詠里庵ぶろぐ

詠里庵

今週の一曲

2005-10-30 06:46:58 | 詠里庵・新着案内
を更新しました。元ページはここ。直接聴きたい場合はこれをクリック。一応出版された楽譜で弾いたのですが、この曲を聞いたことある人は、まずいないのではないでしょうか。

先週の一曲はムソルグスキー「展覧会の絵」から「テュイルリーの庭」「ビドロ」「3番目のプロムナード」「卵の殻を付けた雛の踊り」でした。この4曲は切れ目を入れない方がよいので一回でアップしました。先々週の一曲と同じくピアノはSchwesterで1973年7月29日の録音。

テュイルリーとはパリの有名な公園で、写真は赤の他人のページ「パリ日記」に任せるとして、NHKの「追跡ムソルグスキー『展覧会の絵』」によると「テュイルリーの庭」を描いたガルトマンの絵は(あるかもわからないけれど)見つからなかったということです。ムソルグスキーはこの曲に「テュイルリー、遊びのあとのこども達の喧嘩」と書いていて、音楽はそれに合う曲想です。ガルトマンがパリに行ったときの絵の中に子供達がお喋りしているようなものが2点あり、この本にはそれがこの曲の絵だろうということで紹介されています。

「展覧会の絵」の初め半分の絵は当初から不明だったということですが、次の「ビドロ」も問題ありです。ビドロというポーランド語は(a)牛が牽く荷車(b)家畜のように虐げられた人々、という二つの意味があって、牛車の方の絵はやはり見つけ得なかったということです。一方、ムソルグスキーはその強力な世話人であるスタソフ宛の手紙で「ビドロとは牛車ですが、これは二人の間だけのことにしておきましょう」と書いています。これは表向きは(a)としておくが実際は(b)のことなのだ、とするロシアの研究家もいるということで、上記の本にその研究家達の写真もあります。そう仮定すると、ガルトマンの「ポーランドの反乱」という絵に付けられた曲の可能性もあることになります。この絵も上記本に紹介されていますが、教会の前の広場に立つ兵士や人々に混じってギロチン台が描かれています。あるいは未発見の他の絵に付けられたのかもしれません。この曲、牛車が通り過ぎて去って行く体裁の曲ですが、確かにそれ以上の雰囲気があり、何か重苦しい社会派音楽のように聴くことも可能でしょう。

牛車かギロチンかはともかく重々しい絵を後にしたムソルグスキーは、次の絵に移る足取りを、短調に装いを変えた悲しげなプロムナードで表現しています。そして次に見た絵はなんともかわいらしい「卵の殻を付けた雛の踊り」。この絵は当初から特定されていたそうで、上記の本以前からわかっていたそうです。見ると、これはまあ題名通りの絵ですね。
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うるう秒

2005-10-28 22:17:09 | サイエンス
を2006年1月1日に1秒間だけ入れるという総務省からのお達しが、今日午前、事務からメールで回ってきました。

おっ、これだ! 今日は例の1年生の力学の授業。角運動量保存の話。何か余談入れられないかな、と思っていた矢先のメール。何でもかでも大量のメール送って来る事務も、たまにはいいニュースをよこしますね。

どんな余談なのかは詠里庵「科学の間」「地球は酔っぱらい?」でどうぞ。
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今週の一曲

2005-10-23 00:38:55 | 詠里庵・新着案内
を更新しました。元ページはここ。直接聴きたい場合はこれをクリック

先週の一曲はムソルグスキー「展覧会の絵」から2番目のプロムナードと「古城」でした。1973年から数年、ピアノ演奏をステレオ録音する趣味を続けていましたが、その最初期の録音です。今は2005年、一世代ほど時間が経ち、子供が修学旅行に行くようになりました。去年までお城に行ったことがなかったのが、今年になって大阪城、名古屋城、熊本城を見て喜んでいます。それで今回は選曲を「古城」にしました。

展覧会の絵はムソルグスキーが友人の画家ガルトマン(ハルトマン)の展覧会から作曲したもので、絵から絵へ歩いて移る「プロムナード」が調性・雰囲気を変えて随所に出てきます。1874年、35才のときの作品ですが、42才でアル中で死んで後、数年経って公開されました。

