国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

リビア攻撃を巡る欧州・NATO内部の対立

2011年03月22日 | 中近東地域
●軍事作戦 指揮権で調整難航も NHKニュース 3月22日 11時14分

リビアへの欧米諸国の軍事作戦について、アメリカのオバマ大統領は、現在アメリカ軍が持つ作戦の指揮権を、数日中にNATO=北大西洋条約機構に移すなど、ヨーロッパ主導に切り替えたい考えを示しましたが、NATO内では作戦の指揮にどう関わるのか意見が分かれており、難しい調整が続くことが予想されます。

オバマ大統領は、21日、訪問中のチリで記者会見し、アメリカ軍が持っている軍事作戦の指揮権について、「アメリカ軍の戦線は世界各地に広がり負担も多い。負担を減らすためにも、国際社会からは航空機やパイロットなど具体的な協力を求める」と述べ、数日中に指揮権をNATOに移すなど、ヨーロッパ主導型に切り替え、アメリカは側面支援に回る考えを示しました。アメリカとしては、アフガニスタンで厳しい戦いを続ける軍の負担をこれ以上増やしたくないという思惑があるものとみられます。一方、イギリスのキャメロン首相は、21日、議会下院で演説し、「軍事作戦の指揮権はアメリカからNATOに移されるだろう」と述べ、作戦に伴う負担は一部の国が負うのではなく、ヨーロッパなどが多国間で分け合うべきだとの考えを示しました。これに対し、NATO加盟国の間では、NATOが軍事作戦に主導的な役割を担うことについてトルコが強く反対しているほか、ドイツも慎重な姿勢を崩しておらず、意見が分かれています。カダフィ政権が反政府勢力への攻撃を続けるなか、軍事作戦の長期化も踏まえ、作戦の指揮にどう関わるのかを巡って、各国間で難しい調整が続くことが予想されます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110322/t10014821691000.html




●リビア:多国籍軍空爆 中国「一貫して反対」 ロシア「中東の過激主義助長」 毎日新聞 2011年3月21日

 【北京・成沢健一、モスクワ田中洋之】リビアへの武力行使を容認した国連安保理決議の採決で棄権した中国とロシアは、多国籍軍によるリビア攻撃に遺憾の意を表明した。
 中国外務省の姜瑜(きょうゆ)副報道局長は20日、「中国は一貫して国際関係での武力行使には賛成しない」とする談話を発表。「情勢ができる限り早く回復・安定し、民間人の死傷者がさらに増える事態を回避するよう望む」と指摘した。
 ロシア外務省も19日、一般市民の被害回避と速やかな攻撃停止を求める声明を発表した。ロシアのロゴジン駐北大西洋条約機構(NATO)大使は、「紛争の拡大と制御不能の連鎖反応につながり、北アフリカや中東地域全体の過激主義を助長する」と警告した。
 ロシアの軍事専門家はインタファクス通信に、リビアの旧ソ連製兵器は、最新兵器に対抗できないと指摘した。
http://mainichi.jp/select/world/archive/news/2011/03/21/20110321ddm007030127000c.html





●作戦名は「オデッセイの夜明け」 米英仏、カナダと伊も参加 産経新聞 2011.3.20 10:39

 【ワシントン=犬塚陽介】米国防総省は19日、米英軍が連携し、リビアに近い地中海に展開する潜水艦などの艦船25隻から、約110発の巡航ミサイル「トマホーク」を発射し、首都トリポリや西部ミスラタの近郊など沿岸部の計20カ所のリビア軍防空・通信施設を攻撃したと発表した。
 軍事作戦は「オデッセイの夜明け」と名付けられた。ロイター通信によると、作戦には米英仏に加え、カナダとイタリアが参加。今後、中東の数カ国も加わる予定という。
 国防総省によると、米英軍のミサイル攻撃は、米国時間の19日午後3時(日本時間20日午前4時)ごろに始まった。リビアの防空施設を破壊し、飛行禁止区域を確保するための航空機の飛行を容易にする目的という。
 南米を歴訪中のオバマ大統領はブラジリアで記者団に「米軍の軍事行動を許可した」とした上で、「独裁者が国民に情けはかけないと話しているときに傍観はできない」と語った。
 また、軍事行動は苦渋の選択だったことを明らかにし、国際社会が連携した行動であることを強調、「米軍の地上部隊は投入しない」と改めて明言した。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110320/amr11032010410001-n1.htm



