Luna's “ Life Is Beautiful ”

その時々を生きるのに必死だった。で、ふと気がついたら、世の中が変わっていた。何が起こっていたのか、記録しておこう。

TPP 国民が知らなければならないほんとうのこと (2)

2013年03月31日 | 反アメリカンスタンダード宣言

 

 




「…それから最後にこのことを強調しておきたい。国内には『TPPに参加すれば有事の際に、米国に守ってもらえる』との声があるが、米国の対外政策の歴史を見てほしい。幻想から覚醒し、次世代のために全力で守るべきこの国の宝(例:世界にまれにみる国民皆保険制度など)のほうに目を向けてほしい(堤未果・ジャーナリスト/ 「まだ知らされていない壊国TPP・主権侵害の正体を暴く」/ 日本農業新聞・編)」。


安倍さんの政策はみなアメリカに迎合するのを主な動機としています。TPP交渉参加もそうです。新聞は数少ないメリットと思しきことしか伝えません。推進しようとしているひとたちの腹の底には、緊張を高めることしかできない中国外交で、これからも緊張を高め続けることができるように、アメリカの軍事力の応援を期待している事があるかもしれない。


対中、対韓強硬派の右翼たちは少なくとも、いざ中国との軍事衝突となったらアメリカ軍に頼ろうという気持ちがあったのだろう、少なくとも安倍さんたちには。だがアメリカ軍は少なくとも尖閣をめぐる衝突で日本に加勢する気持ちはない。最近ようやく安倍さんにもそれが理解できつつあるようだが。が、TPP交渉参加は、軍事同盟強化を謳う安倍さんの真骨頂だ。


右翼に扇動されない、いまや少数の市民派の人びとはよもやアメリカ軍が日本を助けるなどというヨタ話に希望を置いたりはしないだろう。日米軍事同盟とは何か、それをはっきりさせておくのに役立つ文章を二つ三つ紹介しておこう。

 



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なぜ在日米軍があるのかと言えば、日本国民は当然「日本を守るためだろう」と思います。では、米国人はどのように思っているのでしょうか。2010年12月24日付け朝日新聞は「米軍は何のために日本にいるのか?」という世論調査を行いました。回答結果は次の通りです。音国務長官の


・日本の防衛のため          日本42%     米国 9%

・米国の世界世界戦略のため    日本36%     米国59%
・日本の軍事大国化を防ぐため    日本14%     米国24%


この調査結果はある意味で驚きです。歴史的なことを少し見ていきたいと思います。


日本は1951年講和条約を結びます。この時、吉田茂首相は講和条約を早期に締結するために、「米軍の駐留を認めてもよい」と米国側に述べています。元国務長官のダレス特使は日米安保条約の締結交渉で、米国の方針を「われわれは日本に、われわれが望むだけの軍隊を、望む場所に、望む期間だけ駐留させる権利を確保できるだろうか、これが根本問題である」と指摘しています。


この意志は、日米行政協定(後、基本的に同じ内容で日米地位協定に引き継がれている)に巧妙に組み込まれています。ダレスは「フォーリン・アフェアーズ」1952年1月号で、「米国は日本を守る義務をもっていない。間接侵略に対応する権利はもっているが、義務はない」と書いています。


米国が日本に自国の軍隊を置いているのですから、質問の答えは当然、米国人の方がより正解に近いと思われます。その米国人が、「日本の防衛のため」は9%です。ところが、日本人は42%もいるのです。これは明らかに、日本人が操作され、誘導された結果です。


1960年の安保条約では「日本国の施政下への武力攻撃のときには、自国の憲法上の規定および手続きにしたがって対処する」としています。米国の憲法では交戦権は議会にありますから、この約束は「議会にお伺いを立てます」以上の意味はありません。


歴史的経緯を踏まえれば、米国の日本駐留は「日本の防衛のため」ではなくて、「米国の世界戦略のため」なのです。しかし、日本は「思いやり予算」で、基地受け入れ国負担では全世界の半分以上を負担しています。さらに自衛隊を米国戦略の一環に使う動きが強化されています。「米軍の駐留は日本の防衛のため」という宣伝が行われてきた理由は、ここにあります。

 

 




(「これから世界はどうなるか」/ 孫崎享・著)


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アメリカ自身には積極的に日本を防衛しようという気持ちはないけれども、お花畑な日本人右派が日本国民に対して、アメリカは日本防衛をしてくれると期待するよう宣伝するのを放置してきた。それは「自衛隊を米国戦略の一環として使役する」意図があるからです。たとえば1990年代には、このような報告書がアメリカ議会で作成されました。



