人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

暗闇を疾走する世界経済

2010-04-29 11:08:00 | 時事/金融危機



■ ギリシャがデフォルトの危機 ■

人は忘却の生き物です。
リーマンショックであれだけ世界が震撼したのに、昨今のニュースは米景気の回復を報じるものばかりでした。私の両親なども、「金融危機は今まさに破綻に近付いているから、貯蓄の逃避を検討した方が良いよ」と言っても信じてくれません。それどころか、父などは息子は気でも狂ったかと思っているようです。

老人に限らず多くの人々が金融危機は過去の出来事だと考えています。多くの国が財政出動した事で、金融危機の最悪期は脱したと考えています。

しかし、ギリシャを始めとするPIGS諸国のソブリン危機で、楽観論も影をひそめてきました。世界はギリシャがデフォルトするかを見守っています。そして、ファンドは収穫の時を虎視眈々と狙っています。

格付け会社のS&Pは、狙い打つかの様にこの時期を選んでギリシャ、ポルトガル、スペインの国債の格付けを引き下げました。引き下げるならばもっと早期にすべきだったのに、最悪のタイミングでの引き下げは危機を煽っている様にしか見えません。

■ 会う時はいつも別な顔 ■

危機は毎回同じ姿で現れる訳ではありません。

サブプライムローンに端を発した流動性の危機は、今度は流動性を供給した国家の財政危機(ソブリン危機)の形を取って再燃しました。民間の借金を国の借金に付け替えた訳ですから、これは当然の成り行きと言えます。

ギリシャがデフォルトするかどうかはユーロ諸国の「ユーロを守る」という決意に掛かっていますが、ユーロの制度設計の中に今回の危機が予め組み込まれていた事を考えると、ギリシャ1国を救済しても問題の解決にはなりません。

ユーロ諸国はその事を充分理解していますから、口先では救済と言いながら、なかなか行動には出れません。国民も自分達の税金が「怠け者国家」にプレゼントされるくらいなら、喜んでユーロの離脱を選択するでしょう。特に経済基盤がしっかりしたドイツやオランダは、ユーロと心中する理由が見つかりません。

ロスチャイルドの本拠地がドイツやフランスやスイス、オランダである事を考えれば、ユーロは夢の通貨では無く、破滅の装置として設計されていた可能性も充分考えられます。そして今まさにユーロの破壊のスイッチが押されようとしています。

■ カリフォルニアは世界8番目の経済規模 ■

ギリシャ一国で世界は大騒ぎしていますが、ギリシャの経済規模なんて知れたものです。一方、アメリカに目を転じれば事実上財政破綻しているカルフォルニアの経済規模は世界第8番目の国家に匹敵します。カルフォルニアは昨年デフォルトを避ける為、「借金支払いの延期覚書」のような物を発行して急場を凌ぎましたが、財政状態は悪化こそすれ改善はしていません。

アメリカにや州や群や市のレベルで、夕張市以下の財政状態の自治体がゴロゴロしています。そして、それらの集合体が「アメリカ合衆国」です。

■ アメリカ国債危機を隠すユーロ危機 ■

先日10年もののアメリカ国債の利率が、民間の利率を上回るという珍事が発生しました。国家の信用が民間の信用を下回ってしまったのです。AAAの国債の実体がジャンク債に近付いている事の現れです。

しかし、ギリシャ危機に端を発したユーロ危機は、アメリカ国債やドルに資金需要を向かわせ、アメリカ国債の危機を覆い隠してしまいました。

経済とは相対的なものですから、穴の開いたボートと知りながらも、なるべく穴の小さなボートを選んで資金は逃避して行きます。尤も逃避した先がタイタニック号だったりするのですが・・・。穴の開いた救命ボートなら穴を塞げば助かりますが、氷山に激突して大穴の開いたタイタニックは冷たい海の底に沈むしかありません。それでもタイタニックの船上では夜な夜な華麗なパーティーが繰り広げられています。

■ 死亡確定の患者の延命治療 ■

世界のデリバティブ取引の残高は605兆ドル(5京6兆円)。これは返済不可能な金額です。

605兆ドルもの金額を誰が貸し付けたかと言えば、元を正せば各国の中央銀行です。日本の低金利の資金は国内市場には出回らず、キャリートレードの形でバブル膨張に一役買いました。景気良くばら撒かれるドル紙幣やアメリカ国債も、バブルを成長させました。

この間各国の中央銀行は、通貨供給量を絞ってバブル崩壊を事前に抑制する必要がありましたが、中央銀行は国内のインフレ率ばかりに気を取られているふりをしてバブルを無視し続けました。

