Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

TPP 国民が知らなければならないほんとうのこと (2)

2013年03月31日 | 反アメリカンスタンダード宣言

 

 




「…それから最後にこのことを強調しておきたい。国内には『TPPに参加すれば有事の際に、米国に守ってもらえる』との声があるが、米国の対外政策の歴史を見てほしい。幻想から覚醒し、次世代のために全力で守るべきこの国の宝(例:世界にまれにみる国民皆保険制度など)のほうに目を向けてほしい(堤未果・ジャーナリスト/ 「まだ知らされていない壊国TPP・主権侵害の正体を暴く」/ 日本農業新聞・編)」。


安倍さんの政策はみなアメリカに迎合するのを主な動機としています。TPP交渉参加もそうです。新聞は数少ないメリットと思しきことしか伝えません。推進しようとしているひとたちの腹の底には、緊張を高めることしかできない中国外交で、これからも緊張を高め続けることができるように、アメリカの軍事力の応援を期待している事があるかもしれない。


対中、対韓強硬派の右翼たちは少なくとも、いざ中国との軍事衝突となったらアメリカ軍に頼ろうという気持ちがあったのだろう、少なくとも安倍さんたちには。だがアメリカ軍は少なくとも尖閣をめぐる衝突で日本に加勢する気持ちはない。最近ようやく安倍さんにもそれが理解できつつあるようだが。が、TPP交渉参加は、軍事同盟強化を謳う安倍さんの真骨頂だ。


右翼に扇動されない、いまや少数の市民派の人びとはよもやアメリカ軍が日本を助けるなどというヨタ話に希望を置いたりはしないだろう。日米軍事同盟とは何か、それをはっきりさせておくのに役立つ文章を二つ三つ紹介しておこう。

 



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なぜ在日米軍があるのかと言えば、日本国民は当然「日本を守るためだろう」と思います。では、米国人はどのように思っているのでしょうか。2010年12月24日付け朝日新聞は「米軍は何のために日本にいるのか?」という世論調査を行いました。回答結果は次の通りです。音国務長官の


・日本の防衛のため          日本42%     米国 9%

・米国の世界世界戦略のため    日本36%     米国59%
・日本の軍事大国化を防ぐため    日本14%     米国24%


この調査結果はある意味で驚きです。歴史的なことを少し見ていきたいと思います。


日本は1951年講和条約を結びます。この時、吉田茂首相は講和条約を早期に締結するために、「米軍の駐留を認めてもよい」と米国側に述べています。元国務長官のダレス特使は日米安保条約の締結交渉で、米国の方針を「われわれは日本に、われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保できるだろうか、これが根本問題である」と指摘しています。


この意志は、日米行政協定(後、基本的に同じ内容で日米地位協定に引き継がれている)に巧妙に組み込まれています。ダレスは「フォーリン・アフェアーズ」1952年1月号で、「米国は日本を守る義務をもっていない。間接侵略に対応する権利はもっているが、義務はない」と書いています。


米国が日本に自国の軍隊を置いているのですから、質問の答えは当然、米国人の方がより正解に近いと思われます。その米国人が、「日本の防衛のため」は9%です。ところが、日本人は42%もいるのです。これは明らかに、日本人が操作され、誘導された結果です。


1960年の安保条約では「日本国の施政下への武力攻撃のときには、自国の憲法上の規定および手続きにしたがって対処する」としています。米国の憲法では交戦権は議会にありますから、この約束は「議会にお伺いを立てます」以上の意味はありません。


歴史的経緯を踏まえれば、米国の日本駐留は「日本の防衛のため」ではなくて、「米国の世界戦略のため」なのです。しかし、日本は「思いやり予算」で、基地受け入れ国負担では全世界の半分以上を負担しています。さらに自衛隊を米国戦略の一環に使う動きが強化されています。「米軍の駐留は日本の防衛のため」という宣伝が行われてきた理由は、ここにあります。

 

 




(「これから世界はどうなるか」/ 孫崎享・著)


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アメリカ自身には積極的に日本を防衛しようという気持ちはないけれども、お花畑な日本人右派が日本国民に対して、アメリカは日本防衛をしてくれると期待するよう宣伝するのを放置してきた。それは「自衛隊を米国戦略の一環として使役する」意図があるからです。たとえば1990年代には、このような報告書がアメリカ議会で作成されました。



 

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アメリカの対日戦略会議の内容は次のようになっています。アメリカの対日戦略会議というのは、いわゆる “ジャパン・ハンドラーズ” です。ジョゼフ・ナイ(ハーバード大学名誉教授、元国務次官補)が興味深い報告書を知らせています。「対日超党派報告書」と呼ばれているものです。


①東シナ海、日本海近辺には未開発の石油、天然ガスが眠っており、その総量は世界最大の産油国サウジアラビアを凌駕する分量である。アメリカは何としてもその東シナ海のエネルギー資源を入手し寝ければならない。


②チャンスは台湾と中国が軍事衝突を起こした時である。当初、米軍は台湾側に立ち、中国と戦闘を開始する。日米安保条約に基づき、日本の自衛隊もその戦闘に参加させる。中国軍は米日軍の補給基地である日本の米軍基地、自衛隊基地を本土攻撃するであろう。本土を攻撃された日本人は逆上し、本格的な日中戦争が開始される。


③米軍は戦争が進行するに従い、徐々に戦争から手を引き、自衛隊と中国軍との戦争が中心となるように誘導する。


④日中戦争が激化したところで、アメリカが和平交渉に介入し、東シナ海、日本海でのPKO(平和維持活動)を米軍が中心となって行う。


⑤東シナ海と日本海での軍事的、政治的主導権をアメリカが入手することで、この地域での資源開発に圧倒的に優位な権利を入手することができる。


⑥(この)戦略の前提として、日本の自衛隊が自由に海外で軍事活動できるような状況を形成しておくことが必要不可欠である。




実に怖ろしい内容です。このアメリカ政府の戦略文書は、クリントン政権時代、CIAを統括する大統領直属の国家安全保障会議NSCの議長で、東アジア担当者でもあったジョゼフ・ナイが上院下院の200名以上の国会議員を集めて作成したものです。対日本への戦略会議の報告書です。

 

 




(「今、『国を守る』ということ」/ 池田整治・元自衛隊陸将補・著)



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どうです、アメリカの右派というのは人間味あふれるひとたちではないですか。わたしは中国共産党や北朝鮮などよりもアメリカ右派の方が何倍も怖ろしいです。ところがこんな連中に安倍さんはなんと媚を売った演説をしているのです。




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2月、安倍首相は訪米した。このとき、首相訪米の性格を如実に示す出来事があった。


2月22日、安倍首相は米国のシンクタンク、戦略国家問題研究所(CSIS)で、「日本は戻ってきた」と題する講演を行った。その場で安倍首相は、「ジャパンハンドラー」に媚を売る以外の何物でもない態度を恥ずかしげもなく晒したのである。


「ハムレさん、ご親切な紹介ありがとうございます。アーミテージさん、ありがとうございます。グリーンさんもありがとうございました。そしてみなさん方本日は、おいでくださいましてありがとうございます。昨年、リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイ、マイケル・グリーンやほかのいろんな人たちが、日本についての報告書を出しました。そこで彼らが問うたのは、日本はもしかして、二級国家になってしまうのではないだろうかということでした。アーミテージさん、わたしからお答えします」…と。


