goo blog サービス終了のお知らせ 

詠里庵ぶろぐ

詠里庵

2016年の墓碑銘

2016-12-30 00:06:27 | 日々のこと(一般)
年の瀬にこのブログ恒例の「今年の墓碑銘」です。主に科学分野と芸術分野から10人、独断で書いていますが、科学と芸術以外の人もいます。

[1] ピエール・ブーレーズ(1月5日。フランスの作曲家・指揮者。享年90才)
訃報があったときにとりあげましたが、私は指揮者としての彼、現代音楽論客としての彼が好きです。指揮はやはりフランス近代モノ。ナマで聴いたことはないのですが、レコードやCDは楽器の位置の空間分解能が高いことと相俟って、理知的で明晰な演奏が醍醐味です。ドイツ音楽は合わないかなという先入観があったのですが、今後は自分を解放して聴いてみようとも思います。

[2] デヴィッド・ボウイ(1月10日。アメリカのロック・ミュージシャン。享年69才)
「ロック・ミュージシャンをとりあげるとは珍しい」と思われるかもしれません。実際彼のロックは聞いていません。なぜとりあげたかというと、1970年代後半のこと、プロコフィエフの青少年向け管弦楽曲「ピーターと狼」にナレーションを付けた音楽劇LPレコードが発売されました。これがオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団という豪華演奏陣だったのですが、それに加えナレーションがなんとデヴィッド・ボウイだったのです。当時は「あのロックスター、デヴィッド・ボウイがクラシックに出演?」と一大センセーション。私もさっそく聴いたのですが、これがすばらしい。当時「出火怒・暴威」とも言われたロックの権化のイメージと打って変わって、優しさに満ちた大人の魅力に感心してしまいました。これなら子供達も夢中になって聴いたことでしょう。演劇もやるというマルチタレントだからできたことですね。

[3] ニコラウス・アーノンクール(3月5日。オーストリアの指揮者。享年86才)
ハルノンクールと呼ばれることもあるドイツ生まれのオーストリア人ですが、フランス式に最初のHを発音しない呼び方が一般的。実は2015年の墓碑銘で「まだ亡くなったわけではないが12月7日、引退を表明した」と書いて取り上げてしまいました。そのときは引退しただけでシベリウスみたいに長いこと余生を過ごすのだろうと思っていましたが、すぐに亡くなってしまったので、このブログでも改めてとりあげました。やはり引退したからといってすぐ墓碑銘に書いてしまってはいけませんね。

[4] はかま満緒(2月16日。日本の放送作家、ラジオパーソナリティー。享年78才)
科学や芸術ではないかもしれませんが、まあ芸術に関係はあるでしょう。この人は私がちょうど就職したころからNHK-FMの「日曜喫茶室」という番組のキーパースンで、喫茶店のマスターの役で登場していました。常連客に加えしばらくするとゲストが1人登場、またしばらくすると2人目のゲストが登場して様々な話題でトークを綴り、ときどき客のリクエストに応じてジャンルを問わずいろいろな音楽を流すという、比較的単純な番組でした。実際にスタジオで喫茶していると思われるコーヒーカップやスプーンの音が合間に雰囲気を添えるといった番組でした。登場人物や音楽がバラエティーに富んでいたこともありますが、マスターのはかま満緒の司会ぶりが絶妙でした。当時日曜のその時間帯は車を運転していることがよくあり、心を落ち着けて運転することができました。