1637年オランダでチューリップ・バブルが発生ました。チューリップの価格が100倍以上高騰した、世界最初のバブルです。しかし、チューリップの価格が高騰しても市民の生活にはたいして影響はありません。同様に資産バブルが膨らんでも消費者物価に与える影響はそれ程大きくありません。中央銀行から潤沢に供給される資金は砂に染み込む水が如く、バブル市場に吸い上げられていきました。

これが中央銀行がバブルを防げないと言われるカラクリです。
・・・いいえ、グリーン・スパーン元FRB議長は明らかに住宅バブルを助長する言動を繰り返していました。

さて世界は605兆ドルの負債にあえいでいますが、はっきり言ってこれは死亡確定状態です。助かる方法を発明したら、ノーベル賞級の経済的発見です。

現在世界は死亡確定の患者に延命治療を施しているに過ぎません。ユーロ危機も普天間問題も問題の本質から目をそらさせているに過ぎません。

ドルとアメリカ国債こそが諸悪の根源だと世界が本当に理解した時、ドルとアメリカ国債こそが尤も危ない資産であると理解した時こそ、世界が音を立てて崩れ去る時です。


■ 資産保全の方法はあるのか? ■

ドルとアメリカ国債の崩壊は、最終核戦争に近い効果を経済にもたらします。多分、日本も預金封鎖からハイパーインフレという制御し難い状態に追い込まれるでしょう。

国家が破綻する状態ですから、資産も接収される可能性があります。国債のデフォルトです。あるいは、ハイパーインフレによる事実上の借金棒引きです。

銀行も郵便局も生命保険も大量に日本国債を所有する状況にあって、国民の資産を保全する方法は見当たりません。預金残高と国債発行残高がバランスしているのですから、消える時は双方綺麗に消え去ります。

問題はそれが5年後なのか、それとも明日なのかという点です。

■ 破綻の発生は交通事故と同じ ■

国家破綻の様な事態では普通では発生しません。しかし国家破綻が皆無という訳ではありません。経済の状態や世界情勢によって、ある確率では絶えず国家破綻の危機は存在します。それが、国債発行残高がGNPの185%の日本では、それなりの確率で起こりうると考える事の方が合理的です。

国家破綻も交通事故も似た様な物です。車はルールーに則って運転されていれば、滅多な事では事故を起こす事はありません。(意図しない急加速は別ですが)

しかし、交通規則や道路の作り方が100%事故が発生しないシステムで無い限り、事故の起こる確率をゼロにする事は出来ません。

酔っ払い運転や居眠り運転、老人や子供の急な飛び出しなど、不測の事態はいつ起きるか分かりません。要は事故はルールを守らない者が引き起こします。

現状の世界は、車間距離をほとんど取らずにかなりスピードを出して、さらにヘッドライトを点けずに夜道を運転している状況に似ています。いつ、事故起きても不思議ではありません。

ギリシャのちょっとした接触事故に気を取られていると、アメリカあたりで大クラッシュが起きるかもしれません。意外と日本の老人の飛び出し事故だったりするかもしれません。

「当たり屋」にも注意が必要です。特に暗闇で"Yes we can"なんて呟いている人物には要注意!!

小魚もサメも水が干上がればオシマイ

2010-04-23 02:45:00 | 時事/金融危機



■ ゴールドマン・ショック ■

先週末に金融市場か国債市場で何か大きな事件があるかと予測していましたが、出てきたネタは、米証券取引委員会(SEC)がゴールドマンサックスを訴追したという比較的地味なネタでした。

各市場はお約束通り、ちょっとビックリして値を下げましたが、直ぐに回復を始めています。サメの影に怯えた小魚が、サッっと逃げて、直ぐに又戻って来る様子に似ています。尤も、サメの腹に取り付いたコバンザメ達は、しっかりエサにありついたのでしょう。加熱気味だった株式市場などは、丁度良い調整と、金融資本家達の利益確定になった事でしょう。

■ 詐欺まがいの商売 ■

ゴールドマンがSECに訴追された原因は、「サブプライムローンの住宅債券が下落する事を事前に知っていながら、顧客にそれを販売し、さらには自ら空売りで儲けを出したのでは無いか」という疑惑です。将に詐欺まがいというか、詐欺そのものです。

以前からこの点は指摘されていましたが、サブプライム・ショック直後の評価は、ゴールドマンの先見性を称える記事が多かった様に記憶しています。「サブプライムショックを事前に予測して空売りを仕掛けたゴールドマンは世界一の投資銀行だ。」という論調でした。

冷静に考えれば、ゴールドマンの顧客も損失を被った事は充分想像出来たはずですが、金融商品の中に紛れ込ませたサブプライムの損失分が表面化するには時間を要したのでしょう。