ジャパンハンドラーとして知られるアーミテージ氏に報告するという形で演説を始めている。この神経はいったい何だろう。演説の冒頭は、ふつう重要な来客に向けて発するものであり、安倍首相の言説は、今回の演説の主要なゲストがCSIS所長のハムレ氏、アーミテージ氏やグリーン氏だったことを示している。とても一国の首脳による演説の主要ゲストのレベルではない。一方で、現役の政治家や政権担当者は出てこない。つまり、オバマ政権の中枢にある人々は、安倍首相には重要な聴衆ではなかったのだ。


ハムレ氏はCSIS所長といっても、元米国防副長官レベルである。


アーミテージ氏は元米国務副長官ではあるが、2003年7月にCIAリーク事件で糾弾された人物である。CIAリーク事件とは、ウィルソン元駐イラク大使代理が、イラク戦争に関して2003年7月6日付けニューヨーク・タイムズ紙に、イラクの核開発についての情報がねじ曲げられていると寄稿して世論に訴えたことに端を発する。これを受け、2003年7月14日、ウィルソンの妻がCIAエージェントであるとの報道がなされた。露骨な報復である。CIA工作員であることが表向きにされれば活動はできなくなる。(ブログ主註;たしかナオミ・ワッツ主演で映画にもなったと思う。タイトルは忘れた)このリークにアーミテージ氏が関与したことを認めたため、米国内での同氏の威信は著しく低下した。


マイケル・グリーン氏はジョージタウン大学准教授に過ぎず、ジョセフ・ナイ氏もハーバード大学名誉教授であっても、公的には国務次官補経験者に過ぎない。


このレベルの人びとに、一国の首相が演説の冒頭でお礼を言わなければならないほど、来場者のレベルが低かったのだろう。


しかし、ハムレ氏、アーミテージ氏、グリーン氏には共通点がある。それは彼らが「日本を操る人びと」、すなわちジャパンハンドラーと呼ばれるグループに属していることである。こうした人びとに一国の首相が米国の公けの研究所でお礼を述べるというのは、“ご主人” さまにお礼を言うようなものである。

 




 

(「国家主権投げ捨てる安倍政権」/ 孫崎享・著/ 「世界」2013年4月号より)


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右翼のみなさん、冒頭のへつらいの文句を言う相手が、中国の最高権力者である習近平さんだったら、どう思いますか。まずまちがいなく、こめかみの血管が見る見るうちに膨張して破裂するでしょう。ところがこのセリフが言われたのはアメリカのオバマ大統領でもなく、その側近でもない、日本の自衛隊を道具にして、戦争を引き起こし、日本近海のエネルギー資源への優先権を獲得しようというアイディアを打ち出した、下級クラスの人びとに対してだったのです。


わたしたち日本人はこんな人に政権をゆずったのです。安倍さんの「ご主君」であるアーミテージ氏やナイ氏は二級クラスの人びとではあるが、対中国強硬派でもあります。日本の右派の人びとや安倍さんとはこの点で気持ちが通じ合うのでしょう。アジアへの偏見と、個人的な劣等感を埋め合わせる民族主義的優越感を達成しようとする人びとによる対中国強行突破路線を選択したあげくの売国行為です、TPP参加も自衛隊の集団的自衛権行使解禁も。池田さんの文章の⑥にあったように、自衛隊をつかった対中国代理戦争を実現させるためにも、自衛隊が海外で戦争ができるように環境を整える必要があり、安倍政権と自民党、民主党右派と石原慎太郎と維新塾の橋下が憲法改正をもくろんでいます。


だますひとたちは確かに悪い。無慈悲で他人の痛みに何の同情も持つことができない。社会人の失敗作のような人たちです、だますひとたちは。だが、だまされる人たちはじゃあかわいそうなのかと言えば、それはちがう。だまされる人たちはただただ愚かなのだ。知力が低いのだ。木ばかり見て森を俯瞰できないのだ。これはひょっとしたら、人間界における「自然淘汰」の特殊な形態なのかもしれない。自然界では弱者が淘汰されてゆく。人間界では愚か者たちが食い物にされたあげく捨てられて、淘汰されてゆくのだ…。






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TPP 国民と国会議員が知らなければならないほんとうのこと (1)

2013年03月13日 | 反アメリカンスタンダード宣言






毎日新聞の大阪版2013年3月18日付朝刊一面に、こんな記事が掲載されていた。


「毎日新聞世論調査:TPP交渉、支持63% 内閣支持、70%に上昇」


会社の食堂で読んだから今は手元にないので正確には書けないが、2面には、1500世帯ほどにランダムに電話をかけ、六十数パーセントの有効回答を得た、という。およそ1000人弱だ。

内訳は、
「毎日新聞は16、17両日、全国世論調査を実施した。安倍晋三首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を正式表明したことについて
「支持する」との回答は63%で、
「支持しない」の27%を大きく上回った。
 安倍首相の経済政策により、景気回復が
「期待できる」と答えた人は65%に上り、
「期待できない」は30%にとどまった。
安倍内閣の支持率は70%に達し、2月の前回調査から7ポイント上昇。
「支持しない」は5ポイント低下し、14%だった。


 TPP交渉参加の支持は30代以上の世代で6割前後に及び、不支持を上回った。一方、20代では不支持が50%を占め、支持の47%と逆転。市場開放で雇用機会が奪われることに警戒感もうかがえる。地域別にみると、北海道の不支持は53%に上り、支持40%より高い」。

 

 

みなさん、こんな数字を見せられて、「ああ、TPPは参加がトレンドだな、ま、いいか」などと思わないでください。「世界」の今月号に、ずっとTPPの危険性を訴え続けてこられた鈴木宣弘東京大学助教授の魂を絞り出すような訴えが掲載されています。今回、それをご紹介します。


まず、世論調査の数字をどう読むかについて、鈴木助教授はこのように述べておられます。

 

 

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各種世論調査では、TPP推進の声が多いかのように出ているが、人口の4割が集中する首都圏中心に行われる、わずか1000人程度の世論調査の結果は誤解を生む。首都圏の人口を支えているのも、北海道から沖縄までの全国の地域の力である。人口は都市部に多くても、単純に人の数だけで評価されるべきではない。


全国の多くの地域がTPPに反対している。都道府県知事で賛成と言っている方は6人しかいないし、都道府県議会の47分の44(44/47)が反対または慎重の決議をし、市町村議会の9割が反対の決議をし、地方新聞紙はほぼ100パーセントが反対の社論を展開している。


だから、都道府県ごとに世論調査をして47の結果を並べてみれば、圧倒的に反対の声が大きいはずである。だからこそ自民党議員の6割以上がTPP反対を唱えているのである。


しかし、このような全国各地の地域社会の声が、東京中心のメディアの発信では伝わらない。全国の真の声を共有しなくてはならない。

 

 

 

(「世界」2013年4月号/ 「許しがたい背信行為」/ 鈴木宣弘・著)

 

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現に、安倍首相の参加表明後、山形県では850人の反対集会が行われた。毎日新聞の世論調査の賛成派600人ほど(1000人中の60パーセント強)よりも多い人数だ。第一、大手新聞社は企業役人サイドに立った情報しか流さないのに、国民がどうして正確な判断を下せるだろうか。鈴木助教授は国民に隠されてきた情報をいくらか紹介してくださっている。