 

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アメリカの対日戦略会議の内容は次のようになっています。アメリカの対日戦略会議というのは、いわゆる “ジャパン・ハンドラーズ” です。ジョゼフ・ナイ(ハーバード大学名誉教授、元国務次官補)が興味深い報告書を知らせています。「対日超党派報告書」と呼ばれているものです。


①東シナ海、日本海近辺には未開発の石油、天然ガスが眠っており、その総量は世界最大の産油国サウジアラビアを凌駕する分量である。アメリカは何としてもその東シナ海のエネルギー資源を入手し寝ければならない。


②チャンスは台湾と中国が軍事衝突を起こした時である。当初、米軍は台湾側に立ち、中国と戦闘を開始する。日米安保条約に基づき、日本の自衛隊もその戦闘に参加させる。中国軍は米日軍の補給基地である日本の米軍基地、自衛隊基地を本土攻撃するであろう。本土を攻撃された日本人は逆上し、本格的な日中戦争が開始される。


③米軍は戦争が進行するに従い、徐々に戦争から手を引き、自衛隊と中国軍との戦争が中心となるように誘導する。


④日中戦争が激化したところで、アメリカが和平交渉に介入し、東シナ海、日本海でのPKO(平和維持活動)を米軍が中心となって行う。


⑤東シナ海と日本海での軍事的、政治的主導権をアメリカが入手することで、この地域での資源開発に圧倒的に優位な権利を入手することができる。


⑥(この)戦略の前提として、日本の自衛隊が自由に海外で軍事活動できるような状況を形成しておくことが必要不可欠である。




実に怖ろしい内容です。このアメリカ政府の戦略文書は、クリントン政権時代、CIAを統括する大統領直属の国家安全保障会議NSCの議長で、東アジア担当者でもあったジョゼフ・ナイが上院下院の200名以上の国会議員を集めて作成したものです。対日本への戦略会議の報告書です。

 

 




(「今、『国を守る』ということ」/ 池田整治・元自衛隊陸将補・著)



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どうです、アメリカの右派というのは人間味あふれるひとたちではないですか。わたしは中国共産党や北朝鮮などよりもアメリカ右派の方が何倍も怖ろしいです。ところがこんな連中に安倍さんはなんと媚を売った演説をしているのです。




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2月、安倍首相は訪米した。このとき、首相訪米の性格を如実に示す出来事があった。


2月22日、安倍首相は米国のシンクタンク、戦略国家問題研究所(CSIS)で、「日本は戻ってきた」と題する講演を行った。その場で安倍首相は、「ジャパンハンドラー」に媚を売る以外の何物でもない態度を恥ずかしげもなく晒したのである。


「ハムレさん、ご親切な紹介ありがとうございます。アーミテージさん、ありがとうございます。グリーンさんもありがとうございました。そしてみなさん方本日は、おいでくださいましてありがとうございます。昨年、リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイ、マイケル・グリーンやほかのいろんな人たちが、日本についての報告書を出しました。そこで彼らが問うたのは、日本はもしかして、二級国家になってしまうのではないだろうかということでした。アーミテージさん、わたしからお答えします」…と。


ジャパンハンドラーとして知られるアーミテージ氏に報告するという形で演説を始めている。この神経はいったい何だろう。演説の冒頭は、ふつう重要な来客に向けて発するものであり、安倍首相の言説は、今回の演説の主要なゲストがCSIS所長のハムレ氏、アーミテージ氏やグリーン氏だったことを示している。とても一国の首脳による演説の主要ゲストのレベルではない。一方で、現役の政治家や政権担当者は出てこない。つまり、オバマ政権の中枢にある人々は、安倍首相には重要な聴衆ではなかったのだ。


ハムレ氏はCSIS所長といっても、元米国防副長官レベルである。


アーミテージ氏は元米国務副長官ではあるが、2003年7月にCIAリーク事件で糾弾された人物である。CIAリーク事件とは、ウィルソン元駐イラク大使代理が、イラク戦争に関して2003年7月6日付けニューヨーク・タイムズ紙に、イラクの核開発についての情報がねじ曲げられていると寄稿して世論に訴えたことに端を発する。これを受け、2003年7月14日、ウィルソンの妻がCIAエージェントであるとの報道がなされた。露骨な報復である。CIA工作員であることが表向きにされれば活動はできなくなる。(ブログ主註;たしかナオミ・ワッツ主演で映画にもなったと思う。タイトルは忘れた)このリークにアーミテージ氏が関与したことを認めたため、米国内での同氏の威信は著しく低下した。