■ ゴールドマンの商品の中身 ■



上図はゴールドマンサックスが一般投資家(老人達でしょうか)向けに販売している「妖精物語」という、ふざけた名前の投資信託のポートフォリオです。リーマンショックでボロボロになった投資ファンドが多い中で、国債運用が多い事などから比較的損失の少なかった金融商品の様です。

さて、この中身を仔細に眺めてみると、彼らの商売が良く分かります。

「国債、社債、モゲージ債に分散投資し、格付けはAAAが7割程度、平均格付けがAA。ドルとユーロに分散して通貨リスクを低減しています。」と説明されても老人達にはチンプンカンプンでしょうが、何だか安心出来る気がしてきます。


AAAが7割、AA以上が8割なのに平均格付けはAA?

先ずこの点が疑問です。残りの2割がほとんどゴミだという事なのでしょうか?

ファニーメイの住宅証券がAAA??
既に事実上破綻して国家管理になっている企業の発行した証券が、ポートフォリオのトップに来ている事からして、既に無神経極まり無いのですが、その格付けがAAA(ムーディーズ)というのも大笑いです。

それぞれの投資先の比率が1%台ですから、表に現れない所で、オゾマシイ投資先の名前がズラリと並んでいそうでゾッとします。

ゴールドマンに騙された大口の顧客は、訴訟を起こしたりしていますが、自分が騙された事も知らず、毎月の配当金に騙されて、事実上は半分以上の価値が失われている投資ファンドを日本の老人達は大事に抱えているのです。

■ 国家ぐるみの詐欺行為 ■

罪はゴールドマン一社にある訳ではありません。

金融危機を口実に、紙屑になった債権の時価会計を停止したアメリカの金融行政そのものが、国家詐欺とも言える存在です。財務長官がゴールドマン出身者なのですから、当然と言えば当然ですが・・・。

■ 今、何故ゴールドマン叩きなのか ■

事の本質は、「今、何故ゴールドマンは叩かれるのか」という点にあります。

リーマンショック後、ゴールドマンはいち早くリスク指向を強め、他社を出し抜いて一人勝ちの様相を呈していました。それが他社の癇に障ったのでしょうか・・・?

世間の見解は、「オバマは中間選挙で勝利を収める為に、金融規制法案(ボルガールール)を成立させたいが。国民の反感を買っているゴールドマンを叩いて法案可決の弾みにしようとしている。」というものでしょう。

しかしオバマの選挙資金の多くはゴールドマンが出していると言われています。ロスチャイルドの大統領が、ロスチャイルドの勇、ゴールドマンを本気で叩くでしょうか?

■ ゴールドマンは2匹目の生贄 ■

フリーメンソンの儀式は生贄を捧げていた様ですが、国際金融資本家達も生贄がお好きな様です。1匹目はロスチャイルドの身内から、リーマンブラザーズを差し出しました。

生贄は敵では効果が薄くなります。自分の身内から出す事で、痛みを伴う犠牲の代償として大きな富を得る事が出来るのです。尤も、王自らが生贄になる事はありません。生贄には、たっぷりと肥え太らせた者が最適です。

悪徳金融商品で焼け太りしたゴールドマンにはピッタリな役回りです。
兄弟のAIGもゴールドマンを非難し始めました。何だか芝居めいていて興醒めします。

■ 金融不安からソブリンリスクが拡大 ■

大統領自ら国民にデリバティブの残高が605兆ドル(6京5兆円)あると語った様ですが、最早、これだけの大金を金融機関が投資家にバックする事は奇跡が起きても不可能です。

ですから、金融はいづれは崩壊する運命です。

<ロイターからの引用>

 [ニューヨーク 22日 ロイター] オバマ米大統領は22日、金融改革に向けた議会の取り組みが失敗すれば危機が繰り返されるとして、金融業会関係者に対し改革に反対することを止めて参加するよう呼びかけた。
 オバマ大統領は、ニューヨークのクーパーユニオン・カレッジで金融業界関係者を含む聴衆を前に演説し「改革実現に向けた取り組みに抵抗するのではなく参加するよう求める」と訴えた。

 「今回の危機から学ぶことが不可欠だ。われわれは危機を繰り返してはならない」と強調し「この機会を逃せば(危機が)再発することは目に見えている。それは自分にとっても国民にとっても受け入れることはできない」と語った。

<引用終わり>

大統領のこの発言は、「我々は未だ金融危機さ最中にある」と読む方が賢明でしょう。

しかし、問題はその先にあります。
各国が莫大な財政を出動して支えていた金融が崩壊すれば、先進各国の財政危機に注目が集まり、結局は巨大なソブリン崩壊を生み出します。

