ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

海上自衛隊東京音楽隊 第56回定例演奏会 @ 昭和女子大 人見記念講堂

2017-09-19 | 音楽

続く、と前回終わったのは、呉音楽隊の演奏を岡山で聴いた翌日、
他でもない東京音楽隊の定期演奏会に突撃してきたからでした。

今日は東京音楽隊のコンサートについてお話しするのですが、
その前に、今日の呉でのコンサートについて少しお話ししておくと、

●岡山で「桃太郎さん」を入れて皆を喜ばせたガーシュインの曲の
クラリネットのソロが、今日は「パリのアメリカ人」を入れてきた

●今日は呉だったので、アンコールは「赤とんぼ」ではなく、まさかの
呉ー市ー GONNA 呉ー市ーだった

PVに出ていたダンスの人二人と呉氏が踊りまくり、
あの歌を中川麻梨子士長が歌い、ラップの部分をチューバ奏者が!

あとで地方総監部の方から聞いたのですが、呉氏には
「子供バージョン」があって、小さい呉氏がいるんだとか。

横須賀音楽隊からトラでアルトサックスの「薫」くんがきていた

●恋ダンスは夏頃からの呉音楽隊のレパートリーだった!

キレッキレ自衛官の恋ダンス!まさかの指揮者も!呉音楽隊・阪神基地サマーフェスタ2017


つまり、私は

金曜夜 岡山 呉音楽隊

土曜昼 東京 東京音楽隊

月曜昼 呉 呉音楽隊

という音楽隊づくしのシルバーウィークを過ごしたことになります。


空港から連休中で激混みの湾岸線を経由して、世田谷区まで。
住所は太子堂、つまり先日の陸自衛生学校と同じ場所ではないですか。

(えー、陸自衛生学校の記事が突然消えたので、不審に思われた方、
その理由はおそらく皆様のご想像の通りです。
各欄にコメントもたくさんいただいていたのにすみません)

それこそ道を挟んで衛生学校&中央病院の隣にある昭和女子大学の
キャンパスには、このような立派な人見記念講堂というホールがありました。

いつもはコンサートホールで行われるのに、はて?

この理由は、最後まで演奏会を聴いていたらわかりました。

学校の正門を入っていくと

「トルストイ研究会」

の集まりがあるというのでトルストイねえ、と不思議に思いながら
講堂の前に行ってみると、ここにもトルストイ像が。

なんでも、創立者の人見夫妻がトルストイの考えに共鳴し、

「人と人、自然と人間との調和に最大の価値を求め、
平和を愛し、仲間を大切にし、労働をいとわない」

これらを建学の精神にしているところからだそうです。

内部は実に昭和な感じのホールですが、コイン式のピンク電話があったのでびっくり。
カードも使えない電話なんて、なん年ぶりに見るでしょうか。

指定されたチケットの席は、二階席でした。
ここで三日前に東京地本に表敬訪問したばかりの陸将補殿や、
元海将にお会いしたので、どうやら周りは全部自衛隊関係の招待者のようでした。

まずびっくりしたのは、最初の演目が

【行進曲 軍艦

であったこと。
この段階でわたしは、エンディングとアンコールに「何か」をするつもりなんだな、
と鋭く(もないか)察知してしまったわけですが、それは正しかったことが
後になってわかります。

しかし、この変則のおかげで、ほぼ初めて「拍手なし」の軍艦を聴くことができました。

「軍艦」を聴くと、わたしはかつて帝国海軍軍人たちが、これと寸分違わぬ
同じ調べを聴いていたということについて思いを馳せずにはいられません。

本日のコンサートのサブタイトルは

「多彩なゲストとともに」

というものですが、いきなり大物キタ〜♪───O(≧∇≦)O────♪
元祖三人娘の最後の一人、雪村いづみさん。

【テネシーワルツ】【スワニー】

いずれの曲も、オールドファンならずともジャズファンなら誰でも知っているナンバー。
半テンポくらい遅らせて、伴奏を追いかけるようなメロディの取り方が、
いかにもあの時代全盛期だった歌手らしい歌唱で、わたしなど内心

「このハラハラ感がたまらんわー」

とその点に関してだけは、個人的好みから、わずかなストレスを感じつつも、
さすがの大ベテラン、半世紀は優に超える現役生活に培われた
見事なステージングと、全く衰えていない声量には圧倒されました。

ブルーのロングドレスにハイヒールで颯爽と背筋を伸ばして歩き、演奏が終わってから
樋口隊長に手を差し伸べる様子は、もはや女王の貫禄です。
(樋口隊長にはできれば二人でダンスをし、さらには手に恭しくキスをして欲しかった)

