人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

音楽が鳴る間はポルカを踊り続ける市場・・・材料なんて何でもイイさ

2014-01-31 10:11:00 | 時事/金融危機
 

■ 「上げて落す」「下げて上げる」・・・市場の常套手段 ■

先週の新興国危機は今に始まった話ではありません。
では、何故急にクローズアップされたかと言えば、市場が「下げる理由」を探していたから。

「上げて下げる」のは市場の常套手段です。
短期的な相場の根動きの理由など何でも良いのです。「例えばホワイトハウスで爆発が起きた」というガセネタ一つで実際に相場は大きく動いた例もあります。

「テーパリングによって新興国から資金回避が発生する」という極々当たり前の事は誰にも理解し易いので、今回はこれが材料に使われただけ。

そして、下げた市場は、上げる理由を探していますから、アメリカの四半期のGDPが好調だったという「過去ネタ」でも、株式市場は大きく値を戻す事になります。

そして、新興国経済の脆弱性は、しばらくすると忘れ去られてしまい、他のネタで又盛り上がるのでしょう。

■ 大事なことは微妙にタイミングをズラス事 ■

大事な事は、良いネタも悪いネタもタイミングを微妙にズラして仕掛ける事。

昨年の日本株の下落局面でも、大台と思われていた日経平均株価15000円を越えてさらに株価がジリジリと値上がりした状況で発生しています。

今回の株価下落もテーパリングが混乱無く始まってしばらくして皆が安心したタイミングで見事に仕掛けられています。

皆が安心しながらも、心の底では何だか不自然だ・・・そう思っている所を見事に狙い撃ちしています。

■ 緩和資金による過剰流動性が相場の動きをピーキーにしている ■

日経平均が1日で300円も動いたりすれば、一昔前なら暴落だとか暴騰などという表現も使われました。しかし、昨今の株価の値動きの幅は非常に大きいので300円位の値動きではあまり驚かなくなりました。

これはダウも同様で、大きく値を下げた後でも、市場は直ぐに平穏を取戻します。

現在の市場はジャブジャブに供給された緩和マネーが溢れています。ヘッジファンドの様に短期的な売買で利益を荒稼ぎする投資家達の資金運用額が大きくなればなる程、市場の値動きは激しくなります。

■ 本当に危機は誰も見ない様にしている ■

信用創造に依存した現在の貨幣制度は借金が先に生まれて、それを埋める様に通貨が発行されます。その意味において始めからバランスはしていないのですが、平時の経済ではその事が意識される事はありません。

定常的な景気変動こそありますが、先行する借金の相当する材が生み出される事で、経済が崩壊する事はありません。

しかし、借金を過剰に膨らめてしまった場合、通常の経済活動でそれを埋める事が出来なくなります。所謂「バブル」と呼ばれる状況です。

バブルの規模が小さい場合は、5年、10年を掛けて借金の返済が行われます。しかし、バブルの規模が大きい場合は通常の経済活動で借金を返済する事は不可能です。それこそ50年間、こつこつとバブルの清算をしなければならない・・・。

そこで、一気に借金を精算する方法として、公的資金の投入や、中央銀行の金融緩和が導入されます。リーマンショック後の世界は、これらの資金投入を大規模に行った結果、世界の経済システムは崩壊を免れました。

では、負債は無くなったのかと言えば・・・見えなくなっただけ。
借金に相当する財は元々存在しないので、価格が回復したかに見える債権や証券も「紙切れ」に等しい事はリーマンショック前と何ら変わりありません。

ただ、誰もが「王様は裸だ」と言わないだけ。それがルールなのです。

■ 次の危機が発生すれば、規模を拡大して同じ事が繰り替えされる ■

現在の新興国危機は演出された危機なので、中国でバブルが崩壊しない限り、世界経済に与える影響は限定的です。このまま世界は、本当の危機は存在しない振りをして、小さな危機と好材料を探し続けるのでしょう。

一方で、リーマンショックの様な本質的危機が表面化した場合、世界経済はリーマンショック以上に混乱するはずです。何故ならば、金融緩和で過剰に発行された通貨の信用に問題が波及する事は必至だからです。

そして通貨の価値と国債の価値は表裏一体ですから、国債市場にも動揺が走る可能性が大きい。

■ しばらくポルカでも踊ろう ■

「金融市場はいつかは崩壊する」という発言は、「いつか東京に直下型の大地震が発生する」とか「人はいつかは死ぬ」と同様な発言に近いので、真実だけれども、通常はそれを重要視する人は居ません。

「あ、そうだね。ハイハイ・・・。」というのが正常な反応です。

一方で、リーマンショックの時の様に、ひとたび構造的危機が表面化すると、人々はそれを無視出来なくなります。システム全体の信頼が一瞬で損なわれるのです。

ただ、いつも地震を怖がって家から出なければ人が死んでしまうのと同様に、次のシステムミックなリスクが顕在化するまでは、市場じゃ日々の値動きに一喜一憂します。

こうしてポルカを踊り続けている間は、本当の危機から目を逸らす事が出来ます。そして市場で成功する人は、人々が危機に恐れている間にリスクを取り、人々がポルカに浮かれている間に次の危機の到来を嗅ぎ分ける人なのでしょう。