マイケル・グリーン氏はジョージタウン大学准教授に過ぎず、ジョセフ・ナイ氏もハーバード大学名誉教授であっても、公的には国務次官補経験者に過ぎない。


このレベルの人びとに、一国の首相が演説の冒頭でお礼を言わなければならないほど、来場者のレベルが低かったのだろう。


しかし、ハムレ氏、アーミテージ氏、グリーン氏には共通点がある。それは彼らが「日本を操る人びと」、すなわちジャパンハンドラーと呼ばれるグループに属していることである。こうした人びとに一国の首相が米国の公けの研究所でお礼を述べるというのは、“ご主人” さまにお礼を言うようなものである。

 




 

(「国家主権投げ捨てる安倍政権」/ 孫崎享・著/ 「世界」2013年4月号より)


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右翼のみなさん、冒頭のへつらいの文句を言う相手が、中国の最高権力者である習近平さんだったら、どう思いますか。まずまちがいなく、こめかみの血管が見る見るうちに膨張して破裂するでしょう。ところがこのセリフが言われたのはアメリカのオバマ大統領でもなく、その側近でもない、日本の自衛隊を道具にして、戦争を引き起こし、日本近海のエネルギー資源への優先権を獲得しようというアイディアを打ち出した、下級クラスの人びとに対してだったのです。


わたしたち日本人はこんな人に政権をゆずったのです。安倍さんの「ご主君」であるアーミテージ氏やナイ氏は二級クラスの人びとではあるが、対中国強硬派でもあります。日本の右派の人びとや安倍さんとはこの点で気持ちが通じ合うのでしょう。アジアへの偏見と、個人的な劣等感を埋め合わせる民族主義的優越感を達成しようとする人びとによる対中国強行突破路線を選択したあげくの売国行為です、TPP参加も自衛隊の集団的自衛権行使解禁も。池田さんの文章の⑥にあったように、自衛隊をつかった対中国代理戦争を実現させるためにも、自衛隊が海外で戦争ができるように環境を整える必要があり、安倍政権と自民党、民主党右派と石原慎太郎と維新塾の橋下が憲法改正をもくろんでいます。


だますひとたちは確かに悪い。無慈悲で他人の痛みに何の同情も持つことができない。社会人の失敗作のような人たちです、だますひとたちは。だが、だまされる人たちはじゃあかわいそうなのかと言えば、それはちがう。だまされる人たちはただただ愚かなのだ。知力が低いのだ。木ばかり見て森を俯瞰できないのだ。これはひょっとしたら、人間界における「自然淘汰」の特殊な形態なのかもしれない。自然界では弱者が淘汰されてゆく。人間界では愚か者たちが食い物にされたあげく捨てられて、淘汰されてゆくのだ…。






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TPP 国民と国会議員が知らなければならないほんとうのこと (1)

2013年03月13日 | 反アメリカンスタンダード宣言






毎日新聞の大阪版2013年3月18日付朝刊一面に、こんな記事が掲載されていた。


「毎日新聞世論調査:TPP交渉、支持63% 内閣支持、70%に上昇」


会社の食堂で読んだから今は手元にないので正確には書けないが、2面には、1500世帯ほどにランダムに電話をかけ、六十数パーセントの有効回答を得た、という。およそ1000人弱だ。

内訳は、
「毎日新聞は16、17両日、全国世論調査を実施した。安倍晋三首相が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を正式表明したことについて
「支持する」との回答は63%で、
「支持しない」の27%を大きく上回った。
 安倍首相の経済政策により、景気回復が
「期待できる」と答えた人は65%に上り、
「期待できない」は30%にとどまった。
安倍内閣の支持率は70%に達し、2月の前回調査から7ポイント上昇。
「支持しない」は5ポイント低下し、14%だった。


 TPP交渉参加の支持は30代以上の世代で6割前後に及び、不支持を上回った。一方、20代では不支持が50%を占め、支持の47%と逆転。市場開放で雇用機会が奪われることに警戒感もうかがえる。地域別にみると、北海道の不支持は53%に上り、支持40%より高い」。

 

 