[5] レイ・トムリンソン(3月5日。アメリカのプログラマ。享年74才)
あまりなじみのない人なのですが、この人に多大な影響を受けているのは私だけではないでしょう。電子メールの発明者です。特に@を使って、宛先となるメールユーザー(@の左側)とメールサーバー(@の右側)を区別し、メールユーザーがメールサーバーの直接のユーザーである必要をなくしたことが画期的とされています。それまでは同じコンピューターのユーザーの間でしか通信できませんでしたからね。その後アメリカ軍の内部で使われた電子メールが一般人も使えるインターネットになりました。日本に導入されたのは30年少し前のことですが、その過程で奮闘していたソフトウェア研究者達を身近に見ていた私は、彼らに感化されて電子メールを使うようになりました。結婚したばかりの妻に「電子メールっていうすごく便利なものができたんだよ」と喜々として語っていたといまだに妻が言うのですが、昨今はあまりものメールの多さに翻弄され「電子メールなんて発明したのは誰だ」と嘆くこのごろです。

[6] 多湖輝(たご・あきら。3月15日。心理学者。享年90歳)
一応科学畑の人かな。昔「頭の体操」の著者として有名だった人で、テレビで活躍していました。就職したときの研修の外部講師として来られて講演されたのですが、内部のお偉いさん達の講話に比べてさすがに話がずっとうまいと思ったことを覚えています。テレビでこの人が行った心理実験でよく覚えているのですが、20人くらいの被験者に向かって「このボンベには酢酸系の(もちろん無毒の)ガスが入っています。今からこれを開けますので、酸っぱい匂いがして来たら手を挙げてください。他の人の影響を受けないように目を閉じてください」と言ってボンベの栓をシューッと開けたのです。しばらくすると一人、二人、と手を挙げ始めました。全員には至りませんでしたが、結構な人数手を挙げました。実は何も匂いのしない、ただの空気ボンベだったのです。

[7] 冨田勲(とみた・いさお。5月5日。日本の作曲家、編曲家 、シンセサイザー奏者。享年84才)
このブログでも取り上げました。それと一部かぶりますが、私は、冨田勲が審査委員長を務めたローランドシンセサイザーテープコンテストにて3回賞をとっています。(1978年佳作、1980年作曲賞、同年編曲賞)

[8] 中村紘子(なかむら ひろこ。7月26日。日本のピアニスト。享年72才)
言わずと知れた日本の代表的ピアニストの一人です。10代半ばで長い振り袖姿で演奏したショパンのピアノ協奏曲第1番。当時の動画は白黒で解像度が悪いのですが、それもなんのその、着物といういでたちだけでなく演奏も印象的です。(しかし振り袖はめまぐるしいパッセージを弾くときじゃまではないかな?) 大御所となってもリサイタルを欠かさず行っていたことは超人的に思えます。ショパンのワルツ第2番など、いつ聴いても大迫力。まさか癌とは知りませんでした。よくリサイタルを続けていたものです。

[9] 千代の富士(7月31日。元大相撲力士・横綱。享年61才)
スポーツ関係者を取り上げるなんてどういう風の吹き回しかと思われそうですね。ロンドンにマダム・タッソーの蝋人形館というのがあります。世界の著名人がリアルな蝋人形で展示してあって面白いところです。ごった返す来館者の一人があまりにもじっとしているのでよく見たら蝋人形だったりします。およそ10年ごとに私はそこを訪れるのですが、時代の変遷が感じられて面白いものです。特に英国で日本人がどのように思われているのかがわかります。最初に行ったときは日本人はたった一人でした。それは吉田茂。カダフィの方が特等席に展示されていました。吉田茂よりカダフィの方が上なのか。(そういえばカダフィも今年亡くなりましたね。)次に行ったときは千代の富士に替わっていました。廻し姿で目立ってはいましたが、日本人はやはり一人しか展示されていませんでした。三回目に行ったときは・・・日本人はいませんでした。英国における日本のプレゼンスは低下しているのでしょうか。そもそも一番有名な日本人は葛飾北斎だと現地友人が言っていましたから。あれからそろそろ10年。最近行っていませんが、英国のEU離脱に強気のクレームをつけた安倍首相は展示されていませんかね。