こんな人は数少ないので、1割が得をして9割が損をする世界なのでしょう。

尤も、経済システム自体が崩壊してしまえば、勝者が誰かも分からなくなりますが・・・。


「おねだり」好きな市場・・・「日銀の追加緩和」は誰の為

2014-01-29 04:37:00 | 分類なし
 

■ ロイターに惑わされるな・・・ ■

「新興国危機」なる報道がロイターで盛んにされています。

1) トルコ・リラの下落と国債金利の上昇
2) アルゼンチン・ペソの暴落
3) 中国の理財商品のデフォルト懸念

などなど

これらの報道は先週の株価下落と同時に出始め、今週に入ってからはトルコや中国の問題は対策が打たれたと報じられています。

株式市場は表面上はこれに呼応する様に値を下げた後、危機回避の報道で昨晩はNY市場は値を戻しています。

一見すると整合性が取れている様ですが、危機の本質は何ら変っておらず、ただ臭いものに蓋をしただけです。

中国のシャドーバンク(理財商品)の市場は今回の救済で「元本保証」の錯覚を投資者に抱かせたので、今後も拡大するでしょう。これはリーマンショックの原因となったサブプライム層のローンを元に組成されたMBSが政府保証されていると錯覚されていた事に似た状況です。投資対象がそもそもゴミなのですから、中国のシャドーバンクはいずれ破綻します。ただ、それが1年後なのか2年後なのかは誰にも分かりません。

ロイターなどの報道は、あえて根本的な問題には触れず、表面的な危機と危機回避を報じます。これはロイターに限らず多くの報道機関が持つ特質でもありますが、投資家はこれらの表面的な報道を材料にして資金を移動させ、利益を上げて行きます。

これはアメリカの経済指標も同様で、短期的な指標の動きに市場は敏感に反応します。短期で資金を運用する投資家は、こういった市場の空気を先読みする事で利益を拡大し、それに追随する個人のデイトレーダー達は出遅れて損をしたりします。

■ 水面下で起きている事が大事 ■

現在の状況はFRBのテーパリング予測で新興国から資金が流失した昨年の状況を彷彿とさせますが、リスク回避の本格的な動きが起きているのかと言えば、少し様子が違う様に思えます。

・・・昨年の幻影を利用して稼いでるヤツらが居る・・・そんな雰囲気です。

ヘッジファンドなどは、昨年5月の日本株の下落の直前で売り抜けていた様に、市場の動きに先行して資金を移動します。彼らは経済指標などの表面的な報道では無く、もっと根本的な資金供給量と相場形成の動きに戦略的に対応しています。

今回もテーパリングの開始された昨年末からヘッジ勢は上手に株式市場から資金を抜いていたのでしょう。それが年始来の上値の重さに表れていましたが、テーパリングが成功したという楽観ムードが株式市場を支えていました。

しかし、どうも株価の勢いが上がらないと皆が思い始めた時に、新興国問題が報じられ、それを材料に一気に売りが進んだのでしょう。

■ アメリカの実体経済は下げ止まっているだけ ■

本来株価は企業業績や中期的な経済動向やインフレ率を先取りして動きます。

それでは現在アメリカの経済動向はどうなっているのでしょうか?
代表的な経済指標を眺めてみます。



1) 失業率は7%を切って改善している
2) 非農業部門の雇用者数は3年間横ばい
3) コアコアCPIは下落気味



4)中古住宅販売はゆるやかに改善気味だが、テーパリング後にやや下落
5)新築住宅着工件数もはゆるやかに改善気味だが、テーパリング後にやや下落

住宅関連指標は潤沢な資金供給と長期金利が押さえ込まれていた影響でゆるやかに回復しています。しかし、テーパリングは長期金利を上昇させるので、当然住宅関連指標にマイナス影響を与えます。

ここら辺の指標が元気に回復しない限り、アメリカ経済の本格的な回復はあり得ません。

■ 住宅バブルの幻影を追うアメリカ ■

アメリカ経済における住宅市場の影響は大きく、人々は住宅価格の上昇によって新たな担保が発生し、それを元に車を買い替えるなどの消費を活発化させます。様は、住宅価格の上昇はアメリカ人にとって打ち出の小槌の様なものです。



上のグラフはアメリカの全国主要都市の住宅価格を集計したケース・シラー全米住宅価格指数ですが、住宅価格は2010年頃に一回改善傾向を示しますが、その後は下落傾向にあります。これでは住宅価格の上層を背景とした消費の活発化は望めません。

実はアメリカは日本のバブル崩壊後に非常に良く似た状況に陥っていると考えられます。バブル期が特殊な状況であったにも関わらず、再びそれが訪れると皆が幻想を抱いているのです。しかし、アメリカの住宅価格はリーマンショック前は明らかにバブルであり、現在の状況は長期的に見れば正常化しただけなのかも知れません。

■ 金融緩和で維持される経済 ■

バブル期の様な華々しい景気拡大が無くとも、実体経済が緩やかに拡大するならば、それは喜ばしい事です。しかし、問題は緩やかな景気拡大が大規模な金融緩和に支えられている事にあります。金融緩和を縮小すれば、成長も止まる可能性が大きいのです。

バブル経済は利益を先食いするので、その規模が大きければ大きい程、バブル崩壊後は負債の返済で経済は長期に渡って停滞します。日本のバブル後の失われた10年をアメリカも追体験しているのです。

一方、日本の失われた10年以降の景気低迷は「少子高齢化」という構造的問題によって発生しています。さらには新興国との価格競争に負けて製造業が衰退する時期に重なりました。

