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詠里庵

2018年の墓碑銘

2018-12-31 07:40:12 | 日々のこと(一般)
年の瀬にこのブログ恒例の「今年の墓碑銘」です。主に科学分野と芸術分野から10人、独断で書いていますが、科学と芸術以外の人もとりあげています。

[1] 古在由秀(2月5日。日本の天文学者。1928年4月1日生まれ。享年89才)
初代国立天文台長。私的には著書「月」 (1968年) (岩波新書)が懐かしい。出版から50年経つので、誰かまた書いてくれたら新知見満載を期待したいところです。

[2] スティーヴン・ホーキング(3月14日。英国の物理学者。1942年1月8日生まれ。享年76才)
「ホーキング、宇宙を語る」は、彼でないと書けない名著だと思います。

[3] レイモンド・N・ウィルソン(3月16日。イングランドの物理学者。1928年生まれ。享年89才)
望遠鏡の設計、特に能動光学に功績。すばるなどは能動光学を駆使している。建設中のTMTにももちろん採用されています。これについては応用物理学会誌の解説を参照あれ。

[4] ホセ・アントニオ・アブレウ・アンセルミ(3月24日。ベネズエラの音楽家。1939年5月7日生まれ。享年78才)
エル・システマの設立者(1975年)。エル・システマとは貧困児童のための公的融資による音楽教育プログラムの有志組織。これによるシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラ(1999年設立)が有名。同システム出身で指揮者として世界的に活躍するグスターボ・ドゥダメル(本原稿執筆時点で37才)の指揮は南米の躍動感に満ちています。

[5] 晝馬輝夫(3月29日 - 晝馬輝夫、日本の実業家、技術者、元浜松ホトニクス社長)
小柴教授「直径50cmの光電子増倍管を作ってくれ」
晝間社長「はぁ?」
小柴教授「それも、ものすごい数が必要なんだ」
晝馬社長「ありえない」
1年後・・・
晝馬社長「できましたよ」
小柴教授「ありがたい。が、すまん。金はない」
晝間社長「もってけドロボー」
20年後・・・
小柴教授ノーベル賞

[6] 加藤剛(6月18日。俳優。1938年2月4日生まれ。享年80才)
科学とも音楽とも関係ありませんが、懐かしい俳優さんです。印象に残っている順に挙げると、まず「忍ぶ川」。モノクロですが、内容も情景も美しい映画でした。栗原小巻を初めて知りました。つづいて大河「風と雲と虹と」で平将門を主演。このとき初めて草刈正雄や露木茂も知りました。吉永小百合はその前から超有名でした。そして「砂の器」。これは原作小説は小節として、その映画化は映画として、両方ともすばらしかった。主演の加藤剛はもちろん良かった。

[7] チャールズ・カオ(9月23日。香港・英国・米国籍を持つ工学者。1933年11月4日生まれ。享年84才)
光ファイバーの提唱者として2009年ノーベル物理学賞を受賞。2009年よりずっと以前に、この方の講演を聴いたことがあります。もちろん光ファイバーの話でした。柔和な笑顔と語り口を記憶しています。日本では「西澤潤一先生の発想の方が早かった」という話もありましたので、やや複雑な思いでカオ氏の講演を聴きました。この辺については9月24日のこのブログを参照ください。

[8]西澤潤一(10月21日。日本の工学者。1926年9月12日生まれ。享年92才)
チャールズ・カオについて書いたと思ったら、またすぐ西澤先生とは、何の因果でしょうか。

[9]ヨセフ・モルナール(11月21日。オーストリア生まれ、日本在住のハープ奏者。享年89才)
11月22日のこのブログを参照ください。

[10] 大仲恩(おおなか めぐみ)(12月3日。日本の作曲家。1924年7月24日生まれ。享年94才)
代表的作品は「サッちゃん」と訃報で紹介されていて、確かに童謡作曲家として有名。それにしてもすごくユニークな作品ばかり。初めて「おなかのへるうた」を聴いたときは舌を巻いてしまった。最初の13音がソとドのみ(それぞれ2個と11個)、続く12音がレとラのみ(それぞれ11個と1個)。これで音楽になる、しかもとても面白い音楽になるのだから、驚き。「犬のおまわりさん」も面白い。どれも日本語の喋り言葉の抑揚をそのまま使って作曲しています。