[10] ネヴィル・マリナー(10月2日。イギリスの指揮者、ヴァイオリニスト。享年92才)
バロック演奏に始まり、最後はバロック以前や近現代までレパートリーを拡大した指揮者です。このブログでも取り上げましたのでそちらをご覧下さい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トランプ氏大統領選制す

2016-11-10 07:13:45 | 日々のこと(一般)
のニュースが世界中を駆け巡りました。

こういうとき知りたいニュースがなかなか見つかりにくいことがあるのですが、その1つを見つけました。それは州ごとの結果で、ここ、より詳しくはここにありました。これを見て、とても示唆的だと思いました。

州名入り地図はこれをどうぞ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

昨日投稿した1時25分の熊本地震

2016-04-17 22:25:09 | 日々のこと(一般)
は、余震でなく本震ということになりましたね。14日夜の震度7は前震だったということで。

そんなことがあるんですね。ちなみに気象庁がいつそれを発表したかを検索したら、日テレNEWSに「午前3時半過ぎから緊急会見した気象庁は、震度6強を観測した午前1時25分ごろ発生の地震が熊本地方で起きている一連の地震の「本震」で、14日夜に震度7を観測した地震は今回の地震の「前震」だったと発表した」とありました。もう少し待ってこれを見てから投稿すればよかったんですが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

未明1時25分の熊本余震

2016-04-16 03:08:18 | 日々のこと(一般)
で関西なのに目が覚めました。14日21時26分の本震(震度7)のときは全く感じなかったのですが。余震と言うには震度6強もあったということと今回の方が範囲が広いから関西でも感じたのでしょうか。現地の被害の少ないことを祈るばかり。

ところで14日の震度7のとき、ニュースでは韓国でも感じられたといいます。「釜山市や慶尚北道浦項市、慶尚南道巨済市などで、机が揺れるほどの強い地震が感じられた」「韓国外相 熊本地震の被害者を哀悼=岸田氏にメッセージ」(朝鮮日報)など。慶尚北道浦項市を地図で見ると釜山より結構北の方です。

韓国にまで地震が伝わったというのは、意外な感じがしました。というのも、ソウルに行く飛行機から見下ろすと、カミソリみたいに薄い高層アパートが各地に林立しているのが見えます。それを見てこの国には地震がないんだなと思いましたが、出張先の韓国の人達に訊くと案の定「地震は全く無い」と言います。

熊本から慶尚北道浦項市までの距離に相当する日本の都市はというと、岡山、松江、徳島がありますから、地震を感じたとしても不思議はありませんが、あまり地震の経験がないとすれば驚いたのではないでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

来ました。ウグイス

2016-03-07 08:26:23 | 日々のこと(一般)
今年はなぜか、少し遅かったですね。待っていたわけではありませんが、来てはじめてそういう季節だったなと感じます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

お年玉くじ

2016-01-19 08:11:22 | 日々のこと(一般)
はいつも期待値より下回っているクジ運悪さですが、今年もめくれどめくれど当たらず。なかなかメール年賀に切り替えられず枚数は多いのですが、三分の二を過ぎたあたりから、こうなったら一枚も当たらない方が希少価値あるな、ブログに書けるかな、という気持ちが芽生えます。もし一枚も当たらないとすると、その確率は約2%以下という低さ。(全体の枚数がわかってしまいますね。)これは、一枚しかない人が当たる確率に匹敵します。

最後の一枚に近くなるにつれて、当たるな、当たるなという気持ちが高ぶります。そして・・・ブログに書く結果となりました!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015年の墓碑銘

2015-12-31 17:42:13 | 日々のこと(一般)
大晦日、このブログ恒例の今年の墓碑銘。主に科学と芸術関係から独断で選んでいますが、今年はそれ以外も結構多くなりました。