アメリカの製造業はとっくに衰退していますので、アメリカ経済は金融業によって回っています。現状、実体経済は回復していませんが、金融市場はジャブジャブ供給される緩和マネーを吸い込んで、リーマンショック以前の規模に拡大しています。

これは非常に不健全な状況で、緩和マネーに支えられた市場は、低利の資金供給の縮小で必ず崩壊します。

■ テーパリングは長期金利を上昇させる ■

テーパリングの直接的な影響は長期金利の上昇です。FRBは大量に長期国債とMBSを買い込んで長期金利を抑制してきましたが、テーパリングによって需給関係が崩れるので、当然長期金利が上昇します。この影響を最も強く受けるのが住宅市場です。

一方で、政策金利は依然ゼロ近傍なので、短期の資金の調達コストは非常に安くなっています。これが金融市場を支えています。

テーパリング開始後に市場が冷静でいられたのは、テーパリングが短期金利に影響を与えない事を市場が理解たためです。

■ 金利の正常化が経済を回復さるのか、経済の回復で金利が正常化するのか ■

中央銀行の大規模な金融緩和は金利を不自然に低く抑制しています。これを指して最近では「金融抑圧」とか「金利抑圧」と称する記事を多く見かけます。

「金融抑圧」に対しては高橋洋一氏が次の様に反論しています。

<引用>

 日銀の金融緩和について「金融抑圧」という表現が使われることがある。総じて批判的なニュアンスで、金利を人為的に低下させるという意味で使われているようだ。

 もともとは、「金融抑圧(financial repression)」とは、開発経済学で用いられていた概念だ。開発途上国で、長期にわたり貯蓄者に対して大きなマイナスとなるような実質金利を課し、結果として貯蓄を減少させる政策を指す。ところが最近、カーメン・ラインハート氏らの国際経済学者の間で、こうした政策は、実は1980年代まで先進国で見られていたという主張がなされるようになった。さらに、最近急増している公的債務を削減するためには「金融抑圧」が一つの選択肢であるとも主張している。

 これに対して、ポール・クルーグマン氏は、その「金融抑圧」の用語法には違和感があると指摘している。先進国では、低金利政策であっても貯蓄を減少させるほどではなく、経済成長をプラスにするような刺激策であった。この点、貯蓄減少から成長できなくなったりしていた開発途上国とはまったく違う話だ。

<引用終わり>


ただ、金融抑圧は第二次世界大戦後のアメリカでも堂々と行われており、FRBが金利上限を決めて金利上昇を抑制しつつ、経済は戦後復興で適度なインフレを持続したので、戦争によって肥大化した財政赤字を10年程で軽減する事に成功しています。機軸通過となったドルへの世界中のドル需要がこれを支えていたとも言えます。

戦後のアメリカの金融抑圧政策は「力強い戦後復興」によってそのマイナス面は顕在化していません。

しかし、低成長下では金融抑圧の負の側面が現れてきます。金利上昇が抑制された状態で生じる問題は、投資に対して適正な金利が得られない事による投資機会の喪失です。

1) 資金需要よりも資金供給が過剰に存在する
2) 金利が本来の水準よりも抑制される
3) リスクに対して適正な金利が確保出来ない

その状況に国外の金利が国内金利に比べて高い場合は・・

4) 同じリスクで得られる金利が国外の方が高くなる
5) 国外への投資が増加する
6) 海外投資に伴って円が売られるので円安が発生する
7) 円安の結果、海外投資の実質金利が上昇する

日本の金融機関は慎重なので、現在の日米の金利差程度では海外投資を大幅に拡大する事はありません。せいぜい、安全な米国債投資が中心になるでしょう。リーマンショック時に日本の海外投資は円高の影響もあって大きく毀損していますので、その記憶が新しいうちは、日本の投資家は海外投資には慎重です。

一方、海外の金融機関は果敢にリスクを取りに行きますから、円安で実質金利の安い「円」を調達通過にする「円キャリートレード」で利益を拡大します。

結局金融グローバル化の時代において、金利が不当に低く抑圧されていれば、国内の投資機会が失われ、海外に資金は流失しやすくなります。

■ FRBのバッファーとしての日銀 ■


今年4月の消費税増税による景気失速を理由に「日銀の追加緩和期待」が盛り上がっている様です。ところで期待しているのは果たして日本人でしょうか?

そもそも日本の金融機関は日銀の口座に資金をブタ積みしているので、これ以上の緩和が実施されても利益には繫がりません。(日銀口座の金利収益はありますが)

ところが最近の株安局面で明らかに日本株は新興国よりも派手に売られており、これも「追加緩和を催促する」動きと説明されています。もし、「追加緩和」を期待して日本株が過剰に売られているならば、その主力は海外勢力海外勢力でしょう。彼らが追加緩和を期待して期待する理由は二つ考えられます。

