自分を探す旅
日常生活の中で、ふと、自分は何のために生きているのだろうか、自分はこれでよいのだろうか、これから自分はどうなるのだろうかという、さまざまな自己への問いかけが生まれることがある。
わたしたちは、このような心にわきあがる問いに対して、自分なりの答えを見つけ出そうとする。そのような試みのひとつが倫理、すなわち人間の生きる道筋を考えることである。人間は生きている限り、自己の生き方を問いかけ、、倫理を模索し続ける存在といえるかもしれない。
地球には、今まで無数ともいえる多様な生物が生まれてきた。その中でわたしたち人類は、あるときから命の神秘と価値に目覚め、命を守り、成長させることが善であり、命を傷つけ、破壊することは悪であることを悟った。人類だけが倫理や道徳という文化を持つことは、命の価値を自覚できる唯一の生きものとして、命への責任のあらわれと言えよう。それはまた、命を生み、育てる奇跡的な地球の自然への畏敬の念にもつながる。倫理をはじめ、哲学、宗教、芸術などの文化が生まれた根源は、そのような人類の命への目覚めや、自然への畏敬にあるともいえよう。とくに倫理は、与えられた命の重みをかみしめ、命を生み出した自然への畏敬の念を新たにすることでもあるだろう。
わたしたちは、このような人類の精神が目覚める歩みのなかに生きている。それは、自己とは何か、人間とは何か、人生とは何かを問い続ける長い長い心の旅である。その旅の道しるべとして、先人たちのさまざまな思想について学んでみよう。