[1] 1月27日 チャールズ・ハード・タウンズ(Charles Hard Townes, 1915年7月28日 - 2015年1月27日、アメリカの物理学者。享年99才)
 一般にはレーザーの発明者として知られていて、そう言って構わないのですが、少し細かい話をしましょう。スピーカーにマイクを近づけるとピーッと音が出るのと同じことを電磁波でやれないかという提案を1951年に行い、数年後に実証実験したのが彼の偉大な功績です。ただしその電磁波は可視光ではなくマイクロ波でした。そこで彼はlightのLでなくmicro波のMを使ってまずMASER(メーザー)と名付けました。1960年になってメイマンという人が可視光で同じことをしてLASER(レーザー)という言葉が生まれました。今日では可視光以外の電磁波でもレーザーと呼ばれていて、メーザーという言葉は専門家でさえあまり使いません。だからレーザーの発明者(他に独立に同時に発明したロシア人二人を含め共にノーベル賞)と言って構わないわけです。

[2]2月1日 アルド・チッコリーニ(ナポリ生まれのフランスのピアニスト。享年89才)
 何でも良質の演奏でこなす人で、その分特徴をとらえて賞賛されることのない感じのピアニストですが、私は好きです。このブログ内に記事を書きましたのでご参照ください。

[3] 3月23日 リー・クアンユー(シンガポールの建国者。享年91才)
 科学でも芸術でもなく、何と政治家ですが、シンガポールの創設者で「よき」独裁者として印象的なのでとりあげました。この人についても3月に記事を書きましたのでご参照ください。ただし3月の時点で「シンガポール国立大学をかろうじて凌いでいる日本の大学は東大のみ。京大はときどき争っている」と書いたのは既に古く、今年のランキングでは東大をはるかに抜き去っています。卒業生が日本国内だけでなく世界で活躍するような教育をしないことには、この傾向は簡単には戻りませんね。

[4] 5月23日 ジョン・ナッシュ(アメリカの数学者・ノーベル経済学賞。享年86才)
ゲーム理論における「ナッシュ均衡」の発見・提案者でノーベル経済学賞受賞。実話にもとづく有名な映画「ビューティフル・マインド」の主人公だったので知る人も多いでしょう。私は脇役が気になることが多いので、この映画でもナッシュのライバルであるハンセンが割と好きです。大学の地位的には最終的にナッシュに勝ったハンセンですが、ナッシュの能力を認めていて病気のナッシュを支援する描写が(実際そういう話があったのか知りませんが)いい感じです。ナッシュについてもこのブログ内に記事を書きましたのでご参照ください。

[5] 7月5日 南部陽一郎(日系アメリカ人の物理学者。享年94才)
話題も多い有名人なのであまり説明の要はないでしょう。素粒子論の人に言わせると南部先生の貢献は並大抵ではないと言います。私の勤める大学で開かれたご本人の講演会を2年前に聴いたときお元気そうだったので、訃報は残念に思いました。

[6] 7月27日 イヴァン・モラヴェッツ(チェコのピアニスト。享年84才)
 今回とりあげるピアニストは二人ですが、その二人目です。Ivan Moravecは音が綺麗。大変なテクニックに基づく粒のクリアさが特筆です。ロマン派、近代モノを得意としますが、中でもショパンやドビュッシー、ラヴェルがいいですね。ナマで聴いてみたかったなぁ。デイリーテレグラフの訃報を挙げておきます。

[7] 8月1日 ベルナール・デスパーニャ(理論物理学者・享年93才)
 Bernard d’Espagnatはあまり知られていないかもしれない。いわゆる「量子論と実在」や「観測の理論」を手がけて来た人で、思い込みを前面に出すのではなく、理知的・客観的な語り口が印象的です。やはりデイリーテレグラフの訃報を挙げておきます。

[8] 11月30日 水木しげる(漫画家・享年93才)
 大きな話題になったので多言は無用ですが、昔漫画好きだった者として一言。テレビくんはユニークですねぇ。当時から水木しげるは顔の描き方に特徴があります。何かというと、目が顔の上の方についているのです。ねずみ男はその典型ですが、他のキャラクターもそうです。漫画はディズニー以来(劇画でなければ)目を下の方に描いて赤ん坊のような可愛さを出すのが常ですが、その逆を行っているのがオリジナリティー溢れていると思います。