1) 追加緩和によるさらなる円安で日本の資産を割安で買う
2) 円安で実質金利が低下する円を調達通過にして円キャリートレードを拡大する

特にFRBがテーパリングを開始してアメリカの実質金利が上昇する事が予測される中で、低利の資金供給源としての日銀の存在感は大きくなっています。

様は日銀の金融緩和はFRBの緩和テーパリングのバッファーとして機能しているのです。

■ アメリカの都合で日銀の金融緩和は行なわれて来た ■

実際に日銀の金融緩和は日本経済を回復させる事はありませんでしたが、アメリカでは住宅バブルの成長を後押しし、さらには米国債を買い支えています。

1993年に日本国債の利回りが低下し過ぎて金融機関が含み損を恐れて国債を売却して金利が急上昇した時期があります。

この時のダボス会議には、自民党の加藤氏と財務省の篠原氏、黒田氏が出席した様ですが、アメリカとの個別会談で要求されたのが緩和拡大です。要はアメリカは日本の金利上昇でアメリカとの金利差が縮小する事を嫌ったのです。

昨年の黒田総裁の異次元漢和もアメリカのテーパリング予測の中で実施されており、私は、日本の財政ファイナンスと同時にアメリカのテーパリングの援護射撃がその目的にあると当時このブログに書いています。

ただ、新興国からの資金回避と、日本株の下落幅が大きかったので、FRBはテーパリングを先延ばししたのだと私は妄想しています。

■ 米実体経済の自律回復は遠く、金融市場は水太りして行く ■

結局米国の実体経済は住宅バブルの精算が終わるまでは活性化しません。同時に雇用者数は横ばいですが、平均所得は下降して行くので、消費は弱くデフレ傾向が続きます。

当然、個人投資は弱く、これを緩和マネーが補う状況が続いています。

FRBの緩和マネーの縮小で世界経済が混乱する背景には、先進国の成長力の低下という構造的な問題が潜んでおり、これが解決しない限りは、緩和マネーは金融市場を水太りさせ続け、世界経済は脆弱性を高めて行く事になります。

そして、水太りが進めば進む程、金融緩和の停止は難しくなります。
どこかに限界点があるハズですが、「今でしょ!!」と言うには少し早い気がしています。

金融界はこんな「楽観」の上にゲームを続けていますが、これが果たして「楽観」と呼べるのか・・・。



リスクオン?リスクオフ・・・国債金利の低下

2014-01-27 05:29:00 | 時事/金融危機
 
ダウ平均株価推移



国債金利推移


GS 毎月分配型債券ファンド 「妖精物語」 12月30日



■ ファンドの利確売り? ■

FRBのテーパリングが混乱無く開始されてリスクオンムードなどと書いたら、何だか株式市場や新興国あたりで不穏な空気になってきました。

株式市場などは、ここまで株価を踏み上げて来たファンド勢が利確売りしているのでは無いかと思われますが、これが本格的な手仕舞いになるとは思えません。未だ音楽は鳴り響いており、イス取りゲームは続いています。

本格的に相場が暴落するには材料が足りません。資金は依然ジャブジャブあるので、調整が済んだ後は又ジリジリと相場は上昇を始めるでしょう。

■ 米国債金利が下がっている ■

安全資産と思われている国債市場とリスク市場はトレードオフの関係にあるので、危機感が高まるとリスクオフの国債買い(国債金利の上昇)、危機感が遠のけばリスクインで株式市場が上層し国債価格が低下(金利上昇)します。

今年に入ってから米国債金利は低下傾向にあり、一方ダウ平均株価は下落傾向にあります。ダウは先週以前は一進一退という感じでしたが、先週末は大きく下げています。

これだけを見ると、何と無くリスクオフ的に株式市場の資金が国債市場に流れている様に見えます。

■ 米国債は誰が買っているのか? ■

最近サボっていたGSの国債ファンド「妖精物語」のポートフォリオを見てみます。これは12月末のデータなので1ヶ月のずれがありますが、半年前までは欧州の安全な国の国債や米国債が上位に来ていましたが、今回はイタリアやスペインなど欧州危機で国債金利が急上昇した国が上位に並んでいます。これらの国の金利はユーロ危機が遠のいたので平常の水準に戻っています。(債券価格は上昇)

ある程度の利益が要求されるファンドでは、米国債よりもこれらの欧州の国債の方が魅力があるのでしょう。

では、米国債は誰が買っているのか・・・・。

多分、金利差が拡大している日本の資金や、新興国から回避し始めた資金が集まっているのかも知れません。テーパリングが一応成功した事で、米国債のリスクは低下したと判断されたのでしょう。

■ 新興国危機は切り分けが必要 ■

新興国が何やら騒がしい様ですが、これは原因の切り分けが必要でしょう。

アルゼンチンのペソの暴落は、アルゼンチンぺソを買い支えていたアルゼンチンの中央銀行が、買い支えきれなくなった事が原因です。前回のデフォルトで米国企業などに債務不履行をした事で、アルゼンチンペソは攻撃され、売り崩されていました。国内のインフレ率も政府の発表よりも高く20%とも30%とも言われており、ペソの暴落は時間の問題でした。

ペソの暴落は自業自得ですが、南米ではアルゼンチンの危機は、隣りのブラジルに飛び火し易い傾向があります。ブラジル政府はダボスで財政改善を強調するなど、レアルの防衛に必死です。

中国の場合は、やはり国内の不良債権がどの位あるのかが注目されています。今回は地方の炭鉱会社が「影の銀行」から調達した資金30億元が債務不履行になりそうですが、一説には600兆円あると言われる「影の銀行」の融資残高。不動産市場でバブルが崩壊すると、世界経済を巻き込む危険性は低くありません。ところが、中国は不動産価格は依然上昇しています。弾けると言われ続けながらなかなか崩壊しない中国の不動産バブル。既に、崩壊した時の破壊力は相当な規模になっています。