3月が多いです。昨年もそうだったんですよねー。番外編も:
[a] ヘスス・ロペス=コボス(3月2日。スペインの指揮者。1940年2月25日生まれ。享年78才)
[b] ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(6月16日。ロシアの指揮者。1931年5月4日生まれ。享年87才)
昨年の番外編のスタニスワフ・スクロヴァチェフスキが長い名前だったが、この人も長い。
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今夜のNHKスペシャル

2018-12-22 23:41:20 | 日々のこと(一般)
平成史スクープドキュメント 第3回 “劇薬”が日本を変えた ~秘録 小選挙区制導入~」は、見るつもりで見ました。というのは、1996年(平成8年)から実施の小選挙区比例代表並立制が1994年(平成6年)成立したとき、世の中は世相もマスコミも一致して「政治改革に反対する者は抵抗勢力である。そして政治改革イコール小選挙区制である」とする風潮だったのです。声高な主張ばかり説明なく繰り返され、たまになされる説明もさっぱりわからなかったことに違和感を感じたのを記憶していたので、今さらながら経緯を知りたいと思ったのです。

番組は「秘録」という看板に偽りなく大変面白かったのですが、小選挙区比例代表制の善し悪しや、導入されたプロセスの善し悪しがスッキリわかったわけではありません。わかったのは、制度を変える・決めるというのはとても難しいことだなということです。顔や声になじみのある政治家たちがこの問題に対してどう考えどう振る舞ったか、初めて知ったことも多々ありました。番組の中身については、政党や派閥や個々の政治家の信念や利害が絡んで錯綜とした話なので、結論はおろかストーリーも竹を割ったようなものではありません。再放送があればぜひ見てください。

中身以外の感想を2つ、メモ代わりに書いておこうと思います。
ひとつは、ドキュメンタリーといいながらNHKに(民放でも)よく見られる「わかりやすい、感動的なストーリー」的演出を敢えて避けているのが良かったなと思いました。私はプロジェクトXがあまり好きでなかったのですが、それは取材を料理づけしてドラマに仕立て上げた臭いがプンプンしたためです。

もう一つは、制度や仕組みを決めるときに、その意図とは思いもよらない方向に他の政党・派閥・政治家たちや有権者たちが動く可能性を見極めることの難しさです。昨今の類似の例で言うと、来年10月からの消費税増税の景気対策として導入するポイント還元の悪用の懸念がありますね。なので政治家だけで「よかれ」と考えるのでなく、どうなるかをより広い知恵を借りて予測することはできないかということです。実際に悪用した人たちに知恵を借りるのはまずいのかもしれませんが、新聞にはときどきゲーム理論の専門家が面白い話を書いたりしています。ノーベル経済学賞ってどのくらい意味があるのかわかりませんが、アメリカでは政策決定時に諮問されることがあるらしいので、あながち無駄な話でもないのではないでしょうか。
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いまEテレで

2018-12-02 22:26:04 | 日々のこと(音楽)
アラン・ギルバート指揮北ドイツ放送交響楽団(いや今はNDRエルプフィルハーモニーというそうだ)がブラ4をやっている。
枯れた、渋いこの曲を、水が流れるように、それでいてダイナミックに演奏していて、とてもいい感じ。
アラン・ギルバートは一見日本人に見えるが、日系ということで納得。
それにしても酒好きのおじさんのような風貌だが、暗譜でやっている。音楽が生き生きと伝わってくる。
この交響曲を同じく暗譜で指揮するカラヤンが常に目を閉じているのに対し、この人は常にバッチリとオケを見てコミュニケーションがとれている感じだ。
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