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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

『川越ボーイズシング』・・・現代アニメのアンチテーゼ

2023-12-26 02:45:30 | アニメ

『川越ボーイズシング』より

 

■ 今期アニメで一番面白い ■

我が家の、今期アニメの一番人気は『川越ボーイズシング』です。しかし、この作品、今期一番失敗したであろう作品でもあります。この作品の失敗の理由を探る事で、現代の日本のアニメやマンガの「病巣」を探るのが今回のテーマ。

川越学園は川越にある男子高校ですが、理事長の孫のハルオはオーケストラの指揮者。しかし、超自己中の性格ゆえに、才能はありながらも、現在は指揮者のオーファーは有りません。そんなハルオに理事長が「ボーイズクワイア部を作って、全国優勝をしなさい」という命令を下します。文化部の活動実績の少ない川越学園の知名度をさらに高める事が目的と説明します。「いやだよ、僕はプロの指揮者だよ・・・」と嫌がるハルオですが、嫌々引き受ける事に。

部員集めから始めるハルオですが、その勧誘も自分勝手を極めます。校門で登下校の生徒の声を聴いて、「自分の楽器」として相応しいと感じた生徒達を強引に勧誘して行きます。嫌々集められた部員達ですが、次第にクワイア(合唱隊)の魅力に惹かれて行きます。

この作品、一言で言えば「腐女子枠」です。性格の違う男子達の友情と葛藤の物語で、歌もの。製作はユニバーサルミュージックで音楽面のバックアップは完璧。

■ アニメ視聴者のメンタル弱すぎ ■

『川越ボーイズシング』は川越市産業観光部観光課、川越商工会議所、公益社団法人小江戸川越観光協会などがバックアップした作品でもあります。市内各所に等身大パネルを設置し、ラッピング電車を走らせ、川越プリンスホテルには特別な客室まで用意した。しかし・・・大ゴケした・・。

ネットの感想を見る限り、1話切りした視聴者が多い様です。理由を見てみると「独善的なハルオの性格があり得ない!」という意見が多い様です。現代っ子のメンタル弱すぎです!

運動部では「オレサマ」の指導者など当たり前の存在ですが、インドア系のアニメオタクには、強引な指導者は「不快」の対象でしか無い様です。実際にハルオは全く空気を読みませんし、自己中心的で、生徒の意見など一切聞きません。しかし、それが「不快」かと問われれば、私には「物語を牽引するキャラクターとして面白い」と感じる。彼は所謂「発達障害」ですが、芸術家にはこの手の人が多い。他人と異なる感性ゆえに、人とは違う何かを作り出す事が出来る。そういったキャラクターの設定なのですが、をれを視聴者が「不快」に感じると、作り手側は微塵も予想しなかったでしょう。

■ 優しい世界に浸りながら、攻撃対象には容赦の無いアニメ視聴者 ■

今期一番人気の作品は『葬送のフリーレン』だと思います。今人気の異世界モノですが、物語のメインテーマは「優しさ」です。フリーレンは千年を超える寿命を持つエルフなので、人間的感性を持っていませんが、人間と旅をする中で、「思いやり」や「慈しみ」といった感情を学んでゆきます。この作品の世界は「優しさ」に満ちています。対局として魔族は徹底的に非道で、フリーレン一行にボコられる存在として描かれます。

現代のアニメ視聴者は、自分の周囲は真綿の様な優しさで包んで欲しい一方で、叩いて良いと認定された相手が、徹底的にボコられる事に快感を覚えます。

『葬送のフリーレン』は巧妙なので、「魔族は人の様な心を持たず、人の言葉を話すのは得物を狩る為」と説明します。これによって視聴者は、魔族側に感情移入する事無く、安心して魔族をボコる事が出来ます。これは『呪術廻戦』や『チェンソーマン』と同じ構造を持っています。

『川越ボーイズシング』は「腐女子系のヌルイ人間関係」ではありますが、異世界系にありがちな「真綿の様な優しさに包まれた世界」とは一線を画しています。生徒達は、独善的なハルオに反抗していますし、寄せ集めの部員達の関係も,なれ合いでは無く、友情や信頼までの葛藤がある。ライバル高は存在しますが、敵では無く、あくまで目標です。世界観の基本構造は,極めて「スポコン物」に近い。指導者やライバルに「否定」されながらも、それを糧に仲間と共に成長してゆく物語です。

■ 丁寧な物語しか評価しないアニメ視聴者 ■

「物語や構成が雑」という点も『川越ボーイズシング』をアニメファンが否定する理由の一つでしょう。確かに「昭和かよ!」とツッコみたくなる構成です。

1)理事長が「お菓子」を買った来る様にハルオに命じる

2)部活内で事件やイザコザが起きる

3)何だかんだあって、問題が解決する

4)解決した先に部員達が得たものが「お菓子」と共通点がある

基本的にこのパターンの組み合わせで、「昭和アニメ的なお約束が繰り返される」。面白いのが、この構成が成り立つならば、2~3の過程は何でも有りで、その強引さも私には面白味の一つ。これ、製作陣を見ると「なるほどな」と納得します。監督の松本淳氏や、9話で超絶な演出力を見せた武内宣之氏、はウテナのスタッフ。他にも絵コンテ陣は、ベテランの名前が並んでいます。

一見「雑」に見える構成ですが、良く言えば演出や物語の展開の自由動が大きい。特に8話のトンデモ話から、9話のシリアスな展開に繋げる辺りは、ここ数年のアニメの中では、一番「トリハダ」でした。

8話は、猛暑を避けてクワイア部が、市民ホールの様な所で練習をしていますが、そこに強盗犯がピストルを持って乱入して来て生徒達は人質に。ところが、何故か炎上系のYoutuberも乱入して来て人質事件の実況を始める。そこに理事長が現れ、犯人の事情を聴き出して説得するかと思いきや、最後は格闘で犯人を抑え込みます。・・・おいおい、なんなんだ、この昭和でも無かった様な無茶苦茶な展開は・・。

9話で8話の後日談が語られます。ホールに乱入して来たYoutuberは、実は部員の一人「IT先輩」の父親だった。目立ちがり屋の「IT先輩」は、IT企業の社長の息子と自分を紹介していましたが、実は父親は迷惑系のYoutuberで、愛想を尽かした母親は離婚して家を出ています。事件後に住所が特定されて、引っ越しを余儀なくされ、部活の辞める事となるIT先輩。ハルオは「僕の音楽には君の声が必要なの!」といつもながら強引に引き止めますが、IT先輩を乗せた車は川越の街を後にします。すると助手席にIT先輩のスマホに着信が・・・。

ドタバタ演出の8話と一変して、9話は、シリアスな展開は、モンタージュを多用した演出でじっくりと魅せます。絵コンテ、演出、作画監督の三役を務めたのは武内宣之氏。彼はウテナやピングドラム、化物語の作画監督でシャフトのビジュアルディレクターです。作画のカロリーを極力減らす為に、止め画とモンタージュを多用して作画のクオレリティーを上げる手法はシャフトの諸作でも観られたもの。今回は川越を去り、高速道路を走るワンボックスカーの表面を、高速道路の街路灯の反射が流れるシーンで鳥肌が立ちました。

この9話はディープなアニメファンには評価が高い様で「こういう化ける瞬間を見たくてアニメを観ている様なもの。切らずに見続けて良かった」などのコメントがネットに転がっていました。私も全くの同感です。

この「9話の感動」を味わえるかどうかは、「1話から見続けた」かどうかに掛かっています。要は「雑な話」とか「先生が不快」といった理由でこの作品を見ていないアニメファンには味わえない至福の瞬間。

 

