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ショパンマニア

2006-06-20 05:18:16 | 詠里庵・新着案内
に朗報。新しいPeters版のショパンがやっと一冊出ました。「A New Critical Edition:Preludes Op.28, Op.45」です。

元ページ詠里庵/音楽の間/風雅異端帳に2002年のJim Samson教授来日講演会の記事を書きましたが、そこでSamson氏が「現在ショパンの最も良い版はエキエル版である。しかしそれより良いのは、私自身が編集に携わっている、これから出る予定の新Peters版である」と言ったことを書きました。それ以来ずっと待っていたのですが、やっと、まず前奏曲集から出ました。(しかしこんな調子では私が生きている間にショパン全部出してもらえるのかな?)

序文を読むと、いや、面白い。ショパン全作品を斬る(29才)で私は「バッハはハ長調から始まって半音ずつ上げて行く配列をとったのに対しショパンは♯を一つずつ増やす配列を採っている。実はこの配列はフンメル『24の前奏曲集』作品67で既に使われていて、ショパンはそれを採用したと考えられる。フンメルのは創作ノートに書きつけたいろいろな音型のメモといった感じであるが、ショパンのは芸術作品に仕上がっている」ということを書きましたが、それと全く同じことが指摘されているだけでなく、さらに詳しい考察が書かれています。

楽譜出版社にはそれぞれ特徴があります。Doverはとにかく安い。けど解説は一切なし。Peters版ももともと高価でないのが取り柄で編集・校正の解説が非常に少ない版でしたが、この「A New Critical Edition」は並々ならぬ意欲をうかがわせます。かつてPeters版を写しただけの全音楽譜出版社も、最近はそれぞれの作曲家の専門家の手になるすばらしい編集と解説で新しい楽譜を次々と出しています。

長いこと世界への安価な楽譜の普及を担ったPetersと日本への安価な楽譜の普及を担って来た全音。音楽が浸透しきちんとした楽譜を人々が求めるようになった今、両者ともスタンスを変えたように私には見えます。音楽之友社も以前同様かさらにアカデミック指向になって来たように思います。ヘンレもベーレンライターも(ショパンではエキエル版も)うかうかしていられないかもしれません。
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