10年以上前の話になりますが、ロシアがエリツィン政権へ移行する無血革命のさなか、「展覧会の絵」のガルトマンの絵を全部発見したというNHK取材の番組はとても良かった。その写真集「追跡ムソルグスキー『展覧会の絵』」にはガルトマンの3点の古城の絵が候補に挙がっています。でも1枚目はちょっと絢爛過ぎの感じ。ムソルグスキーの「古城」は荒城の月のような廃墟のイメージがあるので合わない感じ。2枚目は単なる教会みたいでしょぼ過ぎ。3枚目がイメージ合います。

展覧会の絵は最も好きな音楽に属しますが、ナマで2回しか聴いていません。一回目はアシュケナージ。このような大曲をライブでミスタッチ皆無という信じがたい演奏でしたが、サササーッと通り過ぎてちょっと教科書的すぎ。その前に演奏された作品111のソナタが深々とした名演だっただけに、感動はいまいち。二回目は目の前で聴いたヴォスクレセンスキー。こちらの方はミスタッチありましたがそんなことはどうでもよく、地の底から魂を揺さぶられるような演奏でした。(中西夫妻の招致活動に感謝)

実は今週の一曲は別の曲をアップするつもりだったのですが、前の記事でこの曲に思い入れのある旨のコメントがありましたので、今週の一曲もその続きにしました。
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珍しくも

2005-10-19 06:36:52 | サイエンス
元ページの科学の間を更新しました。今年は学部1年の物理が回ってきたので、その授業のために作った余談です。コリオリの力のところで挿入しました。それにしても1年生は始まる前ガヤガヤしてるし、寝てる人が結構いますね。まあついこの間までは高校生だったんですからね。余談コーナーになるとムクッと起きる人が少なからずいますが、本チャンのときこそ起きてて欲しいなあ。これが大学院の講義となると逆。寝てる人はまずいない。むしろ余談コーナーでは気を抜く顔もあるので、余談を入れる必要はなさそうだ。学部高学年はその中間。まあ、学部1年とM2では小学1年と6年の年の差がありますからね。
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今週の一曲

2005-10-16 08:05:52 | 詠里庵・新着案内
を更新しました。元ページはここ。直接聴きたい場合はこれをクリック

先週の一曲はラフマニノフ前奏曲集Op.32, No.12嬰ト短調の前奏曲でした。1973年10月19日の録音。もう32年も前なんですねえ。

作品32の13の前奏曲集はP協3の直後、彼がピアニスト・指揮者として超多忙となりアメリカにも演奏旅行をした頃に書かれました。初期の有名なcis-mollの前奏曲とP協2直前の作品23の10の前奏曲集に加えて、24の調を埋める形で書かれた13曲です。私は全体として作品23より好きです。

ラフマニノフは私が生まれる9年ほど前に亡くなっていますからナマではもちろん聴いていませんが、録音はいろいろ残っています。エジソン時代かと思うような録音ですが、いい演奏は音質など関係ありませんね。自作自演はもちろん、謝肉祭なんか聴き始めたら最後、すさまじいテクニックと感性で奏される曲の連続に息を呑み、感嘆のうちに全曲が終わります。シューマンでなくラフマニノフの作曲ではないかと思うような演奏。滅多に針で摩耗させないようLPレコードを後生大事に持っていたのもこれまで、今では格安CDとして売られちゃっています。
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Korevaar

2005-10-13 01:46:47 | コンサート・CD案内
というピアニスト、元ページの風雅異端帳にも2回紹介しましたが、実力派です。オーソドックスなものからいろんなジャンルを演奏しますが、その中でDohnanyiを得意としているのが一つの特徴。ハンガリーのドホナーニ(1877-1960)は20世紀になっても後期ロマン派を引きずった技巧派ピアニスト作曲家です。そういうといまいち私の趣味には合わない人種のようですが、そうでもなく、ラフマニノフとともに例外です。今日紹介するCDはIVORY CLASSICS 71008という一枚。中身は全部ドホナーニのピアノ独奏曲で

(1)Variations on a Hungarian Folk Song, Op.29(1916)
(2)Six Concert Etudes, Op.28(1916)
(3)Pastorale(Hungarian Christmass Song)(1920)
(4)Ruralia Hungarica, Op.32a(1924)

