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入間航空祭~ヘリ戦隊と外来機帰投

2012-11-11 | 自衛隊

教えて頂くまで、この入間航空祭が毎年行われていることすら知らなかった
エリス中尉ですが、あらためて調べると、この催しは
1962年(昭和37年)からずっと行われているのだそうです。

海自の観艦式が、オイルショックをきっかけに毎年行われなくなり、
空自、陸自との持ち回りで三年ごとになってしまったのにもかかわらず、
この航空祭は、今まで中止されたのは三度だけ。

一度は昭和26年の雫石事故を受けて、二度目は昭和63年、天皇陛下のご病気のための自粛、
そして三度目平成13年、911の直後で警戒レベルが上がった為の中止でした。

いかにこの航空祭が恒例の行事として皆に支持されているか、というのは、
この日関東一円から実に20万人以上もの観覧客が詰めかけることにも表れています。
おそらく地元の入間市、近隣の都市に住む人々は、この航空祭を、
物心ついたときから親に連れて行ってもらったりして親しんできたのでしょう。
目の前で飛翔し空中を華麗に舞う航空機に憧れ、飛行機に乗ることを目指す地元の少年は、
他の地域に比べて、ずっと多いのではないか、と思われます。

航空展示のとき、アナウンスは必ずパイロットの名前を階級で呼んだ後、出身地をコールします。
しかし、この入間のお膝元である地域の出身者に限って出身高校までがアナウンスされるのです。
これは、当日訪れている地元の人々へのサービスであり、
「ああ、うちの近所のあの高校を出たのか」などというような親近感を抱かせ、
さらにはパイロットが自分の学校の先輩であることがわかると、「自分もできるかも」と、
その気になる高校生がある、というような効果を期待しているのかもしれません。

もしかしたら、現実にも基地周辺地域出身で、幼い日から見ていた航空祭の飛行機に憧れて
パイロットになった隊員は結構多いのでしょうか。


航空祭の一番人気はなんと言っても、そのウォークダウンも含めてブルーインパルスの演技です。
しかし、航空機ファンはもちろん、そうでない者にとっても、日頃見慣れない自衛隊機と言うだけで、
しかもそれが目の前の空を飛び回るというのは、胸がはち切れんばかりに興奮するものです。



とくにこの迷彩のヘリ。
迷彩を施された航空機、というのはいかにも「非常時」「戦闘用」という感じで、
見ているだけでなんとなく怖さ半分、ドキドキしていまいます。(わたしだけ?)

このCH-47J、通称チヌークさん(怖いからさん付け)なのですが、
この機体にも施されている迷彩柄について少し。



こちらはウィキペディアからお借りしてきた陸自のCH-47J。
まるでおもちゃの車を運んでいるようですね。
比べていただくと一目瞭然、陸自と空自では同じチヌークでも、迷彩塗装の色が違います。
空自の方は、一段明るいベージュが土台の色になっています。

あくまでもイメージですが、空自の方が少し軽やかな感じ。
陸自の航空機は、どれもこれもそのイメージ通り「土っぽい」です。
強そう、と言えばこっちの方がかなり強そうな感じです。

そして、この迷彩柄なのですが、近くで見るとわりと「手描き」っぽいのです。
グリーンが来たから次ベージュで、そろそろ茶色も入れましょう、みたいな、
いい加減な感じで、その線にもにいかにも即興的な絵心が溢れているように思えるのです。






そう思って、これもwikiの写真と今回撮った写真を並べてみると、
取りあえず配色配置はほとんど同じ。
こう見えても元デザインがあって、ちゃんと全機その通りに塗装されているようですね。

さて、このチヌークの展示ですが、最初取りあえずのお目見えが終わった後、
何かをつり下げた機体がやってきました。



それが冒頭の写真なのですが、ほら、この距離でもはっきり分かる日の丸が。



がんばろう 日本。
震災以降、至る所で見たこの言葉ですが、ここにも・・。

東日本大震災で、この入間基地は発災直後に応急救援隊を出し、
続いて松島基地に救援物資、救援隊を送り込み、
福島原発にA-MB-3(大型破壊機救難消防車」を出動させ、
米軍と連携した物資輸送に携わり・・・・、
わずか一週間の間にこれだけの活動をしています。
HPには、輸送機に山のように輸送物資が積み込まれる様子や、
赤十字のマークの付いた建物の前で、帰ってきた原発放水要員を、
同僚が旗を振って迎える様子が公開されています。

このCH-47Jは、輸送能力が高いので、災害派遣に使われることが多く、
この災害でも大活躍したものと思われます。
空自の、この機体はドアに救難用のホイスト(つり上げ機)が付いています。
陸自機も常時装着ではありませんが、取り付け可能。

その大きさ(全長約30メートル)からは意外なのですが、このヘリ、二人乗り。
操縦士と副操縦士だけの乗り組みです。

ちなみにこのCH-47Jの「J」ですが、もともとこの機体はCH-47Dの日本向け仕様、
おそらくJAPANのJではないかと思われます。
(が、思っているだけなので断言はしません)

 


ヘリ下部のハッチが開きっぱなしです。
ここからは見えませんが、輸送しているとき荷物がどうなっているか、
下を直接監視するために開いていているのかと思います。
確かに、いつの間にか荷物が落ちてた、なんてことになったら大変だ(笑)

当然ですが、このヘリは観客の上空を飛ぶことはありませんでした。



ところで、この荷物吊上げ、どんな手順で行うのでしょうか。

吊上げる荷物にロープを掛け、地面のチヌークのおなかにロープを取り付け、
それからおもむろに飛翔、かな。

それはともかくとして、荷物を下ろすときは、もしかしてホヴァリングしたまま?
そのまま着陸したら、自分の身体で荷物を押しつぶしてしまいますものね。
だとしたら、頭の上にこの機体が静止している状態で作業をする地上員は
かなり緊張するのではないだろうか。


ところで、この日の航空展示には、陸自からもヘリが何機が来ていました。



かわいいいいい~~~~!

