
いまさら「トラ!トラ!トラ!」でもなかろう、という向きもおありでしょうが、何しろ今になって初めて観たものですから、少しお付き合いください。
さて、この映画、日本ではどうだったのか知りませんが、アメリカでの公開は興業的に大コケだったそうです。
何故か。
この日米合作映画、どちらかの立場で物事を見ることなく、制作を彼我に分け「公平に」作られたものです。つまり、日本側の映像は日本が、(監督は深作欣二)米側はアメリカが制作しています。
その結果、サクッというと「アメリカ人には全く面白くもねえ映像の連続」になってしまったからだと思います。
真珠湾攻撃が奇襲になってしまったのは「日本からの先制攻撃をを渇望するホワイトハウス」の意向や、日本大使館の書類制作の不手際などの運命的な出来事が複雑に絡み合った結果であり、決して日本人は卑怯ではなかったする見解すら、特に勧善懲悪にカタルシスを見出す国民性のアメリカ人には受け入れがたかった(今もかな)のかもしれません。
その日のためにまなじりを決し、日夜備える帝国海軍と、情報部では無線を傍受し暗号を解読していながら政府の意向や油断の前に、現場では大事に備える心の準備のないままその日を迎えてしまったアメリカ側。
映画はむしろ、この点の対比をくっきりと描きます。
例えば両軍で同じように機雷の投的訓練を行うのですが、百発百中の出来に「よくやった」と微笑む日本側に対し、こちらはアメリカの訓練の様子です。(エリス中尉拙訳)
「一時間見てるが全く当たらんじゃないか。パイロットは目が見えるはずだろう」
「次は誰だ」
「アンダーソンです」
「ん、ちょっとはましだな。ま、君の部下は最後にはやってくれるだろう」
「私もそう望みます」
「次は誰だ」
「ディキンソン中尉です」
・・・・・・・・・・・・・(-_-メ)
「ディキンソン中尉に『お前は牛のケツに止まったハエを叩くこともできんのか』と俺が言ってたと伝えろ」
「イエスサー」(T_T))
この映画、淡々と時系列で実話が展開され、ノンフィクション的色合いが強いので、その点エリス中尉は評価します。
いきなりバッチメイク女優が、自爆した飯田大尉のことを知って泣き崩れるなどというシーンが一つもありません。
それだけでも評価したい。
日本側の登場人物で主役格は山本長官(山村総)南雲中将(東野英二郎)淵田少佐(田村高廣)源田中佐(三橋達也)。
貫禄の山本長官ですが、少しお太り気味・・・。
あ、これは、実際の山本長官も「気を遣われ過ぎていいものを食べすぎ、こっそり体の不調を訴えていた」という史実にのっとった役作りですか?
(多分違うと思うけど)
南雲中将は、実物と比べると少し「枯れ過ぎ」?
何しろ、この方には拭いがたい「黄門さま」のイメージが・・・。
「第三次攻撃は行わん!ええい山口(多門)、この菊の紋どころが眼に入らぬかあ!」
なんてね(^_^;)
淵田少佐の田村高廣がとても良いです。一緒に見ていた息子が「かっこいい!」と言っていました。
本日画像は訓練中の淵田少佐。
置屋の窓から芸者さんがきゃあきゃあ手を振っています。
京都出身の田村高廣にに関西弁でしゃべらせる演出には感心しました。(淵田少佐は奈良出身)
ただ、関西弁で「トラ、トラ、トラや!」
と叫ぶのはやりすぎだったかも。
かっこいいといえば、息子は日本側司令部がでるたびに流れる「いわゆるアメリカ人の考えるところの日本的な音楽」に「なにこれ~!」と笑い転げていましたが、それでも帝国海軍司令部がズラリと映ったり、搭乗員が鉢巻を締めたりのシーンのたびに「日本ってかっこいいよねえ」とため息をついていました。
この日本側の「かっこよさ」に対して、日本を侮りすぎて、なすすべもなくやられてしまった風の「かっこ悪い」アメリカ側。
日本側でしいてかっこ悪い部分を挙げるとすれば、
「休日で事務員がいないので自分でタイプするも、ポツポツ一本指打法でやっていたので開戦の通知が全く間に合わなかった大使館員」
でした。
日本がしたのはだまし討ちではない、ということもしっかり映画では描かれています。
「スニーキー・アタック」のせいにでもしないとおさまらないアメリカ人には、実に痛いところを突く映画になり、それゆえの大コケだったのでは、と思います。
誰しも自国sage映画は観たくないですものね。
さてその米国側キンメル司令長官、映画で、近くに落ちた機銃の薬莢を側近に手渡され「これに当たって死にたかった」なんて言っていますが、このおっさん、日本人は解剖学的に内耳に欠陥があるので飛行機で宙返りなんて絶対にできない、なんて大真面目に言ってたんですぜ。
ざまーみろぃ。
暁の中の海軍飛行隊出撃のシーンは美しく感動的です。
赤城から最初に飛び立った一番機が、滑走路を飛び立った瞬間一瞬姿を消し、再び舞いあがるのを見ていた南雲中将がこわばらせていた頬をにこっと緩め、「よし」という顔をする、こういったディティールを丁寧に描いて海軍ファンにはたまらない出来です。
一言言うなら、淵田少佐は雰囲気も体型も似ていると思うのですが源田中佐が少し体格良すぎるかな。
もう少し切れ味のいい日本刀みたいな雰囲気の役者さんの方がよかったと思うのですが。
この映画については、また書きます。
「トラ!トラ!トラ!」はずーっと昔、子供の頃見て以来ですが、大人になって色々知った上でまた見ると面白いかもですねぇ
赤城一番機は志賀淑雄少佐でしょうか。「日本全軍が一つの槍となりその剣先のさらに先頭が自分であるというのは、まさに男子の本懐ここにあり と感じた」と手記で書いていたのが印象に残っています。
ちなみに志賀少佐もたいへんなハンサムですね(あと、奥様もすごい美人でびっくり)
では
コメントありがとうございます。
なんと子供の頃あの映画を・・・。
そのころ、あのストーリーが理解できたのですか?素晴らしい!
史実を踏まえていないと、大人でも退屈に感じる人は多いかと思いますが。
さて、赤城の一番機は・・・
実は志賀少佐じゃないんですよ。
実はこのことについて、くわしく続編に書いています。「黄色い双葉機」と言うタイトルで8月17日にアップ予定です。
ぜひ読んでくださいね。
志賀少佐、理想の海軍士官の見本のような方ですよね。容姿は勿論のこと人物も。
実は、志賀少佐の超ハンサムぶりについては、一日でも語っていたいほどなのですが、ある理由でミーハーは控えています。
でも、笹井中尉並みの思い入れと愛をもって似顔絵を描かせていただいております。
髪型にこだわりをお持ちだった(らしい)というエピソードを、「海軍搭乗員の長髪」という記事と「その2」で書かせていただきました。
よかったらこちらもご覧ください。
「男子の本懐これにすぐるものなし」
こんなことを一生に一度でも言うことができる人生、誤解を恐れず言えば羨ましいです。