みなさん、こんな数字を見せられて、「ああ、TPPは参加がトレンドだな、ま、いいか」などと思わないでください。「世界」の今月号に、ずっとTPPの危険性を訴え続けてこられた鈴木宣弘東京大学助教授の魂を絞り出すような訴えが掲載されています。今回、それをご紹介します。


まず、世論調査の数字をどう読むかについて、鈴木助教授はこのように述べておられます。

 

 

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各種世論調査では、TPP推進の声が多いかのように出ているが、人口の4割が集中する首都圏中心に行われる、わずか1000人程度の世論調査の結果は誤解を生む。首都圏の人口を支えているのも、北海道から沖縄までの全国の地域の力である。人口は都市部に多くても、単純に人の数だけで評価されるべきではない。


全国の多くの地域がTPPに反対している。都道府県知事で賛成と言っている方は6人しかいないし、都道府県議会の47分の44(44/47)が反対または慎重の決議をし、市町村議会の9割が反対の決議をし、地方新聞紙はほぼ100パーセントが反対の社論を展開している。


だから、都道府県ごとに世論調査をして47の結果を並べてみれば、圧倒的に反対の声が大きいはずである。だからこそ自民党議員の6割以上がTPP反対を唱えているのである。


しかし、このような全国各地の地域社会の声が、東京中心のメディアの発信では伝わらない。全国の真の声を共有しなくてはならない。

 

 

 

(「世界」2013年4月号/ 「許しがたい背信行為」/ 鈴木宣弘・著)

 

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現に、安倍首相の参加表明後、山形県では850人の反対集会が行われた。毎日新聞の世論調査の賛成派600人ほど(1000人中の60パーセント強)よりも多い人数だ。第一、大手新聞社は企業役人サイドに立った情報しか流さないのに、国民がどうして正確な判断を下せるだろうか。鈴木助教授は国民に隠されてきた情報をいくらか紹介してくださっている。

 

 

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安倍総理は、オバマ大統領から「聖域なき関税撤廃を前提としないことを明示的に確認した」としているがしかし、共同声明は、「全品目を対象として、高い水準の協定をめざす」ことを確認したうえで、「交渉に入る前に全品目の関税撤廃の確約を一方的に求めるものではない」と形式的には当たり前のことを述べているだけで、「例外がありうる」とは言っていない。

 


「早く入れば交渉が有利になる」、「交渉力で例外も作れるし、嫌なら脱退すればいい」というのもきわめて困難である。そもそも米国は、「日本の承認手続きと言9か国による協定の策定は別々に進められる」と言っている。最近、米国がメキシコやカナダの参加を認めたときも、屈辱的な「念書」が交わされ、「すでに合意されたTPPの内容については変更を求めることはできないし、今後、決められる協定の内容についても口を挟ませない」ことを約束させられている。つまり、日本がどの段階で交渉に参加しようが、法外な「入場料」だけ払わされて、ただ、できあがった協定を受け入れるだけで、交渉の余地も、脱退で逃げる余地もない。

 


共同声明では「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項」について日本が早急に「入場料」を支払うよう明記された。「その他の非関税措置」についても対処を求められた。例外品目確保の保証を得られず、「入場料」だけを一方的に求められるようなものだ。この「入場料」交渉については、国民にも国会議員にも隠されてきたが、今回の共同声明で「公然の秘密」になった。国民には「情報収集のための事前協議」とウソを言い続け、水面下では、自動車、郵政、BSE(狂牛病)の規制緩和など、米国の要求する「入場料」に対して必死で応えようとする裏交渉を進めてきた。

 

 


(上掲書より)

 


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一番めのことについては、わたしたち素人でも見当がついていました。二番めについては、安倍さんは交渉作りリードも撤退もできないことを知っているのです。それはこのあと引用する「しんぶん赤旗」の記事にある安倍首相の反応を読めばわかります。三番めについて、みなさんはどう思われたでしょうか。「保険部門」の規制撤廃を「入場料」として決めるようにという交渉が、アメリカの要求にこたえようとする方針で裏で進められてきており、それが国民と、そして国会議員から隠されてきた、というのです。いったい、TPP導入を推進しているのはだれなんでしょう。


みなさん、日本を愛する人たち、右翼の人は読みたくない「世界」ですが、この記事と続く孫崎さんの記事だけは目を通してください。買うのが嫌なら図書館で読むなどして。この記事と孫崎さんの記事はつづけてわたしのブログで紹介してゆきます。


以下、しんぶん赤旗の記事2本を引用しておきます。

 