これこそ萌え。キュートでございますぅー。
通称「フライング・エッグ」。
タマゴに羽と尻尾を着けたような愛らしいヘリです。

これはOH-6D、カイユース。
もうカイユースやめてカワユース♥でもいいんじゃない?

しかしこの可愛らしい機体で、ベトナム戦争ではサーチアンドデストロイの成果を上げていますからね。
はっきり言ってやり手です。




おじさんの頭が・・・・・・・(T_T)

UH-1,イロコイ。
ネイティブ・アメリカンの種族名です。

(余談ですが、アメリカでは、黒人のことは『アフリカン・アメリカン』って言わないと、レイシスト扱い。
日本で言うところのインディアンだけど、これも『ネイティブ・アメリカン』って言わないといけないの。
ついでに、『インディアン』って言う言葉はなくて、『インディア』というのはインド人のことです)




全てが終わって各機が帰って行く様子を見ていました。
AH-1S「コブラ」が飛び立った瞬間。


操縦席が変わっていますね。タンデムです。
これ、後席が操縦者なんですよ。
なんで操縦しない人が前に座るのかって?
それはあなた、ここに座っているのは射撃手だからですよ。



ノーズと操縦席をアップしました。
ノーズ下から出ている黒い銃口が、ガトリング砲、(M-197)
その上にあるのがミサイル用の照準器でしょうか?(←聞いてる)

このとき、彼らは観客に向かってお別れの挨拶として手を振ってくれていました。



この胴体についているのが、対戦車ミサイルTWOでいいですか?



またもやおじさんの頭が・・・(T_T)

このAH-1S、前から見るとこんなの。
とんでもない薄さです。
これはひとえに視認性を低くするための仕様なんだそうですが。
ファインディング・ニモに出ていた「ドリー」、ナンヨウハギっていう魚みたいです。

一度このAH-1Sが墜落事故を起こしたときの写真を見たことがありますが、
地上にぐたっと横たわっている様子は、まさに陸に上がったナンヨウハギ状態。
このときなんとパイロットは二人とも無事で、怪我もなかったと言いますから驚きます。
こういう攻撃ヘリは他のヘリに比べて丈夫にできているのでしょうか。
地面にある様子を見ても、ローター以外あまり損傷があるようにも見えません。

もちろん、乗っていたのがいつも鍛えている自衛隊員だったからというのも大きいでしょう。

このコブラ、幅はなんと99センチ。
飛行中横に手を上げられません。
何時間も乗るものではないとは言え、乗ったら最後、地上に降りるまで身動き禁止。
休憩もできないし、当然ながら機内にはトイレもありません。
おそらくはギャレーもないでしょう。(んなもんあるか、って?)
クルマと違って緊急着陸はできませんから、パイロットはどちらにしても体調万全で乗らないと、ですね。

さて!



お待たせしました。

・・・って何を待たせたのか分かりませんが、川崎OH-1でございます。
観測ヘリコプターってことになっていますが、要は偵察機。
偵察任務なのであだ名が「ニンジャ」。

在日米軍のヘリコプターのコールサインも「ニンジャ」だと聞いたのですが、
コールサインとあだ名って同じでも混同しないんでしょうか。

川崎重工が主となってはいますが、三菱、富士重工業も参加している、いわば「国粋ヘリ」です。

なにしろニンジャでございますから、敵が我が日本上空に侵入したとき、
気づかれないように超低速をこっそり飛び、しかも見つかったときも
攻撃からなんとしてでも生還できるようなサバイバビリティ(生残性)を備えています。
胴体はやはり視認性を低くし、レーダーに反射する面積を抑えるために一メートル以下の幅。
ガラスは勿論防弾ガラスで、座席も装甲化されています。

パイロットが手を離してもホヴァリングを続けるほどの安定性を持ちながら、
エンジンが強力なので、宙返り、80度の角度で急降下、垂直上昇などもやってのけます。




このヘリの宙返りが見られるかもしれないと思っていたのですが、
空自のヘリではないので展示はありませんでした。
どこにいったら見られるの?観閲式ではやらないだろうし・・・。




地上すれすれをほとんど歩行速度でのそのそ飛んでいる姿がカワイイです。
(いつのまにか当たり前のようにヘリを萌え化しているエリス中尉であった)

展示が全て終わり、いくつかの飛行機が入間基地を飛び立っていくのですが、




外来機が次々と帰投していく瞬間。
この巨大なC-130Hもどこへともなく、というか小牧基地に帰っていきます。


F-15の翼を振る様子がかっこよくてよろしい、とはコメントに頂いたYouTubeの模様ですが、
このC-130Hも、



ちゃんと翼を振っていきました。
ただし、重たいので、ぐらり、と揺れただけみたいに見えましたが。

ヘリはバンクを取れないのでパイロットが手を振るんですね。
コメントによると普通機のパイロットもこの日は手を振っていたようですが。
しかし、飛行機に挨拶されると、どうしてこんなにわくわくするのかしら。

帰りの特急を予約していたので、最後まで帰投を見られないのは残念でした。
観艦式でも「フネが帰って行く様子にこそ観艦式の風情がある」と思いましたが、
航空祭においても、この皆が手を振り翼を振って各機が飛び立っていく様子こそが、
実は様々な展示の数々にも勝るとも劣らぬ、いやむしろ、
エリス中尉個人的には最も感動的なシーンに思われたからです。


来年はきっと最後の一機まで見届けるぞ。