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防大開校記念祭~「見よ落下傘空を往く」(学生編)

2012-11-16 | 自衛隊

曇り空に鮮やかなパラシュート、鮮やかなスーツ、
おまけに腰からなびくひらひらした飾り。

防大記念祭における陸自空挺団の落下傘降下をお伝えしたページが
カラー写真にもかかわらず全体的にモノクロームっぽかったのは、
彼らの装備がグレイのパラシュートに迷彩装備という、
思いっきり実務的な配色であったせいなのですが、今日は違います。

陸自空挺団の降下は観閲官の観閲のもとに行われる祝賀行事ですが、
この防大パラシュート部の降下は、いわば
「クラブ活動発表」。

観閲式が終わり、昼過ぎて、グラウンドに棒倒しの見物に
再び集まった観客の前で降下が始まりました。



飛行機から鮮やかな色のパラシュートが三つイグジット(飛び出すこと)
されました。
第一降下者は部員ではなくOBの指導者(だったかな)、
続く二人が防大パラシュート部の代表です。



部の旗が開きました。
全国でパラシュート部を持つ大学は防大だけ。
この日の観客は、一般大の大学祭では決して観られない、
「防大ならではのイベント」を見るために多数訪れたわけですが、
パラシュート部に入る学生も、
「せっかく防大に入ったのだから、防大でしかできないことをしたい」
という動機でこの部を選んだりするようです。

体育館で展示されていた部の説明コーナーを見て思ったのですが、
最初から「空挺レンジャーの指揮官になりたい」
などと思ってこのクラブを選ぶ学生って、あまりいないのではないかしら。
むしろ、やっているうちに一生懸命になり、進路決定の時に
空挺団に進んだOBからスカウトされて、というパターンなのではないかしら。

防パラ(という略称だそうで)のHPでは、隊員が
「母親にやめてくれと頼まれた」
などと書いていて、やはりと思わされますが、実際のところ、
パラシュートは開かないということはなく、万が一そうなっても予備の傘が開くし、
さらにはフリーフォール中に意識がなくなるようなことがあっても、
AAD(オートマチック・アクティブ・ディバイス、決められた高度で自動的に傘が開く)
という装置が作動し、リザーブ(予備)の傘が開くのだそうです。

そのために日々の訓練を行い、安全点検もきっちりするのですから、
車道を自転車で走ったりするより事故の確率は少ないようにも思います。



グラウンドの真ん中では部員が吹き流しを持って立っています。
この吹き流しはウィンドソックと言い、降下する隊員は、これを目標に降りてくるのですが、
ただの目標ではなく、吹き流しで風向きを確認し、風上を向いて着地します。

防パラのやっているのはスポーツとしてのパラシュートですから、
競技を目標に練習を積みます。
ところが、先日ご紹介した空挺団の降下は、そんなものではありません。
戦場に降り立って戦闘活動、あるいはゲリラ活動を行うのですから、
吹き流しで風向きを悠長に確認している場合ではないのです。



降下中の第一降下者。
両足は空挺団と違ってしっかりとクロスさせています。



地上にジャンプした途端、地上員が駆け寄ってきました。



至れり尽くせりです。
というか、こちらが普通なのでしょう。

降下は防大グラウンドのはるか斜め上から行われました。
風向きを考慮したうえでのことでしょう。
ここで、前々回掲載したこの写真を見てください。



なんのためにこの日の丸のような風船を上げていたのか。
風船を持っている学生と、右側から二番目の学生の服装に注意。



パラシュート部のユニフォームではありませんか?
つまり、この赤い風船は、パラシュート降下の前に風向きをチェックするためのものだったのでは。
そして、この風船が画面の左に飛んで行ったので、
降下の位置はわたしのほうから見てグラウンドの右上だったのでしょう。


この三色リボンも、飾りというより地上からの風向き確認のため?





第三降下者も無事に着地成功。

・・・・あれ?

第二降下者はどこに?



グラウンド右上方から同じように降下してきた第二降下者ですが、
なぜか、どんどんと流されグラウンドから離れていきました。

「ああああ~~」
「だめだあ~」

いよいよグラウンド脇の校舎の間にその影が吸い込まれていったとき、
周囲の人々からは口々にこんな声が聞かれました。
それはわたしの周りだけではなく、グラウンドの観衆全体のため息が醸成する
何とも言えないどよめきは、おそらく上空の降下者に聞こえていたに違いありません。



第二降下者はこのパラボラアンテナとその向こうの白い屋根の間に落ちていきました。
大丈夫だったのだろうか、と皆が気をもんでいると、
「降下した隊員にはまったくけがはありませんでしたのでご安心ください」
というアナウンスが流れました。

よかったよかった。



降下したとたん、他の部員が全力でそこに駆けつけ、
無事を確認し、かれを誘導して走ってきました。
このほほえましい情景をごらんください(笑)。
見ている客はみなニコニコ、拍手で迎えています。
なぜか隊員も嬉しそうです。

パラシュート競技の形というのはいろいろありますが、
もっともこの防パラが力を入れているのが
「アキュレシー・ランディング」という競技。

これは、地上に置いたターゲットにどれだけ正確に着地するかを競うもので、
そのターゲットとは、わずか3センチの小さな円なのだそうです。
もちろんそこには最初は目印を立てるのでしょうが、
3センチですよ?3センチ。
その丸に、体のどこでもいいから最初に着地した点が最も近い競技者が勝ち。

わかりやすいですが、こんなセンチ単位を競う微妙な競技に勝利するために
厳しい訓練を日々やっているというのに、グラウンドにすら降りられなかった
第二降下者には、いったい何が起こったのでしょうか・・・・・・?

どういう事情でこのようなことになるのか、ぜひこの当時の状況を
本人の口から聞いてみたいので、もう少ししたら防パラHPをチェックしてみようっと。



降下が終わったら、三人とも正面観覧席に向かってご挨拶。



一番人気の第二降下者。
本人もご心配おかけしぁしたあー!とばかりに、
一人だけ手を上げてご挨拶。

ところで、グラウンド脇に空挺団のトラックを見つけました。





なぜトラックの写真を撮る?
と(おそらく)不審がっている運転席の隊員たち。



只者ではなさそうな精悍な雰囲気の隊員たち、
もしかしたら空挺団の降下メンバー?
学生クラブのスポーツ的降下を地上で見ながら

「しょせんは学生のスポーツ降下だな・・・・」
「ふっ・・・、俺たちとは気構えからしてが違うんだよ」
「衆人環視の降下であんなことになったら、俺ら罰直だな」

などと言っていたり・・・・・しなかったかな?
いちいち演出すんな、って?



空挺団の荷物置き場。
各自に認識ナンバーがあって、靴のつま先には必ず名前とともに書かされるようです。
ちなみにこの迷彩柄のバッグ風のウェストポーチはお土産に買って帰りました。