃沈。

”Laconia-Order"


米潜の面々が捕虜にされ、Uボートに連れ込まれてしまうという展開です。

そもそも狭いUボートに捕虜を収容するという展開からして
ありえないわけですが、そのありえなさを、かのデーニッツが発布した
「捕虜救助禁止令」ラコニア令を歴史的に紐解きつつ、説明してみました。

繰り返しになりますが「ラコニア事件」とは、1942年、
大西洋西で沈没したRMS「ラコニア」号の生存者を救出した
ドイツ軍のUボート3隻が、赤十字の旗を立てて、
連合軍兵士と多くの女性子供が乗っていることを示していたにも関わらず、
米軍のB-24リベレーターの爆撃を受け、そのほとんどが死亡した事件です。

これに激怒したデーニッツは、

「今後沈没した敵船の生存者を救出する努力を禁ず」

という「ラコニア令」をドイツ海軍全軍に布告しました。
(映画では事実をぼかして、これがヒトラーの非情な命令だったとしている)


しかし、この映画は「呉越同舟」の状況ありきなので、
あえてそれについては触れずに、Uボートに米軍を救出させています。

しかも、この設定にこだわるあまり、
なぜUボートの艦長が上の命令に逆らってまで捕虜を取ったのか
最後まで全く説明されません。


その後、米軍側がUボートに持ち込んだ髄膜炎は瞬く間に蔓延し、
ドイツ軍は壊滅状態に。

もはやこれまで、とドイツ側艦長は、乗員の命を救うため
アメリカへの投降を決意し、さらに米潜メンバーに
操艦を共同で行うことを提案するのでした。

その後はもうご想像の通り、別のUボートに裏切り者として攻撃されたり、
米駆逐艦からも攻撃されるはめに。

しかし波瀾万丈の展開を経てなんとか終結します。

”In Enemy Hands"


映画の非現実的でツッコミどころ満載の設定はともかく、
この作品の扉絵を作成するのは、とても楽しい作業でした。
個性豊かで男前な米独サブマリナーたちは、
その衣装を含め、たいへん描きがいがあったといえます。



「太平洋航空作戦」Flying Leathernecks
赤狩りの中生まれた朝鮮戦争戦意発揚ウェイン映画

前編

当時アメリカの映画界に吹き荒れた赤狩り旋風で、
制作側は露骨な踏み絵を映画関係者に踏ませました。

その一例が、

「わたしは共産主義者と結婚した」

という映画の監督のオファーを断れば、アカとしてブラックリスト入り、
というようなあからさまなやり方でした。

本作の監督、ニコラス・レイは超のつくリベラルであり、
この面白くなさそうな映画の監督を拒否しましたが、
ブラックリスト入りを見逃してもらう代わりに、罰ゲームとして?
この国策映画のメガホンを取ることになったと言われています。



レイはウェインに対抗させるため、あえて彼と対立する部下役に
リベラル俳優ロバート・ライアンを配しましたが、
蓋を開けてみると全く問題は起こらず、映画の撮影はスムーズでした。

彼らは政治的な立場を脇に置いて、プロとしての仕事をやり遂げたのです。

この映画は、日本語字幕をつけられたバージョンでは、
収録時間の関係で大事なところがあちこちカットになっており、
さすがはリベラル監督というのか、セリフも複雑で通り一遍ではないので、
実際の脚本を見ると、原語で試みられていた深い会話が
ことごとく台無しになっているのがなんとも残念に思われました。

翻訳の限界はたいていの外国映画に共通する宿命ですが、この作品ほど
日本語訳で観た印象と実際がかけ離れていると思ったことはありません。

それはほとんど原作の冒涜に値する思うほどでした。


ジョン・ウェインの戦争ものでは、だいたい彼の演じる軍人は
彼の見た目よりかなり若い年齢が就くべき階級ですが、
これもある意味ウェインものの宿命と言ってもいいかもしれません。

彼のモデルはカクタス航空隊のジョン・スミス少佐ですが、
当時38歳だったスミスを演じるには、ウェインは老けすぎでした。

実際の年齢の44歳より明らかに彼は老けて見えるくらいです。


ストーリーは、海兵隊の前線部隊に赴任したウェインが、
部下に慕われ次期隊長を目されていた副長の上に立ち、
彼にダメ出しをしながら指揮官とは何かを叩き込むというもので、
その間に彼らの部隊のパイロットは、いろんな理由で戦死していきます。

そして部下たちも、副長のグリフも、仲間の戦死を通じて、
戦地の過酷な現実と、戦争という任務の遂行には、
時として非情にならざるを得ない司令官の宿命について、
その真実を目の当たりにすることになるのです。

帰国してまた前線に戻ったカービーは、
同じ部隊の指揮官として日本軍との死闘に臨みますが、この戦いで
副長のグリフは作戦成功のために部下を見捨てるという辛い経験を強いられ、
今度こそ上に立つ者の苦悩を思い知るのでした。

中編 
後編

最後にカービーは、自分の後任として隊長に推薦したグリフに、
初めて司令官としての本音と真実、そして自らの苦悩を告げ、
戦地を去っていきます。

翻訳と大幅なカットのせいで外国人には本当の良さが分かりにくいですが、
アメリカでは大変高い評価が与えられている戦争映画です。


続く。



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1 Comments

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令和4年です (Unknown)
2023-01-05 06:36:23
平成4年になってますよ。令和4年です(笑)

たとえ上からの命令があっても、指揮監督の目が届かない海上では、船乗りの不文律(誰であっても、遭難者は救助する)を重んじると思いますし、下に甘々だと、軍隊のみならず組織は維持出来ません。

戦争映画なので、戦闘場面に目が向くのは当然ですが、バックにリアルな人間模様が描かれているものの評価は高いと思います。
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