■ 世界経済は脆弱のまま肥大化している ■

何れにしても世界経済は根本的な脆弱性を抱えたまま、緩和資金で肥大化しています。

崩壊は何かのイベント、いわゆる「ブラックスワン」の出現によって起きるのでしょうが、それまでは不安定ながら、肥大化を続けるのでしょう。

ボラティリティーの拡大が利益を生む金融市場の性格上、イス取りゲームの音楽はどんどんテンポを速めていくのでしょう。危機は遠のいたかと思えば、ネタはそこかしこに転がっており、プチ危機を演出しながら相場は不安定に変動します。

本当の景気回復局面では、リスク市場は力強く上昇して行くので、現在の世界は依然不安定要因を抱えたまま踊り続けているだけとも言えます。

不穏なファンファーレが遠くで響いている様ですが、未だ雷鳴は遠く・・・。

三浦半島一周・・・ならず

2014-01-26 12:24:00 | 自転車/マラソン
 




■ 「逃げる」をリベンジ・マッチ ■ 

いきなり国道一号線の大手町の交差点の写真です。
これが出て来たと言う事は・・・そう、「箱根駅伝から逃げる」のリベンジ・マッチです。
今年の1月2日は、大平台で足が終わってしまいまいしたので、どうもスッキリしません。正月以来、週末は自転車になるべく乗っていたので、脚も少しは強化されたハズ。

昨日仕事で遅かったので、浦安出発は7時40分を回っています。
のんびり走って時間調整して、大手町を8時30分に出発します。

前回の反省は前半のペース。
特に、信号からのスタートで力を使うと、後半足に来ます。集団走行では、集団のペースに引っ張られてしまうのですが、今回は単独走。なるべく、信号スタートを緩やかにペースアップして足を温存します。ギアーも1段軽くして、こちらも足を温存。

■ 路肩の駐車で神経が磨り減る・・・ ■

正月2日は路肩の駐車も少なく走り易かったのですが、本日の都内は路肩に駐車している納品車両その他が沢山居ます。突然ドアが開いたり、車の影から宅配のオニイチャンが飛び出して来るので、駐車車両の横を通る時には神経を使います。右側の車線まで回避するので、右手を横に出して後方車両に合図を送り、後方を振り返って目視確認してから車線変更を繰り返します。その間、右側の駐車車両が急に右ウィンカーを出して発車したりもするので、一瞬たりとも気が抜けません。

時速32Km/hをキープしようとしますが、信号とすり抜けの度に加減速を繰り返します。クロモリに鉄下駄装着のレモン2号君では、この加減速は足に来ます。

さらに、交通量の多い第一京浜で駐車車両を避けながら走るので神経がすり減ります。

■ 千切るつもりが千切られた・・・ ■

子安の当たりで、男女二人組のローディーさんのお尻に付きます。本日は自己鍛錬が目的なので、これを一気に抜きます。時速35Km/h程度で走れば信号で差がつけられるので、単独走になるはず・・・。しかし、何回やっても、信号に引っ掛かって信号待ちの間に後ろが追い付きます。

私は集団走の経験が無いのと、横浜駅周辺で車線取が分からずにウロウロしてしまうので、なるべく先頭にはなりたくありません。ですから、信号ダッシュを繰り返しましたが、とうとう東神奈川で車線取を間違えている間に抜かれました。女性連れだと思って舐めたらダメですね。千切るつもりが、千切られちゃいました。

その後、国道一号に合流したくて、又も迷ってウロウロ。この辺り鬼門です。
さらに、保土ヶ谷の当たりで再び迷って逆戻り・・・。
戸塚も間違って一旦バイパスへ・・・踏切の待ち時間は無かったのでラッキーですが。

何だか、戸塚駅前に出て来た時には、神経も使ったし、脚も使ったので何だかグッタリ。気分転換にここでコンビニ休憩にします。

ところが、入ったコンビニの棚がスカスカ・・・。大福とか、スニッカーズとか甘い物が食べたかったのですが、オニギリで我慢。

コンビニ前でカロリー補給をしていると、前を通る親子連れが「ここ、閉店しちゃうんだってね・・・」と通り過ぎて行きました。最近、街中でもコンビニが消えて行きますね。駐車場の無い所は特に・・・。

■ 渋滞でイライラがMAXに!! ■

ここから先は渋滞する車の横を低速ですり抜ける状態。歩道が空いている時には歩道走行。もうイライラがMAX状態です。

県道の30号に入って、藤沢橋を渡って・・・気が付けば・・・左折していました。

・・・当然、そのまま走ったら出て来るのはこちら・・・。



そう、江の島です。
ここを右折すれば、海岸通りから箱根駅伝コースに出られますが、渋滞でタイムロスしまくりなので、もう小田原から山登りする気が完全に折れています・・・。

ここでハンドルを左に切って、本日の目標を「三浦半島1周」に変更しました。

■ 三浦半島は・・・渋滞していた・・・・。 ■

実は私は三浦半島を走った事がありません。大学の頃、友人の車で油壺とか葉山に行きましたが、たしかドライブしただけで、車から降りていません。だから、三浦半島は新鮮です。

さらに、東京近辺の自転車乗り達は、「ヤビツ峠」に登るのと同じ位い「三浦半島1周」が好きです。1周で100Km余りの距離と、適度なアップダウン、そして観光地が点在して海の眺望が良いので、人気コースです。