です。(1)は東欧的悲しげなテーマに続く10の特徴的ヴァリエーションで、古今のピアノ変奏曲の中でも傑作に加えていいのではないでしょうか。

(2)はいかにも技巧的な、しかし中身も伴った練習曲集。第一曲はショパンのバラード2番の最後を思わせる音型。イ短調が全面に出ていますが第六音のファとファのシャープをぶつけるところが面白いです。第二曲は急速なスケルツォ風で和音の移り変わりが速すぎて無調気味に聞こえ、とても面白い曲です。第三曲は単音階を両手で交互に演奏するもので、これも不思議な浮遊感があって面白い。いや、ドホナーニのエチュードは面白いですよ。と言った途端ですが第四曲はあまり趣味じゃない音楽です。葬送行進曲を仰々しくしたみたいで。第五曲は非常に広い音域にわたる美しいアルペジオから浮き出るきれいな旋律。20世紀音楽とは思えないロマン派音楽ですが、その美しさには単純に惹かれます。最後の第六曲がまた面白い。終始くちゃくちゃした音楽で、初めからスピード感があるのにどんどん加速して、最後はもう無茶苦茶になって終わります。その無茶苦茶を正確無比に演奏するコレヴァールさんはリサイタルのアンコールでも演奏しました。

(3)は名の通り田園曲ですね。ベートーベンの田園交響曲や田園ソナタと同じくドとソの低音に乗る素朴な田舎を思わせる旋律です。ドホナーニで聴いた中では(もちろん全部なんか聴いていませんが)最も演奏技巧を要しない曲に聞こえます。易しくもなさそうですが。

(4)は充実感のある組曲。第一曲は(3)の田園曲のような素朴な感じ。第二曲は民族舞踏のような元気な曲。ブラームスのハンガリー舞曲と言われても違和感ないような曲です。ドホナーニはピアノ協奏曲もブラームスみたいだからなあ。第三曲は(1)のようなメランコリックな旋律とその発展形からなるドラマチックな音楽。第四曲は急速な五拍子のエチュード。迫力ある演奏だと思います。演奏会でナマも聴きました。第五曲は短くもかわいらしい舞曲。第六曲は何やら暗~い音楽。あまり和声推移がないのでロマン派的メランコリーはありません。こういう感じバルトークの初期にも見られますが、ハンガリー的な一面です。第七曲は単純元気音楽ですがさすが終曲という感じ。出だしはケスラーの練習曲の第一曲みたいに始まりますが複雑化して行き、後半、単純旋律にまとわりつく和音がいろいろ変わって面白いです。ドホナーニ得意の加速無茶苦茶終止でこの曲集を締めくくります。

デイヴィッド・コレヴァールというピアニスト、メジャーな曲目でも素晴らしい演奏をします。自分のサイトを持っていますが、そこに紹介されているCDはマイナーな曲目が多く、ちょっと食指を動かされます。聴く時間がとれるごとにこれから少しずつ買って行こうと思います。
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今週の一曲

2005-10-09 07:19:09 | 詠里庵・新着案内
を更新しました。元ページはここ。直接聴きたい場合はこれをクリック

先週の一曲ですが、シューマン「子供の情景」から第二曲「珍しい話」でした。録音は1974年、自分調律のSchwesterです。この曲、弦楽四重奏のように暖かく弾きたいものです。
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ベトナム

2005-10-08 08:52:05 | 日々のこと(一般)
ではシンポジウムの合間に研究所訪問。新しい研究のネタを仕入れることはできませんが、研究・教育行政にあたる人達の日本に対する期待はわかりました。こちらも、これを機に優秀な留学生が来てくれるといいなと思いました。

珍しい話も見聞きしましたが、その筆頭はホーチミン廟でしょう。説明は自分で書くのは面倒なので、誰か知らない人のホームページですがここにお任せ。レーニン廟もこんなんだろうなと思いましたが、さながら現代のピラミッド。朝7時半~10時半という不思議な開館時間ですが、おかげで9時からのシンポジウム開始の前に十分見ることができました。

来るときは夜でわかりませんでしたが、帰りの空港までの景色ののどかなこと。電線の少ない緑の風景。牛や水牛の動力に頼る水田。広い円錐状の麦わら帽の農民。そんなのを車窓から見ながら、日本より暑くて湿気の多い国をあとにしました。
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大学

2005-10-07 06:40:25 | 日々のこと(一般)
とベトナムの交流事業としての公務出張で先週出張しました。オープニングにはPham Gia Khiem副首相と当方大学の学長が挨拶に立ち、レセプションでは日本大使館の高官が挨拶をするという物々しさでした。

前からベトナムの人たちはプラス思考だと思っていました。なぜそう思うかというと、一つは、ン十年前研究室の先輩に凄く頭の切れるベトナムの留学生がいて、その頃国内紛争でずっと帰国できないという境遇にあったにもかかわらず、何でもポジティヴに考える人だったのです。(一人のexampleじゃなんとも言えないでしょうけど)