■ 作画厨は〇ね ■

一時アニメファンの間で大繁殖した「作画厨」。「ヌルヌル動く作画、最高!」とか「綺麗な作画と背景最高!」といった、アニメを「画の綺麗さ」でしか判断しない困った人達ですが、今回は『呪術廻戦』に夢中でしょう。あの作画クオレリティーは異常です。但し、『呪術回線』が作品的に優れているかと問われれば、私は全く興味が無い。呪霊と呪詛士がチ―ト能力でボコリ合う胸糞悪い作品です。

『川越ボーイズシング』は、作画は崩壊の一歩手前をキープし続けています(いや、崩壊しているか・・・)。しかし、作画のクオリティーなど要求されない「昭和の作品」なので、それが気になりません。だって、体育の先生とか、部員の父親とかが、もろ肌脱いで、いきなり太鼓を叩いちゃう様な作品ですから。むしろ、このハチャメチャ展開にキレイな絵は不似合い。

実は予算的な意味においても、演出的な意味においても、キレイな作画は作品の自由度を奪います。

『葬送のフリーレン』が丁度良い塩梅で、描きやすい構図や、根抜きに近い簡略化で、作画のカロリーを上手に節約しつつ、見せ場に予算と労力を集中しています。『川越』ボーイズシング』も同様で、ベテランの絵コンテマン達は、「作画カロリーを節約して、話の内容を伝える」事に専念しています。

作画と物語、どちらを取るかと聞かれたら、私は「物語」を選択します。実はマンガやアニメのキャラクターは「記号」に過ぎないので、実は単純な〇でも△でも、物語は成り立ちます。その最適な例が、「中島らも」が「ぴあ」で連載していた「微笑み家族」や、同様の手法をアニメで実践した「鷹の爪団」です。単純なキャラクターをコピペして使い回す手法ですが、キャラクターの記号化を意図的に行っていて、悪意に満ちていて面白い。

 

■ 予算は楽曲に全振り? ■

「ユニバーサルミュージックの製作だから予算は潤沢」と言われた『川越ボーイズシング』ですが、どう見ても「低予算アニメ」にしか見えません。では「潤沢」と言われた予算はどこに・・・。

実は楽曲に予算をつぎ込んでいるのでは無いか・・・。作曲陣の一人横山 潤子氏は合唱曲を多く手掛ける作曲家の様で、NHK合唱コンクールの審査員も務めている。

ライバルの立川北高校の自由曲もオリジナルだと思いますが、これもユニークで面白かった。11話から、コンテスト本番に入りましたが、各校の課題曲の仕上がりの違いも聞けて非常に興味深い。

今までの「腐女子枠の歌物」とは、全然別のベクトルに向いた楽曲と演出の作品ですが、これも多分、狙ってやっています。(的を外して、腐女子では無くオタクオヤジに刺さりましたが・・・)

 

■ 「昭和」な『川越ボーイズシング』は現代アニメへのアンチテーゼ ■

『グレンラガン』『キルラキル』など「昭和アニメのオマージュ」的な作品は過去にも数多くありました。しかし、方向性は「昭和アニメをスタイリッシュに再構築する」もので、ポストモダン的な手法の一つとして現代アニメファンにも受け入れ易かった。

一方『川越ボーズイズシング』は「腐女子枠という現代アニメの最大の病巣に、昭和を投げ込んだ」という点で、ある種の悪意を感じます。「おまえら、これでもブヒれるか!?」といった悪意。

「腐女子枠」はアニメ業界では一番の稼ぎ頭でしょう。DVDの売り上げや、各種グッズの売り上げが確実に見込めます。『川越ボーイズシング』も、これを見込んでいた様ですが、DVDとブルーレイセットの発売中止がアナウンスされています。流石に、この作品では腐女子もブヒれなかった様です・・・・。予約キャンセルの特典として1話から12話までの全話のブルーレイセットが無料で配布される様なので、私にとってはお宝グッズでウラヤマシイ!

 

何れにしても、今期アニメというか、昨今のアニメに全く魅力を感じなくなった私が、久しぶりに「心から楽しめたアニメ」でした。万人にお勧め出来る作品ではありませんが、「一周回ってアリ」、「ナシ寄りのアリ」の作品です。コアなアニメファンにはお勧めです。


2023 秋アニメ オススメ

2023-11-21 05:54:11 | アニメ

暗いニュースばかりの昨今ですが、アニメでも観て明るい気持ちになりたい。

・・・ところが『君は放課後インソムニア』ロス で、何を観ても面白く無い・・・・。

「お父さん、葬送のフリーレン観てる」って娘に聞かれて、2話目途中まで観て「異世界ものは、もう何観ても面白く無いからな~」なんて言っちゃう始末。ゴメンナサイ!フリーレン様!!・・・素晴らしいです。メチャクチャ素晴らしいです。

そんなこんなで、酒飲みながら、寝落ちしながら観始めた2023秋アニメ、中盤まで観て、意外に面白い作品が混じっている事に気付きました。

 

 

『僕らの雨いろプロトコル』 より

「プロゲーマーを目指す高校生の話」と一言で書いてしまうと、なんだか「Youtuberに憧れる小学生」並みに薄っぺらな感じがしますが、実は色々と重たい設定の物語です。

主人公の時野谷 瞬(ときのや しゅん)は高校2年生。父を交通事故で無くし、同じ事故で妹は下半身不随に。家計は苦しく、彼は特待生で高校に通っていますが、幼馴染の一つ年上の稲月 望(いなつき のぞみ)の父親が経営するゲーム喫茶で、毎晩遅くまでバイトをして家計を助けています。彼は小学生の頃はネット廃人同様にオンラインゲーム三昧の生活を送っていましたが、事故をきっかけにゲームから足を洗っています。

ところが、バイト先が運営するプロゲームチームの解散危機によって店が倒産危機に。何とか賞金を稼いで店を存続させようと、昔のゲーム仲間で幼馴染の仙堂 暁斗(せんどう あきと)が瞬を誘います。彼はゲームから無理やり距離を取っている瞬の気持ちを知っているのです。「バトルロワイヤルで最後まで生き残れなかったら、お前はチームに要らない」と挑発する暁斗に、瞬は嫌々応じます。最初は勘が掴めず苦戦しますが、ゲームの中で昔のゲーム仲間の爆裂君に出合い、覚醒します。

プロチーム戦は5人体制なので、残り二人はオーディションで選びます。肥満体ですが、ゲームの腕は確かな長嶺 流星(ながみね りゅうせい)がチームに加わり、残り一人の枠に応募して来たのは・・・何と国民的美少女女優の「ユウ」だった。しかし、彼女が応募して来た本当の理由は・・・。

製作総指揮 - 夏目公一朗というテロップを観た瞬間に視聴決定。シリーズ構成と脚本は高山カツヒコで手堅い。オリジナルのストーリーですが、この布陣で面白く無い訳が有りません。

剣と魔法、異世界転生モノに席巻されたアニメ界において、等身大の高校生を描く作品は貴重ですが、今が旬のプロゲーマーをテーマに持って来る当たり、流石のセンスです。さらに、瞬が母子家庭で「苦学生」と言う最近は珍しく無くなった生活環境である事で、浮ついてしまいそうな題材に重さと実感を与えています。妹の治療費を稼ぐ為にプロゲーマーにりたいと言い出した瞬に、母親は「そんなギャンブルみたいな仕事を目指さないで、もっと堅実な道を。最近成績も落ちて来てるじゃないの」と叱ります。このセリフをきちんと書ける脚本家は信頼が置けます。

でも、1話目を観た時点で、これはヒットしないなと確信しました。何故ならば、イマドキのアニメ視聴者は、作画が悪い作品を全く評価しないから。そして、肝心のゲームのCGも10年前のゲームみたい・・・。ここをリアルなゲームでなくて、ヌルヌル動くCGの神作画にしたら、或いはウィクロスみたいな擬人化した表現にしたら、この作品は覇権だったかも知れない・・・。

物語はライバルの出現や、三角関係といった王道展開で飽きさせません。そして何よりも瞬の妹の美桜(みお)「尊い」!・・・しかし最新話のラストで不穏な気配が・・・。この作品、個人的には今期一番楽しみです。

 

因みに舞台は川越。エンディングは氷川神社の裏の桜ですね。『月がきれい』の聖地。瞬を想う2人が待ち合わせて夜桜見物に向かう。お互い、瞬をどう思っているのか気になる微妙な乙女心が描かれた、素晴らしいEDです。

 

『はめつのおううこく』 より

青年誌らしい作品。

神は人類と魔女を作り、神の力を分け与えられた魔女は、人類を庇護するように神に託された世界。人と魔女は共存共栄の関係でしたが、科学の急激な進歩が、このバランスを崩します。世界帝国リディアの王は、今まで上から目線で人類を支配していた魔女に対して「魔女狩り」を始めたのです。魔法を封じる機械によって、魔女達は為すすべも無く、人に狩られてゆきます。

優秀な魔女クロエは、人の追ってを逃れて放浪していますが、旅の途中で人間の子供アドニスを助けます。気まぐれにアドニスに魔法を教えますが、彼の「記述式償還魔法」はクロエの与えた魔法のペンの威力によって、強力な効果を発動します。そんな二人が帝国に捕まり、クロエはあえなく斬首、アドニスも永遠に拘束されます。

ところが、刑務所の反乱に乗じてアドニスが解放されてしまいます。クロエに復讐だけを心の糧とするアドニスは、魔法の力で帝国を滅ぼそうとしますが・・・魔法を無効化する装置の前に遭えなく敗退。ところが、彼を助けた者が・・・それは魔女だったのです。人の手の及ばぬ秘境に逃げ延びた魔女達は、アドニスに一つの望みを掛けています。はたして、アドニスは魔女の要請に応えるのか・・・。

首が飛んだり、血が噴き出したりとグロい描写が多い作品で、世界観の構築も雑ですが、「復讐劇」を基調とする「ダークファンタジー」なので、「復讐心の濃度」の高さこそ、この作品の面白さだと思います。そして、アドニスがどう救われるのか、あるいは救われないのかに興味が涌きます。

原作はそこそこの発行部数の作品の様ですが、アニメのメインの視聴者からは、ちょっと外れた作品です。『ゴールデンカムイ』の様な萌え要素や、アイヌの生活を知る様な知的好奇心を満たす要素も無いので、人気は出ないと思いますが。しかし、青年誌の作品が持つ「外連味(けれんみ)」を味わえる作品としては面白い。

もっとも「グロテスク表現」的には、『チェンソーマン』や『呪術廻戦』といった少年誌の方が、遥かに過激な表現になっている昨今、青年誌のグロテスク描写はカワイイ物に見えてしまうのも確か。しかし、『チェンソーマン』や『呪術廻戦』をジャンプ本誌に掲載して、子供も読んでいる日本は狂ってるよね。まあ、昔から『ドーベルマンデカ』とか、今なら青年誌で掲載されるべき作品のオンパレードだったけど・・・。

 

『アンダーニンジャ』 より

こでも青年誌原作の作品。明治維新で忍者組織が解体されずに、スパイ組織として多くの忍者集団が暗躍する世界。第二次世界大戦後は、アメリカが忍者を手駒として、特殊任務に使っています。国内でも、大勢の忍者が、企業や政府組織の下で暗躍しています。

厚労省の忍者組織の壊滅の為、ある高校に通う事になる雲隠 九郎(くもがくれ くろう)「下忍=アンダーニンジャ」です。上忍の命令で、任務をこなす日々ですが、高校生ながらオッサンの様な風貌と物腰。安アパートで、隣人達とヌルーい日常を送っていますそんな彼に高校潜入の任務が与えられ、敵忍者と戦う事になりますが・・・。

イヤー1話の出来が素晴らしい。オフビート感は、青年誌の作品のある種の特色ですが、隣の部屋と押し入れで繋がり、一階には風俗のお姉さんが住んでいるというのは、『めぞん一刻』へのオマージュとも言える。アパート物のユルーいビートと、忍者の戦闘というハードな世界を合体させるというウルトラCの作品ですが、忍者組織間の対立など、設定はしっかりしていてハードボイルド。

こういう作品に反応しないと、アニメはダメになっちゃうよね。

 

『め組の大吾』 より

多分、消防庁全面バックアップの作品でしょう。

1話目に作画のカロリーを全振りして、後は物語の面白さと言うか、消防隊員の日常への興味で観させる作品。少年誌にこういう作品って大事でしすよね。これを読んで、あるいはアニメを観て、消防士を志す子供達が少なからず居るハズ。「コチカメ」観て警官になった子供もきっと・・・居ないか・・。

高校を卒業して消防士になった3人の男女の成長物語ですが、本来は実写向きの作品。敢えてアニメ化した辺り、消防庁の期待が透けて見えます。良作です。大人の鑑賞に充分に耐える作品。

 

『MFゴースト』 より

バリバリ伝説』『頭文字G』しげの秀一の原作私達の世代には懐かしいマンガ家です。とにかく、車やバイクを描くと天下一品ですが、人を描くと、デビュー前のアマチュア以下というのが、この作家の特徴。関節変じゃねー?って絵ですが、そこがイイ。何故かヒロインがチョーカワイく見えるんだよね。そして、オッサンキャラの中年らしい汚らしさも良い。

最新のCG技術で、レースシーンは手に汗を握る映像の連続。箱根の国道1号線を、高速でダウンヒルするって・・・・四輪でも命が幾つあっても足りない。さらに、パワーグリップレシオを揃えるという、面白い発想のレギュレーション。

自転車で何度も下った坂だけに、グリップの弱い状態で、あの坂を下る怖さは手に取る様に分かります。非力なエンジンで坂を上る辛さも・・・・

 

『葬送のフリーレン』 より

原作の評判は知っていましたが、アニメは2話目前半で挫折・・・「又、異世界かよ。お腹一杯だよ」って感じでした。

 

フリーレン様、ゴメンナサイ!!

私、五体投地して謝罪いたします。

 

この作品、立ち上がりは悪いのですが

構成力が神

1000年前と、80年前と、現在の間を物語が行き来しますが、時代が縦糸を、エピソードが横糸を成して、素晴らしいタペストリーを織り上げて行くような構成には、ただただ脱帽。原作がスゴイのです。

 

アニメは動く作画を極力避けて、絵のクオリティーを維持していますが、10話に作画力を全集中!!痺れました。フリーレンだけじゃなくて弟子も強いのね・・・。

この作品を褒める人は多いと思うので、あまり書きません。とにかく、物語の「構成」の手本として、じっくり見るべき作品。

 

因みにEDは今期では突出した出来栄え。

オープニング大賞は「SPAY FAMILY」です。世界の湯浅監督はやはり凄い。ストーリー性を持ちながら、アニメならではの動きと画面の使い方には震えます。凄すぎて、本編が霞んでしまうのが珠にキズ。

 

2024冬アニメはコレだ!!

 

『戦国妖狐』 より

ここで冬アニメの予告を。なんと『プラネットウィズ』『惑星のさみだれ』水上悟志『戦国妖狐』がアニメ化されます。

熱狂的なファンを持つ水上悟志ですが、アニメ化では『惑星のさみだれ』で失敗しています。現在のアニメファンは「作画厨」だらけで、作画の良し悪しを作品の良し悪しと勘違いしています。

水上作品は、原作の絵が、そもそも「マンガ絵」で、今の作画偏重のアニメには合いません。さらに表現も「マンガの王道」で、細かな構成や演出よりも、ダイナミズムを重視します。感動のウネリを高める為のキャラクターの動きやセリフ。セリフも大上段から振り下ろすかのごとく叩きつけて来るので、これをアニメで声優が演じると・・・ダサく感じてしまう。

そんなアニメ化の難しい水上作品ですが、戦国ファンタジーの『戦国妖狐』が2024年1月から放映されるらしい。何と、3期構成が決定していて、製作は既に後半に入っているそうです。世の中にはチャレンジャーが居るものですね・・・。(ありがとう、涙が止まりません)

シリーズ構成は今をときめく花田十輝、音楽は『葬送のフリーレン』のEvan Call。彼、バークレイで音楽を学んだアメリカ人ですが、オタクが高じて観光ビザで日本に来て、今では『鎌倉殿の13人』や『私の幸せな結婚』などの音楽を担当するまでに。『葬送のフリーレン』で聞く限り、派手な感じは少なく、確実なメロディーを、しっかりとしたオーケストラが支える感じです。和音が重層的で美しい。スコティッシュなシンプルなメロディーの後ろを、ゆるやかにオーケストラが支えていたりしますが、オーケストラは背景音の様な効果を狙っています。『ユリシーズ ジャンヌダルクと錬金の騎士』の岩崎琢を彷彿とさせる(地味な時の岩崎拓)。これって、学校でしっかりと和声とかオーケストレーションを学んでいないと出来ない仕事ですよね。ちなみに岩崎琢は東京芸大在学中に日本現代音楽協会新人賞を受賞を受賞しています。『グレンラガン』みたいな四つ打ちだけじゃないんですよ。

PVを観る限り、作画厨が拒絶する事は無いと思いますが(キャラの腕が岩だからな・・・ダメかな・・・。)水上作品がもっと多くの人に知られる様になれば嬉しい。

 

因みに、私は『戦国妖狐』の原作も買いましたが、同時にこの作品も中古で手に入れました。

『ハトよ天まで』 より

手塚治虫が絵本「龍の子太郎」に触発されて描いた作品で、この作品無くしてはも『犬夜叉』も生まれなかったでしょう。1964年から67年まで産経新聞で連載されていたそうです。マンガ半分、文字半分の絵物語的な構成です。

私の中学の図書館はマンガ禁止でしたが、何故か「初期手塚治虫全集」と言うハードカバーの立派な本が揃っていた。殆どの作品が印象に残っていませんが、『ハトよ天まで』は何度も読み返しました。とても好きな作品です。

山の神と天狗の争いで住み家を追われた龍が淵の主の大蛇の竜田姫が、人間の双子を拾い育てる所から始まる物語。貧しい農村に残って自然や神の脅威に立ち向かうと決めた弟のハト丸と、都に出て武士として出世して故郷を救おうと決めた兄のタカ丸。二人の成長と対立の物語は、民話ファンタジーの草分けとして貴重な作品ですが、内容は今読んでも面白い。

そして、『ハトよ天まで』の正統な進化として『戦国妖狐』が存在します。

人と隣(かたわれ)と呼ばれる「人ならざる者」が存在していた戦国時代。人が好きな妖狐と、人嫌いな仙術使いの少年、そして侍を志す農民と、隣を倒す為に肉体改造された少女の出会いから物語は始まります。時に悪い隣を退治し、時に隣退治の坊主に集団と戦いながら、お互いの絆を深める四人?ですが・・・。さわりはYoutubeにPVがアップされているので、そちらで。

アニメ化が難しい水上作品だけに、原作を先に読まれる事をお勧めします。今はアニメ化とタイアップで、合冊本が発売されています。(現在は「世直し兄弟編」だけ出版されていますが、順次発売予定)

 


アニメが2次元の世界である事の幸せ・・『北極百貨店のコンシェルジュさん』

2023-10-25 04:27:09 | アニメ

映画『北極百貨店のコンシェルジュさん』より

 

■ 劇場チラシでアニメファンのアンテナがビンビンに! ■

8月に部長になった久美子ちゃんが心配で(親心です)、思わず劇場版『特別編 響け!ユーフォニアム アンサンブルコンテスト』を観に行きました。最近よくある事ですが、シアターで最年長の観客でした。久しぶりの映画館でしたが、待ち時間にロビーのチラシを見ていて興味を引いた作品が三作。岡田麻里監督の『アリスとテレスのまぼろし工場』、板津匡覧監督の『北極百貨店のコンシェルジュさん』、P.A WORKSの「働く女の子シリーズ」の最新作の『駒田蒸留所へようこそ』

特に『北極百貨店のコンシェルジュさん』は、現代のアニメーションらしくないシンプルなキャラクターと、柔らかな色彩に、アニメオタクのアンテナがビンビ反応してしまいました。しかし、劇場予告を観る限りは、あまりピンと来なかった。むしろ、『アリスとテレスのまぼろし工場』と『駒田蒸留所へようこそ』の予告版は鳥肌ものでしたが・・・・。

それでも、『北極百貨店のコンシェルジュさん』の劇場チラシを観た瞬間のアンテナはビンビンに立ったままだったので、上映がはじまったので劇場へGO!

■ アニメが2次元の世界である事の幸せ ■

結論から言います。上映開始直後から、終始頬がニヤニヤと緩み放しでした。他人から見たら、「このオヤジ、なんでアニメ映画で恍惚の表情を浮かべてんだよ、キモーー」と思われたでしょう。

昨今、手描きアニメですら3次元を意識して作られる時代に、「2次元のシンプルのキャラクターが動き回るアニメって、何てプリミティブで素敵なんだろう」。キャラクターの3次元的な動きや、角度変化の描写を捨て去る事で、こんなにもキャラクターは自由に動き、表情を変え、そして背景の空間の中を縦横に動き回れるのか・・・

『魔法使いサリー』や『ド根性カエル』の時代からアニメを観ている私達の世代には、一種の懐かしさを伴いながらも、緻密な背景や、カメラワーク(実際には絵コンテを元にした作画ワークや撮影ワーク)にただただ圧倒されるばかり。「3次元で構成された百貨店の中に、2次元のキャラクターを置き、それを移動カメラを縦横に動かしながら撮影した感じ」と表現すれば伝わるだろうか・・・。

監督は『電脳コイル』の総作画監督の板津匡覧(よしみ)。原画マンとして数々の名作を支え、監督作品としては『ボールルームにようこそ』があります。作画出身の監督の作品は、宮崎アニメを始め、絵作りに並々ならぬ拘りを感じますが、この作品は、アニメが2次元の絵である事をハンデでは無く、メリットとして最大限に活用した頂点に存在すると言っても過言では無い。

■ シシンプルだが筋の良いストーリー ■

原作マンガは、イラストレーターでもある西村ツチカさんの作品。かつて百貨店に勤務していた事のある彼女が、まばゆいばかりの売り場を薄暗い職場から眺めていた時の印象を元に描かれた作品ですが、文化庁のメディア芸術大賞の優秀賞を受賞しています。この作品のファンだった板津監督が、スタジオI.Gの企画要望に対して提案したのがこの映画です。

脚本はテレビドラマ『凪のおいとま』を観て監督がオーファーした大島里美さん。70分という短い時間の中で、自然にストーリーが流れて行き、しっかり盛り上がりもあり、良い脚本です。細田守や新海誠の最近の作品は、脚本を監督自らが書く事で破綻しています。作画出身の監督が、頭の中にギッシリ詰まったアイデアを詰め込むと、だいたい作品は破綻します。きちんとした脚本家が、捨てる所は捨て、広げる所は広げ、整理するところは整理した脚本を元に、作画系の監督は、その持ち味を最大限に発揮した方が良い作品になります。『北極百貨店のコンシェルジュさん』はその最良の例の一つです。

70分という短い尺に幾つかのエピソードを収める為に原作の複数のエピソードを同時進行させるという荒業を使っていますが、劇場で観ていて、ちょっと、せわしない感じはしましたが、それでも最後にきちんと感動のピークで物語を終わらせる辺り、脚本家としての力量はナカナカです。大河ドラマ『花燃ゆ』の脚本家でが、マンガ原作のドラマ脚本も多く手掛けられていて、私はこういう実写系の脚本家に、どんどんアニメ脚本を書いて欲しい。

■ 色彩の魔法 ■

筋の良い脚本を得た事で、板津監督は絵作りに専念出来ます。パンフレットに絵コンテがありますが、「アニメのカメラワークの指示って、絵コンテで、こうやって表現しているんだ」って感動してしまいました。そして、コンテに色が付いています。

これはコンセプトカラーデザインの広瀬いずみさんの提案だそうで、とにかく背景の色彩計画が素晴らしい。淡いトーンながらもカラフルで、百貨店が持つ「華」の部分を見事に表現しています。これを観るだけでも、この映画は価値があります。

 

■ 絶滅した動物と、百貨店という絶滅しそうな業態 ■

ストーリーは百貨店の新人コンシェルジェさんが、お客様の様々な要望を解決しする中で成長するというシンプルなもの。一見、「ほんわか」としたトーンの作品ですが、私は終始「不穏な気配」を感じずには居られませんでした。背中に何か冷たいものを押し当てられている様な・・。

多分、それは「百貨店の雑踏」の背景音の影響だと思います。普通、多くの客のどよめきに満ちた百貨店の店内は、音楽を小さな音で流す事で、雑踏の音を消していますが、この作品では音楽が流れていな時が多い。すると、背景の雑踏の音は、多くの動物達、それも画面に描かれていない物達の息遣いとして、その存在感は私を威圧して来ました。

何で、こんな音響処理をしているのか・・・それは、物語の後半を観て納得します。この百貨店は、絶滅した動物達に、人間が奉仕する為に建てられたものだったのです。言わば「ゴースト百貨店」

百貨店という業態自体が、現在は絶滅危惧種です。かつては、休日のファミリーで賑わった百貨店は、その座をショッピングモールに奪われ、スーパーブランドに場所貸しするだけの業態に変わりました。客層は小金持ちに限定され、大食堂や屋上遊園地などがあった時代は過ぎ去りました。この物語に登場する百貨店は、百貨店が衰退する前の、かつての華やかさと活気を持っていた時代のもので、ある意味、この百貨店も絶滅しているからこそ、絶滅した動物達の憩いの場として存在しているのかも知れません。

 

■ アニメを観る幸せ ■

学生時代から結婚するまで、私はミニシアター系の実写映画を観まくっていました。休日は映画をハシゴしていた。そんな私も今では実写映画は年に1本か2本しか観ません。何故って、「どれを観ても同じに感じる」からです。たまに、「オオーー新しい、スゴイ」と感じる作品はありますが、それはメジャー系の作品で、ミニシアター系の作品はどれも、自己満足の世界に耽溺している。純文学に近い状態で、そこから新しい物は生まれない。

一方、アニメやマンガやラノベは新鮮な驚きに満ちています。多くの読者や視聴者を相手に、日々、新しいアイデアや表現手法を競う事で進化を続けています。多くの才能が、この世界を目指す。仮に、現代に夏目漱石が生きていたら、絶対にラノベ作家になっていたし、現代に北斎や写楽が生きていたらマンガ家かアニメ監督になったでしょう。

アニメやマンガには制約が少ない。動きや表現のデフォルメは自由自在ですし、ある意味表現のタブーのハードルも低い。首が飛ぶ様な残酷描写も、残酷さを薄める事も、或いは強調する事も自在ですが、実写ではこれが出来ません。この、自由で広大な表現空間に、様々な才能が集まる事で、現在の日本のマンガやアニメやラノベは、コンテンツとして、世界の最先端つ突っ走っています。それを日本語で堪能できる私達は、その幸せに感謝するしかありません。

 


23春アニメ ベスト

2023-07-06 05:06:44 | アニメ

『君は放課後インソムニア』 より

第1位 『君は放課後インソムニア』

不眠症に悩む男子高校生の「中見 丸太(なかみ がんた)」は昼間は眠くて不機嫌。女子にも敬遠されていた。彼は文化祭の準備で訪れた屋上の天文台が仮眠の場所に相応しいと喜ぶが、そこには先客が。なんと同じクラスの「曲 伊咲(まがり いさき」)」が床に転がったロッカーの中で寝ていたのだ。彼女も不眠に悩んでいたのだ。

不眠症(インソムニア)の二人は、天文台を安眠の場所にしようと考える。根暗な中見と、快活な曲がりはクラスでは全く接点が無いが、「不眠症」が二人の距離を縮めて行く。そして二人で居る時だけは安心して眠れる事に気付く。彼らは天文台を正式に占拠する為に二人だけの天文部を作る。

曲がりは幼い頃から心臓病で、現在は水泳部に所属する程に回復していますが、いつも死の恐怖に怯えています。「寝たら朝が来ないかも知れない」という漠然とした不安が曲がりの不眠症の原因。一方、中身は、幼い頃に母親が彼が寝ている間に家を出ていってしまった。そのトラウマが彼を不眠症にしていた。本来ならば暗~い話になりそうでですが、等身大の高校生の日常を丁寧に描く事で、いつしか読者や視聴者は作品の世界の中に取り込まれ、二人の傍で、二人の恋の行方を固唾を飲んで見守る。

ビックコミックスピリッツの連載されている(既巻12巻)オジロマコトの名作青春マンガのアニメ化ですが、57歳のオヤジが悶絶する程の「青春アニメの傑作」に仕上がっています。内容は原作に忠実、さらにガールズトークを増し盛りし、七尾や能登の風景をてんこ盛り。そして美しい星空のオンパレードで原作ファンも狂喜乱舞。

監督は声優さん達に「自然に演技する」事を徹底させたそうですが、主役の二人のみならず、曲がりや中見の友人達、顧問の先生など登場する人物は皆魅力的です。特に中見に天体写真の撮り方を教える白丸先輩の魅力ときたら、抱き枕を売っていたら買ってしまうかも知れない・・・。「スケコマシ」という名言は脳裏に刻まれました。

親の制止を振り切り真脇遺跡へと逃避行した二人ですが、その顛末は実写映画で・・・そんなビジネスライクな構成ではありますが、13話のアニメの構成としては、ハイライトの真脇遺跡で終わるというのは良い選択だったと思います。

ちなみにOPはAiko(アイコ)。Aikoは『聲の形』の主題歌も歌っていたし、大の漫画ファンだからアニメの主題歌を沢山歌っている印象ですが、実は本作も含めて3作品のみらしい。彼女は本作は未読だったらしいが、オーファーが来てから全話読んだらしく「高校生の自分に読ませたい」と語っています。作品の内容に寄り沿う素晴らしい主題歌ですが、何よりAiko節が思い切り聞けるのが嬉しい。初期のAikoが戻って来た感じ。EDはHomecomings(ホームカミングス)という2012年に京都で結成されたバンドの「ラプス」という曲ですが・・・これ・・・「羊文学」じゃね・・。多分世代が一緒なのでしょう。これも、アニメの内容にピッタリの曲です。

私は原作未読で1話を見た時点で、原作を大人買いし、GWは自転車で七尾や真脇遺跡まで聖地巡礼に行って来ました。原作を20回連続で読んでも苦にならない程、気に入った作品です。我が家の漫画の殿堂入り!

 

『スキップとローファー』より

第二位 『スキップとローファー』

高松美咲による『月刊アフタヌーン』連載作品のアニメ化。

 

能登半島の北端の珠洲市の烏賊町(現実には蛸町)出身の「岩倉美津未(いわくら みつみ)」が、官僚を目指して東京の進学校に入学します。成績優秀な彼女は新入生の挨拶を任されますが、不慣れな東京で迷子に・・・。窮地に陥った彼女を救ったのは、同じ高校の男子生徒の「志摩 聡介(しま そうすけ)」。超イケメンの聡介は、入学式をサボろうとしていましたが、美津未を送り届ける為に一緒に駅から学校まで走ります。都会のクールボーイの聡介は、ド田舎出身の美津未に終始ペースを乱されますが・・・それが何故だか心地よい。同じクラスになった二人は、友人として高校生活をスタートします。

終始マジメながら、どこか危なっかしい美津未の回りには、いつしか女子の友人も増え、生徒会の先輩の信頼も篤い。一方、過去の出来事から、周囲と距離を取る聡介ですが、ルックスと柔らかな物腰で女子の人気は高い。

少女漫画の王道のカップリングではありますが、新鮮に感じるのは、美津未のキャアクターによる所が大きい。少女漫画では、主人公の女子は自己評価が低い子が多く、優しい王子様が全力でその子を庇護するという、根暗女子の願望を反映した設定が多く、彼女に嫉妬した周囲の女子から王子様が守るシチュに読者の胸はキュンキュンする。しかし、青年誌に連載された『スキップとローファー』は、この王道展開を「やんわりと逆転」してみせます。美津未ちゃんは自己評価が高く、自己肯定型。田舎者というハンディにコンプレックスを感じる事無く、都会への憧れにも正直です。一方、聡介は過去の出来事か家族関係から、積極的に人生を楽しむ事を避けています。そんな聡介が美津未の言動の一つ一つに救われる。女子が男子を守るというオタク男子の願望とも別の、新しいスタイルの作品として、この作品はある種のエポックなのかも知れません。

しかし今期アニメの名作2作の舞台が「能登半島」というのは偶然にしてデキスギ。さらに「見附島」という聖地が重なります。『君は放課後インソムニア』は能登半島中央部の七尾市が舞台ですが、地元のこの作品に掛ける期待は大きく、市長の名刺の裏にインソムニアを印刷する程。私は氷見から先の能登半島には初めて行きましたが、変化に富んだ海岸線と美しい海に魅了されました。今、能登は熱い!!

おっと、さすれていた。OPのダンスは神。アニメの動きで、あんな可愛さが出せるなんて!!

 

『推しの子』より

第3位 『推しの子』

毎シーズン大量なアニメが放映される昨今、「いかに1話切されないか」というのが製作サイドの重要課題。インパクトのあるシーンを導入に持って来るパターンが一般的ですが、この作品に関してはネタバレになるので、その手が使えません。そこでスタッフが取った戦略が先行劇場版を丸々1話として放映するというチート作戦。これが大当たりして、1話放映後に既に今期覇権アニメを確実にしました。

「推しの子」とういうタイトルから凡百のドルオタ物と思わせておいてのマサカの展開に鳥肌が立ちました。マンガ原作の作品ですから原作を褒めるべきでしょうが、「長尺の1話」を実現したアニメスタッフには心からの拍手を送りたい。

そうそう、「引きの良さ」は特筆すべきでしょう。毎回「次はどうなる!!」というところで女王蜂の歌うEDにシームレスに入って行く。上手い。

内容は書きません。観て驚け!!

最後に、アニメ、主人公は有馬加奈ちゃんじゃねぇ?ジュースの自販機にもなってるし・・・・。

 

『神無き世界のカミサマ活動』より

第4位 『神無き世界のカミサマ活動』

間違い無く、今期最高のSF作品は『機動戦士ガンダム 彗星の魔女』でも、『Dr.STORN』でも無く『神無き世界のカミサマ活動』一択です。えええーーと思われる方は多いと思いますし、そもそも、この作品を観て人はとても少ないと思いますが、これは決定事項です。

SFは「サイエンスフィクション」や「スペースファンタジー」と捉えられる事が多いのですが、私は「スペキュレイティブ・フィクション(Speculative Fiction)=思弁小説」という枠組みがしっくりします。「様々な要因で現実とは違う世界を推測・考察する小説ジャンル」とWikipediaでは解説されますが、その意味においては今流行りの「異世界物」も「SF]に分類されます。

『神無き世界のカミサマ活動』では新興宗教団体の教祖の息子ユキトが修行中に命を落とし、異世界転生する所から物語がスタートします。本来ならば「20秒切」コースの作品ですが、実は原作を読んでいたので、ワクワクで観てました。だって、まさか、こんな「危険な作品」がアニメ化されるとは思ってもみなかったので!

ここからはネタバレ

ユキトが転生した世界は、中世を彷彿させる世界。都に城壁がめぐらされ、その周囲に農村が点在する。しかし、現実と違うのは、農村は「カクリ」と呼ばれ、都会から追放された人々が住む場所。「カクリ」に落とされた人達は、都に住む人とは何か異なる点が有ります。性欲があったり(強いのでは無く「有る」です)、都のシステムに何等かの疑問をいたりしている。都の人達は、ある年齢になると「終生」という自殺を抵抗なく受け入れています。彼らは選ばれると、躊躇無く毒を飲んで死にます。しかし、隔離の人達は死を怖がっています。

都会の人達は「種の保存の欲求」や「生存への欲求」が欠落しています。子供は政府から支給され、あてがわれた親に養育される。これ、SFの巨匠のアーシュラ・ルグインの『所有せざる人々』に似た世界です。この小説は「完全な社会主義」を思弁した名著です。社会主義は財産の私有を禁じていますが、『所有せざる人々』は共有は子供にまで及びます。子供は生まれると親から引き取られ集団で育てられ教育されます。『神無き・・』の世界は、社会主義と言うよりは「究極の管理社会」を思弁しています。生も死も完全にコントロールされ、人々がそれを疑わない世界。

『完全管理社会』は死の恐怖が存在しないので、宗教も存在しません。宗教の目的は死の恐怖の克服だからです。いえ、この世界では宗教を消し去る事で、死の恐怖という概念を消去いしているのです。

ユキトにはミタマという神が付き添っています。生前から彼を守護していたというミタマですが、村人の「終生」を阻止して危機に陥ったユキトの前にミタマへは顕現します。ミタマは地の神で万物を作り出す能力が有ります。(モデルは手置帆負命(たおきほおいのみこと)?)

「終生」に逆らった事で都を敵に回したユキトの隔離は、都に対抗する力と勢力を手に入る事に。それにはミタマの神としての能力が不可欠ですが、神の力は信者数に比例します。そこで、ユキトはミタマ教の信者を増やす為に、父に教え込まれた「新興宗教の勧誘と洗脳」のあの手、この手を駆使して信者獲得を目指します。

ヤバすぎでしょう、この内容!!炎上しても不思議では無い。

低予算で、モンスターがチープなCGだったり、2Dポリゴンの昔のゲーム絵で展開を端折ったりと、予算削減の為なら何でも有りですが、それでも万策尽きて1話か2話を落として最終話は未放送。でも、そんな事は面白いかどうかにとって関係の無い事です。「面白い」というのは、こういう作品の為にある言葉です。最期にユキトの行きついた世界は〇〇・・・猿の惑星だな・・・。

 

『六道の悪女』より

第5位 『六道の悪女たち』

東京MXの放映作品で、私もdアニメではレンタルだったので3話まで視聴ですが、原作を全館持っているので(殿堂入り)、原作にほぼ忠実で、5位決定。

「おいおい、何だよ!この昭和な絵柄は!!」とツッコまれる事必至ですが、これ、ほぼ原作絵です・・・。いいんです、面白ければ絵が昭和画だろうが何だろうが。と言うか、この絵だからこそ、クセの強い内容に耐えられるのです。

一部に熱烈なファンを持つ少年チャンピオン連載のヤンキー漫画?ですが、連載が終了して時間も経つので、アニメ化は無理だと私も半ばあきらめていました。ネットの無料配信で火が着き、アニメ化された様ですが、「神に感謝」。

