国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

上海近郊の崇明島の自然保護計画は、内戦・伝染病などの際の避難所としての確保が目的?

2007年02月24日 | 中国


●え?揚子江河口にエコ未来都市 9月にも着工-世界からニュース:イザ! 2007年2月24日

上海近郊の揚子江河口にある島チヨンミンタオ=崇明(すうめい)島=全体が、地球環境に配慮した「ドンタン(東灘)環境都市」として開発される。中国では環境破壊が深刻だが、国内だけでなく、世界的な環境モデル都市にしようと関係者らは意気込んでいる。崇明島はニューヨーク・マンハッタン島の4分の3くらいの大きさ。湿地に恵まれて渡り鳥の中継地となり、農民ら2万5000人が住んでいる。この島を約25キロ離れた大都市上海と、橋とトンネルで結び、宅地化するのだが、その際、計画的に、環境都市化を進めていく。島の電力は太陽光、風力などすべて再生可能エネルギーで供給。島内は排ガスのない公共交通機関と自転車、徒歩で移動することとし、島としてカーボンニュートラル(吸収できる以上の二酸化炭素を出さない)を実現する。島の4分の1は自然のまま残される。

 中国は高度経済成長に伴う環境破壊に悩まされ、世界銀行によれば、世界で最も公害がひどい20都市のうち、16を中国の都市が占める。森林破壊、土壌浸食、砂漠化などが進む一方、大気、河川の汚染状況もひどいものとなっている。環境都市建設計画は、こうした環境劣化の阻止努力を象徴するもので、この9月にも着工が見込まれている。崇明島の農業、ペン・ショーヨンさんは年収700ドル(約8万4000円)程度。建設される東灘環境都市に住まうことはとても無理だ。「中国が必要としているのだから仕方がない」と話す。設計にあたった英国企業のピーター・ヘッドさんは「環境都市の建設は最終目標でなく、環境保全の始まり」と強調する。一方、上海では「開発でグリーンやエコをうたうのは最近の流行」(映画監督のシュエン・ユエさん)など冷やかな見方もある。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/40616/




●Dongtan From Wikipedia, the free encyclopedia

Dongtan (Traditional Chinese: 東灘; pinyin: Dōngtān, literally "East Beach") is a new eco-city planned for the island of Chongming, near Shanghai. The city should be open, with accommodation for 50,000, by the time the Expo 2010 opens in Shanghai. By 2040, the city is slated to be one-third the size of Manhattan.

Dongtan was recently presented at the United Nations World Urban Forum by China as an example of an "eco-city", and is the first of up to four such cities to be designed and built in China by Arup, a British company. The cities are planned to be ecologically friendly, with zero-greenhouse-emission transit and complete self-sufficiency in water and energy, together with the use of zero energy building principles.

Dongtan proposes to have only green transport movements along its coastline. People will arrive at the coast and leave their cars behind then travel alongshore as pedestrians, cyclists or upon sustainable public transport vehicles.
http://en.wikipedia.org/wiki/Dongtan




●エクスプロア上海:崇明島 2005年11月

上海市宝山区をさらに北へ進むと長江が流れているが、その長江を渡ると上海市崇明県がある崇明島がある。長江の淡水と東シナ海の塩水が混じる「汽水」エリアであるため、陽澄湖などの上海蟹の稚蟹の大部分がこの崇明島で育てられる。長江が運んできた肥沃な大地と、大切に保護されてきた自然環境が一躍注目を浴び、2005年11月16日も上海市による『崇明三島総合開発計画』が発表されたばかりだ。島の東側には世界有数の湿地帯が連なり、渡り鳥の観測点としても名高い。


崇明島の概況

 崇明島の面積は1083平方キロ、台湾島や海南島に次ぐ中国の三大島のひとつだ。長江から流れてくる土砂により形成され、今でも年間143メートルの速さで東シナ海に向かって成長し続けている。島の全長は東西に76キロあり、南北には13キロから18キロの長さがある。島の北側の一部は江蘇省に属するが、その大部分は上海市に属している。最近では長江上流の三峡ダムによって移転を余儀なくされた農民が、移住の地として崇明島が選ばれた。絶え間なく流れてくる土砂の影響で、崇明島の形は変化し続けている。崇明島の島としての記載があるのは唐の時代、618年ごろといわれている。その当時の地形から推測すると、日本へ渡った鑑真和上が揚州の大明寺にいたころの長江の河口は、今と違って揚州や鎮江一帯までさかのぼることになる。もちろん上海もそのころはまだほとんどが海の中だった。唐代の崇明島の面積はたった数10平方キロほど。そのうち人がだんだんと移住し始め、崇明鎮が形成されていく。長江河口がどんどん東へ延びていくに従って、島の形は変化を続け、崇明鎮も移動を繰り返し、最終的に今の城橋鎮に落ち着いたのは1583年になる。現在も島の形は変化をし続けており、島の北側の長江支流は年々狭くなっており、近い将来は江蘇省と崇明島は合体し、南東部の長興島と横沙島があらたに島を形成していくものと考えられている。