[9] まだ亡くなったわけではありませんが、アーノンクールが引退を表明しました。12月7日のニュースです。古楽(ピリオド楽器を使ってバッハやそれ以前の音楽を演奏すること)への興味を抱かせてくれた指揮者です。それ以降出て来たトレヴァー・ピノックやブリュッヘンなど歯切れのいい古楽指揮者も好きですが、私にとっての古楽のスタンダードでした。このブログ内に記事を書きましたのでご参照ください。

[10]12月19日 クルト・マズア(ドイツの指揮者・享年88才)
 この指揮者のCD、あまり持っていないわりに印象に残っています。私の好きなライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団をはじめ世界の名だたる管弦楽団・交響楽団を渡り歩いているし、N響や読響も指揮していたので印象に残っているのだと思います。しかしそれより(私は知らなかったのですが)ベルリンの壁崩壊のときに暴力衝突を避けるのに尽力したことで有名なんですね。


以下、10人の選外になりますが何人か補足します。
・2月17日 横溝 亮一(よこみぞ りょういち、1931年1月3日[1] - 2015年2月17日[2])は、音楽評論家・解説者として活躍していました。
・2月27日 レナード・ニモイ(Leonard Nimoy/ˈniːmɔɪ/、本名Leonard Simon Nimoy, 1931年3月26日 - 2015年2月27日)は、アメリカの俳優。ミスター・スポックの印象が強すぎますね。
・3月8日 塩月 弥栄子(しおつき やえこ、1918年4月4日 - 2015年3月8日)は、日本の茶道家。私の年代は社会人になるとき彼女の「冠婚葬祭入門」で社会作法を勉強しました。
・5月2日 マイヤ・ミハイロヴナ・プリセツカヤ(ロシア語: Майя Михайловна Плисецкая, ラテン文字表記:Maya Mikhailovna Plisetskaya, 1925年11月20日 - 2015年5月2日)は、ロシアのバレエダンサー。この人の「瀕死の白鳥」は本当に瀕死の白鳥みたいでした。YouTubeを紹介しておきましょう。
・9月29日Phil Woods(ジャズサックス奏者・享年83才)。持っているのは1枚だけですが、これが尋常ならぬLPですね。
・10月12日 - 熊倉一雄(俳優・声優・演出家。他人にまねできない声優の女性代表が大山のぶ代とすれば、熊倉一雄は男性代表。典型例を挙げるのが困難なほどいろいろ出演していますが、ケペル先生の「ものしり博士」(NHK)といえばピンと・・・来ないかな、古すぎて。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

リー・クアンユー氏死去

2015-03-24 08:51:27 | 日々のこと(一般)
のニュース。享年91才。政治にはあまり詳しくない私も少し感じるところがあります。氏の足跡は「リー・クアンユー氏死去、91年の偉業とは?」という記事にまとめられていますが、3ページにわたるこの記事の最初の2ページはだいたい知っていました。

私の研究分野でシンガポールは、その国の規模に比べてはるかに大きな存在感があります。いや他の分野でもそうでしょう。大学の(とある)世界ランキングを見ると、シンガポール国立大学をかろうじて凌いでいる日本の大学は東大のみ。京大はときどき争っています*。チャンギ国際空港はアジアトップの、いや(とある)ランキングでは世界一のハブ空港です。人口にして日本の20分の1、面積にして500分の1のこの小さな小さな国がこれほど成功しているのは驚異ですが、その裏には存亡に関する強い危機感があったに違いありません。そのことが、35才だったリー・クアンユーという強力な独裁者に国を委ねたのだと思います。そしてそれが大きな成功を収めたことは誰も否定できないでしょう。実際シンガポールに行くと、氏が支配していたころの不満はまず聞かれません。