米国債やイギリス国債のデフォルトは、国債とペーパーマネーの信用失墜というダブルパンチで各国を蹂躙します。

■ 日本だけが安全と何故信じるのか ■

巷では「日本国債は日本の国内で96%がファイナンスされているから大丈夫」という意見が多く見られます。しかし、各国の金融危機が深刻化した時点で、日本国民とて預金を現金化しようとするでしょう。それは日本の金融機関や生命保険の国債売却という形で日本の国債市場を崩壊させます。

最後の受け皿は、限度額を2000万円に引き上げた郵便局で、国家補償を盾にして、預金流出を阻止しようとするのでしょうが、危機が去った後の2000万円がどれ程の価値を有しているかは誰にも分かりません。400%程度のインフレは簡単に起きてしまうでしょう。

■ 日本国債こそが失われた20年の元凶 ■

日本の国債残高は750兆円です。
バブル以降の低金利によって、金融機関はリスクを嫌い日本国債を無能にも買い支えています。しかし、国債によって民間から集金された資金は、効率の悪い公共投資に浪費されるか、あるいは、アメリカ国債の形で海外に流出してしまいました。

日本の都市部に投資されていれば、マネーストックは何倍にもなって、日本の経済が20年もの低迷を甘受する事は無かったのに、国民の資産は国債という尤も非効率な部門に集中して投資されてしまいました。

日銀の超低金利政策が、資金を国債に誘導していたのです。
日本の米国債保有高は100兆円、一説には700兆円と言われています。
20年間にこれだけの資金が日本国債を通して海外に流出したとも言える事態です。

日本人は働けど働けど豊かさを実感出来ず、気が付けば経済水準も所得も30年前に逆戻りしてしまいました。頼みの綱の貯蓄も、日本国債というバブルに投資されてしまい風前のともし火です。それでも尚、郵貯2000万円限度額などという国債買い支え論を唱える政治家も居ます。

■ 水が干上がれば、小魚もサメも皆オシマイ ■

世間はゴールドマンショックの動向に目を光らせながらも、小魚は性懲りも無く又浅瀬に集まってきています。

しかし、本当の危機はサメの姿をして現れるのでなく、「経済の引き潮」という形で確実に迫っています。新興国の「上げ潮」は先進国の「引き潮」と表裏一体です。

サメから逃げ回っていた小魚は、サメもろとも潮の引いた砂浜に取り残されてしまうかもしれません。沖に逃げた者達の手には金が握られているのでしょうか?



あまりバカ話ばかりでは申し訳ないので、良識的な見解のブログを紹介しておきます。
http://ssoubakan.blog102.fc2.com/blog-entry-726.html
尤も、この方もゴールドマン問題をあまり追及していくと、とんでもない事態に発展するという事に関しては、見解が一致しています。

デフレの時代にインフレの心配をする

2010-04-15 18:56:00 | 時事/金融危機



■ 当分インフレの懸念は無い ■

私は個人的にはFRBのバーナンキ議長の顔が好きです。顔というよりは、その秀でた額や豊かな髭、穏やかな瞳に安心感を覚えます。どうも彼の風貌を見ていると、金融危機などは、本当は無かったのでは無いかと錯覚する程です。寝癖頭の日本の政治家にも見習って頂きたいと思います。

さて、そのバーナンキ議長が議会の公聴会に呼ばれ、当面利上げの必要が無いと表明した様です。

<ロイターから引用>

[ワシントン 14日 ロイター] バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長は14日に行った上下両院合同経済委員会での議会証言で、米経済の回復は緩慢であるため、政策金利を長期間にわたり低水準に維持することは正当化されるとの立場を示した。
 景気の「二番底」のリスクは否定しなかったものの、インフレは差し迫った懸念材料にはなっていないとし、FRBが景気刺激策を維持する論拠を示した。

 政策金利について議長は「連邦公開市場委員会(FOMC)は、非常に低い金利が長期間必要となることを現時点で予想していると言明した」と発言した。

 ただ、FOMCのこうした見通しは、設備稼働率が低水準であることや、失業が高水準であること、インフレ期待が抑制されていることなど、一定の条件が前提と説明し「こうした状況が当てはまらなくなった場合、われわれは当然、対応する」と述べた。 

 物価情勢については、インフレは引き続き抑制されており、長期的なインフレ期待も抑えられているとの見方を示した。

<引用終わり>


■ 見えない出口 ■

バーナンキ議長は、これまで何度も「金融の早期正常化」を口にしてきましたが、現状は雇用も消費も回復しているどころか、益々悪化しています。この様な「デフレの時代」に何故FRBはインフレを懸念するのでしょうか?