現在、崇明島と上海市本土との間にはフェリーしかなく、交通は不便であるが、『崇明三島総合開発計画』によれば、新たに地下鉄9号線が長江を超えて崇明島に直通することが決定した。これにより、松江区から徐家匯・浦東新区の外高橋を経由して崇明島に至る地下鉄ルートが完成する。また橋とトンネルを使って高速道路を開通させるプロジェクトも2004年度から始動しており、交通アクセスは格段に改善されることになる。2010年完成を目指す長江大橋・トンネルプロジェクトはトンネル部分の長さが8954メートルで、直径15メートル(内径13.7メートル)。このトンネル内部には3車線の道路が敷設され、2本のトンネルを建設することにより上下あわせて6車線の道路となる。トンネルの直径は世界最大規模。さらに『崇明三島総合開発計画』では島の各エリアの機能についても明確に定義されていている。崇明島は長江河口の環境保護地区としての色彩を強め、2020年の人口も65万人未満に抑えることを目標とする。また島全体の面積の55%以上を森林とし、開発禁止エリアを指定して、永久的な環境保護を目指す。一方で長興島を船舶や造船業の基地として開発し、すでに南浦大橋周辺にあった造船会社も移転しはじめている。横沙島はレジャーが楽しめる島として整備する。
http://www.explore.ne.jp/feature/chongming_1.html





●【上海】崇明島、“生態島”に指定 人民日報日本語版 2004年01月19日

最近上海市の韓正市長は、中国第三の大島である崇明島を総体位置づけとして“生態島”とすることを明確化し、生態保護を中心に上海の将来の発展のための優良な発展空間として留保し、一般的開発は行わない、と述べた。

上海市の総土地面積の1/6以上を占める崇明島は台湾島、海南島に次ぐ第三の大島であり、その生態資源は上海から長江デルタに至る地域の中で最良であり、“上海最後の生態浄土”と称されている。

長期にわたり崇明島の保護と開発については、一部意見の分かれるところであった。今回、上海市が崇明島を明確に“生態島”と位置付けたのは、生態保護を優先的選択条件とし、一般的産業開発を盲目に行わせず、基本的に第二次産業を参入させないことを明確に打ち出すためである。たとえ第二次産業プロジェクトがあったとしても、環境汚染が無く、生態を保護することを前提とし、一定量の島内人口の就業問題解決のためだけとしている。

生態保護を実施すると同時に、崇明島はその交通の“ボトルネック”問題を解決することを急いでおり、大規模なインフラ施設建設計画を実施している。韓正市長は、投資額が大きい崇明江越工事は今年中に必ず着工し、崇明島と大陸間の“江水隔離”状況を根本から覆し、今後の発展のための基礎を築かなければならないと述べた。
http://j.peopledaily.com.cn/2004/01/19/jp20040119_35967.html






●全国3大島嶼の一つ・上海崇明島の開発に着手、現有資源を有効活用  人民日報日本語版 2003年4月4日

国際都市・上海市に「県」の行政区域がまだ残っている。同市の面積の5分の1を占める崇明島だ。長江によって市区と分割された“孤島”で、過去数十年の間、フェリーが唯一の交通手段。交通がネックとなって、崇明島は1978年に始まった改革開放後もその恩恵を受けることはなかった。2002年の1人平均GDPはわずか市区の5分の1。ここにきて橋梁の建設が認可され、65万の島民に全面的改革開放のチャンスが訪れた。

崇明島の面積は1200平方キロ。だが年に長江の土砂堆積で13.3平方キロずつ増えており、“一寸の土地、一寸の金”の上海にとっては、一片の得がたい新生地だ。海岸線は全島で229キロ、水深マイナス8メートル以上は17キロと、大型船舶の停泊も可能。崇明島は上海地区で唯一、国家クラスの生態モデル地区に指定されている。水や土、空気はクリーンで生態環境は良く、自浄能力も強い。毎年、世界各地から飛来する渡り鳥にとっても理想の地だ。