 

 

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安倍総理は、オバマ大統領から「聖域なき関税撤廃を前提としないことを明示的に確認した」としているがしかし、共同声明は、「全品目を対象として、高い水準の協定をめざす」ことを確認したうえで、「交渉に入る前に全品目の関税撤廃の確約を一方的に求めるものではない」と形式的には当たり前のことを述べているだけで、「例外がありうる」とは言っていない。

 


「早く入れば交渉が有利になる」、「交渉力で例外も作れるし、嫌なら脱退すればいい」というのもきわめて困難である。そもそも米国は、「日本の承認手続きと言9か国による協定の策定は別々に進められる」と言っている。最近、米国がメキシコやカナダの参加を認めたときも、屈辱的な「念書」が交わされ、「すでに合意されたTPPの内容については変更を求めることはできないし、今後、決められる協定の内容についても口を挟ませない」ことを約束させられている。つまり、日本がどの段階で交渉に参加しようが、法外な「入場料」だけ払わされて、ただ、できあがった協定を受け入れるだけで、交渉の余地も、脱退で逃げる余地もない。

 


共同声明では「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項」について日本が早急に「入場料」を支払うよう明記された。「その他の非関税措置」についても対処を求められた。例外品目確保の保証を得られず、「入場料」だけを一方的に求められるようなものだ。この「入場料」交渉については、国民にも国会議員にも隠されてきたが、今回の共同声明で「公然の秘密」になった。国民には「情報収集のための事前協議」とウソを言い続け、水面下では、自動車、郵政、BSE(狂牛病)の規制緩和など、米国の要求する「入場料」に対して必死で応えようとする裏交渉を進めてきた。

 

 


(上掲書より)

 


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一番めのことについては、わたしたち素人でも見当がついていました。二番めについては、安倍さんは交渉作りリードも撤退もできないことを知っているのです。それはこのあと引用する「しんぶん赤旗」の記事にある安倍首相の反応を読めばわかります。三番めについて、みなさんはどう思われたでしょうか。「保険部門」の規制撤廃を「入場料」として決めるようにという交渉が、アメリカの要求にこたえようとする方針で裏で進められてきており、それが国民と、そして国会議員から隠されてきた、というのです。いったい、TPP導入を推進しているのはだれなんでしょう。


みなさん、日本を愛する人たち、右翼の人は読みたくない「世界」ですが、この記事と続く孫崎さんの記事だけは目を通してください。買うのが嫌なら図書館で読むなどして。この記事と孫崎さんの記事はつづけてわたしのブログで紹介してゆきます。


以下、しんぶん赤旗の記事2本を引用しておきます。

 

 


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■首相“合意ずみルール変更できぬ”

 


 安倍晋三首相は会見で、「TPPが目指すものは太平洋を自由にモノやサービス、投資などが行き交う海とすることだ。世界経済の3分の1を占める大きな経済圏が生まれる」と強調。中国、韓国、インドネシアなどアジアの主要国がTPPに参加していないことには触れず、「日本だけが内向きになったら成長の可能性もない、優秀な人材も集まらない」とし、「アジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組み」とTPPを絶賛しました。


 安倍首相は、農業や医療保険制度などへの深刻な影響が懸念されていることに対しては、「だからこそ衆院選挙で聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対すると明確にし、国民皆保険制度を守るなど、五つの判断基準を掲げた」と強弁。交渉参加表明によって公約を踏み破っているという批判には耳を貸さず、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、国益にかなう最善の道を追求する」とのべるだけで、何の担保も示しませんでした。しかも、「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実」と述べ、不利益な条件を受け入れざるを得ないことを認めました。


 また記者団から、「国益に反する場合、交渉から撤退するのか」との問いに明言を避けました。

 安倍首相は、TPPの意義は経済効果だけにとどまらないとし、「同盟国である米国と共に、新しい経済圏をつくる。そして自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わり、アジア太平洋地域における新たなルールを作り上げていく」と述べました。

 

 

 


■安倍首相のTPP交渉参加表明に強く抗議し、撤回を求める
日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
   

 


 一、本日、安倍首相は、TPP交渉参加を表明した。安倍首相は、交渉のなかで「守るべきは守る」などとしているが、いったん参加したら「守るべきものが守れない」のがTPP交渉である。日本共産党は、安倍政権にたいし、TPP交渉参加表明を行ったことに抗議するとともに、参加表明の撤回を、強く求めるものである。


 一、TPP交渉で、「守るべきものが守れない」ことは、さきの日米首脳会談と共同声明からも明らかである。安倍首相は、日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」というが、これは国民を欺く偽りである。


 首脳会談で発表された共同声明では、「TPPのアウトライン」に示された「高い水準の協定を達成」する――関税と非関税障壁の撤廃を原則とし、これまで「聖域」とされてきたコメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産物などの農林水産品についても関税撤廃の対象とする協定を達成することを明記している。「聖域なき関税撤廃」をアメリカに誓約してきたのが日米首脳会談の真相である。


 国民皆保険、食の安全、ISD条項など、自民党が総選挙で掲げた「関税」以外の5項目についても、安倍首相は一方的に説明しただけで、米側から何の保証も得ていない。TPPに参加すれば、非関税障壁の問題でも、アメリカのルールをそのまま日本に押し付けられることになることは、明らかである。


 一、さらにTPP交渉では、新規参入国には対等な交渉権が保障されず、「守るべきものを守る」交渉の余地さえ奪われている。

 昨年、新たにTPPに参加したカナダ、メキシコは、
(1)「現行の交渉参加9カ国がすでに合意した条文はすべて受け入れる」、
(2)「将来、ある交渉分野について現行9カ国が合意した場合、拒否権を有さず、その合意に従う」、
(3)「交渉を打ち切る権利は9カ国にあって、遅れて交渉入りした国には認められない」
――という三つのきわめて不利な条件を承諾したうえで、参加を認められたと伝えられている。日本政府も、この事実を否定できず、安倍首相は、「(交渉参加条件は)判然としない」「ぼやっとしている」と、真相をごまかす答弁をおこなっている。


 「ルールづくりに参加する」どころか、アメリカなど9カ国で「合意」したことの「丸のみ」を迫られるのがTPP交渉である。


 一、今回の交渉参加表明は、自民党の総選挙公約――「聖域なき関税撤廃を前提とするTPP交渉に反対する」「関税以外の5項目でも国益を守る」――を、ことごとく踏みにじるものである。国民への公約を踏み破るものがどういう運命をたどるかは、前政権が示していることを、自民党は銘記すべきである。


 日本共産党は、農林水産業、医療、雇用、食の安全など、日本経済を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡すTPPの実態を国民に広く知らせ、TPP参加反対の一点で国民的共同を広げるために、力を尽くす決意である。

 

 

 


しんぶん赤旗2012年3月16日、17日付より


 


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原発のコストのからくり

2012年12月02日 | 反アメリカンスタンダード宣言







ヤフーブログで、石原慎太郎フリークに、原発がなければ日本経済は立ち行かない、とボケている人物に絡まれています。しかしそのような言説がそれらしく広まっているのであれば問題だと思います。もちろん、多くの人びとはそんな言説に振り回されてはいないでしょう。しかし、うちのヤフーのほうのブログに絡んでいる人物のように本気で思い込んでいる人びともおり、橋下の「ファシス党」が人気を得ている日本の現状ですから、ちょっとこんな資料を提供しておこうと思います。以下はヤフーのほうでアップした記事のコピーです。