いつかはチャレンジしたいと思っていたので、本日は風も無いので急遽、「三浦半島一周にチャレンジ」です。

鎌倉を越えると上り坂、トンネルをエッチらコッチら登っていると、後ろから生きの良い3人組に抜かれました。ここは無理せずマイペース。

逗子の駅を越えて葉山に分かれる交差点で、この3人組が信号待ちしていました。どうやら、三浦半島一周のご様子。私は道に不案内なので、彼らに付いて行く事にします。しかし、三浦半島に入っても車が渋滞しています。3人組のペースも上がらないので、後ろにぴったりくっ付いてしまいます・・・これは何だか気まずい。

少し休憩して間を空けるか迷いましたが、三崎までは20Kmを切っているので、ここは追い抜いて先行します。後ろを付いて来るかなと思ったのですが、彼らも間を開けたかったみたいです。・・・そりゃそうだ、変なオヤジと一緒に走るのはイヤでしょう。

ちょっと快調に走ったと思ったら、その先から三浦までズウウウウーと渋滞。路肩のグレーチングの上を何度も走るハメに・・・・。

反対車線は比較的空いていて、自転車乗りさん達が気持ちよく走り去って行きます。そういえば、三浦半島は「時計回りが基本」と書かれていた様な。時計回りは海側を走るので、風景が見えやすいからというのが理由ですが、交通事情も原因なのかも知れません。

そんなこんなで三崎口までは、ズーーーと渋滞の車と並走。もう、ウンザリ。

■ 三崎でマグロを・・・食えず・・・ ■



三崎港への下り坂を一気に下れば、そこは三崎。遠洋マグロ漁の基地です。
港の周りには、「マグロ全国発送します」と書かれたお店がチラホラ。

そして、観光客向けのマグロと地魚料理の店が並びます。
だけど財布の中は千円・・・・ATMを探しますが銀行が無い・・・コンビニを探しますが、コンビニが無い・・・・。

でもマグロってどうせ冷凍で水揚げされるから、三崎のマグロも、浦安の市場のマグロも大差無いはず。こんな所で、マグロ丼2300円は、実は損なのでは無いか・・・・・。そう自分を納得させて堪えます。腹ペコなんだけどね。

ちなみにここまで浦安から101Km。メーター読みの平均時速は23.5Km/h。
まあ、信号と渋滞でほとんどまともに走れていませんでしたから・・・・。
その割には妙に疲れています・・・脚では無く心が・・・。



そんな心の内を写す様に、空もドンヨリと曇っています。

■ 妙に商売っ気タップリな魚屋・・・ ■

濁った心で歩いても全然ワクワクしません。
だいたい、三崎港の風景って何だよ!!単なる漁港じゃん。
(・・・いえいえ漁港が売りの観光地ですから・・・。)

路地裏に魚屋が並んでいますが、見慣れない地魚が目を引きます。
「クロ」って何!?、デカいんですけど・・・深海魚か?











こちらは漁港の裏側の魚料理屋。
観光ツアーのお客さんも居て賑わっています。
「魚無国籍料理」というが今風です。

店先で名物と思しきオジサンが魚の説明をしていて、待っている客を飽きさせません。丁度マンボウの説明をしていました。

ちなみにマンボウはフグの仲間。外洋性のフグで深海まで潜ってクラゲなどを食べます。そして海上に浮かんで昼寝するのが特徴。形だけでなく、習性までとことん変な魚です。

■ アウター縛り敢行 ■




港の外れで何だか映画のロケに使われそうな床屋を発見。こういう感じが好きなんだよね。



城ケ島に渡ろうか迷いましたが、あの高さまで自転車で登る気合いが・・・。
その代わり、本日はアウター縛りを敢行。今まで53tのアウターしか使っていませんし、三浦半島は長い坂道も無いので、アウター縛りで自分を鍛えます。

って、決めた途端に坂道。ここは気合いの立漕ぎ一発!!



坂道を登るとそこは一面のダイコン畑。そういえば、三浦ダイコンは有名でした。




しばらく走ると眺望が開けます。ようやく観光気分。
岬の突端には風力発電の風車が2機。多分風が強い場所なのでしょう。
でも、1機は壊れたのか、回っていませんでした。




■ 千葉県を見て涙が出そうだ・・・ ■

久里浜のコンビニでアイス、大福餅、カップラーメンで補給。対岸に見えるのは房総に山々です。鹿野山、鋸山、伊代岳と山並みが続きます。



一旦、海を離れた後は、再び浦賀を目指します。ペリーが来航した浦賀を見ずして三浦半島は語れません。浦賀湾を過ぎると、観音崎です。

江戸時代末期はこの周辺には砲台が築かれ、外的に備えたとか。



当時の大砲の射程は7.8Km。丁度、対岸の千葉県の富津岬に到達する距離だそうです。
確かに千葉県が目と鼻の先。浦賀水道は東京湾で一番幅が狭い所ですが、そこを貨物船が過密状態で運行しています。東京の物資を支える海の道です。

とちらはペリー艦隊の作った海図。



旗山崎をポイント・ルビコンと命名しているのが意味深。

■ 日没終了 ■

横須賀まで走って浦安から140Km程。
道は又しても大渋滞。
足的には横浜まで余裕ですが、もう渋滞は勘弁です。

ちょうど日も暮れたので、横須賀中央駅で自転車をたたんで、本日のサイクリングは終了です。心の中では、横浜に到着したら三浦半島一周と決めていたので、本日のチャレンジは未達に終わりました。マダマダ鍛錬が足りません・・・・。

