Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

洗脳殺人

2012年10月29日 | 一般
 
 
 
 
 
 ハチの中で最も凶暴とされるオオスズメバチの巣は幾層にも地中に連なり、専門家も幼虫の数と底の見えない姿に驚くことがあるそうだ。近づけば、命を失う場合もある。危険度の高さに身の毛がよだつ。

 今、世間を騒がしている兵庫県尼崎市の連続変死事件も、別の死体遺棄で起訴された女(64)の周辺で新たな事実や疑惑が次々と浮かび、驚く。家族や類縁が複雑に絡み、事件は幾層にも連なって見える。

 報道によると女は豪華な自宅で集団生活し、暴力で支配。介入された家族は崩壊、資産が消えたという。7年前は沖縄で義妹の夫が転落死して保険金が動いた。身近にもあった事件に恐ろしくなる。

 女の周辺では民家の床下から3人の遺体が発見され、別の遺体のコンクリート詰めも明らかになっている。事件では8人が死亡・行方不明とされる。女が首謀者であるならば、まさに「鬼の所業」である。

 謎めくのはなぜ周囲をマインドコントロールすることができ、犯罪が連鎖していったかだ。普通の日常に潜んでいた深い闇。捜査の目が十分だったかも含め疑問がわく。

 ハチの世界では、働きバチを得て生きる女王バチは絶対的で、駆除では奥に続く巣を徹底的に掘り起こすという。第二の事件を未然に防ぐ意味でも、警察や司直は事件の徹底解明を急いでほしい。(中島一人)
 
 
 
 
 

沖縄タイムス 2012年10月28日 09時30分



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「謎めくのはなぜ周囲をマインドコントロールすることができ、犯罪が連鎖していったか」。

20世紀の終わりに起きた、北九州家族監禁殺害事件でもこのような疑問が聞かれた。

「なぜ」と聞くのは、家族同士が暴力をふるいあって、殺害するように仕向けさせる、なんてことが、人間に起きうるはずがない、という考え方を信じているからだ。

逆なのだ。人間は本来非常に弱い存在であり、常識人に備わっている倫理観などは、平和で安定した環境に置かれている、という条件のもとでのみ機能しているのであって、異なる環境、異なる処遇という条件下ではそんなものはもろく崩れてしまうのだ。

人間の倫理観、常識感覚という内面性が他人にまったく乗っ取られてしまい、他人の思うままにコントロールされる、というようなおどろおどろしいことは信じたくないだろう。だがそれは古い時代から当たり前に行われてきたことなのである。

20世紀に入って、中国共産党が西側の捕虜の「思想改造=共産主義への転向」を目的として編み出した説得プログラムがある。それが「洗脳 (Brainwashing) 」だ。名づけたのはアメリカ人のジャーナリストだという。朝鮮戦争で捕虜になったアメリカ人兵士が受けた尋問と教化を取材して、中国共産党による思想改造の一連のプログラムを指して使った言葉だとされている。

個人の自由意思もアイデンティティも破壊してしまう「魔術的な奥義」というイメージで人々に広まりショックを与えたため、社会心理学者たちによって、詳細に研究された。その研究にはアメリカ軍も「軍事的価値」を認めて協賛したという。

洗脳の手法については、
①解凍
②変革
③再凍結
という手続きが取られたのだという。

「解凍」とは、洗脳される対象の人間がそれまでの生活体験、教育などで培われた人となり、その人らしさ(個性)などを壊してしまう過程をいう。「解凍」の操作方法は、食事制限、睡眠制限、プライバシーの剥奪(トイレやオナニーも監視されながら行われる)、果てしなく続く苦痛(暴行、拷問、尋問)、独房での監禁、仲間からの非難、仲間を裏切らせられ、そのことへの自責、問いかけには一切答えてもらえないことなどが加えられる。

「解凍」手続きの効果がまさに自分の人となり、自分らしさを作っている信条・信念への自信喪失、さらに進んで自己概念(アイデンティティ)喪失に至らせられるのである。そうした自己概念の喪失からくる強度の不安に、不慣れな環境からくるストレスも相まって、捕虜は絶望と恐怖に陥れられる。同じ捕虜仲間への非難が始まり、それが自己のプライドを傷つける。仲間を裏切ったという恥の気持ち、罪悪感の気持ちによって、自分で自分のプライドを破壊し始める。

人間にとってもっとも避けたいものは、恐怖でもなく、不幸でもない、実は「不安」だ。人は不安から逃れるためならば不幸な環境で生きるほうを選ぶ。「解凍」の最終段階では捕虜たちは自分を全く喪失するという極度の不安に陥れられている。こうなれば捕虜たちはどんな自白も始めるという。



話が脱線するが、日本の警察もこの手法を使って自白を引き出してきた。被疑者がいくらほんとうの主張を繰り返しても一切聞き入れられない。いつ帰れるかわからない、会社にも行けない、そんな状況に置かれたうえで、ただただ警察が書いたシナリオ通りに喋らなければ罵倒や侮辱が延々と続けられ、それが被疑者のアイデンティティを傷つけ、自己喪失に誘導されるのだ。これが冤罪の生じる根本原因だ。