 日本の火力発電はほとんどが天然ガス、LPガスで動いている。天然ガス火力の発電は、発電単価でみれば一目瞭然だが、圧倒的に原子力発電より安い。さらに安いのは石炭火力。日本では高騰する石油ではほとんど火力発電に使われていない。


ではなぜ、日本の発電で燃料費が増えているのだろうか。また、日本の電気料金が世界で最も高額なレベルだと言われるのはなぜだろうか。それは国家による電力会社優遇制度があるからだ。「総括原価方式」といわれている。



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アメリカでは、原発よりLNG(ガス)火力のほうがはるかにコストが安い。だからアメリカでは、電力会社がコスト高の原発よりも、石炭火力とガス・コンバインドサイクル(ガス火力発電システム)が大普及してきたのである。


その後、アメリカで新規の原発建設計画が打ち出されてニュースになったが、それも政府の補助金が付かなければ電力会社は原発を建設できない、というのが実情だ。さらにいまアメリカでは、「シェール・ガス革命」によるガス価格の急落が起こっており、現在ではコストの安さではガスが圧倒的に優位になっていて、原発建設は論外になっている。

ところが、低価格のはずのガスが日本では、アメリカでの価格の8倍の値段で輸入している。これは国際市場原理を無視した日本の電力会社の怠慢経営が原因である。

その原因とは「総括原価方式」にある。電力会社は公益事業者であるという理由から、、国家から保護を受けており、今もって3%の利益率(事業報酬率、あるいは適正報酬率とも呼ばれている)が保障されているのだ。

一般企業であれば、原価を圧縮して利益率を高めようとする。
(註:原価が100、利益が12だったとする。原価を90に圧縮すれば利益12の原価に対する割合は大きくなる。)

ところが日本の電力会社は、原価に対して一律3%の利益率が政府によって保証されている。
(註:つまり、原価が100であるよりも200であった方が、原価に対する3%の利益率により、利益は3から6に増える。これが日本の電力料金が世界一高い事情をつくっている原因。)

かつては、この利益率が8パーセントだった。だから、原発建設費 + 運転・維持費 + ウラン燃料費 + 使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)の処分費用 + 廃炉費用 + 地元への交付金・寄付金+メディアによる「安全神話」宣伝費などで出費がかさめばかさむほど、浪費すればするほど利益額が増えて儲かる仕組みになっている。

したがって電力会社は、一般企業が必死になって払っている原価を縮小しようという努力をまったくしないでも、寝ていても利益が転がり込んでくる。そのため、アメリカの8倍もの輸入価格で天然ガスを購入しても、痛くもかゆくもない。痛いどころか、出費がかさめばかさむほど利益額が増えるのだ。

だからガス料金を下げる努力をしなくても、その出費分は消費者の電気料金に転嫁するのである。われわれ消費者が、電力会社の怠慢のツケを支払っている、というわけだ。これによって関連業界が潤うというのだから、ネズミ講の詐欺と呼ばずになんというか。

なぜガスを世界市場価格の8倍で買うのかといえば、石油価格との連動性になっていて、ガスを石油の値段で買う仕組みになっているのだ。

こうして電気の原価が高くなればなるほど、電力会社は利益を増やしてきた。これが安いはずのガス火力発電の焚き増しのために費用がかさばった理由だ。そしてこれが電気料金の値上げに直結した。



原発推進者たちが二言めには、「原発がなければ、電力コストは上昇する」と主張して、この脅しを受けたかなりの企業が「原発必要論」に傾斜している。いわく、「全国の原子力発電所の運転停止が長引いた際、来年の夏は、全国的に電気料金が10パーセントほど上がる。経営合理化ではこのコストを吸収できない(2012年5月21日、枝野幸男経済産業相)」などというのは、もちろんこの「総括原価方式」を知ってのことだから、私は電力会社とメディアと経産省と政治家はグルだというのである。

逆に、原発を維持していることが、どれほど電力会社の経営を圧迫しているか。

電力会社が一年間に原発の維持・運転に要する費用は、2011年3月の有価証券報告書によれば、電力会社9社合計(原発のない沖縄電力を除く)で1兆7040億円にも達する。電気料金の燃料費というのは、原発のために数年先のウラン燃料まで買いつけてあるので、その維持管理費の分の費用が運転停止中の原子力発電所でもコストにかかって、大量の無駄な出費が決算にでているのである。

2011年2月27日、日本産業医療ガス協会の豊田昌洋会長が記者会見して、東電が4月から1kw時あたり平均2・51円(17%)の電気料金値上げをしようとしていることに対して、「電気料金を算定する原価から原子力発電にかかわる費用をすべて除けば、値上げ幅を0.9円程度に圧縮できる」と主張し、「燃料の増加など理屈に合う部分は受け入れるが、発電していない原発費用まで含めるのは、ビジネスの原理としておかしい」と東電を強く批判したのはそのためである。

また、原発依存度が高い電力会社ほど純損益が悪化していて赤字が巨額になっている。東電は福島事故によって破たんしているので現状では赤字は無限大だが、東電を除外すれば、関西電力、九州電力といった原発にどっぷりつかっている会社が、純損益▲2500億、九電が▲1700億である。原発のない沖縄電力は500億ほどの黒字になっている。

過日、同志社大学の室田武教授が、電源別の発電コストを正しく比較して教えてくれた。室田教授は、もともとわが国で最初に、電力会社の「総括原価方式」のトリックを明らかにした先駆者である。福島原発事故の後、大手メディアが室田教授をほとんど取材しないのは、まったくおかしなことである。

室田教授によれば、電力会社に電気を売る卸電気事業者として日本原子力発電(日本原電)は敦賀原発と東海大二原発を運営していて、原子力発電所しか運転していない。それに対して卸電気事業者の電源開発(社名。Jパワーとも呼ばれる)はこれまでのところ、火力と水力がほとんどで、火力はすべて石炭火力である。この両社の卸電力単価を調べると、

           原子力        石炭火力

2006年     10円/kw時     7円/kw時
2007年     13円/kw時     7円弱/kw時
2008年     14.5円/kw時   9円強/kw時
2009年     12円/kw時     7.5円/kw時
2010年     11円/kw時     7.5円/kw時

…というように、石炭火力に比べて、原子力が非常に高い卸電力単価で電気を売っている。つまり、日本の実際の市場で原子力がコスト高であることは明らかである。むしろ、原発がなくなれば、電気料金は値下げされる運命にあるということだ。また、この調査から、石炭火力がコスト面での優等生であることがわかるだろう。


今夏の関西地方で電力不足が起こらなかったことが実証されたため、経団連や日本政府などが、言うに事欠いて、「原発がなければ、電気料金値上げのため、日本企業が海外手逃避する」といった新たな脅しをかけ始めてているが、ほとんどの日本企業の海外移転は原発が54基も猛烈に運転されていた時代に起こった現象である。原発に依存する日本が世界一高い電気料金だったからなのだ。





(「原発ゼロ社会へ・新エネルギー論」/ 広瀬隆・著)