このように「良い独裁者」による独裁は国が最も成功し民が最も満足する1つのあり方かもしれませんが、独裁がいい体制であると考える人はほとんどいないでしょう。それは「良い独裁者」の出現確率が非常に低いことを人類は知っているからであり、指導者が替わっても体制だけ独裁が続くととんでもないことになるからでしょう。その意味で、シンガポールが独裁体制でなくなりつつあるのは自然な成り行きと思います。少しアップル社みたいですね。

*大学ランキングはその大学の学問レベルを正確に反映しているわけではないので注意が必要です。ただ、世界で活躍する人材を育成しているかどうかの指標にはある程度なるかもしれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寒い日々と

2015-02-01 00:06:30 | 日々のこと(一般)
そうでもない日々が交代するこのごろですが、天気予報を見ると北海道は本当に寒そうです。テレビでは寒さを強調する映像が映し出されていましたが、その中で信号機からつららが垂れ下がっているのがありました。しかも吹雪いているので一方向に湾曲していて、一層寒そうです。

ここでちょっと興味を引いた光景がありました。青黄赤のランプそれぞれから計三本のつららが下がっているのでなく、両端の青と赤のランプからだけつららが下がっているのです。ははぁなるほどと思いました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謹賀新年

2015-01-01 15:33:06 | 日々のこと(一般)
初詣で引いたおみくじ
今年は英訳は付いていませんでしたが、粋な和歌とその講釈が書いてありました。


こはいかに案じすますと思う身のみえたることはひとつだになし

禍福はより合わせた縄の如し
現在なんら得るところなしとはいえ明日もそうだとは決していえぬ
むしろ引っ込み思案に陥らぬ様勇を鼓して意義ある未来を招こうではないか


よい年になりますよう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2014年の墓碑銘

2014-12-31 16:36:51 | 日々のこと(一般)
2010年から始めた大晦日の「今年の墓碑銘」も5回目。もともと1回限りの思い付きだったのですが、案外長続きするシリーズになりました。年の瀬が押し迫って亡くなる方もいらっしゃるので、年明け直前にupすることが多いのですが、今日は他の用事もありますのでこの時間にupしてしまいます。

1月16日 小野田寛郎(「小野田自然塾」理事長・元陸軍少尉。享年91才)
私の「今年の墓碑銘」は科学と芸術の人を挙げているのですが、この方は珍しくそれ以外の人です。しかし小野田さんの出現は、戦争の直接的痕跡として最大級に衝撃的でした。訃報に際して書いた1月18日のブログに振っておきましょう。

1月20日 クラウディオ・アバド(イタリアの指揮者。享年80才)
協奏曲の指揮者として好きな指揮者です。それについては訃報に際して書いた1月20日のブログに振っておきましょう。そこには書きませんでしたが、ペルゴレージのスターバト・マーテルをロンドン交響楽団で指揮した演奏などはとても好きです。

5月12日 木下是雄(物理学者、元学習院大学学長、ロゲルギストのメンバー。享年96才)
学界広汎に活躍された物理学者ですが、ロゲルギストのメンバーなど科学エッセイストとしても活躍されました。

6月11日 ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(スペイン出身の指揮者。享年80才)
スペインとドイツものの得意な、存在感のある指揮者でした。訃報に際して書いた6月14日のブログ関連する2007年10月17日のブログに振っておきましょう。

7月14日 ロリン・マゼール(ユダヤ・ロシア・ハンガリーの血を引くアメリカの指揮者。享年84才)
前はローリン・マゼールということが多かったと思います。マゼールについて触れた2009年1月2日のブログを挙げておきましょう。ところで今年亡くなったアバドとマゼールは、ベルリン・フィルに関しては結果論的にライバルでした。同じ年に亡くなったのも何か縁でしょうか。