アメリカがインフレを懸念しなければならない状況は次のケースが考えられます。

1) 米国債危機が高まり、長期金利が上昇する。
2) 元やアジア通貨の切り上げにより、輸入コストが増大する。
3) 新興国経済の回復により、資源インフレが発生する。

この3つとも、アメリカ経済の回復無しに、金利を押し上げる要因を作り出します。景気回復という出口は見えていないのに、インフレ圧力だけが高まります。つまり、スタグフレーションです。

■ 元の切り上げは、資源インフレを引き起こす ■

元の切り上げを盛んに要求するアメリカ議会ですが、彼らは自分でスタグフレーションを引き起こしている様なものです。

元が急激に引き上げられれば、アメリカの輸入物価が押し上げられるだけでなく、強い元が世界に資源を買い漁り、結果として資源価格が高騰します。決済通貨はドルですか中国はドルを買わなければなりませんが、それでは元の引き上げになりません。結局、中国は手元のドル資産や外貨準備を手放して、資源購入資金に当てざるを得ません。

中国が元の供給量を絞っても、元の切り上げに繋がりますが、自国経済にダメージを与える程、金融政策を引き締めるとは考えられません。

結局、元の切り上げは、ドルの下落を伴い、さらには米国債の危機も誘発して、アメリカ経済をスタグフレーションに陥れる可能性が大きいと言えます。

■ 第二のプラザ合意は在り得ない ■

アメリカとしては元の切り上げは、中国での投資の回収と、アメリカへの投資の誘導を狙った政策でしょう。プラザ合意の際には、この作戦は大当たりし、ジャパンマネーがアメリカ経済を潤し、さらには日本のバブル崩壊というオマケまで付きました。

しかし、日本のバブル崩壊を綿密に研究している中国が、同じ轍を踏むとは思えません。中国は元を少しずつ切り上げて行く事でしょう。この間、新興諸国の内需も拡大し、世界はアメリカの消費に頼らなくても、成長する軌道に乗り始めます。

日本は素材の供給基地として、アジアやその他の新興国の景気回復の恩恵に預かる事でしょう。

プラザ合意の際には、過剰な円高が発生し(発生させられ)、日本政府は輸出企業保護の為に円安の為替介入を実行しなければならず、その過程で大量に買い込んだドルを米国債の購入にあてました。

ヘッジファンドのドル売りなどで、元が急激に切り上がれば、同じ様な状況も発生しますが、中国は元を時間を掛けて切り上げるでしょうから、アメリカの思惑は大きく外れるでしょう。


■ アメリカ人は我慢出来るか ■

急激な元高が無ければ、中国バブルも訪れず、アメリカにチャイナマネーの流入もありません。アメリカは景気が回復しないまま、金利と物価がジリジリと上昇していくでしょう。

その間に次々の州や地方の財政が破綻し、国債発行コストの上昇は、国家財政を破綻させます。

はたしてアメリカ人がこんな暗い将来を受け入れるでしょうか・・・。
答えは”NO"決まっています。

■ 世界同時心中 ■

アメリカの一部の勢力(多分ロックフェラー)は、既に大きなダメージを受けていますから、米経済と世界経済をパニックに陥れて、ドサクサ紛れに主導権を奪還しようと試みるでしょう。

しかし、金融においては主導権はロスチャイルドに握られていますから、下手をすれば単なる自滅に終わってしまいます。

そこで彼らは「戦争」という得意のカードを切りたがるでしょう。既に、韓国軍の艦艇沈没や、ポーランド大統領機の墜落など、きな臭い匂いが漂い始めました。幸いにして、ロスチャイルドの陣営に取り込まれている、韓国政府は沈静化に勤め、朝鮮半島の緊張は高まっていません。

尤も、ロスチャイルドの操り人形のオバマは、核軍縮という手段で、イランや北朝鮮に圧力を掛けていますから、いつでも戦争を起こせる準備に怠りはありません。

■ インフレを待ち望む世界 ■

先進各国は今回の金融危機で財政の大判振る舞いをしましたから、各国の国債はどんどん膨れ上がっています。特にアメリカ・イギリス・日本の国債発行残高はGDPの200%に達するのも時間の問題です。

国債の買い手がいる間は、借金の付け替えはエンドレスで可能ですが、さすがに買い手もリスクを意識せざるを得ません。各国が財政負担に耐えられなくなった時、各国はインフレターゲットを定めて通貨を大量発行し始めるでしょう。

世界は「強い通貨こそ国益」と口では言いながら、自国通貨をどんどん紙屑に近づけていきます。

■ デフレの時代にインフレを心配する ■

デフレの時代にインフレの話をすると、「バカかお前は?」と言われそうですが、増税という手段は国民に嫌われるので、似非民主主義の国々ではインフレは予定事実だと考えた方が良いかと思います。