だいたい、ロングライドをするには家を出る時間が遅すぎましたね。渋滞が始まる前に都心や神奈川の中心部を通過するスケジュールで無ければダメだという事を痛感しました。

■ 千葉県民で良かった ■

しかし、国道1号や三浦半島の渋滞は酷い。自転車乗りには悪夢です。

いつもは気にもしていませんでしたが、房総半島がいかに「自転車乗りの天国」か痛感しました。海も山も坂道もあって、交通量も少ない。

三浦半島を巡って、千葉の良さを再認識した一日でした。

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見えるリスクと見えないリスク・・・危機は終わったのか?

2014-01-24 08:17:00 | 時事/金融危機
 


■ リスクを煽る時代は終わったのか? ■

FRBのテーパリング開始で予想されていた市場の混乱が発生しなかった事で、昨年末からリーマンショックから続いていたリスクが遠のいたと多くの人が考えています。

私の様に「金融が崩壊する!!」なんて騒いでいた人達は、「オオカミ少年」だと批判されそうな状況になってきました。

そこで本日は「世界のリスクは去ったのか?」という問題を妄想してみたいと思います。話半分でお付き合いください。

■ リーマンショック時のリスク ■

リーマンショックで発生したリスクとは大規模な「信用喪失」でした。

1) アメリカの住宅バブルで景気は右肩上がりに拡大すると思われてた
2) 金融市場で流通するMBSやそれを元にした金融商品のリスクが過小評価された
3) 債権投資のリスクがほとんど無視されていた
4) 債権市場に大量の資金が流入し、債権価格が右肩上がりに上昇していた
5) ヘッジファンドなどが、調達した資金を債権市場で運用し市場が過熱していた

ここでサブプライム層のローンが破綻し始め、リーマンショックで一気に危機が意識されます

6) 債権価格が暴落して買い手が付かない状況になる
9)金融機関の手持ち資産の時価が暴落し、大手の金融機関も債務超過に陥った

7) 債権を手放して現金化しようとした為に一気に信用収縮が発生する
8) 金融機関が手持のドルを手放さなくなりドルの流動性が枯渇する

これがリーマンショックで起きた「急性の危機」です。

9) 米政府とFRBは不良債権化したMBSを市場から買い集める。
10)ドルを大量に供給し、政府とFRBがバットバンク化した

この時点で民間の金融機関はリスクを政府や中央銀行に移した事になります。アメリカでは当時も税金を使って金融機関を救済する事がモラルハザードと反対する人も多かったのですが、結局、金融システムと経済のクラッシュを防ぐ為には、政府とFRBがリスクを肩代わりするしか手段は残されていませんでした。

■ 出口戦略とは ■

リーマンショック後の一連の大規模な金融緩和は、交通事故の患者に輸血をする様な処置です。今、それをしなければ患者が死んでしまうという治療に等しい。

一方、リーマンショックから時間た経過し、金融市場は緩和マネーによって一命を取り留めました。最近では大分回復して、流動食も旺盛に食べる様になりました。

そこで、各国中央銀行は、だんだんと金融を正常化する必要があります。点滴や流動食ばかり食べていては、本当に回復は期待できないからです。

1) 中央銀行がMBSや国債の市場からの購入量を減らして行く
2) 中央銀行がMBSや国債の市場からの購入を停止する
3) 中央銀行が市場から購入したMBSや国債を市場に売却する

現在のテーパリングは1)の段階です。FRBは1年位を掛けて2)の段階を達成するものと予測されています。

現在、FRBは国債とMBSを一か月4兆円位ずつ購入していますから、これらの市場でのFRBの存在感は絶大です。FRBがテーパリングを進めるという事は、これらの市場の需要サイドが縮小するという事なので、国債やMBSの価格は下落し、金利は上昇します。

国債金利は全ての金利の大元とも言えますので、テーパリングに伴って米国債金利は上昇し始めています。これは当然市中金利にも影響します。

ところが、一方でFRBは低利の資金提供は継続しています。それにより金利は実際には低く抑えられています。今回のテーパリングの開始で市場が混乱しなかった背景には、FRBが低利の資金供給をテーパリングの間継続する事が周知されたからです。

■ フォワードガイダンス ■

中央銀行が一定期間は低金利を継続するとアナウンスする事は、最近では「フォワードガイダンス」と呼ばれる様ですが、かつて日本では「時間軸の政策」と呼ばれていました。

長引く不況で、日本の金利はゼロに張り付いていました。マイナス金利を採用しない限り、これ以上の低金利は不可能です。ところが、資金需要が極端に低下した環境では、最早ゼロ金利でも需要を喚起する事は不可能です。

そこで、金利をある一定期間据え置く事を中央銀行が宣言します。将来的な資金調達コストが上昇しない事を約束された金融機関がリスクを取り易くする事が目的です。

フォワードガイダンスは、イギリス中央銀行でも行われていますし、FRBの「当分は金利は据え置く」という発表もこれに当たります。日銀の「インフレ率が2%になるまで異次元緩和を継続する」というのもフォワードガイダンスです。

