国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

方向転換を必要とする日本の高等教育:キーワードは中国語と地政学

2010年03月18日 | 日本国内
●3572.米海軍力減少で地政学が変化へ
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220314.htm

●インド洋をめぐる地政学
http://www.asahi-net.or.jp/~vb7y-td/220313.htm


●■地政学とは?
http://taba2002.hp.infoseek.co.jp/tiseigaku1.html


【私のコメント】
1.偏差値は高いほど偉い?

久しぶりの更新である。私は前回更新直後に内臓疾患で倒れ入院を余儀なくされたため暫く更新できなかった。命には別状はないことが救いである。
下の偏差値ランキングを見て欲しい。慶応が最難関で、慶応より明らかにレベルの高い東大や京大が下のランクになっている。これはなぜだろうか。答は簡単で、偏差値の高さは難易度とは無関係なのだ。では、難易度を表す指標はないのか?ある。それは、入学試験の科目数である。
入学試験の科目数が日本で一番多いのは、文系では東大である。英数国+理科+公民1+地歴2科目の7科目である。しかも、二次試験の地歴は長文の論述式であり、内容を精選して限られた字数内に詰め込むという高度な作業を要求される。当然科目数が増えるほど、受験者のレベルは上昇し、人数は少なくなるので偏差値は低下する。逆に科目数が少ない大学ほど、受験者のレベルが低下し偏差値が上昇する。偏差値の高さではなく、試験の科目数が難易度を示しているのだ。

週刊東洋経済 10月18日号  主要大学法学部偏差値ランキング(河合塾資料引用)

72.5 慶大
70.0 東大 早大
67.5 一橋 京大 中大
65.0 上智 明大 立大 阪大 神大
62.5 東北 学習院 法大 名大 同大 阪市 九大
60.0 千葉 成蹊 立命
57.5 北大 青学 明学 関大 関学 広島 熊本

入試で地歴2科目が必要なのは東大と京大だけである。一橋は地歴1科目でOK。その他の国立大は地歴はセンター試験のみで可。私大文系は更に負担が軽く、数学なし・地歴1科目でOKである。これらを総合すると、日本の文系学部の難易度は東大>京大>一橋大>阪大などの主要国立大>早慶などの主要私立大というランキングになる。こちらの方が、週刊東洋経済のランキングよりよほど実態に近いであろう。

理系では多くの大学で英数国+理科2科目という入試科目が一般的であるのに比べると、文系の科目数の差の大きさが目立つ。これは、粒ぞろいの理系に比べて文系では能力の格差が極めて大きいことを示している。トップ層の地歴2科目をものともしない東大文系受験者層の人々は恐らく5000人程度で、文系全体(50万人程度か?)の1%である。間違いなくこれが日本の文系トップエリートである。早慶も東大を落ちて入学した学生によってレベルが維持されている面が大きいと思われる。


2.方向転換を必要とする日本の高等教育:キーワードは中国と地政学的素養

前置きが長くなった。本題に入ろう。従来の日本は米国外交のイエスマンであり、独自の外交戦略を持つ必要も無かったし持つこともできなかった。しかし、米国の衰退と共にその様な幸せな時代は終わろうとしている。代わって台頭してくるのは10億人以上の人口を持つ中国とインドの二カ国であり、今後少なくとも1世紀の間は東アジアは日中印三大国が主要なプレイヤーになると思われる。人口で劣る日本は、技術力と謀略を使って生き延びるしかない。中国・インドは宗教対立(イスラム)やカースト・少数民族・都市と地方の格差などの深刻な内部対立を抱えている。また、中国とインドは長大な陸上国境で接しており対立の芽を孕んでいる。日本はこれらの対立に着目して対立を煽って両国を操り、漁夫の利を得て行かねばならない。

インドは英語が通じるが、中国では中国語が公用語である。日本の仮想敵国ナンバーワンは中国なので、中国に関する深い理解を持った人材が大量に必要になる。また、地政学的戦略が必要になり、その分野の素養も必要である。対策としては、日本の全ての法学部・経済学部で第二外国語として中国語を必修とし、地政学の講座も設け、必修とすることが望ましいだろう。ドイツ語やフランス語、スペイン語やロシア語も重要であるが、それらは文学部や外国語学部の人々に任せればよい。なお、第一外国語は当然英語である。理系は研究が大変なので、中国語教育は希望者のみで良いのではないかと思う。

また、東大文系を目指すトップエリート5000人については、更に高い水準の教育が必要である。彼らは地歴2科目の学習を苦にしない優秀な人材であるが、地歴2科目の中で最も重要なのは世界史であり、地理や日本史の重要性はやや劣ると思われる。そこで、地歴を世界史1科目に削減する代わりに、入試に新たに中国語を加えることを提言したい。東大文系の入試科目は日本の文系エリートの知的水準を支えている。中国語を入試に加えることで日本の文系エリートの質は必ず向上するだろう。東大文系志願者のいる学校では高2・高3で中国語の授業を行えるように教員を配置すればよい。中国語と英語を自由自在に操り日本の国益のために働く人々が毎年数千人単位で量産されるメリットは計り知れない。

