Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

日本を荒廃させたカルロス・ゴーンのたそがれ

2019年02月13日 | 「世界」を読む

 

 

 

 

 

「私は日産のために全力を尽くした」
「私は人生の二十年間を、日産の復活に捧げてきた」
2019年1月8日、金融商品取引法違反で逮捕拘留されていたカルロス・ゴーン元会長は公に顔を見せたときこう豪語しました。

 

前世紀末に日産の危機を救うべくルノーから派遣された「コストカッター」に異名をとるカルロス・ゴーンが打ち出した「日産リバイバルプラン」は生産を増やすことによって「リバイバル」を図るものではなく購買コストと人件費の大胆な削減によって利益を出そうとするものでした。2001年度末に過去最高の営業利益を上げることに成功したとき、ゴーン元会長自身がこう述べたのです。
「私のリバイバル・プランは成長による業績への貢献はいっさい前提にしていません(2001年10月18日、ゴーン社長スピーチより/ 「前衛」2019年3月号、「カルロス・ゴーンはなにを壊したのか」・湯浅和己・著より)

 

上記記事によれば、リバイバル・プラン一年目には、協力企業と呼ばれる下請けの部品供給企業を30%に及ぶ335社を取引停止として切り捨て、サービス・サプライヤーと言われる関連企業は40%削減、従業員も1万4200人を純減させました。2000年度営業利益2903億円のうち2870億円が購買コスト削減によるものでした。

 

2001年度も同様。この年度の営業利器増加のほとんどは下請け企業と労働者を犠牲にしたものでした。
「2001年度も購買コスト削減は収益改善に最も重要な役割を果たしました。…(中略)… 2001年度の購買コスト削減9%は2450億円の増益要因となりました」(ゴーン元会長、2001年度決算発表にて)。

 

2002年度には、予定より一年早く「日産リバイバル・プラン」の目標達成したゴーン元会長は新しい事業計画「日産180」を打ち出し、今後三年間で購買コストをさらに15%削減すると公表。その結果としてゴーン元会長は、「営業利益に最も寄与したのは、引き続き購買コストの改善だった。2001年度との比較で営業利益は約2500億円の増加だったが、そのうち購買コストの削減は2270億円の増益をもたらした」と話しました。日産の再建とは要するに人件費・購買コスト削減という社会を荒廃させるものでしかなかったのです。

 

2003年3月の参議院予算委員会で、日本共産党の池田幹幸参議院議員(当時)が日産の大リストラ問題を質問しています。その中で、25億円の負債を抱えて倒産した日産の二次下請け企業を以下のように取り上げました。

 

 

 

(以下、引用)----------------------------

 

 

リヴァイバル・ウラン発表から約一か月後、日産の一次下請けの愛知機械が二次下請け三十社を集め、向こう三年間で25%の購買コスト低減にご協力をお願いしたいと言った。結局、売り上げの四分の三を日産グループに依存しておるこの二次下請け企業は、もうまさに、(コストカット要請を)受けるも地獄、受けないも地獄という状況だったというふうに言っております。この会社は一年後に倒産したわけです。

 

結局日産はこういった状況に下請け企業を追い込んでいる。日産のこの『下請け企業を潰していく』というやり方を、政治は是正してゆく責任がある。

 

一将功なりて万骨枯れる、と言いますけれども、企業は助かったけれども、日本、国民経済的にはマイナスになったという状況があるのだということを私は強調したい。やはりV字回復が国民経済の回復には役立っていません。結局、大企業に身勝手なリストラに対しては規制してゆくべきだと思います。

 

リストラ、人減らしを推進する『効率の良い』一部企業が日本経済を舵取るのがいいのか、それとも、既存の企業、下請けも含めて支援をし、失業者を増やさない形で日本経済を支えてゆくのがいいのか、その答えは明らかだと思います。そういう点では政府の責任というのは非常に大事だ、少なくともリストラ支援政策というようなものはやめるべきだということを申し上げて、質問を終わります。

 

 

(池田幹幸参議院議員・日本共産党による2003年参議院予算委員会における質問/ 「前衛」2019年3月号・「カルロス・ゴーンはなにを壊したのか」. 湯浅和己・著より)

 


----------------------------(引用終わり)

 

 

 

2017年、日産は偽装を発覚させました。完成車両の検査を無資格者が行って資格を持っている人の名をかたって合格印を押印したのです。翌年夏には排ガス・燃費測定での不正検査が露見しました。さらに同年秋に、日産は200億円の申告漏れを国税庁から摘発されます。それは、長年にわたる人間犠牲の結末でした。同記事はこう続けています。

 

 

 

(以下、引用)----------------------------

 

 

日産が2018年9月に公表した不正検査についての報告には、
「日産では1990年代後半ごろから、日産リバイバル・プランが始動するなど、各車両製造工場におけるコスト削減が重要視されるようになったこととも重なり、技術員の異動はコスト削減策の一環としても位置付けられるようになった。現在の日産車両製造工場においては、完成検査を軽視する風潮が蔓延していることがうかがわれた。コスト削減の結果、車両製造工場がその生産性を健全に維持するために不可欠な要素が削減されることになるのは本末転倒である」と記載されています。

 

「ゴーンの経営が長く続く中で『ファンド体質』『投資体質』に変化してきたことが、根本の原因と考えるべきである」との指摘もあります。

 

 

(同上)

 

 

----------------------------(引用終わり)

 

 

 

まさに、コストカット、人件費カットとは安全より利益という考え方につながるのです。こんなやり方で会社の「再建」を急ぐのは、株主への配慮も大きいでしょう。会社は株主のものではない、かつては勢力を持っていたこの考え方をもういちどコモンセンスにしなければならないのではないかと思います。この記事は最後にこう締めくくっています。

 

 

 

(以下、引用)----------------------------

 

 

安倍首相は内閣官房長官時代の2006年、「ゴーンさんが果たした役割は大きい。ゴーンさんの出現により我々の認識は変わったように感じます」と評価しましたが、今やその評価が過ちであったことは明白です。

 

ゴーン容疑者のもとで、日産は国内生産台数を1998年度の1,528,000台から、2017年度の986,000台へと、19年間で35%も減少させています。同じ時期に国内の関連会社も514社(連結子会社と持分法適用会社)から103社へ、実に8割も削減しています。

 

「ゴーン氏は日本を強欲な株主資本主義モデルに作り替える尖兵になった。株主資本主義モデルは日本経済を慢性デフレに陥れた(産経新聞特別記者・田中秀男氏)」の指摘のように、ゴーン容疑者は、下請け切り、労働者・派遣切りを広げ、日本を長期不況の泥沼に突き落とし、日本経済を破壊しました。ゴーン容疑者を持てはやし、ゴーン流のリストラ・下請けカットを推進している自民党の責任も問われなければなりません。

 

 

(同上)

 

 

 

 

コメント
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