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新聞、TVメディアとは全然違いますよね、この情報。原発以外で頼れるのは火力発電のみ、とまるで火力発電が原発よりコスト高であるかのようにいう、マスコミと政府と官僚を抱き込んだ電力マフィアの情報に洗脳された人々が言うのですが、火力発電のほうが安く電気を提供してきているのです。


それに、頼れるのは火力発電のみ、という認識もメディアに踊らされています。私が小学生だった時代は高度経済成長期末期でしたが、その時代は水力発電が主力でした。小学校の社会の授業では、水力発電が主力だと書かれていました。日本の高度経済成長は主に水力発電と火力発電によって賄われてきたのでした。いまほど家庭への普及はなかったものの、オフィスや、公共の建物ではクーラーはガンガン効いていました。これはあのアホ右翼の小林よしのりも同じ証言をしています。

今度はやはりメディアに騙されていない経済学者の書いたものをご紹介しましょう。




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まず原子力から離脱すると経済に悪影響を及ぼすという懸念についてみよう。最もポピュラーなのは、原発を停止すると、その分火力発電所を稼働させる時間が長くなり、化石燃料の焚き増しが増え、燃料費が増えて発電コストが上昇し、結果的に電気料金が上がるとする考え方である。

典型的なものは、革新的エネルギー・環境政策を策定するために設置されたエネルギー・環境会議(構成員は関係閣僚)の決定(2011年7月29日)で示されている試算である。これによれば、原発が定期検査で次々と停止し、このまま再稼働できない場合、2012年には原子力発電がゼロになる。その足りない分を石炭やLNG、石油などの火力発電所に依存すれば、火力発電の燃料費が増大し、全国で3兆1600億円ほど負担が増えるというのである。

ここにはいくつか検討すべき点が残されている。まず、燃料の焚き増しがどれだけあるかは、電力需要に依存しているという点である。省エネ投資、省エネ危機の購入などにより、電力需要を抜本的に引き下げることができれば、焚き増しはその分少なくなり、追加費用も減少する。したがって、節電をセットにして、焚き増しによる費用を考える必要がある。

仮に、節電がまったく行われず、電力需要が従来通りであるとした場合、再生可能エネルギー普及がまったく進んでいない現状では火力の焚き増しがあることは確かである。ただしここでも注意すべき点がある。それは原子力発電をなくせば(=廃炉にすれば)、火力用の燃料費が増える半面、原子力発電に罹っていた費用を節約できる。原子力発電をなくすことのコストのみを強調し、便益を見ないのでは一面的な議論に陥ってしまう。




(「原発のコスト」/ 大島堅一・著)


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さて、大島立命館大学教授の文章にあるとおり、再生可能エネルギーでは、日本は大きく立ち遅れています。意図的にそうしているのではないかと、わたしは個人的に疑っておりますが、実際に再生可能エネルギーはどれほどのポテンシャルを持っているのでしょうか。また折を見て、再生可能エネルギーについて、資料をご紹介します。


急に選挙が行われることになって、候補者を見れば、経済右翼と反動右翼ばかりが目について誰に投票していいかわからない状況です。顔ぶれを見る限り、だれが政権を取ってもわたしたちの暮らしのことを本気で顧みてくれるとは想像できません。でも、選ばなければならない。ただ、情報がきちんと伝えられていないのは深刻な現状です。原発報道がその典型です。石原のように尖閣騒ぎを起こして、地方の庶民の暮らしをどん底に陥れるわ、原発を再稼働させようとするわ、の、あたかもわたしたちが身分制度における下級庶民であるかのようなものの見方には心底憤りを覚えます。

とにかく、原発についての政府や産経新聞の情報は偏向であることが暴露されてきていますから、原発についてどういう方針かを見ることで投票行動の基準にできるかもしれません。候補者の原発に対する態度は、その候補者の目が黒いか濁っているかを見分けるバロメーターになるのではないかと思います。どうか産経=石原慎太郎派に洗脳されてしまった人々に踊らされないようにしてください。国家が大事だから、国民は国家のために死ね、といったのは戦前の日本の精神思考でした。みなさんは本当にそんな時代に戻っていいんですか。

近代立憲主義は、国民が生きることのための国家である、という前提に立っています。土台はわたしたちです。尖閣を守るために国民は血を流せと言う石原慎太郎や山谷えり子の考えは、たとえていえば土台を壊した高層建築物です。そんな建築物は立っていられません。だからそんな考えは空想の産物なのです。わたしたちはもう小泉郵政選挙のような失敗をしてはならない、東京都民や大阪府市民が人物を判断する基準としてもっている、「乱暴な口をきく人物、強気の発言をびしっと言ってくれる人物が頼りがいがある人物だ」というような、ゆがんだ考え方をしてはならないのです。







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アメリカ時代の入り口に立って(続)

2011年11月13日 | 反アメリカンスタンダード宣言

(承前)



 

三橋さんのブログにはさらに興味津々の情報が掲載されています。

 

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さて、TPPと言いますか、TPP関連の報道ですが、凄まじいことになっています。本日と明日と、二日続けて本「情報戦争」について取り上げたいのですが、まさしく、「ここまでやるか!」と叫びだしたくなるほどの偏向報道、イメージ操作の繰り返しになっています。特に酷いのが新聞で、珍しく「テレビの方が新聞よりは、まだまとも」というおかしな状況になっています。


【【マスゴミねつ造報道検証!】TPPについて谷垣氏の発言すべて10月15日 】


アナウンサーからTPPに関する谷垣総裁の見解を尋ねられ、、
谷垣総裁 「まだ情報が少なくてですね、もう少しいろんな問題点を解明しなければいけないと思います。ただ、全然、協議もしないということでいいのかどうか。それは協議をしながら国策にかなうかどうか、日本の国益のかなうかどうかを、判断していかなければいけないんじゃないかと思いますね」
アナウンサー 「どういう情報が必要なんですかね?」
谷垣総裁「これはね、農業の問題ばかりが取り上げられますけど、24の分野があるわけですね。そこで、どういう風にしたら、その分野がどうなっていくのかということについて、もう少し情報を集めて、我々も検討していかなければいけないと思います。与党の方も議論を始めて、だいぶ大激論になり、混迷もしているようですが、我々は高村正彦さん、外務大臣をやられたベテランに、外交、経済連携調査会を作って頂いて、そこで大いに議論していこうと思っています。
 24の分野とは、色々な分野があります。医療とかそういった分野もあれば、農業もあり、そういった問題に情報を集めてきちんと議論をしていく。それから、特にこの問題は、外交・安全保障といった分野からの議論も必要だと思います」
 アナウンサーから自民党の「TPP参加の即時撤回を求める会」についてふられ、
谷垣総裁「参加するかどうかは、本当に参加するかどうかはもう少し議論しなければなりませんね。それと、まだ国論も集約していませんから、野党として国論をどうやって集約していくか、その役割も果たさなければならないと思います。
 きちんと議論していこうと。あんまり拙速に判断してはいけないと思います」


 上記の谷垣総裁の発言が、いかに日本の大手紙に報道されたか。

 

『毎日新聞 TPP:「交渉参加し、判断するべきだ」…谷垣総裁
 自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京の番組で、政府が交渉参加を検討している環太平洋パートナーシップ協定(TPP)について「全体の協議もしないことでいいのか。協議しながら国策、国益にかなうか判断しないといけない」と述べ、交渉には参加すべきだとの考えを示した。(後略)』