8月13日 フランス・ブリュッヘン(オランダの指揮者・リコーダー奏者。享年80才)
LPレコードやFM放送でよく聞きました。ただしリコーダー奏者としてです。最近の古楽オーケストラもいいですが。8月17日のブログに振っておきましょう。

8月15日 ヤン・エキエル(ポーランドのショパン研究家・ピアニスト。享年100才)
ピアニスト、ピアノ愛好家でこの人のお世話になっていない人はあまりいないと思います。一昔前ショパン楽譜の決定版と言われていたパデレフスキー版に代わって、現代の決定版といわれるナショナル・エディションの総責任者です。訃報に際して書いた8月17日のブログ関連する2006年6月20日のブログに振っておきましょう。

9月17日 小島忠宣(物理学者[固体物理]、東北大学名誉教授。享年90才)
以下に述べる一点以外、実はよくは知らない方です。その一点というのは、私がお世話になったラウドン教授の「光の量子論」の翻訳者であることです。一般に専門書の翻訳はときとしてひどい場合がありますが、この本の翻訳は、わかりやすいことで定評がある原書のよさをそのまま保っていて、とてもいい感じです。初版も最新版も手がけています。

9月24日 クリストファー・ホグウッド(イギリスの指揮者・鍵盤楽器奏者・音楽学者。享年73才)
エンシェント室内管弦楽団を率いて古楽演奏をしています。とても歯切れがよく、ヴィブラートをかけないストレートな音色の演奏です。歯切れのいい点でピノックを思い出します。特にモーツァルトの交響曲の演奏が好きです。もちろんミュンヒンガー、レオンハルト、アーノンクールのようなややロマン的な古楽演奏も好きで、ホグウッド以外要らないというわけではありません。

11月28日 市田儀一郎(ピアニスト・音楽学者。享年82才)
市田儀一郎の編纂になるバッハの楽譜は学問的裏付けがしっかりしていて感服します。装飾音や指使いに念を入れていて面白いので、いずれ全部揃えるつもりです。ただ、通常の出版楽譜と異なる曲順や異稿が採用されていたりするので、もし初めて練習する楽譜としてお考えの場合は、最適かどうかはわかりません。もちろん選択の事情は解説に書いてあるので、それを読み込んで他の楽譜と比較することを厭わないのであればお薦めですが。

以上で10人ですが補遺を少々。
2月10日 山本邦山(尺八演奏家・人間国宝。享年76才)
2月25日 パコ・デ・ルシア(スペインのギタリスト。享年66才)
9月30日 マーチン・パール(アメリカ合衆国の物理学者・タウ粒子発見でノーベル物理学賞。享年87才)
12月10日 遠山一行(音楽評論家・実業家。享年92才)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TPPで著作権保護期間が死後70年に延長か

2014-05-14 07:39:29 | 日々のこと(一般)
という記事。とりあえずここにリンクしておきますが、要は、アメリカはミッキーマウスやクマのプーさんの著作権料でJASRAC一つ分という巨額の収入があるようで、それをなるべく延ばしたいということのようです。アメリカはもともと70年ですが、日本(や多くの国)は50年なので。日本はというとTPPから守りたいものもあるので、取引きによって国内外双方の人気取りをしようとするかもしれない(収支が合うかはともかく)という記事です。

いろんな立場の人がいるでしょう。マイナーかもしれませんが、作曲の観点でひとこと。ラヴェルの楽譜、私のこれまでの人生の半分以上はデュランとサラベールの独占でした。それはラヴェルの死語50年経っていなかったからです。値段がべらぼうに高いだけではなく、特にデュランはミスプリがやたらに多く、それも放置しっぱなしです。1987年以降しばらく経って日本の出版社も含め多くの楽譜が出るようになり、校訂はもちろん解説も立派なものが出るようになりました!

