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その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

日米の貿易交渉を検証する~日米貿易協定の実態・日米FTA交渉の行方(2)

2019年12月12日 | 「世界」を読む

 

 

 

■「体制とりつくろい」のウソの数々

 

「切れ者」と称される茂木敏充前経済再生相(現外相)のもとで、「アメリカの言い分は全部飲みます。ただ、体制だけは繕ってください」(ネットへの揶揄を込めた投稿記事)と言われるほど、体制とりつくろいの悪知恵もしくは猿知恵がふんだんに盛り込まれたのが、今回の合意の特徴であった。ここでは、国会論戦の争点にもなった諸点について、ウソと猿知恵を暴くことを通じて、日米貿易協定の正体を浮き彫りにしたい。


□「自動車関税撤廃」のゴマカシ

 

アメリカはTPPで、自動車関税(2.5%)を25年、トラック関税(25%)を30年かけて撤廃し、自動車部品の8割を即時撤廃することを約束していた。しかし、日米貿易協定では、これは反故にされた。

 

政府は合意直後の説明文書では、自動車・同部品については「米国附属書に『さらなる交渉による関税撤廃』と明記」としたが、協定署名直後の10月18日の説明文書では「米国附属書に『関税の撤廃に関して更に交渉』と明記」とひそかに書き換えていた。

 

実際、公表された協定文に書いてあるのは「自動車・同部品の関税の撤廃については、今後のさらなる交渉次第である」ということだけである。しかも、この部分はいまだに翻訳は公表されていない。

 

「TAG」で使われた翻訳偽装の手口は使えないので、今度は合意直後には唯一の情報発信元だった政府説明文書を偽装したのである。

 

しかも政府は、自動車・同部品の関税が撤廃されたことにして「GDPが0.8%押し上げられる」という試算を発表しているが、鈴木宜弘教授の試算によれば、GDPは0.09%~ -0.07%と、ほぼゼロかマイナスになる(「農業協同組合新聞」2019年11月14日付け)。

 

また、自動車・部品関税を撤廃しなければ、アメリカは50%台の自由化率にとどまり、日米貿易協定はWTO(世界貿易機関)違反になって、無効な協定になるが、それを避けるために「さらなる交渉による撤廃」という空手形を織り込んでアメリカの自由化率92%をデッチあげた。

 

偽造・捏造はこの政権の常とう手段であるが、ひどすぎる。

 

□「追加関税なし」のゴマカシ

 

安倍政権を日米貿易交渉に引きずり込んだのは「自動車追加関税25%」の脅しだった。首相は、トランプ大統領の口約束をあてにして「追加関税なし」を勝ち取ったと言いわけしている。野党が「それなら首脳会談の議事録を公開しろ」と要求したが、政府与党はこれを拒絶したまま採決を強行した。

 

「追加関税なし」の根拠になっているのは、「協定が誠実に履行されている間、協定及び共同声明の精神に反する行動を取らない」という共同声明の文言である。これは2018年の共同声明と瓜二つだ。しかしトランプ大統領は、共同声明後も「追加関税は最高だ!」と言い、日米が大筋合意した直後にも「私が追加関税をやりたいと思えば、後になってやるかもしれない」「究極の交渉カードは自動車だ」と言い放っている(「朝日」「読売」2019年8月27日付け)。

 

しかも、協定本文には「協定のいかなる規定も安全保障上の措置をとることを妨げない」と明記されている。「安全保障」はトランプ追加関税の最大の口実であり、トランプ大統領が、自動車への追加関税という強力な武器を振りかざしながら、「第2ラウンド」で「アメリカ第一主義」むき出しの日米FTAをゴリ押しすることは必至である。

 

 


「日米の貿易交渉を検証する」/ 真嶋良孝・農民運動全国連合会副会長
 / 「経済」2020年1月号より

 

 

 

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