●リビア:多国籍軍空爆 仏英米で初期作戦 参戦枠組み拡大へ UAE、カタール表明 毎日新聞 2011年3月21日

 【ブリュッセル福島良典、ワシントン古本陽荘】国連安保理決議に基づく19日の対リビア軍事行動は仏英米主体で始まった。しかし、米軍は中心的役割を担うのには消極的。軍事行動は今後、北大西洋条約機構(NATO)加盟国とアラブ諸国に枠組みを広げたものに移行する見通しだ。
 決議に盛り込まれている軍事行動は「市民保護のための必要なあらゆる措置」と「飛行禁止空域の設定」の2種類。19日の軍事介入のうち、仏軍機の空爆によるリビア軍車両の破壊は反体制派市民の保護が目的で、米英の巡航ミサイル「トマホーク」による防空施設攻撃は禁止空域設定の準備の側面がある。
 市民保護のため戦車などの地上部隊を破壊するピンポイント空爆は、限られた数の航空機でも可能。だが、リビア全土上空の飛行禁止は湾岸戦争(91年)後、イラク北部・南部に設定された禁止空域の6倍以上の広さとなり、1日50~70機の軍用機が必要とされる。
 初日のトマホークによる攻撃の大半は米軍によるものだったが、戦闘開始後に米国防総省で会見した統合参謀本部のゴートニー事務局長(海軍中将)は「これは国際的な軍事活動」と強調。攻撃目標の設定が「同盟国との共同作業だった」と明らかにした。さらに、今回の攻撃で作戦指揮を執ったアフリカ軍のハム司令官が「近く多国籍軍側に指揮権を移行することになるだろう」とまで明言した。
 遠方からピンポイントを狙った攻撃能力で圧倒的な優位性を持つ米軍としては、リビア軍の攻撃能力を無力化する得意分野では先陣を切ったものの、長期にわたり米軍が突出して戦闘を続ける意思がないことを示したものと言えそうだ。
 このため初期段階の作戦は仏英米が担ったが、禁止空域についてはNATO加盟国主体の枠組みで維持されるとの見方が有力だ。すでにベルギー、カナダ、デンマーク、ノルウェー、スペイン、イタリアが戦闘機の出撃準備を整え、艦船もリビア沖の地中海に展開している。長期間にわたって禁止空域を維持するにはリビアに近い発進基地が不可欠で、イタリア、スペインは基地使用をNATOに認めている。
 また、アラブ世論対策上、カギを握るのはアラブ諸国の参加だ。米英仏は軍事行動が「欧米の介入」と映ることを嫌い、フランスのアロー国連大使によると、アラブ首長国連邦(UAE)とカタールが航空機とパイロットの派遣を表明しているという。
 軍事介入に反対してきたトルコは「安保理決議の枠組みで必要な準備を進めている」(外務省)とされ、ドイツも「軍事行動には参加しないが、アフガニスタンでより多くの責任を担う」(メルケル首相)と側面協力の構えだ。
http://mainichi.jp/select/world/news/20110321ddm007030159000c.html



●ロゴジンNATO大使 対リビア介入は制裁決議に違反: The Voice of Russia 21.03.2011, 16:41

 ロシアのドミトリー・ロゴジン駐NATO(北大西洋条約機構)大使は、NATO加盟国によるカダフィ政権に対する軍事行動は、国連安全保障理事会決議の範囲を超えるものだとの考えを示した。
 ロゴジン駐NATO大使は、インターファックス通信とのインタビューに答え、「航空機に関連のない対空防衛施設や空港などへの攻撃は、国連による対リビア制裁決議の範囲を超えるものだ。」と述べている。
 また大使は、NATO加盟国の間でも、リビアについての行動についてはコンセンサスがないことを指摘している。ドイツは今回の介入に否定的な態度を崩してはいない。ドイツ政府は、NATOが戦争に突入することを懸念しており、今回の介入がNATOの評判を落とすものだと考えている。
http://japanese.ruvr.ru/2011/03/21/47746244.html



●【リビア空爆】「欧米は二重基準」ウガンダ大統領が批判 - MSN産経ニュース 2011.3.22 09:43

 東アフリカ・ウガンダのムセベニ大統領は21日、米国などで構成する多国籍軍のリビア攻撃について、欧米側は「リビアには飛行禁止区域設定を推進するが、バーレーンなど親欧米体制の状況には目をつぶる」として「二重基準を使っている」と批判する声明を出した。ロイター通信などが伝えた。
 ムセベニ氏は、アフリカ連合(AU)がリビア情勢の調停に向けて新設した5カ国大統領から成る特別委員会のメンバーの一人。同委員会の委員長を務めるモーリタニアのアブドルアジズ大統領は、外国による武力介入に反対する姿勢を強調している。(共同)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110322/mds11032209430005-n1.htm



●アフリカ連合 リビアでの軍事行動の即座停止を求める: The Voice of Russia 20.03.2011, 10:40

 アフリカ連合はリビアでの軍事行動が即座に停止されることを求めている。
 アフリカ連合が20日、リビア問題に関してモーリタニアの首都ヌアクショットで開いている会合の結果、声明を表した。
 これより先、モーリタニアのモハメド・ウリド・アブデリ・アジズ大統領は、アフリカ連合がいかなる形であれ、リビアへの外国による軍事介入には反対していることを強調していた。
http://japanese.ruvr.ru/2011/03/20/47684405.html