もう一つ。組曲「惑星」も作曲者のホルストがラヴェルと同世代です。最後に女声合唱が出るのですが、興行費用の観点からダフニスとクロエ組曲みたいに合唱抜きでやりたい興行主が多いところ、ホルストがそれを許さず、遺族がそれを踏襲したのです。これは鑑賞者としての私にとってうれしい遺言でした。一方で冨田勲がシンセサイザーで惑星のアルバムを出したとき、ナマの合唱を使わないシンセサイザーによる演奏が例外的に認められました。認められなかったらあのアルバムは存在しなかったわけですね。

芸術作品は、作者あるいはその家族が生きているときは貴重な生活費となるでしょうが、早々に人類共通の財産になるわけです。そうなるまで70年というのは長すぎる。私は編曲したい近代音楽は多々あります(金を稼いでいるわけではないのでやってもかまわないのかもしれませんが)。バッハやモーツアルトの時代のように年金システムに頼れない未亡人は細々と手書き楽譜を売って生活したらしいのですが、それでも70年は長いのではないでしょうか。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小野田寛郎さん

2014-01-18 02:07:24 | 日々のこと(一般)
の訃報が17日夕刊の一面に出ていました。フィリピンはルバング島の密林で、終戦を信じずあるいは欺瞞と考え、30年近く細々と遊撃戦闘を続行し、1974年遂に発見され保護されたニュースは、数あるニュースの中でも私には非常に大きな衝撃でした。もちろんその2年前の横井庄一さんの方が先だったのでそれに続く2番目のニュースでしたが、小野田さんは実際に駐留米軍に攻撃を試み続けていてなおかつ生き延びていたことが明らかになって、そのことはより大きな驚きでした。

私が育った時代は、今から思えば裕福ではなかったとはいえ、世の中は10年前にあったはずの戦争なんかまるで無かったかのごとき高度成長の真っ只中で、子供の私などには戦争の話題も避けられているかのようでした。そこに30年近く経って密林で旧日本兵が突然見つかったものだから、戦争って本当にあったんだ、しかもこんなに悲惨なものだったのか、と、教科書で実感を伴わず習っただけの私にとってこれ以上の直接証拠はありませんでした。自分が過去にワープする代わりに過去の方からタイムスリップして来たのです。

そして日本に帰ってからの横井氏と小野田氏の対照的な生き様。それが彼らの経歴と無関係でないと考えるにつけ、人生とは何だろうか、教育とは何だろうか、と、非常に考えさせられました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

謹賀新年

2014-01-01 23:37:12 | 日々のこと(一般)
去年はなかなか外交問題が大変な年でした。
仕事やつきあいでいろいろな立場や年齢の外国人と話をすると、当然のことながら、協力し合おうという方向に向かいます。会ってもいない異国の人々どうしが想像をもとに反目し合うことは建設的ではありません。外国を訪れてその国に住む人々を見ると、その人達と喧嘩をしなければならない必要性が感じられません。若い人たちには今のうちに大いに国際交流をしてもらいたいと思います。明日の初詣はそれも今年の抱負の一つに入れましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

TPPで何を例外項目

2013-03-13 21:49:19 | 日々のこと(一般)
とするか、自民党で議論になっているようです。いまNHKのニュースで若いアナウンサーが自民党本部前でイラストパネルを見せながら「候補にあがっているのは、まず、」

と、イラストの順に一つ一つ挙げようとするのですが、最初の絵がお茶碗に盛られたおいしそうなお米、次がすぐ麦とわかるピンと立った穂、となっていました。それを一つずつ指さしながら、

「ごはん・・・あ、失礼しました。コメ、麦、牛肉・・・」

と言ったものだから、吹き出してしまいました。山盛りご飯を輸入するかよって。寒い夜、外で自民党本部前に張っていたからでしょうか、炊きたてのご飯を食べたかったのかもしれません。イラストもちょっと意地悪ですよね。

最近アナウンサーの言い間違い、漢字の読み間違いに微笑んでしまう場面が増えています。これも世相なんでしょうね。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする