国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシアはシベリアや極東を今後も維持し続けることが出来るか?

2013年08月09日 | ロシア・北方領土
フォーサイトの記事「中国軍がロシア極東に電撃侵攻する日」が興味深い。中国が仮にロシアに侵攻すれば、ロシア軍は対抗不可能。バルト三国やポーランドなどの反対により欧州諸国は動かず、米国も中立を守るとする。日本は米国の保護領という立場上か意思を表明しないが、中国の意思により北方領土返還を受けるという予想は、日本も中国の潜在的味方ということになる。周囲を敵国に囲まれた危機的状況でどのように事態を打開すべきかという点を国民に問いかけたものであろう。産経新聞の連載記事で取り上げられているロシア極東アムール州の穀倉地帯は、かつてアイグン条約でロシアに割譲されたが中国人居住者が多いため清の管理下に置かれた江東六十四屯に近いと思われる。北清事変でこの地域の中国人が虐殺され一掃されたことは石光真清の著書や旧制一高の寮歌で有名である。北京政府は1991年の中露国境画定時にこの地域の主権を正式に放棄したが中華民国(台湾)は放棄していない。今後もし中国が動乱・内乱を経て新体制に移行すればこの地域の国境問題は常に蒸し返されるだろう。シベリアでもう一つ注目すべきなのはロシア人の減少とアジア系少数民族の増加である。20世紀になってモンゴルから奪われたトゥーバではソ連崩壊後にロシア人が半減、先住民は増加しておりロシア人は16%まで減少している。北カフカスのカルムイクでも同様の傾向あり。17世紀からロシアの支配下に置かれたサハ共和国でもソ連崩壊後にロシア人の減少とヤクート人の増加が起きて人口割合が逆転した。かつてロシア人が過半数であったが今やヤクート人が過半数。広大な領土と豊富な資源を有し東シベリアの中核を成すこの地域が今後分離独立に動けば、ロシアの受ける打撃は計り知れない。シベリア鉄道が通過しシベリアの中核地域の一部であるブリヤート共和国でもロシア人が徐々に減少、ブリヤート人が増加して30%に達している。今後もシベリアではロシア人が減少し出生率の高い先住民が増加していくと思われる。ロシアが実効支配を維持するにはウラジオストクかユジノサハリンスクに遷都して極東に繁栄するロシア人居住地区を建設するしかないだろう。それが出来ても、数十年後以降には極東のロシア人はアフガニスタンのモンゴル系住民であるハザラ族や、現在のオーストラリア・ニュージーランドの白人の様に異人種の中で孤立した少数派として困難な運命を辿ると予想する。 . . . 本文を読む
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