 

『産経新聞 【TPP参加】交渉参加に前向き 自民・谷垣総裁が発言 党内に波紋呼ぶ可能性も

 自民党の谷垣禎一総裁は15日のテレビ東京番組で、環太平洋連携協定(TPP)交渉について「協議をしながら、国益にかなうかどうかを判断しなければいけない」と述べ、参加に前向きな考えを示した。(後略)』

 

『日経新聞 自民総裁、TPP交渉「参加すべき」 

 自民党の谷垣禎一総裁は15日午前のテレビ東京番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加問題に関し「全然協議しないでいいのか。協議をしながら国益にかなうか判断すべきだ」と述べ、交渉に参加すべきだとの認識を示した。』

 

 お分かりでしょうが、谷垣総裁は「TPPの交渉参加し、判断するべきだ」などと一言も言っていません。単に、情報が足りないので、情報を集めて自党内で協議する、と言っているだけです。
 珍しいことに、上記について読売新聞がまともに報じています。

 

『読売新聞 TPP、拙速判断いけない…自民は議論急ぐ考え
 
 自民党の谷垣総裁は15日、テレビ東京の番組で、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加について、「まだ情報が少なくていろいろな問題点を解明しないといけないが、全然協議もしないということでいいのか」と述べ、自民党内の議論を急ぐ考えを示した。
 谷垣氏は「国論もまだ集約していないので、野党として集約させる役割も果たしたい。あまり拙速に判断してはいけない」と述べ、慎重に議論する方針も示した。
 同党は今後、政務調査会に新設した「外交・経済連携調査会」(会長・高村正彦元外相)を中心に議論を再開する方針。TPP交渉参加問題では、石原幹事長らが賛同する考えを示しているが、農業関係議員を中心に反対論が多い。』

 

 谷垣総裁は「情報が足りないので、情報を集めて協議をしていく」と言っているわけですが、それが毎日や産経、日経の手にかかると「交渉参加すべし」となってしまうわけです。


 現在、自民党内ではTPP不参加派が多数派を占めています(実は、そうなんです)。上記のテレビ番組も、自民党内に反対派が多いことを受け、左下に「党内分裂? TPP参加の行方」という煽りテロップを出しています。現実には、自民党が割れるほどTPP賛成派の数は多くないのです。


 谷垣総裁は、[とりあえず、情報集めて、協議しようよ」という態度であり、これは現時点のトップとしては正しいと思います。ここまで情報が少ない中、
「交渉参加と参加は違いますから。いざとなれば途中で抜けられますから」
「韓国に負けないようにTPP交渉参加しましょう」
 などと言ったミスリードに流されて「交渉参加検討」をしている、現政権が異常なのです。

 

 皆様、昨日に引き続き、民主党内反対派、自民党内反対派、国民新党、たちあがれ日本の政治家の方々に、是非、皆様の声を届けて差し上げて下さい。国民の声があれば、政治家は動けます。 

 

 

またもや、要人の発言が「捏造」されました。

 

『小沢元代表、TPPに前向きも国内対策の必要性強調

 民主党の小沢元代表は、TPP=環太平洋経済協定について「自由貿易は最も日本がメリットを受ける」と述べ、前向きな姿勢を示す一方、国内対策の必要性も強調しました。(後略)』

 

『小沢氏、TPPに前向き 「自由貿易は日本にメリット」

 民主党の小沢一郎元代表は20日、東京都内でフリー記者らが主催する記者会見に応じ、TPP(環太平洋経済連携協定)について「自由貿易は最も日本がメリットを受ける。原則として理念的にはいいこと」と述べ、交渉参加に前向きな考えを示した。(後略)』

 

『野田降ろしにならない?TPP慎重派に温度差

民主党が21日、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の党内論議を11月2日までに終える方針を固めた背景には、「反対論者の多くは、党内を混乱させてまで、野田首相を追い詰めないのではないか」との読みが執行部内に出てきたことがある。(中略)
 民主党内最大勢力の小沢一郎元代表グループも、元代表本人が自由貿易そのものには賛成のため、表だって反対活動に加わっていない。小沢グループ幹部は「TPPで『野田降ろし』にはならない」と話す。』

 

 以下、小沢一郎事務所のツイッター。

 

『今日、一部紙面等で『TPPについて「小沢氏前向き」』と報じられておりますが、それは誤りです。今の拙速な進め方では、国内産業は守れません。 』

 

 要するに、この「前向き」という言葉が極めて曲者というか、悪質なのです。すなわち、「TPP断固反対! TPP打破すべし!」とかやっていない政治家は、「○○氏はTPPに前向きな態度を表明した」などと捏造報道をされてしまい、TPP交渉参加のための既成事実積み上げに活用されてしまうわけです。


 先日、自民党の谷垣総裁が、
「参加するかどうかは、本当に参加するかどうかはもう少し議論しなければなりませんね。それと、まだ国論も集約していませんから、野党として国論をどうやって集約していくか、その詰めの役割も果たさなければならないと思います。
 きちんと議論していこうと。あんまり拙速に判断してはいけないと思います」
 と発言されていましたが、いよいよ(と言うか、こんなにギリギリで)TPPの全容がオープンになりました。


 皆様、上記の情報を是非とも地元の政治家に転送し、
「官公庁が14も関連しなければ資料一つ作れないほど、凄まじく広範囲なTPPについて、きちんと議論を経ていない現時点で交渉参加を決意するなど、国家として自殺行為だ!」
 などと、皆様の言葉を伝えてください。

 


こちらのブログより転載。


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2011年11月新刊のちくま新書から出た作品でこういうのがあった。


「ヒトラーの側近たち」。大沢武男・著。


この本のエピローグにはこういう文章があった。

 


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ナチ政権が成立したとき、ヒトラーを囲む側近閣僚たちはきわめて若い世代であり、43歳の首相ヒトラーを中心に30代が最も多く、平均年齢は40歳ちょっとという、前例を見ないほど若い構成の内閣だったのである。

 

しかも彼らは党史の浅いナチ党の閣僚であったため、急速に出世して大臣という権力の座に就いた人物が多く、ちゃんとした政治的、官僚的な経歴を持ち合わせていないものが大方を占めていた。

 

 

 

(上掲書より)

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若手の人間はとかく理想や理論に走りやすく、生身の人間という事情を深慮しない傾向があるのだろうか。確かにそういう傾向はあると言えるかもしれない。つまり、未成熟さ、ということか。そういえば、小泉さんはこういう人物だった。

 


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小泉以前の自民党で総裁の座を目指すためには、政治家に必要とされる明確な要件があった。まず組織の面で、派閥のボスとなり、親分の意のままに行動する数十名の手勢を持つことが絶対の条件であった。トップに上り詰めるためには選挙を支える家子郎党が必要とされた。

 

次にキャリアの面で、財務(旧大蔵)、外務、経産(旧通産)という主要閣僚と、幹事長、政調会長、総務会長という党三役のうちで、できれば二つ以上のポストを経験することが必要であった。重要なポストに就いてリーダーとしての経験、力量を積むことは、政党に限らずあらゆる組織に共通する話である。

 

この仕組みは、政府と自民党という既存の権力空間の中における人材育成システムであった。そして、長期安定政権の時代にはそれなりに機能し、橋本龍太郎、小渕恵三の時代まではこの仕組みの中からリーダーが出現した。しかし、小泉以降、この仕組みは崩壊した。既存の権力空間で長いキャリアを積んだインサイダーに対して国民が嫌悪感を持ち、訓練の仕組み自体が無意味になった。

 

…(中略)…

 

その結果、自民党においては中間の鍛錬、育成の期間を省略し、組織の掌握や政策決定に向けた調整の経験を十分に持たない政治家がいきなりトップリーダーになるということが起こるようになった。

 

 

(「政権交代論」/ 山口二郎・著)


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一方の利益や、一方的な理論に突っ走ってしまうのは調整力の無さや将来的な展望力の無さという「未熟さ」があるからだ。かつての自民党では、総裁に至るまでの鍛練となる「道順」が暗黙のルールとしてきめられていた。だが、小泉さん以降、人気やある勢力にとって便利な人物が、急に表れては総裁にたてられる。短命総理になるのも無理からぬことなのだろう。











若い世代は、理想論や理論に現実を合わせようとする。経済学は、ホモ・エコノミクスを前提に、論理が組み立てられるが、人間はいつも合理的に行動するわけではない。いや、合理的に行動しないから人間は魅力的なのだ。だが、経済学の若手論者は、経済学理論の原則に合わない結果とその結果をもたらした人々のほうが悪く、理論の整合性のために、そういう輩は排除せよ、自己責任だという。

 

だが自然科学はそんなことは言わない。既存の法則に合わない結果が報告されたら、既存の理論を護るためにそのデータのほうを抹消しようという自然科学の学者などいるだろうか。科学の進歩はそういう既存の理論に合わない観測データの存在を認め、それを調べることで進歩してきた。老練な人間も、人間の暮らしを支える経済というものを扱うときには、理論通りには動けない人間の弱さ気まぐれさを十分に考慮に入れるのだ。

 

そういう老練さは、長年の鍛錬によって、対立する利害の両方の要求を取り入れた調整的な政策を生み出すものだ。一方的に肩入れして国民の暮らしを破壊的な影響にさらすなどという愚行はしないだろう。民主党政権はそういう意味で未熟なまま大きな問題を扱い、みっともない失政に終わらせ、その埋め合わせに、アメリカのみを益するものであり、かつ日本を変革するような自由貿易協定に参加しようという。

 

わたしたちはどうすればよかったのだろう。そう、わたしたちが、考えることを他人任せ=新聞・TV “ジャーナリズム” まかせにしてきたことに大きな原因があるように思う。わたしたちは、自分の国に関することについては、もっと積極的に、そう、労と時間を惜しまず参加してゆくべきだった。

 

今となってはすべてが見苦しいグチになってしまう。どうしていいかわからない。とりあえず、ベッドに横たわり、眠ろう。心配は明日からにしよう。もうブログに意見を言うのには、限界を思い知った。自分の筆力の問題、ブログ意見の無力さ、つながってゆかない無意味さ。そしてわたしたち個々人が割拠し、自分のメンツや意地の内側に立てこもっている間に、国家の官僚たちは政治家とマスコミを操って、自らの出世と、天下り先の創出とを成し遂げ、その財源のために国民の暮らしに手を付けるようになった。国民への見返りは、震災復興を御旗に見立てたTPP参加と復興増税の実施だった。どちらも国民の暮らしを破壊する政策だった。…

 

 

 




長い間ありがとうございました。「Luna's “A Life Is Beautiful”」は今回をもちまして更新停止とさせていただきます。このブログを書いてきてよかったことはひとつ、世の中のことを勉強できたことです。それまで関心を持たなかったことに知見が広がるというのは、それなりに意味があると思いたいです。それはきっとよかったんだろうと思います。



大変な時代が始まります。みなさんが、わたしをも含めて、生きのびれるように、幸運の星に祈り続けるとしましょう。ごきげんよう。











「カナダ国民は、何に調印したのかわかっていない。彼らは20年以内にアメリカ経済に吸収されるだろう」。

 -クレイトン・キース・ヤイター・レーガン大統領時代のアメリカ通商代表。
   アメリカ=カナダ自由貿易協定の締結後の非公式の発言。

 






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アメリカ人の時代の入り口に立って

2011年11月13日 | 反アメリカンスタンダード宣言




 

国民はみんな、郵政が民営化されても、派遣労働が増加して生活を立ててゆけない人が派遣村に集まっても、自分の家は何とかやってこれたので、TPPに参加するようになっても、自分の家だけはなんとかなるだろう、くらいにしか思っていないに違いありません。でも、今度だけはその楽観は粉々に打ち砕かれるでしょう。TPPがもたらす国民の暮らしの破壊は、おそらく戦後最悪の惨事となるでしょう。これは決してこけおどしなどではないのです。アメリカンスタンダードが日本をつくり変えてゆくからです。



3.11の大津波のとき、いち早く津波に気づき、避難を始めた人がいたようです。そういうひとたちは、逃げる途中で、避難路に面した家々のひとびとや、通りがかりに出会ったひとびとに、津波が来るから早く逃げるようにと大きな声で伝えたそうですが、ひとびとは反射的迅速な行動はとらなかったそうです。それどころか、人々は津波のことを話題にして談笑さえしていた人もいたそうです。海から遠くの自分たちのところまで致死的な大津波が到達するとは想像できなかったのではないでしょうか。責めることはできないし、もとよりわたしは責めるつもりもありません。わたしはそういう人以上にかっこよく、賢い行動がとれたかと聞かれれば、しょんぼりするしかできないでしょうから。しかし、海水は来たのです。真っ黒に濁った不気味な水の大群が。

 

今回のTPPもまったく同様でしょう。いままでも農産物は自由化されてきた。だが都会暮らしの自分たちにそれほど危機をもたらしたわけではなかった。派遣村が話題になっても、自分の家族にはそんなに悪いことは起きなかった。リーマン・ショックの時は、給料も下がり、ボーナスも減り、さすがに恐怖だったが、乗り切れた。だからTPPっつても、おなじようなものだろう、と、おそらくみんなそんなふうに感じているに違いありません。ブロガーは、TPPはやられた。次の話題に移ろう、と思っているでしょうか。

 

だが、TPPはちがう。この激震がもたらす大津波は、確実に自分のもとまでどす黒い水を送り込む。信じられないくらいに犠牲者が増える。3か月、4か月と何事もなく時間は過ぎるだろう。だがあるとき、住宅地の向こうで煙が立っているのを見るだろう。火事か、と思うかもしれない。それが大きな水しぶきであるのを認めた時にはもう遅い、逃げ切ることはできない。

 