念のために調べてみて、彼女が80歳であったことを知り、心の底から驚きました。

平原、という名前でもしや、と思ったのですが、やはり平原綾香さんのパパだそうです。

【ハート】

平原まこと&たわらもと吹奏楽団

♪ ソラドソミ〜  ソラドソミ〜 レーラ ミ〜(移動ド)

というテーマが美しい、平原さんのオリジナル。
平原さんは先ほどの雪村いづみさんから、

「江利チエミさんのものだったムラマツのフルート

というのを貰い受け、ここで披露していました。
1950年代の、ムラマツの創始者村松氏が作ったのではないかというくらい
古い楽器で、製造番号は2000番代。

今の楽器の製造番号はもう5万台ではないかということです。
実はわたしもムラマツのフルートを実家に持っているのですが、
今度製造番号見てみようっと。

【ミラージュIV 】真島俊夫

つい最近この名前をタイプしたなと思ったら昨日でした。
呉音楽隊の演奏した「ジェラート・コン・カフェ」の作曲者です。

海自音楽隊で河邉一彦隊長時代に演奏しているものがあるので貼っておきます。

全体的に見て、この曲が後半の「魔法使いの弟子」と並んで、今回の東音が
「課題」として取り組んだ曲なのかなと思われました。

同リーズで、真島氏はジャズ・イディオムをシンフォニックな響きで表現する、
という試みを行なっています。
この曲も、テーマは16ビートやスウィングなどに乗せて展開されていきます。

この曲を海上自衛隊が好んで演奏している理由は、中間部が
静かで広大な海を表現しているからだと思ったのですが、どうでしょうか。

 

【ファンタズミック!】

 

息子とほぼ二ヶ月おきにディズニーシーに行っていたころが
音楽によって走馬灯のように駆け巡りました。

呉音楽隊の第二部の幕開けもディズニーのメドレーで始まりましたが、
東京音楽隊のこの日のコンサートは、ディズニーシーのメデティレーニアン・ハーバーで
毎夜行われるショウの音楽、「ファンタズミック!」で後半の幕を開けました。

わたしも息子も前のショウ「ブラビッシーモ!」が好きすぎて(笑)
新しくなってからほとんどかぶりつきで見たことがありませんが、
ディズニーの音楽はどれも基本よくできてるなあといつも感動します。

今回のコンサートのパンフで、これを作曲したのが

B.ヒーリー

という人であることだけはわかりました。
ディズニー・ファンティリュージョンなども作曲しているようですね。

【「交響詩 魔法使いの弟子」P.デュカス】

先生である魔法使いが留守の間に、覚えたての魔法を使って楽をしようとしたら、
箒が水をどんどん組んでくるのを弟子は止めることができなくなった、という話を
そのまま表現した典型的な標題音楽で、これもディズニーの

「ファンタジア」

で、ミッキーマウスが魔法使いの弟子になって出演?しました。

もちろん自衛隊音楽隊で演奏するには、交響詩であるスコアを
ブラスバンドに編曲しないといけないわけですが、この曲に関しては
ブラスでの演奏が非常に合っているせいか、高校のブラスバンドでも
しばしば演奏されています。

 

さて、このあたりで、そろそろあの歌声が聴きたいものだ、
と思った方も会場には多かったでしょう。

【愛は花、君はその種子

ベット・ミドラーの「ローズ」で彼女が歌った「ザ・ローズ」。

そのメロディに、「おもひでぽろぽろ」の監督、高畑勲氏が
ほぼ原詩に忠実に翻訳した歌詞をつけ、都はるみが歌ったものです。

これを歌手の三宅由佳莉三曹が歌いました。

中低音でのビブラートの幅が大きく触れ気味なのが個人的には残念でしたが、
この曲のシンプルでピュアなメロディに潜む力強さを汲み取り、
英語の原詩に見られる一種の「激しさ」もちゃんと表現されていたと思います。



さて、ここから、大変珍しく興味深い試みが行われました。
つまり、この演奏会場の元々の住人である昭和女子大付属昭和中学校、
昭和高等学校の吹奏楽部と東京音楽隊の共演です。

【宝島】

 

およそ日本の中高ブラスバンド部でこの曲をやったことがない&知らないという人は
皆無であろうと思われるブラバン界の名曲中の名曲。この曲も真島作品です。

自衛隊と共演するということになったとき、中高生ブラス部が
これまで何度となくやっているという理由で選曲されたのでしょう。

そして、隊員も皆、彼らの学校時代を思い出しながら、
心の底から楽しんで演奏していたに違いありません。

中高生にとってはトロンボーンとトランペットが特に大変な曲だそうですが、
余裕でこなしてしまうお兄さんお姉さんの横で演奏した経験は、
彼女らにとっても大変な宝島、じゃなくて宝物になったのではないでしょうか。

そう、これがきっかけで自衛隊音楽隊に入りたい、と思う子もいたかも?