日本の政府が、年金破綻を本気で心配していない様に見えるのは、インフレを想定しているからかもしません。年金のマクロ経済スライド方式ははたして機能するのでしょうか・・・・。

信じるという愚行

2010-04-13 08:38:00 | 時事/金融危機


■ 預金保険機構の貸借対照表 ■

金融危機が発生しても我々庶民が安心していられるのは、私達の僅かばかりの預金は「預金保険機構」によて1000万円まで保護されているからです。

実際、アメリカでは昨年150行を越える中小の金融機関が破綻し、今年に入ってからも40を越える破綻が発生しましたが、アメリカの預金保険機構であるFDICの基金から資金を銀行に拠出し、預金者を保護してきました。アメリカでも日本のペイオフに相当するシステムが在り(こちらが本家)、預金が10万ドル(約1000万円)まで保護されています。

上の表はFDICの基金の残高を示すものです。最新のデータが見つからなかったので、昨年の8月時点のものですが、中小の銀行が破綻する度に、SDICの資金が拠出され、基金が減少している事が分かります。

http://jp.reuters.com/article/domesticEquities2/idJPnTK857779520091125
<ロイターの昨年11月25日の記事から引用>

 [ワシントン 24日 ロイター] 米連邦預金保険公社(FDIC)の発表によると、国内銀行の預金者を保護するための預金保険基金の残高は、第3・四半期末時点で82億ドルのマイナスとなった。第3・四半期に問題を抱える金融機関が急増したことが響いた。
 米国の銀行システムのぜい弱さに加え、商業用不動産ローンおよび住宅ローンの焦げ付きが銀行のバランスシートを引き続き圧迫していることが浮き彫りとなった。

 基金の財源が不足したのは1992年以来。


 発表では、FDICが「問題がある」とする金融機関は552機関と、第2・四半期から33%増加し、1993年以来の大きな数となった。

 FDICは、国内銀行による3年分の預金保険料の前払い措置で近く450億ドルを受け取る予定だが、この前払い分の全額を基金のバランスシートに組み込むことは会計ルール上認められない

<引用終わり>

アメリカでは商業不動産不況が深刻化しており、中小の金融機関の破綻が止まりません。破綻した金融機関が保有していた不動産が市場で処理される為に、商業不動産の下落が加速するという負のスパイラルに陥っています。

3年分の保険料の前借で急場を凌いだFDICですが、今後金融破綻が深刻化すれば、ペイオフによる預金者の保護もままなりません。

■ 日本の預金保険機構は大丈夫なのか? ■


http://www.dic.go.jp/newzaimu/zaimu/renketsu02.pdf  より

一方、金融危機の影響が比較的小さかった日本の預金保険機構はどうなっているのでしょうか?

ネットに21年度の預金保険機構の貸借対照表(民間形式)があったので、転載します。現状預金保険機構の資産は7兆6687億円となっております。単純に1000万のペイオフを実行したとして、76万以上の口座を救済する事が出来ます。

■ 金融機関が連鎖倒産するという危機 ■

預金保険機構の資産は7兆6687億円は日本の2009年の全預金金額559兆円の1.37%に当たります。

極論になりますが、第二の金融危機が発生して日本の金融機関が全て経営危機に瀕した場合、全ての預金は当然救う事は出来ないという事になります。

破綻は中小の金融機関から始まり、メガバンクなどは最後になりますから、中小の金融機関の預金の方が、確実に救済されるかもしれません。

■ メガバンクの破綻 ■

メガバンクが相次いで破綻する程、金融危機が進んだ場合はどうでしょう?

そんな事は起こらないとお思いかと思いますが、リーマンショック後、最初に経営破綻したのはアメリカの巨大銀行です。この際、アメリカ政府と国民は、これらの金融機関を"too big to fail"と言って、政府が事実上国有化する事で危機を乗り切りました。

商用銀行のみならず、ゴールドマンなどの投資銀行も見かけだけ商用銀行にお色直しして救済しています。

これら巨大銀行の破綻は、FDICの基金を一瞬に消滅させるだけで無く、経済に壊滅的なダメージを与える為、潰せなかったのです。

日本の金融機関は金融危機後、自己資本比率を高め、貸し出しを減らして、破綻引当金を上積みしています。ある程度までは自分達で凌ぎ、最後は国家救済となるのでしょう。

■ ペイオフは有名無実か? ■

結局ペイオフは巨大連鎖破綻には効力を発揮せず、中小の金融機関の破綻処理にしか実行力を持たないシステムの様です。

メガバンクや「ゆうちょ」の預金者は、国家の救済を期待するしか無いようです。最も民間の借金を国家に付け替えるわけですから、将来の税金として支払いは国民に圧し掛かってきます。