開発では、「点から面への拡大」をめざす。世界クラスの湿地自然保護区である東海岸を中心に、湿地公園や現代農業基地、高級住宅地を建設する計画で、総面積は174平方キロ。崇明島県政府のある陳橋鎮は将来、田園風景の残る30平方キロ、人口20万の住宅地となる。今ある東平森林公園は面積を55平方キロまで拡大して、上海最大の森林をめざす。西部の天然淡水湖・明珠湖は、上海随一の水質環境に恵まれているため今後、観光開発で内外資本を誘致していく。

崇明島中部では現代農業基地を発展させて、白米やカリフラワー、カボチャ、白山ヒツジ、崇明カニの5大特産物の生産拠点にする計画だ。北部は土地が広く、しかも無人であるため、一大開発に適している。ただ土のアルカリ性が強いため、まず良質の牛乳生産基地として発展させて、土壌を自然改良していく方針。またリゾート地として、華東地区最大の18ホールのゴルフ場を10カ所造成する。

将来の崇明島像は? 静寂で快適な生活がエンジョイできる島、上海の美しい“バックグランド・ガーデン”。
http://j.peopledaily.com.cn/2003/04/04/jp20030404_27691.html







●世界最大の三角州~崇明島~  石川県上海事務所 [上海駐在員便り]
http://www.pref.ishikawa.jp/syoko/kaigai/shanghai/info/info-shanghai-200507.htm







●崇明島は「宝島」に生まれ変わるか? 最新ビジネスリポート  5/2001

崇明島の総面積は1,164km2であるが、このうち上海市に属する崇明県の面積は1,041km2で島の面積の9割を占める(残り123km2の土地は江蘇省の管轄で2つの農場がある)。

自然環境
 崇明島は標高3~4mの平坦な地形で、揚子江が運んだ肥沃な土砂から成っている。気候は温暖で、年間平均気温は15.2度、年間降水量は1,025mmで無霜期間は229日である。水害対策は海抜の低い島だけに十分おこなわれている。周囲は高さ8m、幅5mの護岸堤で覆われ、台風や高潮などの被害から島を保護している。また、島には25の排水機場が設けられ、1日の降水量が200mm以下であれば排水できる能力がある。このように、温暖な気候とこれまで大規模な開発がなかったこともあり、太平洋岸でも汚染されていない地域として知られている。生態環境は極めてよく、水質は国家2級・大気は国家1級に位置付けられ、緑色食品の生産にとって申し分のない土地である。さらに、森林被覆率は9.7%に及び、全国緑化計画のモデル地区であるという。
http://www.pref.ibaraki.jp/bukyoku/seikan/kokuko/shanghai/business/01/repo0105_01.htm





●宝島総合計画祟明三島全体企画

人口規模:企画では2020年まで、三島の人口規模を80万以内にコントロールする、現在より約10万増える。その中、祟明島の人口は68万以内、長興島の人口は10万前後、横沙島の人口は2万以内にコントロールする。
http://www.cmx.gov.cn/cmwebnew/node2/node792/node820/node825/userobject1ai9807.html







●北京五輪中止、共産中国崩壊、上海の特別行政区化というシナリオについて考える
http://blog.goo.ne.jp/princeofwales1941/e/bd50d17cbc3d689c18583fe8c50f3bdd









【私のコメント】台湾・海南島に次いで中国で三番目に大きい島である上海市の崇明(すうめい)島は、生態保護を行い開発を制限して自然を残す「生態島」に指定されている。IZAの記事では「崇明島はニューヨーク・マンハッタン島の4分の3くらいの大きさ。農民ら2万5000人が住んでいる。」とされているが、実際には1,164km2でニューヨーク市全体にほぼ等しい面積(沖縄本島とほぼ同じ、済州島の約2/3)であり、人口は66万人である。英語版wikipediaの記述とあわせると、IZAの記事の人口・面積の情報は、崇明島の一部に計画されている東灘環境都市の誤りであると思われる。

 崇明島の森林被覆率は現在9.7%であるという。エクスプロア上海によればこれを55%以上にする計画だというが、他の記事を見るとかなりの農地も維持する計画のようであり、何らかの間違いかもしれない。いずれにせよ、森林公園の面積を拡大させ、人口増加を抑制する方針であるという。