●【リビア空爆】アラブ連盟、空爆めぐり温度差 交錯する思惑   MSN産経ニュース 2011.3.21 18:24

【カイロ=大内清】米英仏などの多国籍軍によるリビアの軍事介入が開始したことで、飛行禁止区域設定を支持する立場を示したアラブ連盟(本部・カイロ)の加盟国間で、空爆の是非をめぐり温度差が生じている。そこには、チュニジア政変を発端とした中東各国に広がる民主化運動の流れを大きく刺激したくないという政府側の思惑が見え隠れし、それぞれの国内事情と打算が交錯している。
 多国籍軍の攻撃に対してアラブ連盟事務局長でエジプト出身のアムル・ムーサ氏は「われわれが求めているのは飛行禁止区域だ。空爆ではない」と不快感を示した。しかし、ムーサ氏はアラブ諸国のとりまとめ役として、空爆直前の19日にパリで開かれた緊急首脳会議に出席。飛行禁止区域設定には防空施設破壊などの攻撃が不可欠であることは、承知していたはずだ。
 こうした態度の背景には、ムーサ氏が次期大統領選出馬を目指すエジプト国内の事情がある。
 リビアには、騒乱発生後も数十万人の出稼ぎエジプト人が残留しているとみられ、最高指導者カダフィ大佐側の攻撃から自国民を保護するには飛行禁止区域設定が必要というのがエジプトの立場だ。ただし、多国籍軍の空爆でエジプト人を含む民間人に死者が出れば、軍事介入に“ゴーサイン”を与えたと批判を受ける恐れもある。
アラブの盟主を自認するエジプトは、カダフィ氏が政権を維持した場合も想定してリビアとの関係悪化を最低限に食い止めようとしているほか、アラブ社会に根強い反米欧感情を考慮しているとみることもできる。シリアやアルジェリアなど、飛行禁止区域設定自体を反対した他のアラブ諸国への配慮もうかがえる。
 一方、当初から多国籍軍への参加を表明したカタールに続き、21日にはアラブ首長国連邦(UAE)の参加も明らかになった。政治的には保守的なこれらの湾岸諸国では国民の間に民主化を求める声が強まっている。両国政府には、反体制派に同情的だとのスタンスを国内的に示したいとの思惑もありそうだ。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/110321/mds11032118270015-n1.htm




【私のコメント】
リビアへのNATO諸国の軍事介入が始まった。その一方で、NATO・欧州諸国内部で介入に対する意見の対立が目立っている。特に重要なのはドイツ・ロシア・トルコの反対である。この反対の理由について分析してみる。

ドイツ以外の主要欧州諸国はいずれも軍事介入に賛成している。具体的にはイギリス・フランス・イタリア・スペインである。残る大国であるポーランドの意向はよく分からないが、ポーランドはリビアまで軍事力を派遣する能力が欠けている可能性が高い。

イギリス・フランス・イタリア・スペインはいずれも経済的に弱体である。かつての植民地時代のように、アフリカを半植民地化して支配しその収益(具体的には石油資源など)で繁栄することを狙っているのだと思われる。一方のドイツは経済的に繁栄しており、植民地を必要としていない。この違いが対リビア政策に現れたのではないかと考えている。

トルコの反対はもっともである。イスラム諸国が次々と半植民地に転落するという事態はトルコの国益に合致しないからだ。また、ロシアは既に十分な半植民地をシベリアや中央アジアに領有しており、今後英仏伊などがこれらの地域の資源を狙って軍事介入してくることを恐れているのだと思われる。

やはり一番重要なのはドイツの反対とフランスの賛成である。強固な独仏連合はこれまでEUの中核となってきたが、独仏両国の経済的格差がリビア問題での重大な意見の相違に繋がっている。近い将来に独仏連合は解体し、新たな植民地を必要としないドイツ・ロシアを中心とする東EU諸国と、植民地からの収奪なしには繁栄を維持できない弱体国家からなる英仏伊などの西EU諸国にEUは分裂していくのではないかと私は想像している。その過程で、オランダ・オーストリア・ベルギー北部などの広義ドイツ語圏は統合されていくことになるだろう。





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2 コメント

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Unknown (よっしー)
2011-03-25 17:47:19
フランス指導部は北アフリカ諸国から接待を受けていたのをばらされて改革派におべっかをつかっているのでしょう。ドイツはEU内でマルク高から逃れて輸出好調を壊したくないのでしょう。西欧列強もいまでは植民地など欲しくないでしょう。後進国のロシアはそこがわかっていないからいまだに領土獲得欲ばかり強い。中国は民主化運動が自国に飛び火することをなによりおそれています。結局どこも自国に有利なことしかかんがえてないですよね。
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Unknown (ミー)
2011-04-06 02:06:18
まったく、五百年前からの 詐欺師と海賊根性と山賊根性が抜けない。 いつまで続けるつむりかしら。世界は彼らの手口を知っている。わが世の春はもうお終い。
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