「金持ちの預金を守る為に、貧乏人の税金を使うのか!!」という議論は、かつてバブル後の金融危機の通った道のりです。

ちなみに日本の年代別の世帯預金の2006年データは下記の通りです。

1世帯あたり貯蓄保有高の年代別平均の分布
20歳代 : 278万円
30歳代 : 692万円
40歳代 : 1091万円
50歳代 : 1557万円
60歳代 : 1860万円
70歳以上 : 1787万円

どうやら、老人の資産を若者が守るという図式が現れそうです。これで納得する程若者もバカでは無いでしょう。

■ 預金保険機構の運用!! ■

さて、ここでもう一度預金保険機構の資産の内訳を見てみましょう。

6兆4583億円が有価証券で運用されています。

http://www.dic.go.jp/newzaimu/zaimu/meisai.html

を参照すると、諸々ある有価証券明細を合計すると1兆7400億円程の国債は記載されています。しかし、私の見方が悪いのか、有価証券明細にその他の金額と細目が記載されていません。その他の4兆7000億円余りは何で運用されているのでしょうか?

多分私の見方に問題たあるだけだとは思いますが、どなたかお分かりになりますか?

まさか米国債や米国株やインチキ債権なんて訳は無いとは思いますが・・・。

さて、ペイオフが実行される様な事態が再び訪れた時、預金保険機構の有価証券は現金化できるのでしょうか?



オバマが握る破滅のスイッチ

2010-04-12 05:52:00 | 時事/金融危機


■ 単純に比較すると ■

世界一醜いと言われる日本の国債と、AAA格付けのアメリカ国債を比べてみました。
国債の発行残高と、年金などの負担を含めた政府残高の両方を比較してみます。


<日本国債>         <日本の借金(政府債務残高)>
発行残高   650兆円     債務残高   1103兆円
一人当たり  511万円     一人当たり  868万円
GDP比     185 %
10年物利率  1.4 %

<アメリカ国債>       <アメリカの借金(政府債務残高)>
発行残高   1000兆円    債務残高   5500兆円
一人当たり  312万円    一人当たり  1762万円
GDP比     80 %
10年物利率  4.0 %

赤ん坊から老人まで含めた日本人一人当たりの借金(政府債務)868万円も驚異的ですが、アメリカの1762万円も返済可能な金額とは思えません。事実、アメリカの会計検査院は2007年にブッシュ政権に対して「アメリカの国債は既に返済可能でない」と勧告していますが、その後もアメリカ国債の発行は加速度的に増加しています。

http://www.im-sendai.jp/archives/2008/10/post_285.html

さらに日本の国債は96%が国内で消化されています。国民の貯蓄が国債で運用されている限り、海外のヘッジファンドに売り浴びせられる危険はありません。一方アメリカ国債はその多くを海外の資金でファイナンスしています。危機が高まれば一気に売り浴びせられます。

アメリカ国債は格付けこそAAAですが、既にジャンク債状態です。

■ 日本の保有するアメリカ国債 ■

日本が保有するアメリカ国債は100兆円と言われています。ところが実際には700兆円保有すているというウワサもあります。日本とアメリカの関係を考えた場合、100兆円という政府発表額は、最小の金額と考えた方が無難かもしれません。

アメリカの財政危機が肥大化する中で、「アメリカ国債を売却しろ」という声も高まって来ました。しかしこれは不可能な事です。日本がアメリカの属国だから不可能なのでは無く、日本の所有するアメリカ国債は、アメリカの金庫の中にあるから、物理的にアメリカの承諾無くして市場に流通させられないのです

仮に中国が米国債を大量売却して米国債危機になても、日本は米国債を売り抜ける事は出来ません。日本はみすみす100兆円(700兆円)の損失を被る事になります。

■ 元の切り上げ ■

4月8日、ガイトナー財務長官がわざわざ中国まで出向いたそうです。元の切り上げについて話合われたのでしょう。

アメリカ国内では元の切り上げ圧力が高まっていますが、製造業が空洞化しているアメリカにおいて、元の切り上げは経済の回復には繋がりません。

むしろ、ドルを買い支えている元が切りあがれば、ドルあらゆる通貨に対して下落する可能性が高くなります。多くの物資を輸入に頼るアメリカで、ドルの下落はインフレに直結します。これはアメリカ経済にとって致命的です。