六道 桃助(ろくどう とうすけ)は不良高校に通う下位カーストのオタク。教室では虐められ、仲間の「大佐」と「課長」とトイレの個室で文句を言い合う日々・・。ところが、六道の祖父が残した絵巻物を開くと、彼には不思議な力が宿ります。何と「悪女だけにモテる」術に掛かってしまったのです。六道に回りにはゾクゾクと悪女達が詰めかけますが、最強最悪のヤンキー女の向日葵 乱奈(ひまわり らんな)も例外では有りません。族のチームを一人で殲滅する乱奈は、暴力に取りつかれていますが、六道の前では恋する乙女に豹変します。

一見、六道が悪女にモテる術で、のし上がって行く作品に見えますが、実はこの作品、六道は術に頼る事を良しとしません。術で好かれる事に罪悪感を持っている。そして、彼は様々な抗争の中で、着実に強くて優しい男に成長して行きます。六道だけでは有りません、「大佐」も「課長」も、そして六道と敵対した人達も、彼の人としての魅力に惹かれ、六道を支えて行くのです。

「王道少年漫画の快感」を味える傑作(原作)!!この作品が嫌いな人とは友達になれないと思います。

 

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

第6位 『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

放送開始当初、ガチなガンダムファンからは「ユリ・ガンダム」とバカにされ歯牙にも掛けられなかったのに、2期に至ってはガチ勢を取り込んで評価はウナギの滝登り(byハルヒ)

『コードギアス』大河内一楼のシリーズ構成&脚本ですから、ツマラナイ訳が無いのですが・・・「ガンダムの呪い」に掛かってしまった様です。岡田麻里と鴨志田一の『オルフェンス』もそうでしたが、ガンダムを越えよう、新しいガンダムを作ろうとする作品は、何故かガンダムの亡霊に脚を掴まれます。人々が求める「ガンダム的な何か」から逃れようとすればする程、「ガンダム的な何か」に強く引きつけられる。地球の引力の様に。

この作品、「ハリーポッター」+「ウテナ」という表現がぴったりな前編は面白かった。しかし、地球と行き来が始まると「あ・・やっぱり」となってしまう。Zで始まった「地球の呪い」は健在でした。

「企業統治」という非常に現代的なテーマを扱っているのは興味深いのですが、政府との関係が、最後に少しだけなのが物足りない。現実の現在の世界は、政府は企業と国民の板挟みです。議員は献金によって企業に従僕しつつ、民主主義の選挙によって国民は無視出来ません。しかし、グローバル企業の台頭は、企業が国家の枠を超えて世界を裏から支配する構造を作りつつあります。その行き着く先を描いているのが『彗星の魔女』です。企業が私設軍隊を持ち、企業自治が認められ、政府を企業の行き過ぎを監視する役割を負う。この関係を、もう少し具体的に描いてほしかった。

もう一つの不満は、「悪役の動機の弱さ」。これ、昨今のテロリスト映画などにも言えますが、大量殺人の動機が個人的恨みだったり、厨二病的理想だったりする事に萎えます。尤も、ガンダムにおいては根本が「シャーの私怨」ですから、テロリストなどというのが、往々にして中二病をコジラセタ人の末路なのかも知れません。むしろ「ガンド技術の医療利用を進めると、予期せぬリンクが発生して、見えざる意思に支配される」みたいな『超人ロック』も「サイバージェノサイト」の様な展開だったら面白くなった。

 

2期のED、良いですね。日本のアニメのEDは、芸術アニメのサンクチュアリです。マジで。

 

『青のオーケストラ』より

第7位 『青のオーケストラ』

私の通った中学は、管弦楽で日本1位でした。学区内の小学校が管弦楽全国1位で、そのまま中学に上るので、中学でも全国1位になる。小学校にも中学校にも、その界隈では名の知れた音楽の先生が管弦楽部の顧問をしており、まさに海幕高校そのものでした。

学区のハザマに住んでいた私は、別の小学校(軍隊教育で全国で有名)だったので、中学の初めての全校集会で、床に座らされて「ドボルザーク 第八交響曲」を聞かされたたショックは今でも鮮明に覚えていますし、1楽章冒頭の暗~い導入部は頭から離れません。名ばかり運動部に所属していましたが、練習をサボって、音楽室のパート練習室で管弦楽部員と何故か駄弁って時間を潰していました。

ちなみに、主人公達の住むのは松戸、海幕高校は千葉県立幕張総合高校です。先生と拉麺を食に行くシーンの駅は武蔵野線新松戸駅、ラーメン屋もそのまんまです。安くてボリュームが有ります。

脚本は柿原優子、監督は岸誠二という『月がきれい』のコンビですが、原作物の柿原優子は「ソツが無い」という表現が当てはまる。岸誠二も、丁寧なお仕事程度。演奏パートがクオリティーの低いCGなので作品の質をかなり下げています。そんなの、止め画で良いんです。音な鳴っているのだから、スライドショーみたいな演出でも十分。NHK作品って、全話丁寧に作ってくれるので、嬉しくもあり、ツマラナくもあり・・。製作スタッフが苦悩して構成を考える部分が〇っと抜けてる感じがします。(ごめんね)

岸誠二と言えば『瀬戸の花嫁』と『Engel Beats』ですが、『青のオーケストラ』が物足りなくて『Engel Beats』を全話観てしまいました。聖地は「金沢大学のキャンパス」。1位2位の作品と言いい、時代は石川県です。

 

『異世界でチート能力を手に入れた俺は現実世界でも無双する』 より

第8位 『異世界でチート能力を手に入れた俺は現実世界でも無双する』

一言・・・「タイトル長すぎじゃねぇ・・・」。

ミルパンセの板垣伸が総監督なんですが、「異世界に行ってヒャッハー」というオタク男子の願望を、ここまで全肯定する作品は気持ちが良い。異世界物って、「オタクの妄想の具現化」という「うしろめたさ」が作品の底に流れていて嫌いなのですが、ここまで振り切ると、むしろ気持ちが良い。

単に板垣伸監督が何故か好きなだけですが・・・。EDは何とスガシカオ。悪く無いんだな、これが。

 

ここからは、全話完走した作品。

『この素晴らしい世界に爆焔を』 より

なんか、本編よりも丁寧に作っているんだよね。ゆんゆん、カワイイ!

 

『MASHLE』より

岡崎体育のOPの勢いで、何故か本編もみちゃうんだよね。そしてEDで満足して終わる。

 

『僕の心のやばいやつ』はどうした?って声が聞こえましたが、ヤバくなくて1話切。

『地獄楽』は!!という声も聞こえましたが、1話が良すぎて2話目からが見れない。

『Dr.STORNE』はどうした?って声も聞こえましたが・・・ああいう作品ってインパクトが全てだから2期目以降はちょっと・・・。

『鬼滅』はどうしたって・・・善逸(ぜんいつ)が出ないと聞いた時点で興味無し!」

 

以上、dアニメで観る作品だけなので、『天国大魔境』は入っていません。マンガで1巻だけ読んだけど・・・面白い!