どこで判断をまちがえたのか。野田さんが総理になるのを阻止することはわたしたち国民のだれにもできなかった。これはどうしようもないことだった。だが、経団連と財務省は野田総理を誕生させる影響力を十分もっていたし、彼らはその影響力を行使した。民主党に投票したのだって、わたしたちは小泉構造改革で破壊されたわたしたちの暮らしと安全を回復させてほしいという思いからでたことだった。だが、民主党はみごとに変節した。その変節に、わたしたち国民にも責任があるとでもいうのか。そう、ただひとつ、わたしたちはあまりにも完全主義だったかもしれない。政治とカネの問題に注意を取られ、バッシングしやすかったこともあってか、小沢という影響力のある人物をわたしたちは葬った。だが、戦術としては、小沢を切り札として活用できたかもしれない。小沢よりもっと凶悪な影響力を見分けることができなかったか。仙石=前原グループという経団連の送り込んだ刺客を。民主党は寄せ集め世帯だったので、いくつかのグループがひとつに束ねられていた。わたしたちが前原の脅威に気づくなら、小沢という毒を温存しておいて、あの前原を下してしまえたかもしれない。そのくらいのずる賢さは、政治のことについては必要だったのかもしれない。結果からふりかえってみれば、民主党というのは、財務省と経団連が送り込んだ、みごとなトロイの木馬だった。いまさらグチグチ言ってもしようがないことだが。

 

最後に、マスコミのことを転載して、このブログの幕としようと思う。ブログを書き始めたのは2005年の3月末日だった。今年で満6年と8か月ということになる。よくも続けてこれたものだ。だが、わたしの筆力の限界のため、あまり共感は得られなかったようだ。にぎわう大ブログには縁遠い存在だった。でも、わたしはわたしなりに一生けんめい書いてきたと自負できる。それはそれでいいとしよう。

 

思えば、小泉郵政選挙もマスコミの影響の産物だった。あのときにはまだマスコミは反省を述べたりもしたものだった。だが今は違う。マスコミははっきり、政・官・財と蜜月関係を持つようになり、国民を犠牲にすることをいとわないようになったようだ。

 

 

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TVが権力の内側にいたのは昔からだが、ここまで露骨に権力擁護に走り、権力側もまた露骨に利益誘導するようになったのは最近のことである。

 

「小泉政権時代に政治の “劇場化” が急速に進み、政治家はTVをフルに利用し、その手法を官僚も取り入れて、御用学者、御用コメンテーターへの『教育』を強化した。一方で、TVの側もあけっぴろげに自分たちの要求を出すようになった」(民法記者)

 

その要求のひとつが、地デジ化に際して検討されていた「電波オークション(*1)」潰しであり、「クロスオーナーシップ改革(*2)」潰しであった。


(*1)電波オークション;
日本では、政府が公共財産である電波を、恣意的に割り当て、既存のTV局に無料で免許を与えてきた。それを改め、周波数帯域の利用免許を競売にかけて、新規事業者にも電波を解放しようという制度。諸外国では多く導入されている。民主党は08年のマニフェストで導入を掲げていたものの、昨年の電波法改正案からは完全に外された。

(*2)クロスオーナーシップ改革;
新聞社が放送業に市販参加するなど、特定の企業が多数のメディアを傘下にして影響を及ぼすことを「クロスオーナーシップ」という。民主党政権誕生時、原口一博総務相(当時)らはクロスオーナーシップ規制の法制化を目指したが、2010年成立の改正放送法では規制強化が見送られた。

 

そして増長しきったTV界は、ついに国民のカネにも手を伸ばそうとしている。「TV減税」(通信・放送システム災害対策促進税制)の創設だ。

 

東日本大震災を名目に、TV、ラジオ、通信業者の災害用設備新設の法人税優遇(2年間の特別償却)と固定資産税優遇(課税標準を5年間、3分の1に圧縮)というずうずうしい要求である。ところが総務省は概算要求の税制改正要望にすでに盛り込んでおり、誰も批判報道しないこの改正は、すんなり通る可能性が高い。いうまでもないが、震災でTV局だけが特別に救済される根拠など本来はない。

 

ついでにいえば、民放キー局の親会社である大手新聞も同様のことをたくらんでいる。消費税増税の必要性を紙面で主張する一方で、「新聞代は消費税免除に」と陳情し、野田内閣はそれを認める方針である。

 

こんな連中が、野田内閣が進める大増税、年金1千万円カットを、「仕方ない」、「国民も痛みを」と後押ししているのである。

 

アムステルダム大学教授で、日本の権力構造に詳しいカレル・ヴァン・ウォルフレン氏が指摘する。「TVをはじめとする日本メディアの根本的な問題は、国家権力の中枢にいるエスタブリッシュメントたちの考え方に無批判にしたがっているだけで、彼ら自身にそれを深く理解し、批判する力がないことです。たとえば、日本の財政赤字はほとんどは日本国内からの借金で、国外から借りているわけではない。むしろ日本は米国債を大量に保有しており、政府があおる財政危機とは明らかに実情と異なる。政治家や官僚のことばを垂れ流すことはすなわち国民をだますことにつながる」。

 

(「週刊ポスト」2011-11-11号より転載)

 

2011年7月中旬の出来事である。


日本新聞協会が主催し、大手各新聞社の論説委員を集めた会合が開かれた。そこに、与謝野馨経済財政政策担当大臣(当時)が招かれ、新聞社側は、「消費税をアップしても、新聞の購読料には軽減税率を適用してほしい」と「陳情」したのだ。


それに対し、与謝野氏は、「復興増税の件、よろしく頼む」と答えたとのことである。

 

日本新聞協会が与謝野氏に陳情した「軽減税率」とはなにかといえば、文字通り増税や新税導入などをした際の「軽減措置」のことだ。新聞ビジネスでいえば、この先消費税が5%から10%にアップした場合、購読料値上がりでさらなる読者離れが起きることは確実だ。消費税が5%の現在でも、新聞産業は経営が悪化しており、購読料アップで読者が減ると、これまで以上にリストラを実施しなければならなくなってしまう。

 

つまり日本新聞協会や各大手紙の論説委員たちは、自社の経営悪化を回避するために、消費税増税が決定しても新聞の購読料への課税は「対象外」にしてほしいと陳情したというわけだ。日本国家や日本国民のためではなく、言論の自由とやらのためではなく、自社の経営のために「自分たちは例外にしてくれ」と頼んだのだ。それに対して与謝野氏は、「新聞に軽減税率を適用してほしければ、復興増税のキャンペーンをしろ」という条件をだした。

 

これがはたして、選挙で選ばれた政治家(与謝野氏は比例復活だが)や、自称「社会の木鐸」たる新聞社のやることか、といいたい。

 

…(中略)…

 

■大手マスコミの増税志向 (2011年6月19日)


政府の復興構想会議でも財源を増税に求めることを決め、財務省主導の増税路線にマスコミも乗っかっています。某大手新聞社に大物の財務官僚OBが天下ったりしていて、財務省の増税シフトに対して大手マスコミは賛成モードです。消費税が上がっても大手新聞社は困らないカラクリがあります。大手新聞は「新聞購読料は消費税対象外」という要求をし、その要求に財務省はOKを出している様子です。財務省と大手マスコミはすでに蜜月状態にあります。


山内康一・みんなの党、衆議院議員のブログより

 

 

日本のマスコミは官僚の天下りを散々に批判しているが、その急先鋒たる読売新聞の社外監査役に、2010年7月まで財務事務次官を務めていた丹呉泰健(たんごやすたけ)氏が就任している。きわめて重要な事実なので繰り返すが、2010年まで財務省事務方のトップ(次官)を務めていた人物が、同年11月に読売新聞に天下ったのだ。

 

 


(「増税のウソ」/ 三橋貴明・著)






つづく

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