■ 当分はリスクを取り易い世界 ■

心配されていた出口戦略が辛うじて混乱無くスタートし、一方で中央銀行が資金供給を約束しているので、現在の金融市場はリスクを取り易い状況が発生しています。

タダの様な金利で供給された資金を元手に、株式市場や債券市場で運用すれば、利益は濡れ手に粟状態です。

ダウや日経平均の上昇は、テーパリング開始の成功によるリスクオンムードと、中央銀行の資金供給に支えられています。

■ 利益を確定する絶好の機会 ■

日本市場では、一昨年末以来、日本株を外資が15兆円程も買い越しています。一方で日本人の資金があまり日本株市場へと集まらないので、ヘッジファンド勢は昨年5月の株価下落以降、日本株を売り抜けられない状況が続いていたと思われます。

限られた銘柄を集中して買い支えて相場を維持する日経平均には表れませんが、日本の株式市場全体では売り圧力が強く、少しの株価下落で日経平均もスーーと値下がりし易い状況が続いていました。

最近になって、国内メガバンクも日本株に投資すると言い出したので、ようやくヘッジファンド勢が日本株を売り易い状況が生まれています。

最近の日経平均はドンと落ちてから、するすると上値を更新する展開が続いていますが、ヘッジ勢が売り抜けた穴を、メガバンクや海外の投資家が買い上げる状況が続いているのでは無いでしょうか。

■ 急性期は過ぎたけれど、慢性的なリスクが拡大して来る ■

昨年9月頃はテーパリングを予測して新興国からの資金回避が発生しました。しかし、今回は極端な資金回避は見られません。このまま平安が続けば、新興国への資金流入が拡大する可能性は低くありません。

一方、中国では土地バブルが再び拡大してきており、資金流入が続けば、バブルが制御不能になる恐れも出て来ます。

一方、先進国では慢性的なリスクがジワジワと拡大しています。
日本が先頭を走っていますが、長引く不景気で政府の債務が拡大しています。これ自体は常識的な範疇であれば何ら問題無いのですが、非常識なまでに政府債務を膨らめてしまうと、金利上昇に伴うリスクは無視出来無くなります。

日本国債は世界にほぼ無視されていますが、アメリカは別です。オバマケアーや、ベビーブーマーのリタイアで社会保障費が急拡大するアメリカの財政に注目が集まり易く、米国債の金利が上昇し易い状況が発生しています。

これらのリスクは徐々に進行するので、「慢性的なリスク」です。

■ バブルが再び拡大するリスク ■

もう一つのリスクはアメリカでのバブルの再拡大です。

大規模な金融緩和で過剰に供給された資金は、本来、FRBの市場でのMBSや国債の売却で回収されるべきですが、アメリカにおいても実体経済の回復は非常に弱く、インフレ率は低く抑えられています。

したがってFRBは金利アップや資金回収を実施し難い状況が続きます。一方、資産市場でリスクオンムードが拡大すれば、どこかで再びバブルが発生する恐れがあります。

アメリカはレーガノミクス以降、不動産バブル、ITバブル、住宅バブルとほぼ10年周期でバブル経済を発生させています。リーマンショックの記憶が薄らぐにつれて、次のバブルの芽が育ち始めるでしょう。

世界はリーマンショックの原因である住宅市場の回復に注目していますが、多分新たなバブルは思わぬ所で発生するはずです。そして、それがアメリカ国内で発生するとは限りません。今や投資に国境は有りません。

例えば、円安が進行して、東京オリンピックによる地価上昇が予想される東京は、不動産バブルが発生し易い状況にあります。東京の地価が上昇する事は、日本経済にとっては喜ばしい事ですが、上手くコントロール出来ないと、バブル崩壊によって経済はバブルが発生しない場合よりも大きなダメージを受けます。

■ 見えるリスクに反応し、見えないリスクは無視する世界 ■

リーマンショックの原因である金融システムの過熱性と脆弱性を温存したまま、世界は新たな成長を模索しています。

表面上はリスクは遠のいた様に見えますが、高齢化が進行する先進国の成長力は弱く、さらに資金の多くは富裕層に集中しています。この事は、景気回復の実感を伴わずに、資産市場のバブル化が進行する可能性を示唆しています。

市場は急性のリスクには過剰に反応しますが、慢性のリスクは無視します。

見えやすいリスクが遠のく事で、見えないリスクが高まる時期に世界は入ったのかも知れません。

次のバブルの発生源を予見して、先行投資してバブル崩壊前に売り逃げた人が高笑いするのはいつもの事と言えます。

短期的な利益を追求するだけならば、バブルの生成と崩壊も利益を得る機会となり得ます。一方、金融や経済システム全体を眺めると、アメリカの80年代の不動産バブル、90年代のITバブル、2007年のリーマンショックと、ほぼ10年周期で生成と崩壊を繰り返すバブルは、段々とその規模を拡大し、破壊力を増大しています。

民間から国家へと付け替えられ、金融抑圧という不健全な手段で延命する現在の経済システムは非常に肥大化と脆弱化が進んでいます。

次なる危機が発生した時、はたして何が起こるのか予想するのが恐ろしい。そして、次なる危機が何時発生するのかも予断を許さない状況です。

「急性の危機」が遠のいた事で、世界は進行の著しい「慢性の危機」を軽視していないか・・・。

このブログは「金儲け」の為のブログでは無いので、趣味の社会観察として、リスクの所在と推移には注目し続けたいと思っています。