話を元に戻そう。捕虜がそこまで追い詰められた時点で、今度はやさしい処遇がはさまれるようになる。手錠や鎖などの身体的拘束が解かれ、睡眠時間が与えられる。褒められたり、食事がふやされたりする。この段階から「変革」手続きに入る。完全な自己喪失に陥っている捕虜は自分らしさを与える何かにすがりつきたい心理状況にあるときに、思わぬ寛容が示され、相手にその寛容にすがるようになる。それとともに、相手が主張する共産主義イデオロギーを自分らしさの土台として受け入れるようとするのだ。そうすることによってアイデンティティーを獲得しようとするのだ。人間は自分が「透明(酒鬼薔薇聖斗・談)」であり続ける不安(=アイデンティティを喪失した不安)には決して耐えられない生き物なのだ。

そして「再凍結」段階で共産党員たちは、新しい価値観を受け入れた捕虜に積極的に支持と快適な応対を与える。それによって捕虜たちは、世界が一気に広がり、解放されたような気持になるのだという。

このような人格改造プログラムはどんな人間であっても有効な手法だ。それは頻繁に起こる冤罪の自白、カルト宗教事件、自己啓発セミナー詐欺、そしてこのような犯罪が起こり続けていることから明らかにわかるだろう。人間はこれほどに弱い生き物なのだ。だからこそ安定した生活環境がすべての国民に保障されなければならない。そのためにも戦争による極限状況を回避し、社会保障を十分に整備しなければならない。そして教育をすべての国民にいきわたらせるためにできるだけ無償で提供して、平等に教育の機会を提供する。それは人間が理性的に行動し続けるのに、また文化的な暮らしを続けるために最低限必要な条件なのだ。だからこそ日本国憲法は生存権の保障をしたのだ。人間が文化的に生きるために必要な保障を与える義務が日本国家にはある。「義務」を自覚しなければならないのはわたしたち国民ではなく、国なのだ。





こういう事件は決して異常ではない。いや、むしろ、人間が理知的で常識人であり続けられる条件というのはかなり狭い範囲に限られているということだ。その範囲から外れた条件下では人間は理性を保つことができなくなるものだ、ということを、この手の事件からわたしたちは思い知ることにしよう。ちょっとニュースで流れ始めた情報によれば、角田美代子は子どもの見ている前でその親を罵倒し、侮辱し、その一方で角田自身が子どもにやさしく接したという。子どもを自分に取り込むためだ。

子どもの心に築かれてきた親へのそれまでの考え方=親をたてる気持ちの土台、あるいは根拠を破壊したのだ。そして家族自身に家族へ暴行を加えさせ、それによる罪悪感、自己嫌悪感を植え込んでいったようだ。まさに「洗脳」の手続きが施されている。遠くからこのニュースを聞けば異常に思えるかもしれないが、これは単に「洗脳」の効果に過ぎない。決して異常な出来事ではない。「洗脳」という手法の前ではすべての人間がこのようになってしまうのだ。



ただ、ひとつ希望を言っておくと、社会心理学者による研究の結果、「洗脳」という手法は、洗脳を受けた被害者の人格を永久に変えさせる効果については決して安定的ではなかった。被害者の多くは元の暮らしに戻ると、洗脳以前のその人らしさを取り戻した。冤罪の自白をした人は裁判で主張を覆したりすることがあるが、それも「洗脳」という手法が、特殊な状況下においてのみ効果を持つことの表れだ。このことからも、平和と安定という環境が人間には必要不可欠であることがわかろうというものだ。





最後に気分をまた落そう。

じつは20世紀の後半、人間の感情や行動、思考を半永久的にコントロールする手法が開発された。この手法では身体的暴力はもはや使用されない。社会心理学の知見、生理学の知見、脳生理学の知見を効果的に活用した「マインド・コントロール」という手法がそれだ…。










「信じるこころの科学」/ 西田公昭・著参照





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【刑務所実験=二木一夫】

 

 参加者に精神的苦痛を与え、倫理性が問題となった心理実験が41年前、米スタンフォード大で実施された。大学生を看守役と囚人役に振り分けた「刑務所実験」などと呼ばれるものだ。開始の次の日、囚人役が抵抗を示したことから変化が出始める。


 看守役が鎮圧し、罰を科す一方、加担しなかった囚人役を厚遇すると、囚人役は互いに疑心暗鬼となった。看守役は理不尽な要求をし、腕立て伏せなどの罰を次々と加えるようになり、精神的に変調をきたす囚人役も出た。そのため、実験は6日間で中止される。心身の健康な学生がたまたまもらった役割にたやすく没入していく過程は、衝撃を与えた。


 知人の犯罪心理学者は「人間は状況の力に支配されてしまうことを、この実験は示した。常識ではありえないと思っても、置かれた立場に甘んじてしまう。人間は弱い」と解説する。そして、人間の最も弱い面と凶暴な面が出たのが、兵庫県尼崎市の連続変死事件ではないかと言う。


 暴力によって心とカネを支配され、命まで失ったのは、それまでまっとうに生きてきた、私たちの身近にいるような人たちだ。家族は分断され、逃げ切ることもできなかった。どれほど過酷な状況に置かれていたのかは、想像を絶する。


 この心理学者が「尼崎と同じ構図だ」と言う北九州市の連続監禁殺人事件で、7人殺害の共犯とされた被告の女は、主犯によるDV(ドメスティックバイオレンス)被害の強い影響を受け、正常な判断力が低下していたと控訴審で認定された。被害者が加害者になり、その逆の役割になりうるのも暴力支配だ。尼崎の事件を解明するには、そういう視点も必要だろう。(社会部)






毎日新聞 2012年11月01日 大阪朝刊






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1 コメント

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流通犯罪 (山三菱雄)
2014-12-27 22:07:11
 大同小沢の心理作戦だな。
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