【君をのせて〜天空の城ラピュタより】

昭和関係者の出演はブラバンだけではありませんでした。
なんと、ステージの端から制服の合唱部が登場し、

「地球〜はま〜わ〜る〜」

とこの有名な曲を歌ったのですが、その中に
・・・引率の先生?それとも歌のお姉さん?

いえ、三宅三曹その人が加わって、女子ズと一緒に歌ってくれたのです。

その微笑ましくも美しい演奏に、思わずニコニコしてしまいました。

 

そして最後に、本当の本当に全員合同で

【小さな世界〜It's A Small World】

このステージに全員の椅子を乗せることができないので、
演奏はなんと、立って行われました。

ディズニーランドの「世界一幸せな船旅」、イッツアスモールワールド。
このようにわざわざ「船旅」と断るのも、海上自衛隊のコンサートならではです。

普通のざっと二倍のブラスによる演奏は音量も見た目も迫力十分でした。

そこで、どうして最初に「軍艦」をやらねばならなかったのかがわかったのですが、
こうやって合同で行うことによって、大学の講堂を使うこともでき、
さらには生徒自身や彼女らのの父兄や友人といった、今まで東京音楽隊に
全く馴染みがなかった層に自衛隊のアピールもできるというメリットが加わり、
一石二鳥、三鳥にもなったということのようです。(よね)

ついでにいうと、「小さな世界」の前には

【昭和女子大学付属昭和中学校、昭和高等学校校歌】

が合同で演奏され、それを同校の顧問の先生が指揮したのですが、
これも会場をお借りしたことに敬意を払っての計らいだと思われます。

 

さて、こうして4日間に二つの音楽隊の演奏を三回聴くことになったわけですが、
東京音楽隊、呉音楽隊、どちらの音楽隊にも共通するのは
わたしたち聴衆をいかにしていい意味で驚かせ、楽しませようかと
センスのいい中の人たちが一生懸命になって企画を練った結果、
そのパフォーマンスは、一般のプロオケ(ブラスバンドのプロも含む)とは異なる、

「自衛隊音楽隊の演奏会」

というカテゴリの、独特なエンターテインメント世界となっているということです。

その集大成は秋の音楽まつりということになろうと思いますが、
のみならず、彼らの真摯な研鑽の成果である音に、日本に住んでいるわたしたちは
いつでも簡単に、そして驚くほど気軽に浴することができるというわけです。

知れば知るほど、音楽を愛する者としてその存在に感謝せずにはいられません。
ありがとう、自衛隊音楽隊。

と改めて言いたくなるほど充実した「音楽隊ウィーク」でした。

 

 

 

 



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2 Comments

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海自の音楽隊は好き (のーぶる)
2017-09-20 11:38:20
こんにちは。
ずっと前も、コメントさせていただきました。
呉音の阪神基地サマーフェスタの記事に、「アルトサックスの薫くんが来ていた。」とありましたが、彼が演奏したという事ですよね?
横音の野外コンサートで、何度か彼の演奏を聴きましたが、上手いですよね!
やはり、彼は有名なのですか?
私は、人見での東音演奏会、落選でした~。
オープニングで「軍艦」演るなんて、観たかったです。

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お久しぶりです (エリス中尉)
2017-09-20 22:38:54
前も音楽隊の記事にコメントいただいたんでしたっけ?
はい、わたしの見間違いでなければ、「薫くん」は主席の左側で吹いておられました。
わたしも横須賀でのコンサートで初めて注目したのですが、
「最近の自衛隊音楽隊員にはこんな奏者が出現し始めていたのか・・」
と結構新鮮でした。ソロとかセンスありますよね、彼。
今回のコンサートに限らず、自衛隊音楽隊はエキストラを
その都度音楽隊同士で融通しあっているみたいですね。
さすがに呉や横須賀に大湊とか舞鶴から来ているというのは見たことがありませんが、
佐世保、呉、東京、横須賀は互いにそういう交流があるように思えます。
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