 


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■首相“合意ずみルール変更できぬ”

 


 安倍晋三首相は会見で、「TPPが目指すものは太平洋を自由にモノやサービス、投資などが行き交う海とすることだ。世界経済の3分の1を占める大きな経済圏が生まれる」と強調。中国、韓国、インドネシアなどアジアの主要国がTPPに参加していないことには触れず、「日本だけが内向きになったら成長の可能性もない、優秀な人材も集まらない」とし、「アジア太平洋の未来の繁栄を約束する枠組み」とTPPを絶賛しました。


 安倍首相は、農業や医療保険制度などへの深刻な影響が懸念されていることに対しては、「だからこそ衆院選挙で聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対すると明確にし、国民皆保険制度を守るなど、五つの判断基準を掲げた」と強弁。交渉参加表明によって公約を踏み破っているという批判には耳を貸さず、「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、国益にかなう最善の道を追求する」とのべるだけで、何の担保も示しませんでした。しかも、「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実」と述べ、不利益な条件を受け入れざるを得ないことを認めました。


 また記者団から、「国益に反する場合、交渉から撤退するのか」との問いに明言を避けました。

 安倍首相は、TPPの意義は経済効果だけにとどまらないとし、「同盟国である米国と共に、新しい経済圏をつくる。そして自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値を共有する国々が加わり、アジア太平洋地域における新たなルールを作り上げていく」と述べました。

 

 

 


■安倍首相のTPP交渉参加表明に強く抗議し、撤回を求める
日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
   

 


 一、本日、安倍首相は、TPP交渉参加を表明した。安倍首相は、交渉のなかで「守るべきは守る」などとしているが、いったん参加したら「守るべきものが守れない」のがTPP交渉である。日本共産党は、安倍政権にたいし、TPP交渉参加表明を行ったことに抗議するとともに、参加表明の撤回を、強く求めるものである。


 一、TPP交渉で、「守るべきものが守れない」ことは、さきの日米首脳会談と共同声明からも明らかである。安倍首相は、日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」というが、これは国民を欺く偽りである。


 首脳会談で発表された共同声明では、「TPPのアウトライン」に示された「高い水準の協定を達成」する――関税と非関税障壁の撤廃を原則とし、これまで「聖域」とされてきたコメ、小麦、砂糖、乳製品、牛肉、豚肉、水産物などの農林水産品についても関税撤廃の対象とする協定を達成することを明記している。「聖域なき関税撤廃」をアメリカに誓約してきたのが日米首脳会談の真相である。


 国民皆保険、食の安全、ISD条項など、自民党が総選挙で掲げた「関税」以外の5項目についても、安倍首相は一方的に説明しただけで、米側から何の保証も得ていない。TPPに参加すれば、非関税障壁の問題でも、アメリカのルールをそのまま日本に押し付けられることになることは、明らかである。


 一、さらにTPP交渉では、新規参入国には対等な交渉権が保障されず、「守るべきものを守る」交渉の余地さえ奪われている。

 昨年、新たにTPPに参加したカナダ、メキシコは、
(1)「現行の交渉参加9カ国がすでに合意した条文はすべて受け入れる」、
(2)「将来、ある交渉分野について現行9カ国が合意した場合、拒否権を有さず、その合意に従う」、
(3)「交渉を打ち切る権利は9カ国にあって、遅れて交渉入りした国には認められない」
――という三つのきわめて不利な条件を承諾したうえで、参加を認められたと伝えられている。日本政府も、この事実を否定できず、安倍首相は、「(交渉参加条件は)判然としない」「ぼやっとしている」と、真相をごまかす答弁をおこなっている。


 「ルールづくりに参加する」どころか、アメリカなど9カ国で「合意」したことの「丸のみ」を迫られるのがTPP交渉である。


 一、今回の交渉参加表明は、自民党の総選挙公約――「聖域なき関税撤廃を前提とするTPP交渉に反対する」「関税以外の5項目でも国益を守る」――を、ことごとく踏みにじるものである。国民への公約を踏み破るものがどういう運命をたどるかは、前政権が示していることを、自民党は銘記すべきである。


 日本共産党は、農林水産業、医療、雇用、食の安全など、日本経済を土台から壊し、経済主権をアメリカに売り渡すTPPの実態を国民に広く知らせ、TPP参加反対の一点で国民的共同を広げるために、力を尽くす決意である。

 

 

 


しんぶん赤旗2012年3月16日、17日付より


 


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