■ 元切り上げの本気度 ■

中国はプライドの高い国ですから、アメリカの圧力に屈して元を切り上げる事には抵抗があります。さらにプラザ合意後の日本の惨状を見ていますから、容易に元の大幅な切り上げには応じないでしょう。(小幅な切り上げはありますが)

結局、元切り上げの大合唱は、中国に「元を切り上げないで下さい」と懇願している様にも見えます。

一方、中国はドルが危険となれば、独自判断で元のドルぺックを外す事は躊躇しないでしょう。同時に米国債の大量売却も行われます。この時点でドルはThe END です。アメリカの好むと好まざるとに係わらず、ドルの命綱は中国に握られています。

■ 借金をチャラにする方法 ■

日本にしてもアメリカにしても、借金はチャラにしたものです。国家による借金の減らし方には3つの方法があります。

1) 増税によって返済する
2) インフレによって借金を減額する
3) デフォルトによって借金をチャラにする

アメリカ国債は既に債務不履行の状態です。ですから増税による国債に返済はアメリカ国民の生活を破綻させる為、選択肢には入りません。

デフォルトは、国家の信用を損なうので、その後の国債のファイナンスが不可能になります。さらに機軸通貨としてのドルの立場も失います。これは最悪の事態まで避けたいはずです。

それではインフレはどうかと言えば、10%や20%のインフレでは焼け石に水です。債務を1/10にする為には1000%のインフレが必要です。これでは国民生活が破綻してしまします。かつてのワイマールがこの方法を用いました。結果は皆さんご存知かと思います。

アメリカ国債を取り巻く状況は、まさに八方塞がりです。

■ アメロという核爆弾 ■

かねてから、アメリカはメキシコとカナダを統合した北米共通通貨「アメロ」を発行すると囁かれていました。

アメロ発行に際しては、旧ドルは1:10のレートで交換され、アメロは金兌換制によってその価値が担保されるというウワサです。当初、アメロの導入時期は2010年とされてきました。

アメリカ国内の交換レートと、国外の交換レートに差を設ければ、国内のインフレを抑制しながら、借金を1/10に圧縮できるという荒業も可能です。さらに、アメロを金兌換とする事で、ドル危機によってペーパーマネーが世界的に信用を失う中で、アメロが国際決済通貨としての地位を獲得する可能性も大です。

これはアメリカにとっては良いこと尽くめです。

■ 金は誰が持っているのか ■

ここで問題になるのは、アメリカが金を保有しているかどうかです。アメロを発行した所で、単なるペーパーマネーでは誰も見向きもしません。

一説によればアメリカの保有する金は、先物市場の空売り用に貸し出され、金庫にはタングステンに金メッキした偽者のインゴットが積みあがっているという話も聞かれます。

一方、IMFが手持ちの金を中国やインドに売却するなど、新興国の金の備蓄量が増えています。通貨危機に対してある程度の備えをしている様に見えます。

さらに、田中宇氏によれば、市場に出回る金はペーパー金(証書)で、実際に金に交換しようとした場合は、実物の金が大幅に不足するとの事です。先物市場などは100倍のペーパー金が流通している様です。JPモルガンが主役となって、金の空売りを仕掛け金相場を抑制している事がGATAの主張によって明らかになっています。

金相場の抑制は、ドルの延命に繋がります。金相場が跳ね上がれば、一気にドル離れが加速するでしょう。

いずれにしても、アメリカ政府が金を保有していなければアメロは機能しません。

■ オバマに握られた破滅のスイッチ ■

アメロについては様々な憶測が飛び交っています。4月20日に発行される新100ドル紙幣がアメロでは無いか・・そんなウワサもあります。

財政状態だけを注視すると、アメリカという国家は既に「継続可能」な状態を逸しています。それだけを考えれば、オバマがいつアメロを発行しても不思議では無い状態です。

「大国アメリカが国際社会に対して、そんな事を単独でするはずが無い」と思い込むのは危険です。現にニクソンショックは一人の大統領が世界経済の根幹を成す通貨制度を根底から覆してしまいました・・・それも何の予告も無しに・・・。


世界の命運は、オバマが握る「アメロのスイッチ」に委ねられているのかも知れません。

■ 世界同時インフレ ■

デフレの時代にインフレの話は笑われてしまいそうですが、各国の財政状態を鑑みれば、世界各国がインフレの誘惑に晒されているはずです。

金融資本家達は、国家を謝金漬けにする事で、現在は存在しないお金を、国家の借金として一時的に現出させ、それを金などの価値の減らない資産に交換します。国家の借金が継続不能な状態になればインフレが訪れ金を始めとする資源価格は暴騰し、彼らは無から有を得る事が出来ます。

さて、私達の預金は、年金は大丈夫でしょうか?現物の金しか信用出来ない時代の足音が聞こえています。