半島の先へ・・・聖地巡礼と地震

2023-05-17 04:53:03 | アニメ

GWライド、3日目は能登半島の山中の宿泊地から、『君は放課後インソムニア』の前半のハイライト、能登町と北端にある「縄文真脇遺跡」に向かいます。

能登半島は複雑な地形をしており、様々な地層が複雑に入り組んでいます。輪島がある西部が高く、富山湾に面した東部は低く傾斜した地形です。宿泊地のある能登町は、国道が山地から再び海沿いになる七見の辺りでは弓状のゆるやかな海岸線が続きますが、それより北に進むと、小さな入江と岬が連続する複雑な海岸線になります。東部は浸食を受けやすい凝灰岩などの地層で、小さな河川による浸食で、入り江の奥に小さな平地があります。

 

縄文真脇遺跡もこの様な小さな入江の平地に位置し、縄文初期から晩期まで定住型の集落があった事が分かっています。低湿地で土中の酸素が遮断されるために、木や骨などが腐食せずに土中に残っていて、縄文各時期の土器なども、保存状態が良い。

ここでは大量のイルカやクジラの骨が見つかっており、入り江にイルカを追い込んむ「追い込み漁」をしていたと推測されています。昭和の時代まで、この近辺ではイルカの追い込み漁が行われていました。(今は和歌山県大地町だけに残る漁法)

『君は放課後インソムニア』では、ゲームセンターの店長の白丸先輩が高校生の時に、この遺跡で撮った星景写真がコンテストで賞を撮った他、主人公の中見君と曲さんが、夏合宿の最後にここで夜明かしして星の撮影をしています。作品前半のハイライトシーンの舞台です。

上の写真は「環状木柱列」と呼ばれる石川県を中心に見つかる縄文時代の遺構で、祭祀場後と考えられています。真脇遺跡の環状木柱列は規模が大きく、同じ場所で何度も建て替えられています。木材は腐食に強いクリの木が使われ、丸太をカマボコ状に切った丸い側を内側にして、環状に並べられ、入口も設けられています。

この他、縄文時代の家の復元されたもの(想像復元)も実物大で展示されており、中では火がたかれています。地元のボランティアの方が火の番をしていますが、能登の地酒のお勧め銘柄を教えてくれました。

博物館は土器やイルカやクジラの骨などが展示されており、全てレプリカでは無く実物展示なので、一見の価値がある。受付のカウンターの上の『君は放課後インソムニア』の単行本が置かれていたので、学芸員の方に「ここ聖地ですよね」とお聞きしたら、実写版とアニメのプロモーションビデオを流してくれました。それからは、その学芸員の方と、アニメトークで色々と盛り上がりました。

かなり遺跡で時間を使ったので、路線バス輪行が出来ないかとバス停に行くと、バス停にバイクパッキングの外人が居ました。自転車乗り同士、自然に会話が始まりますが、彼はどうやらカフェの開店を待っていた様です。実は能登半島の先端付近はコンビニは皆無で、自販機も能都町役場のある宇出津の町でしか見かけませんでした。私も遺跡に到着した時にハンガーノックで、補給食を貪りました。二人で「ノー コンビニ」「ノー ベンディングマシン」「オーノー!!」って盛り上がっちゃいました。彼はオーストラリア人で長野にしばらく住んでいるという事で、今回は七尾を起点に時計周りで能登半島を一周しているとの事。

バスの時刻表はスカスカだったので、中身君達が乗った路線バスに乗る事を諦めて、鉄道に乗れる穴水を目指して半島を南下しますが、あまりに景色が美し過ぎて、写真ばかり撮っているので、全く進みません。宇出津まで戻って来て、町役場近くのバスステーションで時刻表を見ると、10分後に穴水方面のバスが出る。バスの輪行は普通は出来ないのですが、地方のバスは、空いていると輪行できると読んだ事があるので、ダメ元でバス会社に電話して確認したら、この時間は空いているから大丈夫だろうとの回答。バスの発車までに慌てて輪行の支度をして、来たバスの運転手さんに確認したら、空いているので自転車を持ち込んでも大丈夫との事。最後部の座席に自転車を納めました。

バスは浦々を一気に通過して、1時間程で穴水に到着しました。峠越えもバスなら楽々・・・。穴水からは「のと鉄道」で七尾に向かいますが、乗った車両は『君は放課後インソムニア』のラッピング車両。そして、途中で『花咲くいろは』のラッピング車両とすれ違うという幸運。

七尾の駅に降り立つと、「でか山」が駅前通りに繰り出していました。祭り見物もしたかったのですが、とりあえず今回の目的は聖地巡礼です。そして2次を回っているので、お腹もペコペコです。昼は、中見君が親友と良く行く、七尾高校近くの「8番ラーメン 七尾西店」と決めています。「8番ラーメン」は富山と石川中心に展開するチェーン店で、野菜がどっさり入っているのが特徴です。富山と言えば富山ブラックを連想しますが、この地域の人たちにとっては「8番ラーメン」が郷土の味だとか。

お昼時は過ぎていますが、祭りの最中なので、店はカウウター席以外は満席。カウンターに座って、店員さんに「しょうゆ、塩、味噌のどれがお勧め?」と聞いたら「塩と味噌が人気です」との事なので、塩ラーメンとチャーハンのセットを注文。すると、しばらくして店中の客の携帯電話から緊急地震速報のブザーが鳴りだした・・・数秒後にグラグラグラと大きな揺れが襲います。ガスを使っている店内は危険と判断して、咄嗟に外に飛び出します。近くの山を見ると、大量のカラスが一斉に空に舞い上がって世紀末の様な光景。揺れはすぐに収まりましたが、震度は4でした。体感では震度5に近い揺れ。震源を確認すると能登半島北端の珠洲市の北の海底。珠洲市の震度は6強です。

実は本日の最初の予定では、『君は放課後インソムニア』の聖地の珠洲市の「物見島」と、『スキップとローファー』の聖地の珠洲市の「蛸町(作中では烏賊町)」まで行く予定だった。遺跡で時間を使い過ぎたので、中止しましたが、予定通り行っていたら、電車やバスも止まってしまうでしょうから、大変な事になっていた。

 

地震でラーメン屋のガスが自動停止したので、ラーメンが來るまで結構待ちましたが、サービスで半額にして頂きました。ありがとうございます。こんな大きな地震で、でか山だ大丈夫かと心配しながら、街の中心部に戻ると、地震など無かったかの様に、祭りは普通の続いていました。それからは御祓川の橋を一つ一つ写真に収め、名シーンの舞台となった桜川の小島橋と、その脇のバス停に巡礼して、中見君の親友の受川君がバイトをしている「道の駅 能登食祭市場」に向かいます。

 

この道の駅、巨大ですが、中は物産品店と、フードコート。干物屋がその場で干物を焼いていますが、ここが受川君のバイト先。店先にインソムニアの内輪や、ポップが張られています。残念ながら閉店準備でホタテ焼きは食べられませんでしたが、店主が「これ知ってる?今アニメでやってる『夜の放課後インソムニア』、来週辺り、うちの店出るから見てよ」「知ってますよ、聖地巡礼で来ました」「そう、受川君、あの子、うちのバイトだからよろしく」って、もう嬉しくなっちゃう会話。せかっくなので、この店で干物を見繕って、クール宅急便で家に送りました。「フグの卵巣の糠漬け」というの名物。

 

空模様が怪しくなってきたので、祭り見物もそこそこに、和倉温泉駅前のビジネスホテルに向かいます。和倉温泉は駅から少し離れていて、駅の周りは完さんとしています。温泉に行こうかとも思いましたが、入浴中に大きな地震に襲われると、裸で逃げる事になるので、止めました。これは次回の楽しみにします。

余震が続いているので、手早くシャワーを浴びて、ウェルシア薬局で夕飯と酒を買って、早々に布団に入りますが、夜10:30頃に再び、緊急地震速報で飛び起きます。震度4の余震。ちょっと危ないかなと思い、服を着て、荷物を枕元に並べてから、布団に戻ります。その後は大きな余震はありませんでしたが、熟睡は出来ず朝を迎えました。

昨日は地震で北陸新幹線が金沢-富山間で運転を見合わせていたので、早めに宿を出ます。7時の特急で金沢に向かいます。金沢まで来て観光をしたいのはヤマヤマですが、地震で運休になると帰れなくなるので、駅の物産売り場で、能登の地酒6本を買って宅配便で送ります。あとは、適当に土産を見繕って、新幹線に乗り込みます。・・・あれ、自由席が無い・・・。全席指定の車両の様です。まあ、自転車を持ってデッキに立っているつもりだったので、問題は在りませんが・・・。同様の自転車乗りが、たまたま近くに居ました。彼はベトナムから来日して、7年目だそうで、今回は自転車で直江津から金沢まで走ったとの事。自転車乗り同士、話がはずみ、あっという間に東京駅に着きました。

GWライド、今回は非常に密度の高い旅行となり、地震というスパイスも・・・。