二つ目は、戦前はフランス統治が続き、戦後日本の撤退後独立、その次にはあれだけの泥沼戦争のあげくアメリカを撃退した歴史があるのに、今はフランス文化を全く排除していないし、現在アメリカとも国交正常化、日本に対しては親日国筆頭クラス、95年にはASEAN加盟、99年にはやっかいなお隣さんカンボジアのASEAN加盟に奔走。これがプラス志向でなくてなんでしょう。(中国とだけは、有史以来中国の度重なる侵略を受けたり撃退したりし、現政権もソ連共産党の流れを汲んでいるので、必ずしも仲良くはないようですが。)

今回もいろいろな人に会い、ベトナム人・国のプラス志向印象を強くしました。アメリカや韓国企業に劣らず、日本企業もいろいろ進出しています。豊かさそのものはこれからですが、成長率はいま大きな国です。

#成長率・・・f’/f=(log f)’・・・「対数の怪」参照。
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ノーベル賞

2005-10-06 08:06:45 | サイエンス
の対象の一つが「光周波数の安定化と光コム」(Optical comb)だったわけですが、これはせいぜい10年くらいの新しい技術で、既にGPSなどにも実用になっている画期的技術です。大ざっぱには次のようなものです。

(1)基準レーザーの発信周波数を極めて安定にする。(常にJ.Hallが世界をリード)
(2)LiNbO3等の光変調器で強い変調をかける→超安定なサイドバンドがいっぱい立つ。
(3)サイドバンドは櫛の歯状なので光コムと呼ばれる。
(4)その光と未知の周波数の光を混ぜる→再近接サイドバンドとの間にウナリを生ずる。
(5)そのウナリは低周波電気信号として高精度周波数測定可能。(Haensch発明・開発リード)
(6)従って元々高周波である光の周波数測定としては未曾有の相対精度が得られる。

これって、私の元ページを丹念に読んだ方にはどこかで聞いたような話かもしれません。そう、ピアノ調律の原理とほとんど同じです。なぜ「人間の絶対音感や相対音感などよりはるかに高精度で調律ができる」のか? 二つの音(ドとミなど)を同時に弾くと、それぞれの倍音(間隔の違う「音のコム」が2系列)のうち近接した2本の間のウナリが、人間がカウントできる程度の低周波で聞こえるので、カウントの精度(1ヘルツよりずーーっと良い:1秒間に3拍子か4拍子かは誰でも区別がつく)でもって4200ヘルツ(ピアノの最高音)の調律ができるという寸法です。ちなみに調律の場合上記(1)の基準発振器は簡単に得られ、音叉または電気的発振器を使います。音叉で十分なので私は音叉を使います。
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ノーベル物理学賞

2005-10-05 00:58:01 | サイエンス
が量子光学で親しみのあるビッグ3に与えられました。Glauberはコヒーレント展開の創始者でそれに対して賞が与えられたわけですが、それ以外にIsing dynamics厳密解と核物理でも大きな仕事をしています。J.Hallは元々laser周波数安定化の最前衛で、その実験室は見ただけで絶句。Haenschも光コム発明後精度向上記録を次々塗り替え、記録更新予測を自らの退官時までしか描かないという自信!それとは別にアトムチップを初めて開発していますから、本当に凄い人です。ま、この3人なら当然ですね。
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今週の一曲

2005-10-02 18:33:06 | 詠里庵・新着案内
を更新しました。元ページはここ。直接聴きたい場合はこれをクリック。これは種明かしをすると、先週の続きです。

さてその先週の一曲ですが、シューマン「子供の情景」から最初の曲「異国にて」でした。録音は1974年、自分調律のSchwesterです。
実は一昨日ベトナム出張から帰って来ました。確かに異国でしたが、後味の良い出張でした。

シューマンの「異国にて」・・・こんなに単純な構造でこんなに薫り高い詩的な音楽ってあるんでしょうか。まるでシューベルトの「野バラ」「楽に寄す」のようです。話はシューベルトの映画のことになりますが、「あなたが『野バラ』の作曲者ですか? こんなに有名になった歌だから、もっとお金のありそうな人かと思いました」と言われたみすぼらしいシューベルトは「私の歌は誰でもすぐ覚えられるので楽譜が売れないんです」と答えました。実話かはわかりませんが、いいやりとりですね。
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