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「円は消えて無くならない」説は本当か・・・金融市場にプ-ルされるか、資産バブルを作り出す緩和マネー

2013-06-17 18:02:00 | 時事/金融危機
■ 「円は消えて無くならない」と主張する三橋貴明 ■

三橋貴明氏は「円は消えて無くならない」と主張します。

「リフレ政策で増刷された円が、海外で運用される事は無い」と主張します。
これは、ある意味において正しく、ある意味において間違っています。

1) 円キャリートレードや、キャピタルフライトで円と他国通貨が交換される
2) 円売りから、円安が発生する
3) 為替市場は巨大なので、供給された円をある程度プールする事が出来る
4) 為替市場内で、日々大量の円が売り買いされる
5) 短期的には通貨定量説に準じる形で、為替市場でだぶ付いた円が円安要因になる

一方、円は為替市場の外にも流れ出します

6) 円は日本国内の投資に使われる
7) 日本株や、不動産市場などに資金が流入して資産価格が上昇する

三橋貴明氏らは、供給された円は、日本の投資の為に使われる為に
景気回復に繋がるを主張します。
しかし、実際には、緩和マネーによる市場は、流動性が高いので、
一度、市場動向が反転すれば、一気に資金を回収して次の市場に移って行きます。

ですから、設備投資や建築投資など、回収に時間の掛かる市場より、
株式市場や不動産REITなど、ある程度流動性の高い市場に資金は集まり、
ここで、プチバブルを作り出します。

確かに資産市場の活況は、今年前半の様な消費の改善を促します。
しかし、それは株や不動産で儲けた人が達が消費を拡大しているだけなので、
株式市場や不動産市場が下落すれば、この消費はたちどころに消失します。

むしろ、投資元本割れが発生するなど、相場下落(プチバブル崩壊)後の経済に悪影響を与えます。

結局、金融緩和による「期待に働き掛ける政策」は、市場の移ろい易さゆえに失敗し易く、
それは、昨年秋からの日本の状況を見ても明らかです。


では、供給された円は何処に消えるのでしょうか?
一時的にリスク回避で預金や、日銀の当座預金の積みあがります。
しかし、プチバブル崩壊で景気回復の芽が摘まれていますから、
実体経済の投資される量は多くはありません。

結局、再び、円は調達通貨となって海外で運用され、
一方で国内で再びバブルの芽を育み始めます。
こうして、プチバブルが崩壊する度に、日本の国富が海外に流出し、
どこかで限界を迎えて、円相場が下がる事で調整されますが、
FRBもECBも緩和の真っ最中なので、為替による調整がされないのが現在の世界です。
そして、金融市場が崩壊するまで、このサイクルは継続されます。


この事が理解できずに、「日本経済の実力はこんなもんじゃない」と主張する三橋氏は、
彼の信者をして、「竹槍で外資を駆逐しろ」と鼓舞している様に私には見えます。

尤も、頭の良い三橋氏は、こんな事は百も承知だとは思うのですが・・・。
彼は市場の効果をあえて軽視する事で、人々を何処へ誘おうとしているのでしょうか・・・。
それは、獰猛なファンドの目の前に置かれた皿の上かも知れません・・・。

「成長無くして日本の復活は無い」・・・あまりに単純化された理論は危険です。
そして、苦悩する庶民は、「分かりやすさ」を「正しさ」と勘違いするのです。
これこそが、現代の経済宗教「三橋教」の姿では無いでしょうか?