 中国文明は、森林や原野を切り開いて耕地に変えていく文明である。かつて鬱蒼たる森林であったという華北平原は今や一面の耕地となり、黄河流域からあふれ出した中国人が揚子江流域・華南・満州・雲貴高原などに移住してその地域の森林を破壊している。華北・満州・内モンゴルなどの半乾燥地帯の過剰な農耕による砂漠化は中国文明が必然的に引き起こしたものであると言って良いだろう。

 良好な農地にできる平地を森林公園にするという崇明島の環境保護計画は、中国文明の常識を覆すものである。これは、市街地の中に緑地を設けるという欧米型の都市建設というだけでなく、森林と共に暮らすという日本・東南アジアやドイツ・北欧などの文明を移植するものだ。かつて揚子江流域に栄えていた長江文明を再興するという見方もできるだろう。崇明島の自然保護区では、森を切り開いて農地にしようという伝統的な中国農民の流入とそれを阻止する上海市の役人の戦いが果てしなく続けられるかもしれない。森林を切り開く文明と森林を保護する文明が上海で激突することになる。

 中国文明は、平和で気候の良い時代に人口が極限まで増加し、気候悪化(寒冷化・乾燥化)と共に大規模な飢饉とそれに伴う悲惨な内戦で人口が減少するという歴史を繰り返してきた。飢饉と内戦の時期には親が子を殺して食うといった弱肉強食の極限状態が常態化し、それが家族以外の人間、あるいは同郷の人間以外を信頼しないという砂のようなまとまりのない社会を作りだしたと言えるだろう。危機に際して団結して生き残りを目指す日本人と、他人を信頼できないために自分だけ、自分の仲間だけの生き残りを目指して互いに争い、結果的に外敵につけ込まれる隙を与える中国人の行動様式は全く異なっている。軍閥が内戦で争った近代中国と、内戦を避けるために大政奉還を行って自ら政権を放棄した徳川慶喜がその落差を象徴している。数千年の長い歴史が作りだしたこのような中国人の民族性は容易に消えるものではない。たとえ一見文明化したように見えても、一度悲惨な飢饉や内戦が起きれば彼らは中国文明のDNAに従って野獣のような弱肉強食の本性を現すことだろう。上海市は少なくとも今後数十年の間は、孤立した西洋文明(日本文明を含む)の橋頭堡であり続けると想像する。

 崇明島の環境保護計画は、人口の増加を抑制する点が最も注目される。これは単なる自然保護ではなく、悲惨な内戦・伝染病蔓延などの危機に上海市民が避難する場所として確保することが目的ではないかと想像する。約1000平方㎞の崇明島は仮設住宅建設等により上海市民全員を収容することが不可能ではないだろう。SARSの再発、あるいは致死率の高いインフルエンザの流行などが発生した時に、幅数㎞の水面で大陸と隔てられた崇明島は避難所として機能するのではないか?また、内戦で上海の市街地が戦場となっても、崇明島の橋頭堡を日本等の海軍力の支援の下に確保することが可能なのではないか?

 上海と並ぶ中国の臨海地区の大都市は大連・天津・青島・香港・広州などが代表的だが、大陸が内乱状態になったときにシーパワーの力を借りて治安を維持できるのは地形から考えて上海・大連・香港だけだと思われる。ただ、大連と香港は大陸からの上水に依存しているという致命的欠点があり、この点で揚子江の淡水を利用できる上海が優位にある。更に上海には、陸から離れた崇明島という広い避難場所もある。狭く山がちで淡水自給不可能な香港島に比べた安全保障上の優位性は明らかである。近い将来に上海が香港と同様の特別行政区に指定されるならば、現在香港に本拠地を置く外資系企業の多くが上海に移り、中国の外国への玄関口として圧倒的な発展を遂げることだろう。そして、大陸での内戦や暴動を恐れる富裕な中国人は挙って上海に移住することだろう。それは、第二次大戦前の混乱した中国大陸で、日本軍を中心とする駐留部隊によって治安が維持され繁栄していた上海の租界の再現に他ならない。上海閥は、かつての租界の繁栄を復活させることを夢見て日本資本の進出に協力してきたのではないかと想像する。
 
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1 コメント

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Unknown (shimada)
2007-02-26 23:15:49
以前の記事の中にリアルゴールドプライスとGSRのことが書かれていましたが、このチャートをみるにはどこのHPからみれますか。教えてください。お願いします
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