3.方向転換を必要とする日本の中等教育:キーワードはスーパーチャイニーズランゲージスクール

日本のエリートは小学校時代から塾に通い、中高一貫進学校を目指すものが多い。首都圏では開成中学と筑波大附属駒場中学が、西日本では灘中学がその代表である。この三校の生徒600人は間違いなく中学一年時点での日本のトップ層である。入試の受験勉強も苦にしない、苦にならないものが多い。そこで、この三校をスーパーランゲージスクールに指定し、英語と中国語の2カ国語の教育を中学・高校6年間に渡って行わせることを提言する。具体的には、中学入試に英語と中国語の2科目を加えるのだ。既にスーパーイングリッシュランゲージスクールは存在するが、これからは英語だけではダメで、中国語も必要な時代になっている。また、外国語は早期教育が有効であることを考えると、小学校時代から英語・中国語に親しませることが望ましく、これら三校に受験生向け中国語教室・英語教室を小学4年ぐらいから設置すべきである。もっと多くの小学生に中国語・英語を学ばせることが理想的だが、生徒たちの能力と余裕度を考えた場合、これら三校の志願者・入学者に限定して制度をスタートするのが現実的ではないかと感じる。この3校を目指す2000人程度の小学生が中国語と英語を学んでくれることだろう。やはり、入試を弄らないと効果は出ないと思われる。

以上が私の独断と偏見に基づいた教育改革論である。21世紀の文系エリートには日中英の三カ国語を自由自在に操る能力が要求されている。能力に応じて、大学レベル・中学高校レベル・小学校レベルから中国語・英語の教育を行うことが求められている。




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17 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして。 (masa)
2010-03-18 21:17:49
いつも興味深い記事を拝見し、鋭い分析に感嘆しつつ勇気づけられている者です。しばらく更新が無かったので、心配しておりました。
どうぞ、お体お大事にしてくださいませ。
またの更新を楽しみにしております。
返信する
Unknown (Unknown)
2010-03-18 22:54:06
はじめまして。しばらく更新がなかったので
心配しておりました。
内臓疾患ですか。私も以前、十二指腸潰瘍になったことがあります。
ご自愛ください。
返信する
復帰おめでとうございます (左近尉)
2010-03-19 13:44:55
今後のご活躍を期待しております。

わが大学が、あの大学より低いのかなどと思ってしまいました。

小生はどれだけ真剣に社会と向き合うかが、本当の学問ではないかと思うのですが。
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お体をお大事に (読書貧乏)
2010-03-20 19:54:03
ご回復をお祈りいたします。
返信する
いろいろ思うようにならないことも多いでしょうが (不思議)
2010-03-20 23:21:14
お体は、大事になさって、栄養をつけてください。


ところで、世界史は大事だと思いますが、それと関連した日本史の理解も外せないと思いますよ。特にこの500年間。
東大の文学、哲学、社会学などでも、中国人の思想、行動様式を深く把握する人材が必要だと思います。
法学と経済学だけでは、世の中回りません。それをサポートする人材の助けがなければ、
単なる国家機構の運営と経済の車輪だけにエネルギーを注いでも、航路図を描くこともできないでしょう。


時々、変な霊気にあてられていることもあるかもしれませんが、
貴重なブログだと思いますので、ご健勝をお祈りいたします。
返信する
Unknown (面白い発想だが)
2010-03-21 15:01:38
復帰おめでてとうございます。
2ヶ月更新がなかったので心配しておりました。

中国語について、中国語という言語はない。現在中国語と呼ばれているものは北京語ですが、将来も北京が中心となるかは微妙な問題があります。しかし、漢字で書けばほぼ同じ意味になりますから、漢字漢文の素養があれば読むことはそれほど難しくない。漢文の古典知識は中国知識人と話すときには必要です。従来からある漢字漢文教育をより進めていくことが重要となるでしょう。これは1000年前の名残でもあり、先人の知恵でもあります。東大は2次試験で漢文が入り、このクラスの頭脳であればその上に中国語(北京語)を習得は困難ではないでしょう。ただ、学問的な知識の習得には理系では英語を習得すればほぼ問題ないが、文系では過去の蓄積からフランス語とドイツ語がどうしても必要になります。教養で第2外国語を複数にする、高校で第2外国語を習得するかなどが検討課題になってくるでしょう。

地政学について世界史と地理の知識基礎になります。地政学的な視点が入った世界史であれば、あえて地政学として学ぶ必要はない。ただ、歴史の理解には地政学的素養が不可欠にも関わらず、歴史学者にはこれができない人がけっこう多い。研究レベルで素養が欠けているとなると教育の対応が必要になります。これは戦後、地政学は徹底的に破壊されたためです。復興普及を考え、大学の教育課程にいれていく必要があるでしょう。
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Unknown (kenji)
2010-03-24 13:10:34
 どうされたかと心配していました。わが国の教育で問題なことは忠誠心である。道徳である。これは頭の良さではない別の領域である。
 これについては我国は昔から、まったくしていない。
 癒しているという人もいるが、私はしていないと思っている。
返信する
復帰おめでとうございます。 (CatShitOne)
2010-03-26 00:21:07
2ケ月間更新がなかったので、何かアブナイ筋に引っかかって・・とか妄想しておりました。

大学の教育について言えば、小室直樹氏ぐらいに社会科学(歴史、経済、文化人類学、etc)方面がわかっている人材が100人/年くらい欲しいです。

あと日本史ですが、日本史単独ではなく東アジア史の一部としての日本史(古代~中世)、世界史の一部としての日本史(近世:鉄砲伝来以降~現代)の形でそれこそ地政学的視点でやって欲しいですね。

欲を言えば人間の生き様としての歴史(史記、プルターク英雄伝)とかを教えれば、道徳教育にもなると思います。
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Unknown (Unknown)
2010-03-30 12:00:14
これからの教育は能力と同時に脳力が大切だと思います。
PCを使ったウェイトトレに相当する脳のトレーニングが、なんで学校で普及しないんでしょうね?

文科省の内部で意見が出るたびになぜかそれに猛反対する人達が出現し、第三者による脅迫まで起こるそうです。

要らないダムには必ず予算をつけるのに、なぜか肝心のところにはスルーというのが民主党の方針のようですが。
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Unknown (Unknown)
2010-04-09 12:11:04
英語日本語中国語の3ヶ国語を操りますが仕事が見つかりません。どうすればいいですか。
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